科目 | (助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金 | ||
部局等 | 日本私立学校振興・共済事業団 | ||
補助の根拠 | 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号) | ||
私立大学等経常費補助金(授業料減免特別補助)の概要 | 経済的に修学困難な私費外国人留学生に対する授業料の減免を実施している私立大学等に対して私立大学等経常費補助金を増額するもの |
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授業料減免特別補助を実施した私立大学等に係る学校法人の数及び補助金交付額 | 337学校法人 | 12億3922万余円 | (平成22年度) |
上記のうち留学生の経済状況に基づいて減免対象者の選考が行われていなかった私立大学等に係る学校法人の数及び補助金交付額 | 21学校法人 | 2億5599万円 |
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(平成24年6月26日付け 日本私立学校振興・共済事業団理事長宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴事業団は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として私立大学等(注1)
を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金(以下「経常費補助金」という。)を交付している。経常費補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。
そして、経常的経費のうち教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため特に必要があると認めるときは、経常費補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。
貴事業団は、平成22年度から、国際化に向けた取組の一環として私費外国人留学生(以下「留学生」という。)のうち経済的に修学困難な留学生の負担の軽減を図るために授業料(入学料は除く。)の減免を行う私立大学等に対する特別補助(以下、この特別補助を「授業料減免特別補助」という。)を新たに実施することとした。
私立大学等が行う留学生を対象とした授業料の減免については、21年度までは文部科学省から政府開発援助外国人留学生修学援助費補助金(授業料減免学校法人援助以下「ODA補助金」という。)が交付されていた。貴事業団が授業料減免特別補助を22年度から実施することとしたのは、文部科学省において留学生の支援に係る制度の在り方について検討が行われた結果、ODA補助金が21年度をもって廃止され、急きょ特別補助により留学生受入れのための支援が行われることとされたことによるものである。
授業料減免特別補助の具体的な内容は、23年3月に改正された私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定。以下「配分基準」という。)に定められている。
配分基準によれば、授業料減免特別補助は、ODA補助金とは異なり、補助対象を経済的に修学困難な留学生に対する授業料の減免に限定しており、さらに、私立大学等において、経済的に修学困難な留学生を対象とした授業料の減免に係る規程等が整備されていること、当該規程等には経済的に修学困難な留学生の選考基準が明記されていることなどが必要とされている。
また、特別補助により交付される補助金の額は、授業料の減免を行った留学生の数(以下「授業料減免者数」という。)に所定の単価を乗じて算出した額に、正規の授業料の額に対する授業料減免額の割合(以下「授業料減免率」という。)を乗じて得た額を基に算定されることとなっている。
授業料減免特別補助は、22年度において337学校法人の397私立大学等(授業料減免者数計39,005人)に対して実施されており、その交付額は計12億3922万余円に上っている。
前記のとおり、留学生を対象とした授業料の減免に係る補助制度については、ODA補助金の廃止に伴い、貴事業団において授業料減免特別補助が新たに実施されることとなった。
そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、授業料減免特別補助が、その制度の趣旨に沿って、補助対象を経済的に修学困難な留学生に対する授業料の減免に限定するよう、必要な事務処理態勢を整備した上で適切に行われているかなどに着眼して、前記の337学校法人の397私立大学等のうち補助金の交付額が大きい学校法人を中心に25学校法人の27私立大学等(授業料減免者数計10,774人、授業料減免特別補助の額計2億8769万余円)を対象として、授業料の減免に係る規程等の整備状況や減免対象となる留学生の選考状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、25学校法人の27私立大学等のうち、21学校法人の23私立大学等(授業料減免者数計9,710人、授業料減免特別補助の額計2億5599万余円)において、経済的に修学困難な留学生を対象とした授業料の減免に係る規程等を整備していなかったり、規程等を整備していても経済的に修学困難な状況を判断するための選考基準を明記していなかったりしていたため、次のとおり、留学生の経済状況に基づいて減免対象者の選考が行われておらず、私立大学等における教育の振興等のために特に必要があると認めるときに限り補助金を増額するという特別補助の趣旨に沿わない結果となっている事態が見受けられた。
ア 経済的に修学困難な留学生を対象とした授業料の減免に係る規程等が整備されていないことから特別補助の趣旨に沿った授業料の減免が行われていない事態(8学校法人の9私立大学等)
学校法人秀明学園等8学校法人の(注2) 9私立大学等(注3) (授業料減免者数計5,147人、授業料減免特別補助の額計1億1159万余円)は、経済的に修学困難な留学生を対象とした授業料の減免に係る規程等を整備していなかったため、実際の減免対象者の選考においても、留学生全員を減免の対象としたり、学業成績など留学生の経済状況に関係がない事項を減免の要件としたりしていて、留学生の経済状況に基づいた選考を行っておらず、特別補助の趣旨に沿った授業料の減免が行われていなかった。
(注2) | 8学校法人 秀明学園、廣池学園、国士舘、大東文化学園、立命館、折尾愛真学園、文理学園、別府大学
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(注3) | 9私立大学等 秀明大学、麗澤大学、国士舘大学、大東文化大学、立命館アジア太平洋大学、折尾愛真短期大学、日本文理大学、別府大学、別府大学短期大学部
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上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
貴事業団は、学校法人国士舘から提出された授業料の減免に係る資料に基づき、同法人における平成22年度の授業料減免者数を1,204人(授業料減免率3割)として、同法人に対する授業料減免特別補助の額を26,836,000円と算定していた。
しかし、同法人が定める国士舘大学納入金規程は、在留資格「留学」の査証の取得等を減免の要件としており、経済状況に係る要件は定めていないことから、経済的に修学困難な留学生を対象とした授業料の減免に係る規程等が整備されておらず、実際の減免対象者の選考においても、留学生の経済状況を考慮していなかった。
イ 経済的に修学困難な状況を判断するための選考基準が規程等に明記されていないことから特別補助の趣旨に沿った授業料の減免が行われていない事態(13学校法人の14私立大学等)
学校法人青森山田学園等13学校法人(注4) の14私立大学等(注5) (授業料減免者数計4,563人、授業料減免特別補助の額計1億440万余円)は、経済的に修学困難な留学生を対象とした授業料の減免に係る規程等を整備していたものの、経済的に修学困難な状況に該当するか否かを具体的に判断するための留学生の経済状況に関する選考基準を当該規程等に明記していなかったため、実際の減免対象者の選考においても留学生の経済状況に基づいた選考を行っておらず、特別補助の趣旨に沿った授業料の減免が行われていなかった。
(注4) | 13学校法人 青森山田学園、青森田中学園、杏林学園、慶應義塾、多摩美術大学、拓殖大学、東京国際大学、東京成徳学園、目白学園、大阪産業大学、桃山学院、萩学園、中村産業学園
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(注5) | 14私立大学等 青森大学、青森中央学院大学、杏林大学、慶應義塾大学、多摩美術大学、拓殖大学、東京国際大学、東京成徳大学、目白大学、大阪産業大学、大阪産業大学短期大学部、桃山学院大学、山口福祉文化大学、九州産業大学
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上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
貴事業団は、学校法人大阪産業大学から提出された授業料の減免に係る資料に基づき、同法人における平成22年度の授業料減免者数を大阪産業大学学部在籍者833人(授業料減免率5割)、同大学大学院在籍者130人(同3割)、同大学短期大学部在籍者37人(同5割)、計1,000人として、同法人に対する授業料減免特別補助の額を28,160,000円と算定していた。
そして、同法人が定める大阪産業大学私費外国人留学生授業料減免規程では、経済的に恵まれていると認められる者は対象から除外することとし、減免対象者は同法人が設置している国際交流委員会の議を経て、学長が決定することとしている。
しかし、同法人は、上記の規程に基づき経済状況を記載させた申請書類は提出させているものの、経済的に恵まれていると認められる者を対象者から除外するための具体的な選考基準を明記しておらず、減免対象者の選考を行う国際交流委員会においては、実際には授業の履修状況の審査が行われたのみであり、留学生の経済状況に基づいた選考を行っていなかった。
以上のように、留学生の経済状況に基づいて授業料の減免対象者を選考するために必要な事務処理態勢が私立大学等において整備されておらず、実際にも、留学生の経済状況に基づいた減免対象者の選考が行われないまま授業料減免特別補助が実施されている事態は、経済的に修学困難な留学生に対する授業料の減免を実施している私立大学等に対して経常費補助金を増額するという特別補助の趣旨に沿わない結果となっていて適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、各学校法人において新たに実施されることとなった授業料減免特別補助の趣旨に対する理解が十分でなかったことにもよるが、貴事業団において次のことなどによると認められる。
ア 授業料減免特別補助は、ODA補助金とは異なり、私立大学等における教育の振興等のため特に必要があると認めるときに限り補助金を増額するという特別補助の趣旨に沿って、経済的に修学困難な留学生に対する授業料の減免に補助の対象を限定しているのに22年6月に行った補助金説明会等において、その旨や、それに伴い私立大学等において整備する必要がある規程等の内容や経済的に修学困難な状況を判断するための具体的な項目等について、各学校法人に対する周知が十分でなかったこと
イ 各学校法人から留学生の経済的に修学困難な状況を判断するための選考基準が明記された規程等の整備状況や実際の減免対象者の選考状況等を把握するための資料を提出させておらず、これらの点を確認しないまま授業料減免特別補助を実施していたこと
貴事業団は、私立大学等に対して、今後も引き続き授業料減免特別補助を実施することなどにより国際化に向けた取組を支援していくこととしている。
ついては、貴事業団において、経常費補助金(授業料減免特別補助)の交付が特別補助の趣旨に沿って適切に実施されるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 各学校法人に対して、授業料減免特別補助の内容と設定された趣旨を改めて周知徹底して、経済的に修学困難な状況を判断するための具体的な項目を示すなどして、適切な選考基準が明記された規程等を整備させ、留学生の経済状況に基づいて減免対象者の選考を行わせること
イ 各学校法人に対して、授業料減免特別補助に係る交付申請の際に、授業料の減免に係る選考基準が明記された規程等の整備状況、減免対象者の選考状況等に係る資料を提出させてその内容を確認することとするなど、授業料減免特別補助の審査体制を整備すること