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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第10 中日本高速道路株式会社)|
  • 不当事項|
  • 工事

新東名高速道路建設工事の実施に当たり、実施していない工事の費用を支払うなどしていたもの


(320) 新東名高速道路建設工事の実施に当たり、実施していない工事の費用を支払うなどしていたもの

科目 仕掛道路資産
部局等 中日本高速道路株式会社名古屋支社豊川工事事務所
工事名 第二東名高速道路 萩地区附帯工工事
工事の概要 新東名高速道路建設事業の一環として、本線工事で使用する工事用道路等を施工するもの
工事費 664,230,000円
請負人 中日建設株式会社
契約 平成19年7月 一般競争契約
しゅん功検査 平成21年8月
支払 平成19年8月〜21年9月 6回

不適正な事務処理により支払われた工事費

 47,568,388円(平成21年度)

1 工事の概要

 この工事は、中日本高速道路株式会社(以下「会社」という。)名古屋支社豊川工事事務所(以下「事務所」という。)が、新東名高速道路(以下「新東名」という。)建設事業の一環として、愛知県豊川市(平成20年1月14日以前は宝飯郡音羽町)萩地区において、19年7月から21年7月までの間に、工事用道路2路線(延長計1,832m)、工事用道路等のう回路3か所(北側、中央、南側)及び建設資機材等の保管場所(9,530m2 。以下「ヤード」という。)の築造等を工事費664,230,000円で実施したものである。
 このうち、中央う回路を築造するために必要な土砂掘削、軟岩掘削及び立木伐採を行う工事並びにヤードを築造するために必要な土砂掘削及び立木伐採を行う工事(以下、これらの工事を「ヤード等築造工事」という。)の施工について、事務所は、当初契約では実施することとしていなかったが、20年12月に請負人に実施を指示し、21年7月に他の項目と合わせて設計変更を行って本件工事に追加して、変更契約を締結していた。

2 検査の結果

 新東名の建設をめぐっては、会社の社員が用地買収等の契約相手方である音羽開発株式会社(以下「音羽開発」という。)から多額の資金供与等を受け、その所得を申告しなかった脱税事件等が発生した。同社員は23年10月から12月までに逮捕されて起訴されており、会社は詳細について調査を実施していた。
 本院は、上記の状況を踏まえて、合規性等の観点から、音羽開発が下請として加わっていた本件工事について、事務処理が適正に行われていたかなどに着眼して、会社の本社、名古屋支社及び事務所において、契約書、設計書、図面等の書類を検査するとともに、現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
 検査したところ、ヤード等築造工事は、音羽開発が事務所と協議等をすることなく20年1月頃に自社の敷地内において自ら施工を開始し、事務所が施工を指示する以前の同年11月頃に完成させていたものであり、請負人が施工に全く関与していないばかりか、次のような不適正な事態が見受けられた。
 すなわち、事務所は、音羽開発から、ヤード等築造工事は事務所のために行ったものであるとしてその費用の支払を要求されて、ヤードを建設資機材等の保管場所として使用することとし、本件工事の請負人に対して音羽開発との間で架空の内容の下請契約を締結するよう依頼し、ヤード等築造工事を本件工事に追加して、この費用を請負人を通して音羽開発へ支払っていた。そして、事務所は、ヤード等築造工事の費用を算定する際に、音羽開発から支払を要求された額に合わせるなどするために、図面を改ざんして掘削の数量を増加させていた。
 また、事務所は、音羽開発との間でヤードの使用とその費用負担に関する協定を締結するなどしていなかったため、24年7月の会計実地検査時点においてもヤードの使用が困難な状況となっていた。
 上記の事態は、事務所において、請負人に架空の内容の下請契約を締結させ、不適正な費用の算定を行うなどして変更契約を締結して、音羽開発が事務所と協議等をすることなく実施した工事に係る費用を請負人を通じて音羽開発に支払うなどしていたものであり、著しく適正を欠いていて、ヤード等築造工事に係る費用47,568,388円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事務所において、工事に係る適正な事務処理の実施に対する認識が著しく欠けていたこと、名古屋支社及び事務所において、情報共有が適切に行われていなかったことなどによると認められる。