科目 | 障害者雇用納付金勘定 | |
部局等 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(平成23年9月30日以前は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構) | |
障害者雇用納付金等の根拠 | 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号) | |
障害者雇用納付金等の概要 | 障害者の雇用について、法定雇用率を達成していない事業主から障害者雇用納付金を徴収して、法定雇用率を達成している事業主に対して障害者雇用調整金を支給するなどのもの | |
検査した障害者雇用納付金、障害者雇用調整金等の額 | 38億6739万余円 | (平成22、23両年度) |
上記のうち過大に支給されるなどしていた障害者雇用調整金等の額 | 2億6043万円 | (平成22、23両年度) |
(平成24年10月3日付け 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
貴機構(平成23年9月30日以前は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構)は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)に基づき、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(以下、これらを合わせて「障害者」という。)の雇用に伴う経済的負担の調整並びにその雇用の促進及び継続を図るために、障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)の徴収、障害者雇用調整金(以下「調整金」という。)等の支給に関する業務等(以下、これらを合わせて「納付金関係業務」という。)を行っている。
そして、貴機構は、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者(以下「短時間労働者」という。)と週の所定労働時間が30時間以上の労働者(以下「短時間以外の常用雇用労働者」という。)とを合わせた常用雇用労働者の数に法定雇用率1.8%を乗ずるなどした数(以下「法定雇用障害者数」という。)より障害者である常用雇用労働者の数(以下「雇用障害者数」という。)が少ない事業主から納付金を徴収して、これを財源として、雇用障害者数が法定雇用障害者数等を超えている事業主に対して調整金又は報奨金を支給している。
なお、常用雇用労働者の数については、短時間以外の常用雇用労働者1人を1.0人として計算することとされており、また、22年6月30日以前は短時間労働者の数は常用雇用労働者の数に含まれていなかったが、20年12月の法改正に伴い、22年7月1日から短時間労働者1人を0.5人として計算することとされている。
貴機構が事業主から徴収する納付金並びに事業主に支給する調整金及び報奨金の概要は次のとおりとなっている(図 参照)。
ア 納付金の納付義務者は、常用雇用労働者の数が200人(22年6月30日以前は300人。以下同じ。)を超え当該年度の月ごとの初日等(以下「算定基礎日」という。)における雇用障害者数の合計が当該年度の月ごとの算定基礎日における法定雇用障害者数の合計に不足する事業主であり、納付金の額はその不足数1人につき5万円(常用雇用労働者の数が200人を超え300人以下の事業主については、22年7月1日から27年6月30日までは4万円)となっている。
イ 調整金の支給対象者は、常用雇用労働者の数が200人を超え当該年度の月ごとの算定基礎日における雇用障害者数の合計が当該年度の月ごとの算定基礎日における法定雇用障害者数の合計を超える事業主であり、調整金の額はその超過数1人につき2万7千円となっている。
ウ 報奨金の支給対象者は、常用雇用労働者の数が200人以下で当該年度の月ごとの算定基礎日における雇用障害者数の合計が当該年度の月ごとの算定基礎日における常用雇用労働者の数に100分の4を乗じて得た数の合計数又は72人のいずれか多い数を超える事業主であり、報奨金の額はその超過数1人につき2万1千円となっている。
図 納付金並びに調整金及び報奨金のイメージ
注(1) | 平成22年6月30日以前は300人。 |
注(2) | 常用雇用労働者の数が200人を超え300人以下の事業主については、平成22年7月1日から27年6月30日までは4万円。 |
雇用障害者数の算定に当たっては、労働者の障害の程度等により、次のように計算することとされている。
ア 障害の程度が重度の身体障害者又は知的障害者(以下「重度障害者」という。)を短時間以外の常用雇用労働者として雇用している場合は当該労働者1人を2.0人として、また、短時間労働者として雇用している場合は当該労働者1人を1.0人としてそれぞれ計算する。
イ 障害の程度が重度以外の身体障害者又は知的障害者を短時間以外の常用雇用労働者として雇用している場合は当該労働者1人を1.0人として、また、22年7月1日からは短時間労働者として雇用している場合は当該労働者1人を0.5人として計算する。
ウ 精神障害者を短時間以外の常用雇用労働者として雇用している場合は当該労働者1人を1.0人として、また、短時間労働者として雇用している場合は当該労働者1人を0.5人として計算する。
また、貴機構は、週の所定労働時間と実態の労働時間の間に常態的なかい離がある場合は、実態の労働時間により常用雇用労働者に該当するか否かの判断をすることにしており、事業主向けの納付金の申告書並びに調整金の支給申請書及び報奨金の支給申請書の記入説明書(以下「記入説明書」という。)には、雇用契約の内容と就労の実態に相違がある場合は、就労の実態により常用雇用労働者であるか否か判断される場合があると記載している。
納付金の納付義務者又は調整金若しくは報奨金の支給対象者は、年度ごとに、納付金の申告書又は調整金若しくは報奨金の支給申請書に障害者雇用状況等報告書(以下、これらを合わせて「支給申請書等」という。)を添付して、47都道府県に設置されている貴機構の地域障害者職業センター(22年度までは、貴機構が支給申請書等の受付業務等を委託していた雇用開発協会等。以下、地域障害者職業センターを「センター」という。)を経由して貴機構の本部に提出し、貴機構は本部において、その内容を審査した上で、必要に応じて修正を求めて、納付金又は調整金若しくは報奨金の額を決定している。
貴機構は、上記の審査等に当たっては、貴機構が定めた「障害者雇用納付金、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金及び在宅就業障害者特例報奨金関係業務手引」(以下「業務手引」という。)等に基づき、納付金の申告書又は調整金若しくは報奨金の支給申請書に記載されている雇用障害者数等の算定内訳と、当該算定の基となる障害者数、障害者名、障害の程度等が記載された障害者雇用状況等報告書とを突合するなどして、記載内容や計数に誤りがないか確認等をすることとしている。
納付金関係業務については、前記の法改正に伴い、22年7月1日から、納付金の納付義務等が適用される対象範囲が常用雇用労働者の数が300人を超える事業主から200人を超える事業主に拡大され、また、短時間労働者も常用雇用労働者の数に含まれたことから、業務量の増大が見込まれる状況となっている。
そこで、本院は、合規性等の観点から、納付金の徴収並びに調整金及び報奨金の支給が適正に行われているかなどに着眼して、22、23両年度に納付金の納付を行ったり、調整金又は報奨金の支給を受けたりなどした事業主のうち368事業主(これらの事業主が納付した納付金並びにこれらの事業主に支給された調整金及び報奨金の額計38億6739万余円)を選定して、機構本部及び全国47センターのうち16センターにおいて、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に貴機構に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、125事業主において、納付金の申告又は調整金若しくは報奨金の申請に当たり、実態の労働時間が週に20時間未満であることから常用雇用労働者に該当しない障害者であるのに、雇用契約書等による週の所定労働時間が20時間以上であることから常用雇用労働者に該当するとして雇用障害者数に含めていたり、障害の程度が重度以外の障害者を重度障害者としていたりなどしていて、雇用障害者数の算定を誤っていた。
そして、貴機構は、これらの納付金の申告又は調整金若しくは報奨金の申請について、前記のとおり、事業主からセンターを経由して本部に提出された支給申請書等の記載内容や計数の確認等を行っていたが、勤務実態等が確認できる関係書類の提出を事業主に求めて、これにより記載内容の真実性を確認することなどについては、業務手引等にも示されていないことなどから、全く行っていなかった。
その結果、納付金の徴収が9事業主において計1697万円不足しており、また、調整金が51事業主において計9718万余円、報奨金が79事業主において計1億4627万余円それぞれ過大に支給されており、徴収又は支給が適正に行われていなかった納付金、調整金等が合計2億6043万余円見受けられた(これらの事態には重複している事業主がある。)。
上記の事態について、その事例を示すと次のとおりである。
貴機構和歌山センター管内の特定非営利活動法人Aは、平成23年度の報奨金の申請の際に、雇用する障害者24人全員が常用雇用労働者に該当するとして雇用障害者数の算定を行い、報奨金の額を3,969,000円として申請していた。そして、貴機構は、報奨金の支給申請書及び障害者雇用状況等報告書により審査を行った上で、申請どおり同額の報奨金を支給していた。
しかし、実際には、上記の障害者24人は全員の実態の労働時間が週に3時間から16時間程度であり、常態的に20時間未満であったことから、いずれも常用雇用労働者に該当せず、雇用障害者数の算定に含めることができないにもかかわらず、貴機構は本件報奨金を支払っていた。
実態の労働時間が週に20時間未満であることから常用雇用労働者に該当しない障害者を雇用障害者数に含めて納付金の申告又は調整金若しくは報奨金の申請をするなどしている事業主において、納付金の徴収が不足していたり、調整金及び報奨金が過大に支給されていたりしている事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴機構において、週の所定労働時間と実態の労働時間の間に常態的なかい離がある場合は、実態の労働時間により常用雇用労働者に該当するか否かを判断する取扱いになっていることについて、事業主に対して十分に周知徹底していないこと、また、事業主が雇用障害者数の算定を誤るなどしていて、支給申請書等の記載が事実と相違しているのに、勤務実態等が確認できる関係書類の提出を求めて、記載内容の真実性を確認することなどの重要性に対する認識が十分でないことなどによると認められる。
法定雇用率については、法第43条第2項の規定に基づき、少なくとも5年ごとに見直すこととされており、25年4月から2.0%に引き上げられることとなっている。また、前記の法改正に伴い、27年4月からは、納付金の納付義務等が適用される対象範囲が常用雇用労働者の数が100人を超える事業主に更に拡大されることになっており、納付金関係業務については、今後ともより適正な実施が求められる状況となっている。
ついては、貴機構において、前記の125事業主に係る納付金の徴収不足額並びに調整金及び報奨金の過大支給額について、速やかに納付及び返還を求めるよう是正の処置を要求するとともに、納付金関係業務がより適正に実施されるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 週の所定労働時間と実態の労働時間の間に常態的なかい離がある場合は、実態の労働時間によって常用雇用労働者に該当するか否かを判断する取扱いになっている旨を注意喚起のために記入説明書に明記した上で、事業主に対して説明会を開催するなどして更なる周知徹底を図ること
イ 事業主から提出された支給申請書等の記載内容の真実性を確認するために、勤務実態等が確認できる関係書類の提出を適宜求めるなどして記載内容を確認することとするなど、効果的な審査等が行われるようにすること