科目 | 現金及び預金 | |
部局等 | 独立行政法人国立青少年教育振興機構本部 | |
不要財産の概要 | 独立行政法人が保有する財産のうち、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる財産 | |
平成24年3月末現在の現金及び預金の額 | 21億0398万余円 | |
上記のうち不要財産として国庫納付すべき額 | 1799万円 |
独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人国立青少年教育振興機構法(平成11年法律第167号。以下「機構法」という。)に基づき、平成13年4月に、青少年教育の振興等を行う業務に関し、国の有する権利及び義務を承継して設立された法人であり、18年4月1日に解散した独立行政法人国立青年の家(以下「青年の家」という。)の権利及び義務を承継している。
独立行政法人の利益及び損失の処理については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第44条第1項において、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならないこととされている。そして、同条第2項において、毎年度、損益計算において損失を生じたときは、同条第1項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならないこととされている。
機構は、機構法第12条の規定に基づき、中期目標期間の最終年度において上記により積立金の整理を行った後、当該積立金の額から次の中期目標期間の業務の財源に充てるために文部科学大臣の承認を受けて繰り越す額を控除してなお残余があるときは、その残余の額を国庫納付しなければならないこととされている。
独立行政法人は、22年の通則法の改正により、中期目標期間の途中であっても、同法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るもの(以下「政府出資等に係る不要財産」という。)については、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。また、独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成22年法律第37号)附則第3条(以下「附則第3条」という。)において、施行日(22年11月27日)前に独立行政法人が行った財産の譲渡であって、施行日において政府出資等に係る不要財産の譲渡に相当するものとして主務大臣が定めるものは、施行日においてされた政府出資等に係る不要財産の譲渡とみなすこととされている。
そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うことなどを掲げている。
本院は、独立行政法人における不要財産の認定等の状況について、23年12月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条に基づく検査要請を受け、その検査結果を24年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について」)。そして、当該要請に係る会計検査の一環として、有効性等の観点から、機構が保有する資産のうち、不要財産となっているものがないかなどに着眼して、機構本部において、財務書類等の関係書類、不要財産の認定等の状況について提出を求めた調書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、22年3月に、青年の家から承継した静岡県御殿場市所在の玉穂宿舎北側敷地(承継時の帳簿価額1億2331万余円)を1億0531万余円で譲渡していた。そして、機構は、この譲渡に係る収入金額1億0531万余円を附則第3条の規定により適用する通則法第46条の2の規定に基づき23年3月に不要財産として国庫納付していた。
一方、機構は、上記敷地の譲渡に係る会計処理に関し、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)に従い、21年度の損益計算書に土地売却損1799万余円を計上していた。
上記の土地売却損はキャッシュ・フローを伴わない費用として計上されるため、これと同額で現金の裏付けのある収益が相殺され、この収益に相当する額は、利益処分において積立金として整理されないこととなる。その結果、積立金として整理されなかった資金1799万余円は、機構法に基づく中期目標期間終了後の国庫納付がされず、機構内部に預金等として留保されていた。
しかし、この機構内部に留保されている資金については、第2期中期目標期間(23年度から27年度まで)に係る中期計画において、今後の使用に係る計画が定められておらず、予算にも組み込まれていないことなどから、機構において、当該資金を業務の財源に充てることは想定されていないと認められた。
したがって、このように将来にわたり機構の業務を確実に実施するために必要な財産とは認められない資金を保有していることは、前記通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとっていないものとなっていて適切とは認められず、通則法に基づき国庫納付する必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、機構において、通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとって資産の見直しを行い、将来にわたり機構の業務を確実に実施する上で必要がないと認められる資金を不要財産と認定することについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、24年7月に、文部科学大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、機構内部に留保されている資金1799万余円について、国庫納付することとなるよう処置を講じた。