科目 | 業務経費 | |
部局等 | 日本年金機構本部 | |
郵便料金計器設置の概要 | 郵便物の発送業務等の効率化を図るため、切手を貼付する代わりに郵便物に貼付する郵便料金や差出年月日等を表示した印影を印刷する機器を各年金事務所等に設置するもの | |
購入額 | 1億2889万余円 | (平成22年度) |
使用実績がなかった計器の台数 | 64台 | |
上記の計器に係る購入費相当額 | 2419万円 | (平成22年度) |
(平成24年10月26日付け 日本年金機構理事長宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴機構のブロック本部、事務センター及び年金事務所(以下「年金事務所等」という。)は、被保険者等への各種連絡文書等を郵便物として発送している。年金事務所等は、これらの郵便物を原則として料金後納郵便として一括して発送しており、発送する郵便物が大量になるなどの場合には料金割引の適用を受けることにしている。発送に当たっては、郵便事業株式会社(平成24年10月1日以降は日本郵便株式会社。以下「郵便会社」という。)の担当者がほぼ毎日定時に年金事務所等に赴いて引受けを行っており、年金事務所等は郵便物の種類、通数等を記録した後納郵便物差出票を作成して郵便物とともに提出し、これに基づき貴機構本部に料金請求が行われている。また、年金事務所等は、被保険者等から発送される各種届書等を郵便物として受領している。
そして、年金事務所等では、従来、上記郵便物の発送及び受領に際して、郵便会社による引受時間以降に郵便物の発送が必要となったり、年金事務所等に送られてきた郵便物に料金不足が生じていたりした場合には、あらかじめ購入するなどしておいた郵便切手(以下「切手」という。)を使用したり、職員が立替払を行ったりして対応していた。また、金融機関等に対して資料の提出を依頼する封書に同封する返信用封筒にも切手を使用していた。
貴機構本部は、郵便物の発送業務等の効率化を目的として、22年7月に郵便料金計器(以下「計器」という。)341台を、一般競争契約により契約額128,898,000円(1台当たり価格378,000円)で購入して、年金事務所等計330か所に設置し、同年10月から使用を開始している。
計器は、郵便物の重量を計測して郵便料金を計算し、切手を貼付する代わりに郵便物に貼付する郵便料金や差出年月日等を表示した印影を印刷する機器である。そして、計器を使用して発送した郵便物の郵便料金については、年金事務所等が毎月の使用実績を郵便料金計器計示額報告書によって郵便会社の事業所に報告し、郵便会社はそれに基づいて貴機構本部に料金請求を行うことになっている。
前記のとおり、年金事務所等は、郵便会社による引受け以外の郵便物の発送及び受領に際して、切手を使用したり、職員が立替払を行ったりして対応していた。しかし、金券である切手を使用することは、使用や補充の都度管理簿に記帳して金庫に保管する必要があるなど、管理面で事務が煩雑になること、また、職員による立替払は、少額でも通常1件ごとに立替払の精算手続等を行う必要があり、事務的な負担を伴うことが問題となっていた。そこで、貴機構本部は、計器を導入すれば基本的に切手の使用や職員による立替払が不要となり、切手の保有を最小限にとどめることができるとともに郵便物の発送業務等の効率化を図ることが可能になるとして、全ての年金事務所等に計器を原則として1台ずつ設置することにした。
また、貴機構本部は、「日本年金機構会計規程」(平成22年1月1日規程第50号)において、各年金事務所長等の資産管理責任者は、所管する固定資産等の使用状況等を常に把握し、適正に管理しなければならないと定めており、計器もこの取扱いの対象としている。
本院は、合規性、有効性等の観点から、購入した計器が適切に使用されているかなどに着眼して、330年金事務所等に設置された341台の計器について、188年金事務所等において計器使用管理簿等の関係書類や設置してある計器を確認するとともに、貴機構本部において、341台の計器の使用状況等に関する調書の提出を受け、その内容を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
前記のとおり、年金事務所等は、郵便物の発送に際しては原則として料金後納郵便として一括して発送することとしており、引受時間以降に発送したり料金不足が生じていたりした場合には、切手を使用するなどして対応していた。そして、郵便物の発送業務等を効率化するための計器の設置に際して、貴機構本部は、22年10月に「郵便料金計器の運用指針」の指示・依頼文書を発して、計器の具体的な取扱いとして、郵便物の緊急の発送が必要なときや料金不足郵便が到達した際に従来の切手等の代替として限定的に使用することとしていた。
そこで、330年金事務所等における341台の計器の使用状況についてみると、表
のとおり、22年10月から24年3月までの18か月間(78週間)において、郵便物の発送及び受領に際して計器が使用された郵便物の数(以下「使用通数」という。)は、計約9万8000通(1週間当たりの平均使用通数3.6通/台)であったが、60年金事務所等の64台(購入費相当額2419万余円)については全く使用されていなかった。また、同期間において計器が使用されていた残りの272年金事務所等の277台のうち、79年金事務所等の80台については1週間当たりの使用通数が1通/台未満、64年金事務所等の64台については1週間当たりの使用通数が1通/台以上2通/台未満となっているなど、全般的に使用状況が極めて低調であった。
各年金事務所等における1週間当たりの平均使用通数 | 計器設置台数 (計器が設置された年金事務所等の数) |
使用通数の 合計 通
|
1週間当たりの平均使用通数 通/台
|
0通 | 64 (60) |
0 | 0 |
1通未満 | 79 (80) |
2,635 | 0.4 |
1通以上2通未満 | 64 (64) |
7,257 | 1.4 |
2通以上3通未満 | 34 (34) |
6,568 | 2.4 |
3通以上4通未満 | 22 (22) |
5,958 | 3.4 |
4通以上 | 77 (75) |
75,640 | 12.5 |
計 | 341 (330) |
98,058 | 3.6 |
しかし、上記のような計器の使用状況について、各年金事務所等の資産管理責任者等は、その実態を十分に把握しておらず、適切な管理を行っていなかった。
330年金事務所等における切手の使用について、計器の使用を開始した22年10月から24年3月までの間の状況をみると、222年金事務所等は依然として切手を使用しており、その使用額は計600万余円に上っていた。また、17年金事務所等は計19万余円分の切手を保有していたがそれらを全く使用していなかったり、104年金事務所等は上記の期間中に新たに計425万余円分の切手を購入していたりするなど、年金事務所等により切手の使用等の状況が区々となっていた。
切手の使用状況と計器の使用状況との関係についてみると、図1
のとおり、上記の期間に切手を使用していた222年金事務所等に設置された231台の計器のうち、32年金事務所等の35台は全く使用されておらず遊休していた。そして、これらの年金事務所等のうち9年金事務所等は、計器を使用しないで新たに購入した切手を使用していた。
このように、切手等の代替手段として設置された計器が、見込みどおりに使用されないまま切手が優先的に使用されている状況が一部の年金事務所等で見受けられた。
また、全く使用されていない計器64台が設置された60年金事務所等における切手の使用状況をみると、図2 のとおり、18台が設置された17年金事務所等では計器の設置前においては切手の使用実績がなく、このうち15台が設置された14年金事務所等では計器設置後も切手の使用実績がなかった。したがって、これらの計器と切手の双方の使用状況が極めて低調な年金事務所等においては、料金が割引にならない少量の郵便物を発送する場合等、通常の発送の際にも計器を使用することを認めるなどして計器の使用範囲を見直さない限り、今後も計器の使用が引き続き低調なままになるおそれがあると考えられる。
上記のように、年金事務所等における郵便物の発送業務等の効率化を図るために計器が購入され設置されているのに、年金事務所等が新たに切手を相当数購入して使用していたり、その一方で計器の使用範囲を限定しているために多くの計器が使用されることなく遊休していたり、使用頻度が著しく低くなっていたりしている事態は、計器設置の効果が十分に発現していないことから適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴機構本部において、各年金事務所等における計器の使用範囲を限定的なものとしていること、また、設置後の計器の使用に関する実態等を十分に把握しておらず、このため必要な指導を適切に行っていないことなどによると認められる。
貴機構は、年金事務所等において、今後も日常的に郵便物の発送及び受領を行っていくものと見込まれる。
ついては、貴機構において、年金事務所等における切手の使用及び保有の状況並びに計器の使用状況を十分に把握し、必要に応じて計器の使用範囲を見直すなどして計器の設置効果の発現を確保することにより、郵便物の発送業務や切手管理事務の一層の効率化を図るよう是正改善の処置を求める。