科目 | 現金及び預金 | |||
部局等 | 独立行政法人国民生活センター | |||
平成20年度補正予算により国から交付を受けた運営費交付金の概要 | 消費者庁が取り組んでいる地方公共団体の消費者行政への支援に必要な事業の一部を実施するために措置されたもの | |||
上記運営費交付金の額 | 平成20年度補正予算(第1号)によるもの | |||
9億2564万余円 | ||||
平成20年度補正予算(第2号)によるもの | ||||
89億6534万余円 | ||||
計 | 98億9098万余円 | |||
上記のうち中期目標期間が終了する平成24年度末の執行残額の見込みに相当する資金の額 | 58億3678万円 |
(平成23年12月7日付け 独立行政法人国民生活センター理事長宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴センターは、独立行政法人国民生活センター法(平成14年法律第123号。以下「センター法」という。)に基づき、国民生活の安定及び向上に寄与するため、総合的見地から国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行うなどの業務を実施しており、それらの業務の運営の財源に充てるために必要な資金として、表1 のとおり、毎年度、国から運営費交付金の交付を受けている。
表1 国から交付を受けた各年度の運営費交付金
(単位:千円)
区分 | 平成18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 |
当初予算により措置された運営費交付金の交付額 | 2,971,585 | 2,803,118 | 2,951,389 | 3,201,746 | 3,201,746 |
補正予算により措置された運営費交付金の交付額 | — | — | 9,890,982 | — | — |
計 | 2,971,585 | 2,803,118 | 12,842,371 | 3,201,746 | 3,201,746 |
平成20年度に国から交付を受けた運営費交付金128億4237万余円のうち、補正予算(第1号)(20年10月成立)により安心実現のための緊急総合対策の一環として生活者の不安の解消を図るために措置されたものが9億2564万余円、補正予算(第2号)(21年1月成立)により生活対策の一環として生活安心確保対策の推進を図るために措置されたものが89億6534万余円となっており、同年度の補正予算によるものは計98億9098万余円となっている。
上記の補正予算による運営費交付金は、いずれも、消費者行政推進基本計画(平成20年6月閣議決定)等を踏まえて、消費者庁(21年8月以前は内閣府)が取り組んでいる地方公共団体の消費者行政への支援に必要な事業の一部を貴センターが実施するために措置されたものである。
そして、貴センターは、地方公共団体の消費者行政を支援するための事業(以下「地方支援事業」という。)の一環として、前記の国における20年度の補正予算により措置された運営費交付金計98億9098万余円を財源とする事業(以下「補正予算による地方支援事業」という。)を、新規に又は既存の事業を拡充するなどして実施することとし、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第30条の規定に基づき、20、21両年度に、主務大臣である内閣総理大臣に対して、20年度から24年度までの中期計画について、予算額を増額するなどの変更を申請し、認可を受けている。
独立行政法人は、独立行政法人会計基準(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)により、運営費交付金の会計処理に当たって、国から運営費交付金を受領したときは、その相当額を運営費交付金債務として整理することとされている。そして、年度内に運営費交付金の執行残額が生じた場合、中期目標期間内においては運営費交付金債務として翌年度に繰り越すことができ、繰り越した運営費交付金債務は中期目標期間の最終年度において全額収益に振り替えることとされている。また、各年度の損益計算において利益を生じたときは、通則法により、前年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額を積立金として整理することとされている。
そして、貴センターは、センター法により、中期目標期間の最終年度に、積立金の額に相当する金額から内閣総理大臣の承認を受けた金額を控除して残額がある場合、その残額を国庫に納付しなければならないとされている。
独立行政法人は、22年の通則法の改正により、中期目標期間の途中であっても、通則法第8条第3項の規定に基づき、業務の見直し、社会経済情勢の変化その他の事由により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないとされている。そして、通則法第46条の2第1項の規定に基づき、政府からの出資又は支出に係る不要財産(以下「政府出資等に係る不要財産」という。)については、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付するものとされている。
また、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものを速やかに国庫に納付することなどを掲げている。
本院は、合規性、有効性等の観点から、補正予算による地方支援事業等の実施に伴い、国から交付を受けた運営費交付金の執行残額として保有している資産が事業規模に見合った妥当なものとなっているか、政府出資等に係る不要財産について速やかに国庫に納付する手続を行っているかなどについて、貴センターにおいて、補正予算による地方支援事業等の実施に係る書類等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴センターは、前記の補正予算(第1号)による運営費交付金により、6事業(注1)
を20年度に実施することとし、また、前記の補正予算(第2号)による運営費交付金により、消費者庁が掲げる地方の消費者行政活性化のための「集中育成・強化期間」に合わせて、5事業(注2)
を21年度から23年度までの間に実施することとした。そして、表2
のとおり、各年度に要する経費を算定し、上記の事業を実施することとして、中期計画を変更して、前記の国における20年度の補正予算により措置された運営費交付金計98億9098万余円と同額を貴センターの予算に追加していた。
(注1) | 6事業 消費生活相談専門家の巡回訪問、全国消費生活情報ネットワーク・システムの端末機器の追加配備、商品テスト機能の強化、全国消費生活情報ネットワーク・システムの刷新、事故情報データバンクの構築、企業向け研修の実施の各事業
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(注2) | 5事業 消費生活相談専門家の巡回訪問、全国消費生活情報ネットワーク・システムの端末機器の追加配備、消費生活相談員養成講座の拡充、消費生活相談窓口の休日対応、企業向け研修の実施の各事業(消費生活相談専門家の巡回訪問、全国消費生活情報ネットワーク・システムの端末機器の追加配備、企業向け研修の実施の3事業については、上記の6事業と重複している。)
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平成20年度 (a) |
21年度 | 22年度 | 23年度 | 21年度から23年度までの計 (b) |
補正予算による地方支援事業に係る予算額 (a)+(b) |
925,641 | 2,853,740 | 2,916,430 | 3,195,171 | 8,965,341 | 9,890,982 |
しかし、補正予算による地方支援事業の予算の執行状況をみると、市町村等を対象にして行った消費生活相談専門家の巡回訪問事業において市町村等からの巡回訪問の受入れ希望が見込んでいたほどなかったため、訪問回数の実績が計画を大幅に下回ったことなどから、補正予算による地方支援事業を実施することとしている20年度から23年度までの期間の過半を経過した22年度末で、表3 のとおり、予算の執行額は14億7495万余円となっていて、予算額98億9098万余円に対する割合(執行率)は14.9%にとどまっていた。
補正予算による地方支援事業に係る予算額 (a) |
執行額 | 執行率 (b)/(a) |
22年度末の予算の執行残額 (a)−(b) |
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平成20年度 | 21年度 | 22年度 | 計 (b) |
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9,890,982 | 38,602 | 783,273 | 653,079 | 1,474,955 | 14.9 | 8,416,026 |
貴センターは、上記の予算額98億9098万余円から執行額14億7495万余円を差し引いた執行残額に相当する84億1602万余円について、補正予算による地方支援事業の実施に伴う支払に備える資金として期間1年以下の定期預金等により保有していた。一方、本院が23年6月に会計実地検査を行った際、補正予算による地方支援事業の実施期間の最終年度としている23年度の執行額の見込みについては6億1979万余円としていたことから、同額を上記22年度末の執行残額である84億1602万余円から差し引いた77億9622万余円が23年度末の執行残額として見込まれ、それに相当する資金をなお保有することが見込まれる状況となっていた。
しかし、貴センターは、そのような状況であるのに、今後の事業規模に見合った資金規模を十分に検証することなく、政府出資等に係る不要財産の国庫納付の検討を行っていなかった。
貴センターは、その後、本院の会計実地検査の結果を受け、消費者庁と協議するなどして上記の検証を行った。その結果、貴センターは、前記の国における20年度の補正予算により措置された運営費交付金を財源として、補正予算による地方支援事業を24年度まで延長して行うこととするとともに、東日本大震災に伴い、地方公共団体が実施する食品等の放射性物質の検査に必要な機器を貸与する事業等を新たに行うことにし、23年11月時点において、これらの事業を行うことなどにより23、24両年度に新たに必要となる事業費を19億5944万余円と見込んでいる。
したがって、前記の23年6月の会計実地検査の際に23年度末の執行残額として見込まれた77億9622万余円から上記の地方支援事業の延長、放射性物質検査機器の貸与等に伴う23、24両年度の新たな事業費の見込額計19億5944万余円を差し引いても、表4
のとおり、中期目標期間が終了する24年度末において58億3678万余円の執行残額が見込まれ、それに相当する資金は、政府出資等に係る不要財産に該当すると認められる。
平成22年度末の予算の執行残額 (a) |
23年度の執行額の見込み (b) |
23年6月時点における23年度末の執行残額の見込み (c)=(a)−(b) |
23、24両年度の地方支援事業の延長、放射性物質検査機器の貸与等に係る新たな事業費の見込額 (d) |
24年度末の予算の執行残額の見込み (c)−(d) |
8,416,026 | 619,799 | 7,796,227 | 1,959,445 | 5,836,781 |
通則法の改正により、政府出資等に係る不要財産については中期目標期間中であっても国庫へ納付するものとされているのに、貴センターにおいて、通則法の改正の趣旨及び基本方針にのっとって事業規模に見合った資金規模を十分に検証することなく、使用する見込みのない多額の資金を保有している事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴センターにおいて、国から交付を受けた運営費交付金については、センター法により、中期目標期間の最終年度である24年度に積立金として整理される執行残額を国庫に納付することとされていることもあり、通則法の改正の趣旨及び基本方針にのっとって事業規模に見合った資金規模の見直しを速やかに行うことの認識が十分でなかったことなどによると認められる。
政府は、国の行政との協働が求められる地方消費者行政の強化について、貴センターと連携して強力な支援を行うこととしており、貴センターは、今後も地方公共団体の消費者行政支援に積極的に取り組んでいく必要がある。一方で、前記のとおり、政府は、基本方針において、各独立行政法人が幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、不要と認められるものは速やかに国庫に納付することなどを求めている。
ついては、貴センターにおいて、前記の国における20年度の補正予算により措置された運営費交付金の執行残額に相当する資金について、今後の事業規模に見合った資金規模を超える資金は、通則法に基づき、政府出資等に係る不要財産として、内閣総理大臣の認可を受けて速やかに国庫に納付するよう改善の処置を要求する。
本院は、独立行政法人国民生活センターにおいて、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、独立行政法人国民生活センターは、本院指摘の趣旨に沿い、国における20年度の補正予算により措置された運営費交付金の執行残額に相当する資金のうち、24年度末までの事業規模に見合った資金規模を超える資金58億3678万余円を、通則法に基づき、政府出資等に係る不要財産として国庫に納付することとする中期計画の変更について、24年2月に内閣総理大臣の認可を受け、同年3月に同額を国庫に納付する処置を講じていた。