科目 | 旅費 | |
部局等 | 株式会社日本政策金融公庫本店、152支店 | |
着後手当の概要 | 新任地に到着後、新住居に入居するまでの間のホテル等の宿泊料や挨拶に要する費用等に充てるための旅費 | |
赴任旅費の支給額 | 10億7867万余円 | (平成22、23両年度) |
上記のうち着後手当の支給額 | 2億7071万余円 | |
節減できた着後手当の支給額 | 1億4625万円 | (平成22、23両年度) |
株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)は、株式会社日本政策金融公庫法(平成19年法律第57号)に基づき、平成20年10月に旧国民生活金融公庫、旧農林漁業金融公庫、旧中小企業金融公庫及び旧国際協力銀行(国際金融等業務)が統合して発足し、7,631人(23年4月1日現在。ただし、24年4月に株式会社国際協力銀行に承継した業務に係るものを除く。以下の各職員数、金額等について同じ。)の職員を有し、本店のほか全国に152支店を設置して業務を実施しており、毎年度、多数の職員を本支店間で転任させるなどしている。
公庫は、転任により旧任地から新任地に旅行したり新たに採用されて居住地から任地に旅行したりする職員に対して、公庫が定めた旅費規則(平成20年企管(人々)第23号)に基づき、赴任旅費として、22年度は計6億0908万余円、23年度は計4億6959万余円、合計10億7867万余円を支給している。
この赴任旅費には、交通費、日当等のほかに着後手当(扶養家族に係る分を含む。以下同じ。)があり、この着後手当は、転居を伴う人事異動において、新任地に到着後、新住居に入居するまでの間に必要となるホテル等の宿泊料や挨拶に要する費用等の諸雑費に充てるために支給するものとされている。そして、その支給額は、旅費規則第37条により、日当定額の5日分及び宿泊料定額の5夜分に相当する額(以下、日当定額及び宿泊料定額の一定日数分に相当する額を「5日5夜分」等という。)と定められている。
また、旅費の減額調整について定めた旅費規則第45条では、実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費は支給しないと定めている。
前記のとおり、公庫が職員に支給する赴任旅費は、毎年度多額に上っている。一方、公庫は、転任等をする職員のために社宅を整備しており、社宅を希望する職員全員に提供している。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、公庫における赴任旅費の支給、特に公庫においては社宅が整備されている中で、着後手当の支給が赴任の際の宿泊及び宿泊費用の発生の実態を踏まえて適切に行われているかに着眼して、検査を行った。
検査に当たっては、22、23両年度に支給した着後手当のうち赴任に伴う宿泊の実態が確認できなかったものを除いた22年度計1,341件、1億4853万余円、23年度計1,125件、1億2218万余円、合計2,466件、2億7071万余円について、支店において、旅費の請求書等を基に旅費担当者から旅費の請求、審査、支払事務等並びに着後手当が支給された職員(以下「支給対象職員」という。)及び扶養家族(以下、これらの者を合わせて「職員等」という。)の赴任に伴う宿泊の状況等について説明を聴取するとともに、本店において、旅費制度の担当者から旅費規則の趣旨について説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、公庫は、着後手当の支給に当たり、転居に伴う宿泊やホテル代等の費用発生の状況について確認を行っておらず、旅費規則第45条に基づく旅費の減額調整を行うことなく、支給対象職員全員に対して一律5日5夜分を支給していた。
しかし、公庫においては、赴任地において速やかに入居できるように社宅が提供されていて、職員等が自ら赴任地において新住居を見つけるなどする必要性は低く、また、社宅への入居が可能になるまでホテル等に宿泊して待機する必要性も低い状況となっていることから、赴任に伴い一時的にホテル等に宿泊するのに必要な宿泊数は少なくて済むと考えられた。
そこで、赴任に伴う一時的な宿泊の状況及び宿泊費用の発生の状況について検査したところ、22、23両年度の支給対象職員延べ2,466人及び当該職員に伴って転居した扶養家族延べ1,759人、計延べ4,225人のうち、発令後直ちに赴任地の社宅等に入居した者や一時的に実家等に宿泊したがホテル等の有料の宿泊施設には宿泊していなかった者が計延べ908人(21.4%)あり、また、有料の宿泊施設に宿泊した場合についても、その宿泊数が1泊又は2泊の者が計延べ2,407人(56.9%)と多くなっていて、赴任に伴う一時的な有料の宿泊施設での宿泊数が0泊から2泊までであった職員等が合計延べ3,315人と全体の78.4%を占めていた。
このように、公庫においては、社宅が整備されていることなどもあって、職員等は、赴任地において新住居を見つけるまでの間、ホテル等の宿泊料を要しなかったり、少ない泊数分の宿泊料しか要しなかったりすることが一般的である。旅費については、実費弁償を旨とするものであるから、実態とかい離した支給を行うことは適切でなく、実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費は支給しないと定める旅費規則に基づき、着後手当を減額調整するなどして実態を踏まえた適切な支給とする必要があると認められた。
着後手当について、前記の事態を踏まえるとともに、公庫と業務等が類似の団体における支給例を参考にして、赴任に伴う一時的な有料の宿泊施設での宿泊数が0泊から2泊までの場合は2日2夜分、3泊以上の場合は実際の宿泊数に応じた日夜分に減額して支給したとすれば、前記の着後手当の支給額22年度計1億4853万余円、23年度計1億2218万余円、合計2億7071万余円は、22年度計6705万余円、23年度計5740万余円、合計1億2446万余節円となり、支給額をそれぞれ計8147万余円、計6477万余円、合計1億4625万余円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、公庫において、着後手当の支給に当たり、旅費は実費弁償を旨とするものであり、宿泊及び宿泊費用の発生の実態を踏まえて、実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費は支給しないと定める旅費規則第45条の規定に対する認識が十分でなく、旅費の減額調整を行うことなどにより実態を踏まえた支給とすることについて検討していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、公庫は、24年9月に旅費規則を改正して、着後手当の支給額を原則として2日2夜分とし、一時的な有料の宿泊施設での宿泊数が3泊以上の場合は、やむを得ない事情がある場合に限り当該宿泊数に応じた日夜分とすることとして、同年10月から適用する処置を講じた。