科目 | 有形固定資産 土地 |
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部局等 | 日本銀行本店 | ||
日本銀行が保有する土地の敷地面積及び帳簿価額 | 635,565.3m2 | 828億7914万余円 | (平成23年度末) |
上記のうち長期間更地となるなどしていた土地の敷地面積及び帳簿価額 | 7,145.2m2 | 224万余円 | (取得年度:昭和13年度〜33年度) |
上記の土地に係る固定資産税評価額 | 22億2668万円 | (平成23年度) |
日本銀行は、資産として敷地面積計635,565.3m2
、帳簿価額計828億7914万余円(平成24年3月31日現在。以下同じ。)の土地を保有しており、これらの土地は、その用途に応じて、本店、支店等の用に供する営業所用、従業員等を居住させるための家屋等(以下「行舎」という。)の用に供する行舎用等に区分されている。
日本銀行は、日本銀行法(平成9年法律第89号)第5条の規定により、その業務及び財産の公共性に鑑み、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならないとされている。また、不動産の売却等の処分については、同法第15条第2項第11号の規定により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の議決を経なければならないとされている。そして、不動産の取得、管理、処分等に係る事務は、「不動産事務規程、同取扱要項」(昭和35年管総第75号)において、文書局長の所管とされている。
なお、土地の処分により生じた売却益については、他の損益と合算されて各事業年度の損益計算が行われ、この結果剰余金が生じたときには、同法第53条第5項の規定により、剰余金の額から法定準備金として積み立てた金額と配当の金額との合計額を控除した残額を国庫に納付しなければならないとされている。
日本銀行は、11年1月以降、遊休化した不動産を処分するなど保有資産の見直しを実施してきたが、その後の従業員数の減少等を背景に、行舎について更なる効率化を図るため、20年度以降、必要戸数を勘案して集約するなど行舎の再配置を開始し、これにより遊休化することとなる行舎の敷地等の処分を進めることとした。そして、23年6月には、本店文書局において「行舎再配置の点検と今後の方針(中間報告)」を作成して政策委員会に報告した上で、これに基づいて行舎の再配置の点検を進めることとしている。
この方針によると、支店行舎用の資産については、第1次点検として早急に見直しを行い、不要と判断された資産の売却を27年3月末までに完了することとされている。また、本店行舎用の資産については、今後、本支店の人員構成が変化して本店行舎の需要が増加する可能性があることから、将来の本店従業員の人員体制を見通すために必要な事務処理体制の在り方に係る方針が固まった段階で、第2次点検として見直しを図ることとされている。
本院は、24年3月末現在で日本銀行が保有している前記の土地計635,565.3m2 を対象として、経済性、効率性、有効性等の観点から、保有資産の見直しが適切に実施されているか、保有資産が有効に活用されているかなどに着眼して、本店において、資産台帳等の関係書類により検査するとともに、本店及び7支店(注1) において、土地の利用状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
日本銀行が保有する本店行舎に係る土地の中には、従前は本店行舎の敷地として使用していたが、建物が老朽化したためこれを取り壊して、長期間にわたり敷地全てが更地となっている行舎用の土地3件が含まれており、表 のとおり、これら3件の土地(敷地面積計6,528.1m2 。以下「3件の行舎用地」という。)の帳簿価額は計218万余円、23年度の固定資産税評価額は計17億3633万余円となっている。(注2)
名称 | 敷地面積 | 取得年月 | 帳簿価額 | 平成23年度 固定資産税評価額 |
平成23年度 維持管理費用 |
行舎の最終 取壊し年月 |
下落合舎宅跡地 | 2,204.7m2 | 昭和29年4月 | 163万余円 | 6億8771万余円 | 781万余円 | 平成3年5月 |
世田谷新町舎宅跡地 | 2,247.9m2 | 昭和28年5月 | 48万余円 | 6億9698万余円 | 796万余円 | 昭和52年9月 |
保谷舎宅A跡地及びB跡地 | 2,075.4m2 | 昭和33年7月 | 6万余円 | 3億5162万余円 | 407万余円 | 昭和53年9月 |
計 | 6,528.1m2 | / | 218万余円 | 17億3633万余円 | 1985万余円 | / |
日本銀行は、3件の行舎用地を維持管理する費用として、毎年度、固定資産税、都市計画税、除草作業、樹木せん定及び巡回管理に要する費用(以下、これらの費用を「維持管理費用」という。)を支払っており、23年度の実績は計1985万余円となっている。
3件の行舎用地は、本店行舎用の資産であることから第2次点検の対象とされており、第2次点検の際に、売却等の処分の可能性を含めた必要性の検討を行うこととされていた。
しかし、日本銀行は、第2次点検を行う契機としている事務処理体制の在り方に係る方針について、その方針が固まる時期は未定であり、早くとも28年度以降になると見込まれるとしていた。
そして、〔1〕 3件の行舎用地は、更地となってから24年3月末までに短いものでも20年10か月が経過しているが、その間、具体的な利用計画は検討されていないこと、〔2〕 本店行舎は、23年度末の入居率が84.2%と需給がひっ迫しているとはいえないこと、〔3〕 3件の行舎用地は、前記のとおり維持管理費用が発生しており、今後もその発生が見込まれることなどに鑑みれば、3件の行舎用地の必要性の検討を第2次点検の実施時期まで先送りする合理的な理由はないと認められた。
したがって、長期間更地となっている3件の行舎用地については、第2次点検の対象とするのではなく速やかに必要性の検討を行い、その結果、保有する必要性が乏しいと判断された場合は処分の検討を行う必要があると認められた。
日本銀行は、本店の敷地に隣接した営業所用の土地(敷地面積617.1m2
、昭和13年4月取得)を保有しており、その帳簿価額は6万余円、平成23年度の固定資産税評価額は4億9035万余円となっている。
日本銀行は、本店の大規模な営繕工事等の際に必要となる資材置場、仮設事務所等の用地として、上記の土地(以下「資材置場用地」という。)を利用していて、毎年度、資材置場用地に係る固定資産税及び都市計画税を支払っており、23年度の実績は計541万余円となっている。そして、資材置場用地は、営業所用であることから、日本銀行が20年度以降行っている行舎再配置による見直しの対象には含まれていない。
しかし、資材置場用地は、直近の本店工事が終了した21年2月以降更地となっており、具体的な利用計画もない状況となっていた。
また、資材置場用地について、資材置場等として利用を開始した昭和41年10月から平成24年3月までの45年6か月の間における利用状況を検査したところ、資材置場用地を利用して実施された本店の営繕工事等は4件で、その工事期間は計16年11か月であり、上記の45年6か月に対する割合は37.1%と、資材置場等としての利用は低調となっていた。
したがって、利用が低調となっている資材置場用地については、資材置場等として利用することの要否を検討するなど利用方法の見直しを行い、その結果、保有する必要性が乏しいと判断された場合は処分の検討を行う必要があると認められた。
(1)及び(2)のとおり、長期間更地となっている3件の行舎用地について速やかに必要性の検討を行っていなかったり、利用が低調となっている資材置場用地について利用方法の見直しを行っていなかったりする事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、日本銀行において、保有する土地の中に、長期間更地 となっていたり、利用が低調となっていたりしているものがあるのに、これらの土地の状況 を踏まえて必要性の検討や利用方法の見直しを行うことの認識が十分でなかったことなどに よると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本銀行は、2(1) 及び(2) の土地について、次のような処置を講じた。
ア 長期間更地となっている件の行舎用地については、必要性の検討を行った結果、保有する必要性が乏しいと判断して、24年6月に政策委員会において処分の決定を行い、これらを処分することとした。
イ 利用が低調となっている資材置場用地については、資材置場等として利用することの要否を検討するなどの利用方法の見直しを行った結果、保有する必要性が乏しいと判断して、同月に政策委員会において処分の決定を行い、これを処分することとした。