会社名 | (1) 東日本高速道路株式会社 (2) 中日本高速道路株式会社 (3) 西日本高速道路株式会社 |
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科目 | (1)〜(3) 道路資産完成原価、管理費用 | ||
部局等 | (1) 本社、4支社 (2) 本社、4支社 (3) 本社、4支社 |
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契約の概要 | 経年劣化した舗装を打ち換えるなどの工事及び舗装の損傷箇所を応急的かつ部分的に補修するなどの作業を行わせるもの | ||
試験舗装を実施しないことができると認められた舗装種類を使用した舗装補修工事の 試験舗装に係る直接工事費の積算額 | (1) | 1億0794万余円 | (平成19年度〜23年度) |
(2) | 7356万余円 | (平成20年度〜23年度) | |
(3) | 4717万余円 | (平成20年度〜23年度) | |
計 | 2億2867万余円 | ||
上記のうち低減できた試験舗装に係る直接工事費の積算額 | (1) | 6490万円 | |
(2) | 4920万円 | ||
(3) | 2780万円 | ||
計 | 1億4190万円 | ||
維持修繕作業の試験舗装に係る費用 | (1) | 2974万余円 | (平成21年度〜23年度) |
(2) | 1431万余円 | (平成21年度〜23年度) | |
(3) | 131万余円 | (平成21年度〜23年度) | |
計 | 4536万余円 | ||
上記のうち節減できた試験舗装に係る費用 | (1) | 2974万円 | |
(2) | 1431万円 | ||
(3) | 131万円 | ||
計 | 4536万円 |
東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)は、3会社が管理している高速道路の維持管理業務の一環として、毎年度多数の舗装補修工事(以下「補修工事」という。)及び維持修繕作業(以下「維持作業」という。)を実施している。
このうち、補修工事は、経年劣化した舗装の打換えなどを実施するもので、舗装種類(注1)
は高機能舗装I型、高機能舗装II型等が使用されている。そして、3会社の各支社は、補修工事を舗装工事会社に請け負わせて実施しており、平成22、23両年度に工事が完了した補修工事(契約の年度は19年度から23年度まで)は、東会社計47件、契約金額計272億0428万余円、中会社計48件、同計207億5297万余円及び西会社計63件、同計207億9347万余円、合計158件、同合計687億5072万余円となっている。
また、維持作業は、舗装の損傷箇所の応急的かつ部分的な補修等を実施するもので、舗装種類は密粒度舗装等が使用されている。そして、3会社の各支社は、維持作業を維持修繕会社に単価契約により請け負わせるなどして実施しており、22、23両年度に作業を完了した維持作業(契約等の年度は21年度から23年度まで)は、東会社計79件、契約金額等計756億8226万余円、中会社計49件、同計544億8557万余円及び西会社計83件、同計649億8941万余円、合計211件(注2)
、同合計1951億5724万余円となっている。
(注1) | 舗装種類 アスファルトの種類、骨材の粒度等により分類されるもので、高機能舗装I型、高機能舗装II型、密粒度舗装等がある。
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(注2) | 合計211件 1管理事務所等が1年間実施する維持作業を1件として集計した。
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3会社は、補修工事及び維持作業の実施に当たって、原則として3会社が制定した「舗装施工管理要領」、「土木工事共通仕様書」等(以下「要領等」という。)において、高速道路本線等の施工(以下「本施工」という。)の前に、舗装種類にかかわらず試験舗装を実施することにしていた。
また、3会社は、この試験舗装について、本施工と同じ施工方法で施工面積を限定して実施することとし、その目的について、〔1〕 補修工事においては、舗装の所定の締め固め度及び仕上がり高さを得るため、また、材料の分離を最小限にとどめ良好な舗装を仕上げるために必要な敷き均し方法、締め固め方法等を検討するため、〔2〕 維持作業においては、あらかじめ請負人の立案した計画書に基づき、本施工に使用する施工機械と人員構成で施工し、施工方法及び品質管理方法を現場作業員に習熟させ、徹底させるためとしていた。
そして、3会社は、要領等において、試験舗装について、補修工事では本施工開始前及び材料又は配合を変更した場合に、維持作業では最初の工事開始前に1年に1回及び材料は配合を変更した場合に、それぞれ実施することとし、ほとんどの試験舗装を管理事務所の駐車場等で実施していた。
3会社は、旧日本道路公団が昭和36年に「名神高速道路土木工事共通仕様書」を制定して以降、要領等において、補修工事及び維持作業を実施するに当たり、全ての舗装種類について試験舗装を実施することにしていた。
そこで、本院は、経済性等の観点から、試験舗装の対象とする舗装種類の範囲は適切かなどに着眼して、前記の補修工事158件及び維持作業211件を対象として、3会社本社、各支社及び管内各管理事務所等において、契約書、設計書、特記仕様書等の書類を確認するとともに、現地を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
3会社が実施した補修工事158件のうち、試験舗装に係る費用が計上されていた138件(東会社47件、中会社43件及び西会社48件)の補修工事の舗装種類についてみると、一部は施工難易度が高い高機能舗装II型等であったが、大半は標準的に使用されていて施工実績が多く、敷き均し方法、締め固め方法等の検討に必要なデータが既に十分得られている高機能舗装I型等であった。
また、3会社は、補修工事に係る契約の入札前に、舗装工事会社や現場代理人等について、当該補修工事の施工規模に応じた施工実績があることを求めるなどして、十分な施工能力があることを確認していた。
さらに、他の高速道路会社の中には、3会社と同様に高機能舗装等の舗装種類を用いて補修工事等を実施しているのに、従前から試験舗装を全く実施していない高速道路会社が見受けられた。
以上のことから、施工難易度が高い舗装種類以外で標準的に使用されていて施工実績が多い舗装種類の場合は、試験舗装を実施しなくても、所定の締め固め度及び仕上がり高さを得て、良好に本施工を実施することができると認められた。
現に、補修工事158件の中には、コスト縮減等を目的として、支社等の判断により、要領等より優先される特記仕様書等において、試験舗装を実施しないこととしていたものが領等より優先される特記仕様書等において、試験舗装を実施しないこととしていたものが見受けられたが、これらに再施工等が必要な事態は発生していなかった。
3会社が実施した維持作業211件の舗装種類についてみると、維持作業が、応急的かつ部分的な人力によるものであることなどから、材料手配及び人力施工が容易で施工実績が多い密粒度舗装等であった。
また、維持作業は、維持修繕会社が毎年度同様の施工機械及び人員構成で実施しているものがほとんどであり、維持修繕会社や現場代理人、現場作業員等は、豊富な施工実績があり十分な施工能力を有している。
以上のことから、試験舗装を実施しなくても、舗装の品質を確保した上で良好に本施工を実施することができると認められた。
現に、維持作業211件の中には、支社等の判断により、要領等より優先される特記仕様書等において、試験舗装を実施しないこととしていたものが多数見受けられたが、これらに再施工等が必要な事態は発生していなかった。
このように、施工難易度が高い舗装種類以外で標準的に使用されていて施工実績が多い舗装種類の場合の補修工事及び維持作業においては、試験舗装を実施しないで本施工を実施することができたのにこれを実施している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
補修工事138件のうち、試験舗装を実施しないで本施工を実施することができたと認められた舗装種類を使用した補修工事は100件であり、これらの補修工事の試験舗装に係る直接工事費の積算額計2億2867万余円について、施工難易度が高い舗装種類以外で標準的に使用されていて施工実績が多い舗装種類の試験舗装を実施しないこととして修正計算すると計8663万余円となり、上記の積算額を計約1億4190万円低減できたと認められた(3会社の内訳は表1 のとおり)。
会社 | 作業件数 | 試験舗装に係る直接工事費の積算額 | 左の修正額 | 低減できた直接工事費の積算額 |
東会社 | 42 | 1億0794万余円 | 4295万余円 | 約6490万円 |
中会社 | 34 | 7356万余円 | 2433万余円 | 約4920万円 |
西会社 | 24 | 4717万余円 | 1935万余円 | 約2780万円 |
計 | 100 | 2億2867万余円 | 8663万余円 | 約1億4190万円 |
また、維持作業211件のうち、試験舗装に係る費用が計上されていた39件において、試験舗装を実施しないこととすると、これらの維持作業の試験舗装に係る費用、計4536万余円を節減できたと認められた(3会社の内訳は表2 のとおり)。
会社 | 作業件数 | 試験舗装に係る費用 |
東会社 | 18 | 2974万余円 |
中会社 | 19 | 1431万余円 |
西会社 | 2 | 131万余円 |
計 | 39 | 4536万余円 |
このような事態が生じていたのは、3会社において、補修工事及び維持作業の実施に当たり、試験舗装を実施しないで本施工を実施できる場合があるのに、試験舗装を実施しないことについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、平成24年8月から9月までの間に舗装施工管理要領を改訂し、補修工事において施工難易度が高い舗装種類以外で標準的に使用されていて施工実績が多い舗装種類については試験舗装を原則として実施しないこと、維持作業において試験舗装を廃止することとして、3会社とも同年9月からこれを適用することとする処置を講じた。