会計名及び科目 | 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費 | ||
平成22年度国庫債務負担行為 (組織)防衛本省 (事項)諸器材購入 |
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平成23年度国庫債務負担行為 (組織)防衛本省 (事項)諸器材購入 |
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部局等 | 海上幕僚監部、海上自衛隊補給本部 | ||
契約名 | 耐寒耐水服III型製造請負契約 | ||
契約の概要 | P-3C等の大型固定翼機の搭乗員が使用する耐寒耐水服III型を製造させるもの | ||
契約の相手方 | 藤倉航装株式会社 | ||
契約 | 平成22年11月、24年3月 一般競争後の随意契約 | ||
上記の契約に係る調達数及び調達額 | 321着 | 9946万余円 | (平成22、23両年度) |
節減できた調達数及び調達額 | 321着 | 9946万円 | (平成22、23両年度) |
海上自衛隊は、寒冷時に特定の海域を飛行する航空機の搭乗員が海上で遭難した場合に寒風や冷水によって体温が奪われることを防止するために着用する耐寒耐水服を航空用救命装備品(以下「救命装備品」という。)として装備し、原則として10月から翌年の3月までの期間中に使用することとしている。
耐寒耐水服には、回転翼機及び中型固定翼機搭乗員用のI型、練習機搭乗員用のII型及びP-3C等の大型固定翼機搭乗員用のIII型があり、I型及びII型は、各搭乗員の体格に合わせて複数のサイズがある一方、III型は、遭難に際して各搭乗員の体格に関係なく航空服の上から即時に着用できるようフリーサイズとなっている。
また、「航空用救命装備品及び航空機救難装備品の装備標準について(通知)」(平成11年海幕装体第1961号)によれば、救命装備品は、航空機に搭乗することとされている全搭乗員に対して、各人に一つずつが貸与される(以下「個人貸与」という。)個人装備用と、航空機の機種ごとの配置員数等を基準に一定の数量が航空機に常時装備される航空機装備用に区分されており、耐寒耐水服は、いずれの型も個人装備用の救命装備品とされている。
海上自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)は、III型の調達数を調達所要量を基に決定して、装備施設本部に対して調達要求している。そして、補給本部は、前記の通知等に基づき、III型について、次の方法により調達所要量を算定することとしている。
〔1〕 耐寒耐水服は、前記の通知において個人装備用の救命装備品とされていることから、各航空機の全搭乗員に対応した数量(以下「装備標準数」という。)を装備することとしており、III型は、各航空基地に配備されているP-3C等の就役機数に、有事の際の航空機の運用上の必要を見込んで機種ごとに定めた係数及び配置員数を乗ずるなどして装備標準数を算出する。
〔2〕 着用の際に生ずる破損による修理や、III型を使用する期間が年間に180日以上の場合に行うこととされている耐寒耐水機能の低下等の有無を確認するための中間検査の期間中に必要となる代替品等を考慮した所定の率(以下「予備率」という。)10%を、装備標準数に乗ずるなどして予備の数量(以下「予備数」という。)を算出する。
〔3〕 装備標準数に予備数を加算した数量から在庫数等を控除して、耐用年数が到来したことにより更新する必要がある数量(以下「更新数」という。)を加算して、調達所要量を算定する。
補給本部は、上記の方法により、平成22、23両年度の調達所要量をそれぞれ221着、113着、計334着と算定し、これに予算措置の状況等を考慮して、両年度の調達数をそれぞれ213着、108着、計321着と決定して調達要求している。そして、装備施設本部は、調達要求どおりの着数のIII型製造請負契約を一般競争後の随意契約により、22年度に契約金額6425万余円、23年度に同3521万余円、同計9946万余円で藤倉航装株式会社と締結している。
本院は、経済性等の観点から、フリーサイズとなっているIII型の調達所要量の算定がその運用実態を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して検査を行った。検査に当たっては、海上幕僚監部、補給本部、P-3C等が配備されている6航空基地のうち鹿屋航空基地等5航空基地(注) 及び装備施設本部において、22、23両年度に締結されたIII型製造請負契約2件(契約金額計9946万余円)を対象として、契約に関する書類等を確認したり、担当職員から説明を聴取したりなどして会計実地検査を行った。また、那覇航空基地については、III型の運用実態に係る関係資料を徴するなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
耐寒耐水服の運用実態について検査したところ、I型及びII型は搭乗員が着用して航空機に搭乗しているなど、個人貸与される個人装備用の救命装備品としての運用が行われていた。しかし、III型については、I型及びII型のような個人貸与による運用が行われておらず、前記のとおりフリーサイズであるため搭乗員間で共用できることから、III型を使用することとしている期間中は常時、配置員数を基準とした一定の数量がP-3C等に搭載されたままとなっているなど、航空機装備用の救命装備品と同様の運用実態となっていた。したがって、上記の運用実態を踏まえ、III型の装備標準数については、航空機装備用の救命装備品として就役機数に配置員数を乗じて算出することが適切であると認められた。
III型は、遭難時を除くと救命生存訓練等以外に着用する機会はなく、同訓練等における着用の際に生ずる破損による修理の実績はなかった。そして、III型を使用する期間は、八戸航空基地所在の第2航空隊を除く各航空部隊においては、耐寒耐水服を使用することとしている特定の海域を飛行する期間が180日以上になることはないなどのため、III型の中間検査は実施されていなかった。したがって、上記の運用実態を踏まえ、III型の予備数の算出に当たっては、着用の際に生ずる破損による修理の期間中の代替品や、第2航空隊を除いた各航空部隊における中間検査の期間中の代替品を考慮することを原則として行わないこととして算出することが適切であると認められた。
上記のように、III型の調達所要量の算定に当たって、個人貸与となっていなかったり、着用の際に生ずる破損による修理の実績がなかったりなどしている運用実態を考慮していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
各航空部隊におけるIII型の運用実態を踏まえて、装備標準数を航空機装備用の救命装備品として算出し、また、着用の際に生ずる破損による修理等を予備数として考慮しないこととするなどしてIII型の調達所要量を算定していたとすると、22、23両年度ともに調達の必要がなかったという結果になることから、両年度の契約金額の全額(計9946万余円)が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、海上幕僚監部及び補給本部において、III型の運用実態を把握し、これを調達所要量の算定に反映させて適切な数量を調達要求することについての重要性に対する認識が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、海上幕僚監部は、装備標準数の算出に関して、23年11月に通知を発して、III型の運用実態を反映して、個人装備用から航空機装備用に改めることとする処置を講じた。また、補給本部は、予備数の算出に関して、24年7月に、III型の修理実績がないことなどの運用実態を反映するとともに、上記の装備標準数の変更に伴って航空機の配置員数を超える搭乗員が搭乗する場合も新たに考慮することとして、予備率の10%を8%とする処置を講じた。そして、これらを24年度調達要求に係る調達所要量の算定から適用することとし、その結果、24年度においては、III型を調達しないこととした。