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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの


 (309)—(318) 私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等 日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 10学校法人
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
上記に対する事業団の補助金交付額の合計 15,168,987,000円 (平成21、22両年度)
不当と認める事業団の補助金交付額 59,505,000円 (平成21、22両年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

 日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

 私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(2) 補助金の額の算定資料

 事業団は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料(以下「算定資料」という。)として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料を提出させている。

ア 申請年度の5月1日現在の専任教員等(注2) の数、専任職員数及び学生数に関する資料

イ 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出、設備関係支出等に関する資料

 専任教員等  専任の学長、校長、副学長、学部長、教授、准教授、講師、助教及び助手

(3) 補助金の額の算定方法

 事業団は、算定資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定することとなっている。

〔1〕 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分して、それぞれの経費区分ごとに専任教員等の数、専任職員数、学生数等に所定の補助単価を乗ずるなどして補助金の基準額を算定する。
 そして、上記の専任教員等については、1週間の割当授業時間数が所定の時間数以上であることが、補助の対象となる要件の一つとなっている。

〔2〕 各私立大学等の教育研究条件の整備状況等によって補助金の額に差異を設けるため、次の割合等に基づいて個々の増減率を算定する。

a 収容定員に対する在籍学生数の割合
b 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合
c 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合

〔3〕 〔1〕で算定した経費区分ごとの基準額に②で算定した全体の増減率を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額とする。

(4) 特別補助

 上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。
 この特別補助の対象となる項目には以下の項目等があり、これらについては、算定資料を各学校法人から提出させて次のようにその額を算定している。

ア 「戦略的研究基盤形成支援事業」については、文部科学大臣の指定を受けた事業を実施する研究組織を有する私立大学に対して、当該事業における所要額を増額する。

イ 「大学院教育の実質化の推進」については、研究科(専攻)において、人材養成等の目的・目標を定め、大学院教育の実質化に取り組む私立大学に対して、研究科ごとの専任教員等の数に所定の単価を乗ずるなどして得られた研究科算定補助基準額に、当該研究科における他大学からの入学者割合、申請年度の前年度における科学研究費補助金の採択の有無等の教育研究活動状況による調整率を乗じた額を増額する。なお、他大学からの入学者とは、他大学を卒業してから当該研究科に入学するまでの期間が1年未満の者とされている。

ウ 「教育・学習方法等改善支援」については、教育・学習方法等の改善のための取組を行う私立大学等に対して、当該取組に係る所要額を増額する。なお、所要額の算定対象となる経費が見込額に比べて減少した場合には、実績額を報告させることとしている。

エ 「研究科特別経費」のうち研究科分については、大学院研究科を設置する私立大学に対して、博士課程・博士後期課程を置く研究科における高度な研究等に係る所要額を増額する。

オ 「教育研究拠点大学院重点経費」のうち大学院基盤分については、大学院を設置している私立大学に対して、研究科ごとの専任教員等の数に所定の単価を乗ずるなどして得られた研究科算定補助基準額に、当該研究科における過去3年間の博士課程・博士後期課程の修了者数(学位授与者及び単位取得満期退学者の数。以下同じ。)に占める学位授与数の割合等の教育研究活動状況による調整率を乗じた額を増額する。

カ 「大学等の国際化に向けた取組み」のうち留学生に対する授業料減免については、経済的に修学困難な留学生に対する授業料の減免を行う私立大学等に対して、授業料減免対象者数に所定の単価を乗じた額に、各私立大学等の授業料の額に対する授業料減免額の割合を乗じた額を増額する。なお、授業料減免対象者については、当該年度の5月1日現在において、「留学」の在留資格を得ている者とされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、専任教員等の数及び学生数の算定が適切に行われているか、特別補助の額の算定が適切に行われているかなどに着眼して、事業団が平成21、22両年度に補助金を交付している630学校法人のうち29学校法人において、補助金の交付申請に係る算定資料等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、事業団に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、10学校法人において、補助金の交付申請に当たり、事業団に提出した算定資料に、補助金の額の算定対象とならない専任教員等を含めて記入したり、特別補助の算定対象とならない経費を含めて記入したりなどしていたのに、事業団は、この誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金59,505,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、10学校法人が、補助金の制度を十分に理解していなかったり、算定資料の作成に当たりその内容の確認を十分に行っていなかったりなどしているのに、事業団において、これらの学校法人に対する指導及び調査が十分でなかったことによると認められる。
 これを学校法人別に示すと、次のとおりである。

  事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額
      千円 千円
(309) 学校法人 青山学院
(東京都渋谷区)
21 2,371,091 1,290

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、青山学院大学における平成21年度の補助金の額の算定対象となる専任教員等について、1週間の割当授業時間数が所定の時間数を下回っていた教員を含めて記入していた。
 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は、2,369,801,000円となり、1,290,000円が過大に交付されていた。

(310)  学校法人 杏林学園
(東京都三鷹市)
22 1,639,581 1,879

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、杏林大学における平成22年度の戦略的研究基盤形成支援事業に係る特別補助の算定対象となる経費について、管理経費等は含めないこととされているのに、管理経費として支出していた委託費を含めて計上していた。
 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は、1,637,702,000円となり、1,879,000円が過大に交付されていた。

(311) 学校法人 駒澤大学
(東京都世田谷区)
22 1,115,509 1,323

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、駒澤大学における平成22年度の大学院教育の実質化の推進に係る特別補助の調整率の算出の基礎となる他大学からの入学者割合について、他大学を卒業してから1年以上経過した学生等を含めて記入していた。
 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は、1,114,186,000円となり、1,323,000円が過大に交付されていた。

(312) 学校法人 大東文化学園
(東京都板橋区)
21 834,587 14,484
    22 391,142 8,754
    小計 1,225,729 23,238

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、大東文化大学における平成21年度の教育・学習方法等改善支援に係る特別補助の算定対象となる経費について、実績額が見込額に比べて減少した後も、見込額のまま計上するなどしていた。
 したがって、実績額に基づくなどして算定すると、適正な補助金の額は、21年度820,103,000円、22年度382,388,000円となり、それぞれ14,484,000円、8,754,000円、計23,238,000円が過大に交付されていた。

(313) 学校法人 帝京大学
(東京都板橋区)
21 1,784,028 1,364

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、帝京大学における平成21年度の研究科特別経費のうち研究科分に係る特別補助の算定対象となる経費について、管理経費等は含めないこととされているのに、管理経費として支出していた人件費を含めて計上していた。
 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は、1,728,664,000円となり、1,364,000円が過大に交付されていた。

(314) 学校法人 愛知淑徳学園
(名古屋市)
22 621,303 1,935

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、愛知淑徳大学における平成22年度の大学院教育の実質化の推進に係る特別補助の調整率の算出の基礎となる21年度に新たに科学研究費補助金が採択された研究の有無について、20年度以前に採択された実績しかないのに、採択された研究があったと記入していた。
 したがって、これを除外して算定すると、適正な補助金の額は619,368,000円となり、1,935,000円が過大に交付されていた。

(315) 学校法人 菊武学園
(愛知県尾張旭市)
21 193,510 1,565
    22 224,468 5,261
    小計 417,978 6,826

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、名古屋産業大学における平成21年度の教育研究拠点大学院重点経費のうち大学院基盤分に係る特別補助の調整率の算出の基礎となる研究科ごとの過去3年間の博士課程・博士後期課程の修了者数及び学位授与数について、修士課程の修了者数及び学位授与数を記入していた。
 また、22年度の補助金の額の算定対象となる在籍学生数について、22年5月1日現在で除籍されていた学生を含めていたため、在籍学生数を過大に計上するなどしていた。
 したがって、これらを除外して算定すると、適正な補助金の額は、21年度191,945,000円、22年度219,207,000円となり、それぞれ1,565,000円、5,261,000円、計6,826,000円が過大に交付されていた。

(316) 学校法人 近畿大学
(大阪府東大阪市)
21 5,123,645 6,907

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、近畿大学における平成21年度の教育研究拠点大学院重点経費のうち大学院基盤分に係る特別補助の調整率の算出の基礎となる研究科ごとの過去3年間の博士課程・博士後期課程の修了者数について、単位取得満期退学者を除外して記入していた。
 したがって、修了者数に単位取得満期退学者を含めて算定すると、適正な補助金の額は、5,116,738,000円となり、6,907,000円が過大に交付されていた。

(317) 学校法人 大阪国際学園
(大阪府守口市)
22 431,704 2,955

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、大阪国際大学における平成22年度の補助金の額の算定対象となる在籍学生数について、22年5月1日現在で在籍していた学生を含めていなかったため、在籍学生数を過少に計上していた。
 したがって、これを含めて算定すると、適正な補助金の額は、428,749,000円となり、2,955,000円が過大に交付されていた。

(318) 学校法人 桃山学院
(大阪府和泉市)
22 438,419 11,788

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、桃山学院大学における平成22年度の私立大学等の国際化に向けた取組のうち留学生に対する授業料減免に係る特別補助の算定対象となる授業料減免対象者数について、「留学」以外の在留資格で在籍している外国人学生等を含めて記入するなどしていた。
 したがって、これを除外するなどして算定すると、適正な補助金の額は、426,631,000円となり、11,788,000円が過大に交付されていた。

   (309)-(318)の計   15,168,987 59,505