会社名 | (1) 東日本高速道路株式会社 | |||
(2) 中日本高速道路株式会社 | ||||
(3) 西日本高速道路株式会社 | ||||
科目 | (1)〜(3) 管理費用 | |||
部局等 | (1)〜(3) 本社 | |||
契約名 | (1) 有料道路通行料金納付者識別カード購入単価契約(平成20年度・平成21年度)等2契約 | |||
(2) 平成20年度有料道路通行料金納付者識別カード購入単価契約等4契約 | ||||
(3) 平成20年度有料道路通行料金納付者識別カード購入単価契約等4契約 | ||||
契約の概要 | 高速道路の大口・多頻度割引制度を利用する契約者に貸与するETCコーポレートカードを調達するもの | |||
契約の相手方 | (1)〜(3) | ハイウェイ・トール・システム株式会社 | ||
契約 | (1) | 平成20年4月〜22年3月 随意契約(単価契約) | ||
平成22年4月〜24年3月 随意契約(単価契約) | ||||
(2)、(3) | 平成20年4月〜21年3月 随意契約(単価契約) | |||
平成21年4月〜22年3月 随意契約(単価契約) | ||||
平成22年4月〜23年3月 随意契約(単価契約) | ||||
平成23年4月〜24年3月 随意契約(単価契約) | ||||
ETCコーポレートカードの調達枚数及び調達額 | (1)
347,301枚
|
2億9395万余円 | (平成20年度〜23年度) | |
(2)
575,586枚
|
4億8216万余円 | (平成20年度〜23年度) | ||
(3)
601,784枚
|
5億0224万余円 | (平成20年度〜23年度) | ||
計
1,524,671枚
|
12億7836万余円 | |||
上記のうち更新に係るETCコーポレートカードの調達枚数及び調達額 | (1)
194,633枚
|
1億6476万余円 | (平成20年度〜23年度) | |
(2)
339,532枚
|
2億8422万余円 | (平成20年度〜23年度) | ||
(3)
357,855枚
|
2億9815万余円 | (平成20年度〜23年度) | ||
計
892,020枚
|
7億4714万余円 | |||
上記について交換期限を5年に延長した場合の1サイクル(5年間)当たりの節減額(試算額) | (1) | 4119万円 | ||
(2) | 7105万円 | |||
(3) | 7453万円 | |||
計 | 1億8677万円 |
本院は、ETCコーポレートカード(以下「コーポレートカード」という。)の調達について、平成24年10月3日に、東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)のそれぞれの代表取締役社長に対して、「ETCコーポレートカードの調達について」として、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
これらの意見表示の内容は、3会社のそれぞれの検査結果に応じたものとなっているが、これらを総括的に示すと以下のとおりである
3会社は、高速道路の大口・多頻度利用者を対象にETC(有料道路自動料金収受システム)の利用を前提とした割引制度(以下「大口・多頻度割引制度」という。)を実施している。大口・多頻度割引制度を利用しようとする者は、コーポレートカードの利用約款に定める要件を満たす個人、法人及び事業協同組合(注1)
を単位として3会社のいずれかに対してコーポレートカードの利用の申込みを行うこととなっており、利用の承認を受けた者(以下「契約者」という。)に対しては、申込時に登録した車両1台ごとに1枚のコーポレートカードが当該各会社から貸与されることとなっている。
そして、契約者は、銀行等が連帯保証人となったことを証明する保証書を当該各会社に提出するなどして、当該各会社が指定する期間(原則として4月から翌々年の3月末までの2年間)における通行料金等の支払を保証(以下「支払保証」という。)することとなっている。
3会社は、ハイウェイ・トール・システム株式会社(以下「HTS」という。)と随意契約(単価契約)によりコーポレートカードの購入契約をそれぞれ締結し、3会社の各支社において毎年度必要となる枚数をHTSに発注する方法でコーポレートカードを調達している。
20年度から23年度までの間における3会社のコーポレートカードの調達に係る契約件数は10件で、その調達枚数及び調達額は、表1
のとおり、計1,524,671枚、計12億7836万余円となっている。
表1 コーポレートカードの調達枚数及び調達額
(単位:枚、千円)
会社 | 平成20年度 | 21年度 | 22年度 | 23年度 | 計 | |||||
枚数 | 金額 | 枚数 | 金額 | 枚数 | 金額 | 枚数 | 金額 | 枚数 | 金額 | |
東会社 | 97,807 | 82,157 | 75,543 | 63,852 | 76,392 | 64,971 | 97,559 | 82,973 | 347,301 | 293,955 |
中会社 | 150,504 | 120,892 | 126,204 | 106,673 | 182,935 | 153,665 | 115,943 | 100,932 | 575,586 | 482,164 |
西会社 | 207,087 | 165,255 | 121,182 | 102,429 | 144,885 | 122,464 | 128,630 | 112,101 | 601,784 | 502,249 |
計 | 455,398 | 368,305 | 322,929 | 272,955 | 404,212 | 341,100 | 342,132 | 296,007 | 1,524,671 | 1,278,369 |
コーポレートカードは、プラスチック製のカードの表面にICの外部端子を付けた「外部端子付きICカード」である。そして、その信頼性に係る仕様については、前記の購入契約の仕様書において、MTTF(注2)
が少なくとも10の5乗に0.44を乗じた時間であること、接続装置への抜挿が最低でも5,000回は可能であることなどとされている。
一方、信販会社等が発行する一般のETCクレジットカード(以下「一般カード」という。)の信頼性に係る仕様については、「ETC—ICカード仕様書(平成11年7月日本道路公団等4公団制定)等において、MTTFが少なくとも10の5乗時間であること、接続装置への抜挿が最低でも10,000回(5年間)は可能であることなどとされている。
3会社は、実務上、コーポレートカードの交換期限を4年と設定しており、交換に当たっては、契約者を業種等の別に4グループに区分し、毎年度1グループずつ、4年間を1サイクルとして新たな交換期限を設定したコーポレートカードを契約者に貸与することにしている。
このようにコーポレートカードの交換期限を4年と設定している理由について、3会社は、〔1〕 長年使用することで生ずる変形や摩耗による料金所における課金エラーの防止、〔2〕 コーポレートカードの交換時期に合わせて次期の支払保証の確認事務を行うことによる支払保証の確実性の担保及び事務の効率化、〔3〕 交換期限を4年と設定していた通行料金別納制度(注3)
からの円滑な移行を図るためなどとしている。
近年、ETCの利用者を対象として各種の割引制度が導入されているが、大口・多頻度割引制度は、他の割引制度に比べて割引率が高いことなどから多数利用されており、コーポレートカードの調達額は毎年度多額に上っている。
そこで、本院は、経済性、効率性等の観点から、コーポレートカードの交換期限は適切に設定されているかなどに着眼して、3会社が20年度から23年度までの間にHTSと締結した前記の10契約を対象として、3会社の本社及び12支社(注4)
において、コーポレートカードの更新、破損等の状況、交換期限及び仕様の設定の経緯並びにコーポレートカードの交換時期と支払保証の確認時期との関係について、契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、HTSにコーポレートカードの原反(注5)
を納入している製造業者(以下「カードベンダー」という。)から、コーポレートカードの製造状況について聞き取り調査を行った。
(注4) | 12支社 北海道、東北、関東、新潟各支社(東会社)、東京、名古屋、八王子、金沢各支社(中会社)、関西、中国、四国、九州各支社(西会社)
|
(注5) | 原反 契約者の情報等を記録するなどの加工をする前のカード |
ア コーポレートカードの製造状況
コーポレートカード及び一般カードの発行枚数の累計は、23年6月時点で、コーポレートカードが約606万枚、一般カードが約7812万枚となっている。また、22年度における発行枚数は、コーポレートカードが約40万枚、一般カードが約1128万枚となっており、一般カードの発行枚数がコーポレートカードの発行枚数を大幅に上回っている状況である。そして、コーポレートカードと一般カードの両方を製造しているカードベンダーによると、コーポレートカードと一般カードの原反は、いずれも同じ仕様の下に同じ製造ラインで製造しているとのことであった。このことなどから、コーポレートカードの信頼性は、一般カードとほとんど差異がないと認められる。
イ コーポレートカードの更新、破損等の状況
コーポレートカードの発行区分には、新たな契約者に対する新規発行や追加発行のほかに、交換期限の到来による更新、破損による再発行等がある。このうちコーポレートカードの更新は、表2 のとおり、3会社全体で計892,020枚(20年度から23年度までの合計。調達枚数に占める割合58.5%)と調達枚数の過半を占めていた。また、3会社全体の調達枚数に占めるコーポレートカードの破損による再発行の割合(以下「破損率」という。)は、年度により1.3%から1.9%までとなっていた。
表2 コーポレートカードの更新又は破損による再発行の状況
(単位:枚)
会社 | 平成20年度 | 21年度 | 22年度 | 23年度 | 計 | ||||||||||
調達枚数 | うち更新によるもの | うち破損によるもの | 調達枚数 | うち更新によるもの | うち破損によるもの | 調達枚数 | うち更新によるもの | うち破損によるもの | 調達枚数 | うち更新によるもの | うち破損によるもの | 調達枚数 | うち更新によるもの | うち破損によるもの | |
東会社 | 97,807 | 53,226 (54.4%) |
1,080 (1.1%) |
75,543 | 39,970 (52.9%) |
808 (1.1%) |
76,392 | 41,553 (54.4%) |
1,104 (1.4%) |
97,559 | 59,884 (61.4%) |
1,275 (1.3%) |
347,301 | 194,633 (56.0%) |
4,267 (1.2%) |
中会社 | 150,504 | 81,301 (54.0%) |
2,697 (1.8%) |
126,204 | 70,616 (56.0%) |
2,480 (2.0%) |
182,935 | 4135,500 (74.1%) |
2,213 (1.2%) |
115,943 | 52,115 (44.9%) |
2,358 (2.0%) |
575,586 | 339,532 (59.0%) |
9,748 (1.7%) |
西会社 | 207,087 | 132,648 (64.1%) |
2,299 (1.1%) |
121,182 | 57,335 (47.3%) |
2,107 (1.7%) |
144,885 | 93,726 (64.7%) |
2,219 (1.5%) |
128,630 | 74,146 (57.6%) |
2,762 (2.1%) |
601,784 | 357,855 (59.5%) |
9,387 (1.6%) |
計 | 455,398 | 267,175 (58.7%) |
6,076 (1.3%) |
322,929 | 167,921 (52.0%) |
5,395 (1.7%) |
404,212 | 270,779 (67.0%) |
5,536 (1.4%) |
342,132 | 186,145 (54.4%) |
6,395 (1.9%) |
1,524,671 | 892,020 (58.5%) |
23,402 (1.5%) |
そして、一般的に、コーポレートカードの使用期間が長くなるほど抜挿回数が多くなることから、23年度におけるコーポレートカードの破損による再発行について、コーポレートカードを発行してから破損するまでの経過年数を推計(注6) して、その分布状況をみたところ、表3 のとおり、2年未満で破損していたものが過半を占めており、使用期間の長さにより破損率が必ずしも増加しているわけではないと認められる。
表3 平成23年度に破損により再発行したコーポレートカードについての発行してから破損するまでの経過年数
(単位:枚)
会社 | 平成23年度調達枚数 | 23年度に破損により再発行したコーポレートカードの枚数 | ||||
発行してから破損するまでの経過年数 | ||||||
1年未満 | 1年以上 | 2年以上 | 3年以上 | |||
2年未満 | 3年未満 | 4年未満 | ||||
東会社 | 97,559 | 1,275 | 288 | 362 | 332 | 293 |
中会社 | 115,943 | 2,358 | 1,016 | 621 | 449 | 272 |
西会社 | 128,630 | 2,762 | 962 | 403 | 948 | 449 |
計 | 342,132 | 6,395 | 2,266 | 1,386 | 1,729 | 1,014 |
3,652 | (57.1%) | 2,743 | (42.9%) |
また、コーポレートカードの破損の原因について、3会社の支社等で聞き取り調査を行ったところ、全てを把握しているわけではないとしているものの、主にICチップの故障や不適切な取扱いによるものであるとのことであった。
前記のとおり、3会社は、コーポレートカードの交換期限を4年と設定するとともに、コーポレートカードの信頼性に係る仕様を一般カードより緩和している。これらの理由について3会社に確認したところ、交換期限については、16年度以前の通行料金別納制度の設定(4年)をそのまま引き継いでいるとのことであり、また、信頼性に係る仕様については、交換期限を4年とすることとして一般カードの仕様より緩和していると思われるが、詳細は不明であるとのことであった。
このように、コーポレートカードの交換期限については、信頼性に係る仕様に基づいて設定されたものとはなっていなかった。
なお、一般カードの交換期限については、その多くは5年に設定されているが、中には6年に設定されているもの(東会社が提携する一般カード)もある。
前記のとおり、3会社は、コーポレートカードの交換時期に合わせて次期の支払保証の確認事務を行っている。しかし、支払保証の期間中においても、直近1か月の通行料金が支払保証の額の50%を超える場合等には契約者に対して追加の保証を求める必要があることから、毎月、契約者に係る通行料金等を確認している。このように、常時、支払保証の確認事務は行われており、コーポレートカードの交換時期と支払保証の期間満了の時期を合わせなければならない理由は特段認められず、コーポレートカードの交換時期に合わせて確認事務を行わなくとも支払保証の確実性の担保には支障がないと認められる。
(1)から(3)までのとおり、コーポレートカードの交換期限や信頼性に係る仕様が設定された根拠は明確ではないが、コーポレートカードの信頼性は、5年以上使用される一般カードとほとんど差異がないと考えられること、コーポレートカードの交換時期に合わせて支払保証の確認事務を行わなくとも支払保証の確実性の担保には支障がないことなどを踏まえると、コーポレートカードの交換期限は、一般カードの交換期限と同様に少なくとも5年に延長することができると認められる。その場合、20年間で現行の5サイクルは4サイクルとなり、1サイクル(4グループ)分の調達が不要となる。
そこで、更新による調達枚数がグループごとに異なっていることを考慮して、20年度から23年度までの4グループ分の更新に係る調達額計7億4714万余円(東会社1億6476万余円、中会社2億8422万余円、西会社2億9815万余円)を用いて節減額を試算すると、4グループを前提として1サイクルを4年間から5年間に延長した場合、各サイクルで1年間分の調達が不要となることから、平均で1サイクル(5年間)当たり、計1億8677万円(東会社4119万円、中会社7105万円、西会社7453万円)となる。
上記のとおり、コーポレートカードの交換期限を4年と設定している事態は、コーポレートカードの効率的な使用及び経済的な調達の面から適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、3会社において、旧日本道路公団時代の通行料金別納制度を引き継いだままとしているコーポレートカードの交換期限の設定についての検討が十分でないこと、コーポレートカードの効率的な使用により調達を経済的に行うことに対する認識が十分でないことなどによると認められる。
3会社は、高速道路事業を経済的、効率的に実施するために管理費用の削減が求められている。一方、大口・多頻度割引制度は通行料金別納制度に代わるものとして導入され、ETCの利用率の高まりを受けて今後も多数の利用が見込まれており、3会社は、今後も毎年度コーポレートカードの調達を行っていくことになる。
ついては、3会社において、コーポレートカードの調達に係る費用の節減を図るため、コーポレートカードの交換期限を延長して効率的に使用する方法について検討を行うなどの措置を講ずるよう意見を表示する。