科目 | 建物、構築物、工具器具備品、固定資産除却損、修繕費 | |
部局等 | 独立行政法人国立印刷局本局 | |
契約名 | 小田原研修センター(仮)改修工事等5件 | |
契約の概要 | 工場、研修施設、職員宿舎等の営繕工事を行うもの | |
請負人 | 株式会社ナカノフドー建設等5会社 | |
契約 | 平成21年8月〜23年2月 一般競争契約 | |
変更契約において当初契約の落札率を乗じていなかった予定価格の積算額 | 4億7350万余円 | (平成21年度〜23年度) |
低減できた予定価格の積算額 | 2360万円 | (平成21年度〜23年度) |
独立行政法人国立印刷局本局(以下「本局」という。)は、工場、研修施設、職員宿舎等の営繕工事について平成20年度5件、21年度7件、22年度11件、23年度1件、計24件を一般競争契約により請負業者と締結しており、当初契約額は計50億0935万余円となっている。
そして、上記の営繕工事24件については、設計変更に伴う変更契約を21年度から23年度までに1契約につき1件から4件まで、計30件締結しており、変更後の契約額は計52億5950万余円となっている。
本局は、独立行政法人国立印刷局購買等契約細則(平成19年細則第10号。以下「契約細則」という。)に基づき、営繕工事の契約に係る事務手続を行っている。契約に係る要求を行う部門は、契約事務を担当する部門(以下「契約事務担当部門」という。)に仕様書、設計図書等の契約関係書類を提出して契約の要求を行うこととなっており、契約事務担当部門は、要求された契約の内容を審査して、設備管理に関する事務を担当する部門(以下「設備管理事務担当部門」という。)が作成した概算書の工事価格(以下「概算書額」という。)に消費税等相当額を加えるなどして予定価格を積算することとなっている。そして、概算書額は、営繕工事価格等積算要領(平成16年総要領第1号)において、公共建築工事積算基準(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修。以下「積算基準」という。)等に基づくなどして積算することとされている。
また、契約事務担当部門は、営繕工事の設計変更に伴う変更契約を行う場合、設備管理事務担当部門が積算した変更に係る概算書額(以下「変更概算書額」という。)に基づき、変更後の予定価格を積算することとなっている。
本院は、営繕工事の設計変更に伴う変更契約について、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、前記の営繕工事24件に係る変更契約30件を対象として、本局において契約書、概算書、予定価格調書、見積書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
契約事務担当部門は、前記の営繕工事24件に係る変更契約30件の予定価格の積算に当たり、このうち25件については変更概算書額に当初契約額の予定価格に対する比率を示す落札率を乗じていたが、残りの5件については変更概算書額に落札率を乗じていなかった。その結果、当該5件の変更契約に係る予定価格は当初契約における契約額計4億1346万余円に比べて計6003万余円増加し、計4億7350万余円となっていた。
このように落札率の取扱いが異なっていたのは、契約事務担当部門において、契約の変更理由が数量の変更等による場合、変更概算書額に落札率を乗ずることにしていたが、契約の変更理由が当初契約にない新規工種の追加等の場合、落札率を乗じないことにしていたことによるものであり、この落札率の取扱いについては、契約細則等において明確な規定はなく運用により行われていた。
しかし、積算基準では、設計変更に伴う変更契約の工事費は、変更対象の直接工事費に当該変更に係る共通費を加えて得た額である変更後の工事価格に落札率を乗じ、消費税等相当額を加えて得た額とすることとされている。
したがって、契約事務担当部門は、積算基準における変更契約の工事費の算出と同様に前記の変更契約5件についても、変更概算書額に落札率を乗じて変更後の予定価格を積算することにより、当初契約における競争の利益を反映すべきであった。
このように、営繕工事の設計変更に伴う変更契約について、変更概算書額に落札率を乗ずることなく変更後の予定価格を積算している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記の変更契約5件について変更概算書額にそれぞれ落札率を乗じて変更後の予定価格の積算額を修正計算すると、計4億4988万余円となり、前記の予定価格の積算額計4億7350万余円を約2360万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、本局において、契約事務担当部門における積算基準の積算方法に対する認識が十分でなかったこと及び営繕工事の設計変更に伴う変更契約の予定価格の積算における落札率の取扱いが明確でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、本局は、24年8月に契約細則を改正して、営繕工事の設計変更に伴う変更契約の予定価格の積算において、積算基準の規定に準じて、変更概算書額に落札率を乗ずることとし、同年9月から適用する処置を講じた。