科目 | (一般業務勘定) | 現金及び預金 |
部局等 | 独立行政法人北方領土問題対策協会本部 | |
不要財産の概要 | 独立行政法人が保有する財産のうち、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる財産 | |
平成24年3月末現在の現金及び預金の額 | 6億7484万余円 | |
上記のうち不要財産として国庫納付すべき額 | 1983万円 |
独立行政法人北方領土問題対策協会(以下「協会」という。)は、独立行政法人北方領土問題対策協会法(平成14年法律第132号)に基づき、平成15年10月に、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての国民世論の啓発並びに調査及び研究等を行う業務に関し、特殊法人であった北方領土問題対策協会(以下「旧協会」という。)の有する権利及び義務を承継して設立された法人である。
そして、協会は、経理を一般業務勘定及び貸付業務勘定に分けて整理しており、このうち一般業務勘定には、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第46条の規定に基づき、業務運営の財源に充てる資金として、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、国から運営費交付金が交付されている。
独立行政法人は、22年の通則法の改正により、中期目標期間の途中であっても、同法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。
そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うことなどを掲げている。
本院は、独立行政法人における不要財産の認定等の状況について、23年12月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条に基づく検査要請を受け、その検査結果を24年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について」)。そして、当該要請に係る会計検査の一環として、有効性等の観点から、協会が保有する資産のうち、不要財産となっているものがないかなどに着眼して、協会本部において、財務書類等の関係書類、不要財産の認定等の状況について提出を求めた調書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
協会は、15年10月に旧協会の権利及び義務を承継して設立された際に、旧協会の同年9月30日現在の貸借対照表において、負債の内訳科目である退職給与引当金に見合う資産として保有していた現金預金1773万余円及び資本剰余金の内訳科目である国庫補助金に見合う資産として保有していた現金預金196万余円の計1969万余円について、独立行政法人北方領土問題対策協会資産評価委員会の決定等に基づき、同年10月1日現在の協会の開始貸借対照表において、政府出資金見合いの現金預金として一般業務勘定で承継していた。
そして、協会は、この設立時より保有していた政府出資金見合いの現金預金計1969万余円に、協会設立後の18年7月に一般業務勘定で返戻を受けた政府出資金見合いの敷金・保証金14万円を加えた合計1983万余円については、政府出資に係る現金預金として、他の現金預金とは区別して管理していた。
しかし、協会は、政府出資金見合いとして承継するなどしたこの資金を、協会が行う事務・事業に使用することを想定しておらず、協会内部に預金等として留保していた。
そして、この協会内部に留保されている資金については、第2期中期目標期間(20年度から24年度まで)に係る中期計画において、今後の使用に係る計画が定められておらず、予算にも組み込まれていないこと、また、退職手当を含む協会の業務経費については、毎年度、国からの運営費交付金が充てられていることなどから、協会において、当該資金を業務の財源に充てることは今後も想定されていないと認められた。
したがって、このように将来にわたり協会の業務を確実に実施するために必要な財産とは認められない資金を保有していることは、前記通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとっていないものとなっていて適切とは認められず、通則法に基づき国庫納付する必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、協会において、通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとって資産の見直しを行い、将来にわたり協会の業務を確実に実施する上で必要がないと認められる資金を不要財産と認定することについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、協会は、24年8月に、内閣総理大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、協会内部に留保されている資金1983万余円について、国庫納付することとなるよう処置を講じた。