科目 | 一般勘定 (項)事業外収入 | |
部局等 | 日本中央競馬会本部、栗東、美浦両トレーニング・センター | |
貸付けの概要 | きゅう舎従業員等に対し、栗東、美浦両トレーニング・センターの敷地内に設置している宿舎を貸し付けるもの | |
貸付けの相手方 | 調教師、騎手、社団法人日本調教師会 | |
日本中央競馬会が徴収している宿舎の貸付料 | 2億2745万余円 | (平成22、23両事業年度) |
国家公務員宿舎の例により駐車場の使用料を算定した場合に徴収できた使用料の額 | 9869万円 | (平成22、23両事業年度) |
(平成24年10月15日付け 日本中央競馬会理事長宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴会は、競馬法(昭和23年法律第158号)に規定する中央競馬の競走のために馬を調教する調教師及び同競走のために騎乗する騎手、並びに、調教師に雇用されて競走馬の調教又は飼養の補助をする調教助手又はきゅう務員(以下、これらを「きゅう舎従業員」という。)に対して、平成23事業年度末において、貴会が茨城県及び滋賀県に資産として保有する世帯用宿舎及び独身寮(以下、これらを「宿舎」という。)を表 のとおり貸し付けている。
宿舎の区分 | 宿舎戸数(戸) | 貸付けの実績 | ||
区分 | 貸付戸数(戸) | 月額貸付料(円) | ||
世帯用宿舎 | 2,004 | 調教師 | 32 | 7,600〜11,290 |
騎手 | 27 | 7,600〜11,290 | ||
きゅう舎従業員 | 1,344 | 3,560〜8,010 | ||
計 | 1,403 | |||
独身寮 | 571 | 騎手 | 55 | 680又は840 |
きゅう舎従業員 | 272 | 360〜810 | ||
計 | 327 |
上記の宿舎は、貴会が昭和44年に開設した栗東トレーニング・センター(滋賀県栗東市所在)及び53年に開設した美浦トレーニング・センター(茨城県稲敷郡美浦村所在。以下、これらを合わせて「両トレセン」という。)の敷地内に設置されており、駐車場が併設されている。
また、宿舎の貸付けは、日本中央競馬会調教師及び騎手宿舎貸付基準(昭和44年理事長達第10号)又は日本中央競馬会厩舎従業員宿舎貸付基準(昭和38年理事長達第1号)以下、これらを合わせて「宿舎貸付基準」という。)に基づいて行われている。このうち、調教師及び騎手に対する宿舎の貸付けは、貴会が直接行っており、一方、きゅう舎従業員に対する貸付けは、貴会から宿舎の貸付けを受けた社団法人日本調教師会(注)
(以下「調教師会」という。)が行っている。
宿舎の貸付料は、宿舎貸付基準に定められた貸付料算定基準に基づき、宿舎の経過年数及び構造に応じてそれぞれ定められている評価点数を合計した点数に、所定の金額を乗じて得た額を1単位(3.3m2
)当たりの単価とし、これに1戸当たりの有効使用単位数(実際の居住面積を3.3m2
で除したもの)を乗じるなどして算定した額とされている。
貴会は、調教師、騎手及び調教師会から、貸付料として平成22事業年度1億1508万余円、23事業年度1億1236万余円、計2億2745万余円を徴収しており、この徴収額は、貴会の財務諸表上、事業外収益として計上されている。なお、調教師会がきゅう舎従業員から徴収する貸付料は、貴会が調教師会から徴収する貸付料と同額となっている。
近年、経済状況の低迷等のために、貴会の勝馬投票券収入は減少傾向にある。このため貴会は、経費の節減はもとより、事業外収益の確保及び増収についても留意していくことが求められる。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、宿舎の貸付料は適切に算定されているか、宿舎貸付基準に基づく貸付料は宿舎等の状況を適切に反映したものとなっているかなどに着眼して、22、23両事業年度に貸し付けた宿舎を対象に、貴会本部及び両トレセンにおいて、宿舎等の状況を現地で確認するとともに、宿舎貸付料算定書、宿舎貸付承認申請書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、宿舎の貸付料が宿舎等の状況を適切に反映していないと認められる事態が見受けられた。
両トレセンの宿舎に併設されている駐車場については、白線で自動車1台分の広さに区画されており、各区画が宿舎の入居者に割り当てられ専用で使用されている。
しかし、宿舎貸付基準の貸付料算定基準には駐車場の使用料に関する規定がなく、また、前記有効使用単位数の算定においても駐車場の面積は含まれていないことなどから、貴会は、宿舎の入居者が専用で使用している駐車場の使用料を徴収していないと認められる。
そして、宿舎に併設されている駐車場について、国が駐車場の使用料の徴収をしている国家公務員宿舎の例により、国家公務員宿舎法(昭和 24年法律第117号)、同法施行令(昭和33年政令第341号)等を参考にして使用料を算定し徴収したとすれば、貴会は22事業年度5010万余円、23事業年度4859万余円、計9869万余円の増収を図ることができたと認められる。
上記のとおり、宿舎の入居者が宿舎に併設された駐車場を専用で使用しているのに、貴会が駐車場の使用料を徴収していない事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴会において、きゅう舎従業員等の両トレセンへの移転から長期間を経過しているのに、宿舎の入居者が専用で使用している駐車場について宿舎貸付基準の規定を整備して使用料を徴収する必要性についての検討を行っていなかったことなどによると認められる。
貴会は、前記のとおり、勝馬投票券収入が減少傾向にある中で、施設貸付料等の事業外収益の確保及び増収についても留意していく必要がある。
ついては、貴会において、宿舎貸付基準の規定を整備することなどにより、駐車場の使用料を徴収することとし、もって事業外収益の増収を図るよう改善の処置を要求する。