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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第22 独立行政法人国立印刷局|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

日本銀行券の印刷工程で使用する試刷(しずり)用紙を2回使用することにより、試刷用紙の購入に要する費用を節減するよう改善させたもの


(1) 日本銀行券の印刷工程で使用する試刷(しずり)用紙を2回使用することにより、試刷用紙の購入に要する費用を節減するよう改善させたもの

科目 貯蔵品、原材料
部局等 独立行政法人国立印刷局本局
契約名 試刷用紙の購入契約7契約
契約の概要 日本銀行券の印刷工程で使用する試刷用紙の購入
契約の相手方 福井紙業株式会社
契約 平成19年10月〜23年9月 一般競争契約
上記契約のうち平成20年度から23年度までの間に使用された試刷用紙に係る支払額 6億0790万余円 (平成20年4月〜24年3月)
節減できた支払額 1347万円 (平成20年4月〜24年3月)

1 試刷用紙の購入契約及び使用方法の概要

 独立行政法人国立印刷局本局(以下「本局」という。)は、平成19年10月から23年9月までの間に、一般競争契約により、日本銀行券の印刷工程で使用する試刷用紙の購入契約7契約を福井紙業株式会社と締結して、日本銀行券の印刷を行う滝野川、小田原、静岡、彦根各工場(以下、これらの工場を「4工場」という。)に随時必要な試刷用紙を納入させている。
 日本銀行券は、裏面印刷、表面印刷、ホログラム(注) 貼付及び記番号印刷の4工程において、それぞれ専用の機械を用いて印刷されており、これらの機械は4工場で共通のものである。
 そして、各工程で使用する機械の起動時等には、インキの量の調整等を行うために試し刷りを行う必要があり、4工場は、その際に日本銀行券の印刷用紙に代えてより安価な試刷用紙を使用している。

 ホログラム  偽造防止を目的として、一万円券及び五千円券の表面左下部に貼付される、光の加減により色が変化するシール

 試刷用紙については、国立印刷局指定製造品等取扱規則(平成17年規則第35号)において、紛失等を防ぐため印刷用紙と同様に厳重に管理することとされている。そして、本局は、日本銀行券の機密の漏えいを防止するために、18年12月に「セキュリティ管理に関する改善事項について」(以下「セキュリティ指示文書」という。)を各工場に発して、各工場が印刷用紙及び試刷用紙の使用枚数、保管枚数、廃棄枚数等を一元的に管理する体制を整備することとし、使用後の試刷用紙等を1か月以内に廃棄することとしている。一方で、本局は、試刷用紙の具体的な管理方法や作業現場における具体的な使用方法については、それぞれの工場が状況に応じて判断し、管理を行うよう指示している。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、試刷用紙の使用方法が経済的なものとなっているかなどに着眼して、本局及び4工場において、前記の7契約で購入した試刷用紙のうち、関係書類が保存されていた20年度から23年度までの間に使用された試刷用紙計1億1348万枚(これに係る支払額計6億0790万余円)を対象として、管理簿等の関係書類等により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、試刷用紙は、前記の4工程のうちホログラム貼付、記番号印刷両工程において、いずれも2回使用することが可能であるにもかかわらず、彦根工場では両工程において、また、静岡工場ではホログラム貼付工程において、試刷用紙を1回しか使用していない事態が次のとおり見受けられた。

(1) 彦根工場について

 彦根工場は、従来は、ホログラム貼付、記番号印刷両工程において、1回使用した試刷用紙の表裏を反転して使用することにより1枚の試刷用紙を2回使用していたが、セキュリティ指示文書を受けて、2回使用から1回使用にすることにより数量管理が容易になること、使用後速やかに廃棄できることなどから、セキュリティを高めることができると判断して、19年4月以降、ホログラム貼付、記番号印刷両工程において、試刷用紙を1回しか使用しないこととしていた。
 しかし、滝野川、小田原両工場は、セキュリティ指示文書に定められた事項を遵守しつつ、試刷用紙の使用方法の経済性も考慮して、ホログラム貼付、記番号印刷両工程において、従前から行っていた試刷用紙の2回使用を継続しており、セキュリティ上特段の問題は生じていなかった。
 したがって、彦根工場は、滝野川、小田原両工場と同様に、セキュリティ指示文書に定められた事項を遵守した上で、上記の両工程で試刷用紙を2回使用することが十分可能であると認められた。

(2) 静岡工場について

 静岡工場は、記番号印刷工程においては、試刷用紙を2回使用していたものの、ホログラム貼付工程においては、試刷用紙を2回使用することは作業上困難であるとして、従前から1回しか使用していなかった。これは、ホログラム貼付工程において試刷用紙を2回使用するためには、1回使用した試刷用紙の未使用面をそろえた上で表裏を反転して使用する必要があるが、同工場が、未使用面をそろえて管理することが作業上困難であると判断していたことによるものである。
 しかし、滝野川、小田原両工場は、簡便な工夫をして未使用面をそろえて管理することにより、ホログラム貼付工程において試刷用紙を2回使用していた。
 したがって、静岡工場は、滝野川、小田原両工場と同様の工夫をして、ホログラム貼付工程において試刷用紙を2回使用することが十分可能であると認められた。

 このように、彦根工場がホログラム貼付、記番号印刷両工程において、また、静岡工場がホログラム貼付工程において、いずれも試刷用紙を2回使用することが十分可能であるのに1回しか使用していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 (節減できた支払額)

 彦根工場がホログラム貼付、記番号印刷両工程において、また、静岡工場がホログラム貼付工程において、いずれも試刷用紙を2回使用していれば、両工場が20年度から23年度までの間に上記の両工程又はホログラム貼付工程において使用した試刷用紙506万余枚のうち250万余枚は使用する必要がなく、これに係る支払額1347万余円が節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、本局において、4工場における試刷用紙の使用方法の実態の把握が十分でなく、経済的な試刷用紙の使用について4工場に周知徹底していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、本局は、24年8月に4工場に対して事務連絡を発して、ホログラム貼付、記番号印刷両工程において、試刷用紙を2回使用することとする処置を講じた。