科目 | (一般勘定) 業務費 | ||
一般管理費 | |||
部局等 | 外務本省、独立行政法人国際協力機構 | ||
技術協力に係る付加価値税等の免除の概要 | 政府開発援助の一環である技術協力の実施に必要な機材等を相手国内で現地調達した際に賦課される付加価値税等について、相手国との技術協力協定に基づいて免除措置を受けるもの | ||
検査の対象とした技術協力に係る機材等の現地調達契約数及び支払額 | 609件 | 48億9707万余円 | (平成21年度〜23年度) |
技術協力協定に基づく付加価値税等の免除措置を受けていない現地調達契約数及び支払額 | 22件 | 1億6685万余円 | (平成21年度〜23年度) |
上記の支払額に含まれる付加価値税等額 | 1876万円 | (平成21年度〜23年度) |
(平成24年10月26日付け | 外務大臣 独立行政法人国際協力機構理事長 |
宛て) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
我が国は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することを目的として、政府開発援助を実施している。
政府開発援助のうち技術協力は、開発途上にある国又は地域(以下「開発途上国」という。)の要請を受けて、経済及び社会の開発の担い手となる人材を育成するため、我が国の有する技術、技能及び知識を開発途上国に移転するなどし、技術水準の向上、制度・組織の確立・整備等に寄与するものである。具体的には、開発途上国の技術者や行政官等に対する技術研修の実施、専門的な技術や知識を有する専門家の派遣、技術移転に際して必要な機材の供与等がある。
独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)が実施する技術協力は、我が国政府と協力相手となる国又は地域(以下「相手国」という。)との間で締結される技術協力協定(以下「協定」という。)等に基づいて実施されている。
外務省は、技術協力の実施に当たり、協定の締結、解釈及び実施に関する事務をつかさどるとともに、相手国から要請を受理し、検討及び採択することとされている。そして、機構は、技術協力の実施に係る計画策定、調査、プロジェクトの実施、フォローアップ等を行うなど技術協力の実施に当たり中核的な役割を果たしている。
技術協力に係る費用のうち、相手国内で機材、役務等(以下「機材等」という。)を現地調達した際に賦課される付加価値税、課徴金、手数料等(以下「付加価値税等」という。)は、協定に基づいて免除される場合があり、その適用範囲は、相手国によって異なっている。
そして、付加価値税等の免除の方式は、機構の在外事務所が相手国の税務当局に免除申請することなどにより付加価値税等額が事前に契約額から控除される事前免除方式と、機構の在外事務所が付加価値税等額を含んだ契約額を一旦支払った後に還付申請により付加価値税等額の返還を受ける還付方式があり、国によってどちらかの方式又は両方の方式により付加価値税等が免除されている。
従来機構は、技術協力に使用する機材等を調達する場合は、我が国で調達し現地へ輸送するいわゆる本邦調達を中心としていたが、平成15年10月に独立行政法人へ移行した後、現場主義を改革の大きな柱として掲げ、16年10月から、相手国の要望に的確かつ迅速に対応するとともに維持管理、アフターケア等を容易にするために、現地に代理店がない場合や特注品等を調達する場合を除き、原則として機材等を現地調達することとしている。
これに伴い、近年、機構の在外事務所による現地調達が大幅に増加していることから、本院は、経済性等の観点から、協定に基づき機材等の現地調達に係る付加価値税等が免除されているかなどに着眼して検査を実施した。
検査に当たっては、13か国(注1)
を選定し、外務本省及び13か国のうち8か国に所在する日本国大使館において協定の内容を聴取するなどして会計実地検査を行った。また、当該13か国に所在する機構の13在外事務所が21年度から23年度までに締結した1件200万円以上の現地調達契約609件、支払額計48億9707万余円を対象として、機構本部及び8在外事務所(注2)
において契約関係書類等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、5在外事務所(注3)
については契約関係書類等の提出を受け、これを確認するなどの方法により検査を実施した。
(注1) | 13か国 バングラデシュ、カンボジア、ホンジュラス、ケニア、ラオス、マラウイ、ニカラグア、パラグアイ、フィリピン、タンザニア、ウガンダ、ウズベキスタン、ベトナム
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(注2) | 8在外事務所 ホンジュラス、マラウイ、ニカラグア、パラグアイ、タンザニア、ウガンダ、ウズベキスタン、ベトナム各事務所
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(注3) | 5在外事務所 バングラデシュ、カンボジア、ケニア、ラオス、フィリピン各事務所
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検査したところ、機構の在外事務所が締結した多くの契約においては協定に基づいて付加価値税等が免除されていたが、4在外事務所(注4)
が締結した契約のうち22契約においては付加価値税等計1876万余円が免除されていない事態が見受けられた。
これらを態様別に整理して示すと次のとおりである。
ア 在外事務所が、免除の対象となる機材等の範囲等を正確に把握していなかったなどのため、還付申請を行っておらず付加価値税等が免除されていなかったもの(1在外事務所、契約件数2件、付加価値税等計132万余円)
マラウイ共和国(以下「マラウイ」という。)に対する技術協力の実施に当たり、機材等の現地調達に係る付加価値税等は、マラウイ政府との協定(平成18年3月発効)に基づいて免除されることとなっている。しかし、機構のマラウイ事務所は、協定に基づく免除措置に対する理解が十分でなく、免除の対象となる機材等の範囲を正確に把握していなかったことなどから、現地調達したコピー機が付加価値税等の免除の対象となるにもかかわらず還付申請を行っておらず、「中等理数科現職教員再訓練プロジェクトフェーズ2のためのコピー機」購入契約に係る付加価値税等1,574,100マラウイクワチャ(付加価値税率16.5%、邦貨換算額991,368円)が免除されていなかった。
イ 協定に基づく免除措置について、実際に免除に必要な手続をとる相手国の税務当局に十分周知されていなかったことなどから付加価値税等が免除されていないのに、在外事務所が、日本国大使館とその対応を協議するなどの措置を十分に講じていなかったもの(3在外事務所、契約件数20件、付加価値税等計1744万余円)
ニカラグア共和国(以下「ニカラグア」という。)に対する技術協力の実施に当たり、車両の現地調達に係る付加価値税等は、ニカラグア政府との協定(平成13年5月発効)に基づいて免除されることとなっている。しかし、機構のニカラグア事務所が、21年3月以前にニカラグア税務当局へ車両購入契約に係る付加価値税等の免除措置に関して照会を行ったところ、上記協定が税務当局に十分に周知されていなかったことから、同事務所が現地調達する車両については免除措置の対象とならないとの見解が示された。このため、21、22両年度における車両購入契約2件に係る付加価値税等計20,534.12米ドル(付加価値税率15%、邦貨換算額1,728,701円)が免除されないままとなっているのに、同事務所は、在ニカラグア日本国大使館とその対応を協議するなどの措置を十分に講じていなかった。
上記のように、技術協力の実施に当たり、協定に基づき付加価値税等の免除が認められている国において、機材等の現地調達に係る付加価値税等が免除されていない事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 在外事務所において、協定に基づく付加価値税等の免除措置に対する理解が十分でなく、免除の対象となる機材等の範囲等を正確に把握していないこと
イ 在外事務所において、協定に基づく付加価値税等の免除措置が受けられていない場合、日本国大使館とその対応について協議することなどについての認識が十分でないこと
ウ 日本国大使館及び在外事務所において、協定に基づく免除措置が相手国内で適切に履行されるよう働きかけを十分に行っていないこと
機構が実施する技術協力について、今後も多数の機材等を現地で調達することが見込まれることから、協定により認められている付加価値税等の免除措置を受けることにより、技術協力に係る経費が節減され、経済的な実施が図られるよう、次のとおり意見を表示する。
ア 機構本部において、在外事務所に対して、各国との協定に基づき免除の対象となる機材等の範囲等を正確に把握するよう周知徹底を図ること
イ 機構本部において、協定に基づく付加価値税等の免除措置が受けられていない場合、在外事務所に日本国大使館とその対応について協議させるよう周知徹底を図ること
ウ 外務本省及び機構本部において、イの協議を踏まえた上で、協定に基づく免除措置が相手国内で適切に履行されるよう日本国大使館及び在外事務所から相手国へ働きかけを行うよう周知徹底を図ること