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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速増殖原型炉もんじゅの研究開発等について、適時適切に研究開発経費を把握して公表することにより研究開発の一層の透明性の確保を図るとともに、使用可能な関連施設の利活用を図るよう意見を表示したもの


 高速増殖原型炉もんじゅの研究開発等について、適時適切に研究開発経費を把握して公表することにより研究開発の一層の透明性の確保を図るとともに、使用可能な関連施設の利活用を図るよう意見を表示したもの

科目 (電源利用勘定)経常費用(平成17年9月30日以前は経常費用)
部局等 独立行政法人日本原子力研究開発機構(平成10年10月1日から17年9月30日までは核燃料サイクル開発機構、10年9月30日以前は動力炉・核燃料開発事業団)
高速増殖原型炉もんじゅの研究開発等の概要 運転の過程において消費した以上の燃料を生み出しつつ発電を行うことができる高速増殖炉の原型炉であるもんじゅについて、発電プラントとしての信頼性の実証等を目的として研究開発を行うなどするもの
もんじゅの研究開発に要した総事業費として公表している経費の平成22年度までの額 9265億2644万余円 (昭和55年度〜平成22年度)
もんじゅ及びその関連施設の研究開発に係る支出額 1兆0810億9529万余円 (昭和46年度〜平成22年度)
上記のうち利活用されていないもんじゅの関連施設の建設等に係る支出額 830億8525万円 (昭和63年度〜平成22年度)

【意見を表示したものの全文】

 高速増殖原型炉もんじゅの研究開発経費及びその関連施設の利活用等について

(平成23年11月14日付け 独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 高速増殖原型炉もんじゅの研究開発経費等の概要

(1) 高速増殖炉の研究開発の概要

 貴機構(平成10年10月1日から17年9月30日までは核燃料サイクル開発機構及び日本原子力研究所、10年9月30日以前は動力炉・核燃料開発事業団及び日本原子力研究所)は、独立行政法人日本原子力研究開発機構法(平成16年法律第155号。以下「機構法」という。)に基づき設立された法人である。そして、貴機構は、機構法、原子力基本法(昭和30年法律第186号)第2条に規定する基本方針等に基づき、原子力に関する基礎的研究及び応用の研究、核燃料サイクルを確立するための高速増殖炉及びこれに必要な核燃料物質の開発並びに核燃料物質の再処理に関する技術及び高レベル放射性廃棄物の処分等に関する技術の開発を総合的、計画的かつ効率的に行うとともに、これらの成果の普及等を行い、もって人類社会の福祉及び国民生活の水準向上に資する原子力の研究、開発及び利用の促進に寄与することを目的として、原子力に関する基礎的研究等の業務を行っている。
 貴機構が行う高速増殖炉の研究開発は、既存の原子力発電所を中心とした軽水炉サイクルに替わるものとして高速増殖炉サイクルを技術的に確立し、長期的なエネルギーの安定供給に寄与することを目的としている。そして、この高速増殖炉サイクルは、〔1〕 核燃料を製造する核燃料製造施設、〔2〕 核燃料を核分裂させてエネルギーを取り出すとともにウラン238(注1) をプルトニウム239に変化させる原子炉(高速増殖炉)、〔3〕 核分裂によりエネルギーを取り出した後の核燃料(以下「使用済核燃料」という。)を再処理してプルトニウム等の新しい核燃料の原料を取り出す再処理施設をそれぞれ整備することによって確立されるものである。
 高速増殖炉の研究開発については、原子力基本法等に基づき内閣府に設置されている原子力委員会が昭和42年に策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(」以下「長期計画」という。)において、60年代の初期に実用化することを目標として、42年度から本格的に着手し、これを強力に推進していくこととされた。その後、長期計画は平成12年度までに数次にわたって改定されており、高速増殖原型炉(注2) の建設時期、実用化時期等についてもその都度見直しが行われてきた。
 また、17年10月に原子力委員会が決定した原子力政策大綱(12年度以前の長期計画に相当する。以下「政策大綱」という。)においては、貴機構が建設及び管理を行っている高速増殖原型炉「もんじゅ(」以下「もんじゅ」という。)の成果等に基づいた実用化への取組を踏まえつつ、ウラン需給の動向等を勘案し、経済性等の諸条件が整うことを前提に、62年(2050年)頃から商業ベースでの導入を目指すことなどとされている。さらに、22年6月に閣議決定されたエネルギー基本計画(以下「基本計画」という。)においては、22年5月に試運転が再開されたもんじゅの成果等を反映しつつ、37年(2025年)頃までの実証炉の実現、62年(2050年)より前の商業炉の導入に向け、引き続き、経済産業省と文部科学省とが連携して研究開発を推進するなどとされている。

(注1)
 ウラン238  ウランには燃える(核分裂する)ウラン235と燃えない(核分裂しにくい)ウラン238があり、天然ウランにおけるウラン238の割合は99.3%を占めている。しかし、この燃えないウラン238は、中性子を吸収すると燃えるプルトニウム239に変わる性質を持っている。
(注2)
 高速増殖原型炉  高速増殖炉の研究開発は、実験炉で技術の基礎を確認し、原型炉で発電技術を確立して、実証炉で経済性を見通すことにより、商業炉として実用化を目指すものであり、高速増殖原型炉とはこのうちの原型炉をいう。

(2)  もんじゅの研究開発の概要等

ア もんじゅの研究開発の経緯

 もんじゅは、エネルギーの安定供給と環境保全の両立を目的として、貴機構が高速増殖炉の開発及びこれに必要な研究の一環として福井県敦賀市に建設中(炉の据付けは完了、使用前検査は未完了)の高速増殖炉の原型炉である。既存の原子力発電所に設置されている軽水炉が、減速材及び冷却材(注3) として軽水(普通の水)を使用しているのに対して、高速増殖炉であるもんじゅは、高速中性子を利用するために、減速材を使用せず、冷却材としてはナトリウム(注4) を使用している。そして、もんじゅは、運転の過程において消費した以上の燃料を生み出しつつ発電することができる我が国唯一の高速増殖炉である。貴機構は、敦賀本部(10年9月30日以前は敦賀事務所)及び同本部に所属する高速増殖炉研究開発センター(昭和60年10月28日から平成17年9月30日までは高速増殖炉もんじゅ建設所、昭和57年10月1日から60年10月27日までは高速増殖炉もんじゅ建設準備事務所、51年8月1日から57年9月30日までは敦賀事務所、49年4月1日から51年7月31日までは高速原型炉建設準備事務所。以下、敦賀本部と合わせて「センター等」という。)において、もんじゅの研究開発を実施している。
 貴機構は、43年9月にもんじゅの予備設計を開始し、60年10月に着工、平成3年5月に炉の据付けを完了した後、4年12月から運転しながらプラント全体の機能・性能を確認する性能試験(試運転)を行い、6年4月に初臨界(注5) を達成している。しかし、7年12月にナトリウム漏えい事故が発生したことから、貴機構は、14年5か月間にわたりもんじゅの運転を停止していた。そして、事故後、改造工事等が進められる中、22年3月に「独立行政法人日本原子力研究開発機構の中期目標を達成するための計画(中期計画)」が認可され、同計画において、運転再開後約3年間の性能試験の中で使用前検査を受けた後、原型炉として約10年間を目途に100%出力の本格運転をすることによって、「発電プラントとしての信頼性実証」及び「運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立」という所期の目的を達成することとされ、同年5月に運転を再開した。
 しかし、同年8月に、燃料交換の際に使用する炉内中継装置が原子炉容器内で落下するというトラブルが発生したため、貴機構は、23年6月に炉内中継装置を原子炉容器内から引き抜く作業を終了したが、引き続き現在も、23年度中に40%出力プラント確認試験を開始することを目指して復旧作業に取り組んでおり、もんじゅの運転は停止している。

(注3)
 減速材及び冷却材  減速材とは、核分裂によって放出される中性子の速度を下げる役割を果たすものであり、冷却材とは、核分裂によって放出される熱を、原子炉から取り出す役割を果たすものである。
(注4)
 ナトリウム  常温では銀白色の柔らかい固体であり、摂氏98度で液体となる。温まりやすく冷めやすくよく熱を伝えること、中性子の速度を減速させず、吸収も少ないこと、高い温度(約880度)まで沸騰しないことが冷却材としての利点であるが、温度が高い液体ナトリウムが空気に触れると酸素と反応して黄色の炎と白煙をあげて燃焼する。また、水に触れると激しく反応して水素を発生する。
(注5)
 初臨界  原子炉建設後、初めて核分裂反応が一定の割合で維持される状態になること

イ 関連施設の研究開発の経緯

 高速増殖炉サイクルを技術的に確立するためには、前記のとおり使用済核燃料の再処理技術が必要となることから、貴機構は、もんじゅから発生する使用済核燃料を基に再処理施設で使用する機器の研究開発を行うため、茨城県那珂郡東海村に所在する東海研究開発センター(17年9月30日以前は東海事業所等)において、昭和62年4月からリサイクル機器試験施設(Recycle Equipment Test Facility。以下「RETF」という。)の概念設計を開始し、このうち試験棟(地下2階、地上6階、建築面積3,800m2)の建設を平成7年7月から行っていた。しかし、同年12月に発生したもんじゅのナトリウム漏えい事故等を受けて設置された関係機関による会議における各種議論の結果等を踏まえて、試験棟の建物部分が完成し一部の研究用機器が納品されたまま、12年7月以降RETFの建設を中断している。

ウ もんじゅの研究開発経費

 貴機構は、政府出資金、研究開発に係る補助金、運営費交付金等を財源として、もんじゅの研究開発を行うなどしている。そして、昭和55事業年度(以下、貴機構の事業年度を「年度」という。)から平成23年度までの間にもんじゅの研究開発に要したとされる総事業費を、建設費5886億円(うち政府支出4504億円)、運転費3595億円(全額政府支出)、計9481億円とホームページで公表している。また、前記のとおり、23年度中の40%出力プラント確認試験の開始後には性能試験を行い原型炉として本格運転を実施することとしているが、これらに係る今後の経費については、23年度予算に216億円(上記の9481億円の内数)を計上し、さらに、その後の当面の運転に係る経費を年間約230億円と想定している。

エ 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故後の対応

 貴機構は、23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震に起因する東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「福島第一原発事故」という。)を踏まえ、同年4月に「福島第一原子力発電所事故を踏まえた安全性向上対策の実行計画」を策定している。
 一方、国は、22年12月に開始した政策大綱の新たな策定に向けた検討について、福島第一原発事故の発生に伴い中断していたが、23年8月に再開するとともに、高速増殖炉サイクルの技術開発を含めた基本計画の見直しを検討している。

(3) 独立行政法人の行う業務の透明性の確保

 独立行政法人は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)の定めるところにより、その業務の内容を公表することなどを通じて、その組織及び運営の状況を国民に明らかにするよう努めなければならないとされている。
 そして、貴機構は、通則法の趣旨に沿って、前記のもんじゅの研究開発に要したとされる総事業費を公表している。

2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 もんじゅの研究開発については、これまで多額の国費が投じられてきたこと、7年12月のナトリウム漏えい事故以来長期間運転を停止していたが22年5月に運転を再開したことなどから、国民の関心が極めて高く、国会においても議論されているところであり、さらに、国は、福島第一原発事故を踏まえ、政策大綱の新たな策定に向けた検討を再開するとともに、高速増殖炉サイクルの技術開発を含めた基本計画についても見直しを検討している。このような状況の下、国会等においてもんじゅの研究開発に係る各種の議論や検討を行うに当たっては、もんじゅの研究開発に要した経費、今後必要とされる経費、関連施設の活用状況等、もんじゅに関する情報を適時適切に把握して、これらの客観的なデータ等に基づいて議論や検討を行うことが特に重要となる。
 そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、もんじゅの研究開発に要した経費、今後必要とされる経費等が適時適切に把握され公表されているか、もんじゅの運転停止の長期化に伴い活用が遅れることとなる関連施設の状況はどのようになっているかなどに着眼して検査した。

 (検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、貴機構本部、敦賀本部及び東海研究開発センターにおいて、建設当初から23年7月末までの間に実施されたもんじゅの研究開発等を対象として、決算書、固定資産台帳等の関係書類等により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) もんじゅの研究開発経費

ア 貴機構が公表しているもんじゅの研究開発に要した総事業費

 貴機構は、前記のとおり、23年度までの総事業費を9481億円と公表しており、このうち22年度までに要したとされる経費(以下「機構公表総事業費(22年度まで)」という。)は9265億2644万余円、その内訳は、建設費5886億0740万余円(昭和55年度から平成6年度まで。うち政府支出金4504億4250万余円、民間拠出金1381億6490万円)及び運転費3379億1904万余円(元年度から22年度まで。全額政府支出)とされている。このうち、建設費とは敦賀市に所在するもんじゅの建設等に要した経費であり、運転費とはもんじゅの運転及び維持管理に係る経費並びに7年12月に発生したナトリウム漏えい事故の原因究明、安全総点検、改造工事及び信頼性の向上に関する経費の合計額であるとしている。
 しかし、機構公表総事業費(22年度まで)9265億2644万余円は、もんじゅの研究開発に係る各年度の予算額の合計であって、もんじゅの研究開発に実際に支出された額とはなっていないことから、本院が、機構公表総事業費(22年度まで)に計上されている経費について、実際に支出された額を関係書類等に基づき確認するとともに、支出された額が他の事業に係るものと一括して整理されていた一部の経費については予算の細目を用いて案分するなどして集計したところ、もんじゅの研究開発に係る22年度までの総支出額は9106億3301万余円(建設費5860億3278万余円、運転費3246億0023万余円)となり、機構公表総事業費(22年度まで)よりも158億9343万余円少ない額となった。

イ 機構公表総事業費(22年度まで)に計上されていないもんじゅの研究開発に要した経費

 もんじゅの研究開発に要したにもかかわらず機構公表総事業費(22年度まで)に計上されていない経費がないか検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(ア) 昭和54年度以前の建設費

 貴機構は、もんじゅの建設について、43年度から予備設計を開始するなどして着手しているが、54年度以前の予算から支出された経費については、本格的な建設に入る前の準備段階の経費であり、もんじゅの研究開発以外の経費と区分して経理していないため、もんじゅの研究開発に要した経費の金額を正確に把握することができないとして、機構公表総事業費(22年度まで)には計上していなかった。
 そこで、本院が、43年度から54年度までの決算書等の関係書類を確認したところ、少なくとも46年度から54年度までの間に支出された原型炉建設準備費計38億3390万余円と、54年度予算を繰り越すなどして55年度から59年度までの間に支出された原型炉建設準備費計9億2434万余円の合計47億5825万余円は、もんじゅの建設費に該当するものであると認められた。

(イ) 貴機構職員の人件費

 センター等では多くの貴機構職員(平成22年度末現在では任期付職員を含めて計269名)がもんじゅの研究開発に従事している。貴機構は、研究開発プロジェクトの事業費には人件費を含めない取扱いが一般的であるとし、また、貴機構職員の人件費は貴機構全体として管理していてもんじゅの研究開発に従事した職員に係る分のみを把握することができないとして、機構公表総事業費(22年度まで)には計上していなかった。
 そこで、本院が、センター等においてもんじゅの研究開発に従事していた貴機構職員の人件費について、センター等が設置されていた昭和49年度から関係資料が保存されていた各年度の貴機構全体の給与支給総額に、センター等で勤務していた各年度力の職員数の全職員数に占める割合を乗ずることにより算出したところ、49年度から平成22年度までの間についての人件費は少なくとも計438億2885万余円となった。

(ウ) 固定資産税

 貴機構は、もんじゅに係る施設、設備等の固定資産税として支出した額についても、人件費と同様に、研究開発プロジェクトの事業費には含めない取扱いが一般的であるとして、機構公表総事業費(22年度まで)には計上していなかった。
 そこで、本院が、関係資料が保存されていた11年度以降に貴機構が敦賀市に納付した固定資産税の実績額を確認したところ、11年度から22年度までの間において貴機構が納付した固定資産税は計358億4710万余円となっていた。

(エ) 貴機構全体の安全対策の一環として実施されたもんじゅに係る各種改修工事の経費

 貴機構は、7年12月に発生したもんじゅのナトリウム漏えい事故等を受けて、貴機構の全施設・設備について安全性の総点検を実施し、必要な場合には各種の改修工事を行っていたが、もんじゅに係る改善措置として13年度から21年度までの間に実施されたこれらの改修工事については、もんじゅの研究開発を目的としたものではなく、貴機構全体の安全対策の一環として実施されたものであるとして、その工事費を機構公表総事業費(22年度まで)には計上していなかった。
 そこで、本院が、決算書等の関係書類により確認したところ、これらの改修工事に要した経費は計29億4280万余円となっていた。
 (ア)から(エ)までのとおり、建設費(昭和54年度以前分)47億5825万余円、人件費438億2885万余円、固定資産税358億4710万余円及び各種改修工事費29億4280万余円ももんじゅの研究開発に要した費用として公表すべきであると認められることから、これらを(ア) に示した9106億3301万余円に加えることにより、平成22年度末までの総支出額を算出すると9980億1003万余円となり、機構公表総事業費(22年度まで)9265億2644万余円を714億8358万余円上回るものとなる。

ウ 23年度以降に必要となる経費

 貴機構は、前記のとおり、もんじゅの研究開発に要する今後の経費として、23年度予算に216億円を計上し、24年度以降は毎年約230億円の経費を要するものと想定して公表している。
 しかし、これらの額には、イ(イ) 及び(ウ) と同様に、貴機構職員の人件費や固定資産税が含まれていない。
 そこで、本院が、23年度及び24年度以降の当面の運転に係る経費の予算額についても、イ(イ) 及び(ウ) と同様の方法で人件費等を含めることとして集計したところ、人件費は年額22億1687万余円、固定資産税は年額16億8025万余円となることから、貴機構の公表額である23年度の216億円は約254億円となり、24年度以降の約230億円は約268億円となる。
 なお、上記の経常的な経費の中には、福島第一原発事故を踏まえた安全性向上対策のための経費も含まれている。具体的には、電源車の配備や非常用ディーゼル発電機代替空冷電源設備の追加設置等に要する経費であり、貴機構は、23年7月末現在で、その額を計14億4205万円(うち23年度支出済額計1469万余円。22年度支出済額はない。)と見積もっている。

  及び のとおり、貴機構が公表しているもんじゅの研究開発に要した経費は、実際の支出額ではなく予算額の合計であり、また、昭和54年度以前の建設費が計上されておらず、人件費等が含まれていないなど、もんじゅの研究開発に要した経費の全体規模を示すものとはなっていない。一方、もんじゅの研究開発については、平成7年12月のナトリウム漏えい事故以来14年5か月ぶりに運転を再開したものの、運転再開後間もなく炉内中継装置が落下するトラブルが生じて運転を停止していて、国民の関心も極めて高く、国会においても議論されており、さらに、福島第一原発事故を踏まえ、高速増殖炉サイクルの技術開発を含めた基本計画について見直しが検討されるなどしているところである。このような状況の下では、もんじゅの研究開発に要した経費をその全体規模が把握できるように公表することが、業務の内容を公表することなどを通じて組織及び運営の状況を国民に明らかにするよう努めなければならないとする通則法の趣旨にも沿うものと認められる。
 したがって、貴機構は、もんじゅの研究開発に要した経費について、国会等で行われる政策議論等に際して客観的なデータとして活用できるものとするよう、その範囲と内容を明確にし、本院が算出したように過去の建設費や人件費、固定資産税等の経費も含めて集計し、公表することが必要であると認められる。

(2) 投資効果が長期間発現していないもんじゅの関連施設

ア RETFの建設等に要した経費

 前記のとおり、貴機構は、東海研究開発センターにおいて、昭和62年4月からもんじゅの関連施設としてRETFの概念設計を開始し、平成7年7月に試験棟の建設に着工していたが、建物部分が完成し一部の研究用機器が納品されたまま、12年7月以降RETFの建設を中断している。
 貴機構は、RETFについて、昭和63年度以降、建設費として計816億9678万余円を支出している。そして、維持管理費は平成11年度以降支出しているが、このうち関係書類が保存されていて支出額を確認できた17年度から22年度までの間の維持管理費は計1億7897万余円となっている。また、RETFのうち建物部分については、実際には使用していないものの使用可能な状態であるとして、12年度に茨城県が不動産取得税を、12年度以降に東海村が固定資産税及び都市計画税をそれぞれ賦課しており、貴機構は、12年度に係る不動産取得税2億3854万余円、12年度から22年度までの間に係る固定資産税計7億9960万余円及び都市計画税計1億7134万余円、合計12億0949万余円を納付している。
 そして、前記の建設費の額にこれらの額を加えると、RETFの建設等に係る支出額は830億8525万余円となるが、貴機構はこれらの経費について公表していない。しかし、もんじゅの関連施設の研究開発に要した経費についても、もんじゅの研究開発に要した経費と同様な趣旨から、その範囲と内容を明確にし、公表することが必要であると認められる。

イ RETFの今後の利活用の見通し

 RETFは、高速増殖炉の運転により発生する使用済核燃料の再処理技術を開発するための試験施設であることから、もんじゅの運転に伴って実際に使用済核燃料が発生しない限り、その本来の用途での使用は行えないこととなる。12年7月以降建設を中断しているRETFの利活用については、19年4月に文部科学省、経済産業省、電気事業連合会、日本電機工業会及び貴機構(以下「五者協議会」という。)で取りまとめた「第二再処理工場(注6) に係る2010年頃からの検討に向けた準備の開始について」において、五者協議会の第二再処理工場に関する議論を踏まえて検討することとされており、貴機構によると現在も引き続きその検討が行われているとしていて、現段階においては、RETFの建設再開及び供用開始のめどは立っていない状況となっている。
 したがって、RETFの建物部分は、建物内で使用済核燃料を取り扱うことができるなど原子力関連施設としての特長を備えていながら、本来の用途に供されるめどが立っていないまま使用されることなく管理のための経費を要して存置されている状況となっている。

 第二再処理工場  青森県上北郡六ヶ所村に建設中の再処理工場とは別に、現在建設が検討されている再処理工場。高速増殖炉だけでなく軽水炉の使用済核燃料も再処理の対象とすることが想定されている。

 (1) 及び(2) のとおり、RETFの建設等に要した経費830億8525万余円を含めた貴機構が行うもんじゅ及びその関連施設の研究開発に係る総支出額は、22年度までの合計額で少なくとも1兆0810億9529万余円となり、前記の機構公表総事業費(22年度まで)9265億2644万余円を1545億6884万余円上回るものとなっている。
 また、RETFの建物部分は、本来の用途に供されるめどが立っていないまま使用されることなく管理のための経費を要して存置されている状況となっている。

 (改善を必要とする事態)

 もんじゅの研究開発は、前記のとおりナトリウム漏えい事故により長期間運転が停止されるなど、所期の目的を達成するにはなお相当の長期間を要することが見込まれており、また、福島第一原発事故を踏まえた基本計画の見直しが検討されるなどしているにもかかわらず、貴機構が行うもんじゅ及びその関連施設の研究開発に係る経費の全体規模が把握できるように公表されていなかったり、関連施設であるRETFの建設計画が中断していて建設再開及び供用開始のめどが立っておらず、その建設費、維持管理費等が多額に上っているにもかかわらず、使用可能な建物部分が使用されることなく存置されていたりしている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴機構において、次のことなどによると認められる。

ア もんじゅの研究開発については、所期の目的を達成するにはなお相当の長期間を要することが見込まれ、また、福島第一原発事故を踏まえた基本計画の見直しが検討されるなどしているにもかかわらず、もんじゅ及びその関連施設の研究開発に係る経費等の全体規模が把握できるように公表することの重要性に対する認識が十分でなかったこと

イ 国等における使用済核燃料の再処理技術等に関する方針の変更といった状況はあったものの、もんじゅの研究開発の遅れにより建設計画の中断が長期化しているにもかかわらず、RETFの建物部分の利活用に関する関係機関との協議・検討等が十分でなかったこと

3 本院が表示する意見

 もんじゅについては、国民の関心が極めて高く、国会においても様々な議論が行われ、また、福島第一原発事故を踏まえて高速増殖炉サイクルの技術開発を含めた基本計画の見直しが検討されるなどしていて、商業炉の導入に至るまでのスケジュールがより一層不明確なものとなっている。そして、このような状況の下、通則法の趣旨に沿って、その研究開発等について透明性を十分に確保して、国会等の政策議論等に資するようにすることが、特に重要となっている。
 ついては、貴機構において、もんじゅ及びその関連施設の研究開発経費について一層の透明性の確保を図るとともに、使用可能な関連施設の利活用を図るよう、次のとおり意見を表示する。

ア もんじゅ及びその関連施設の研究開発に要した経費の全体規模が把握できるように公表すべき範囲や内容を見直し、当該経費を今後必要になると見込まれる経費とともに適時適切に把握して公表すること

イ RETFについては、原子力関連施設としての特長を生かした利活用を行うことなどを含めて建物部分の暫定的な使用方法を幅広く検討するなどして、当面の利活用方法について早期に結論が得られるよう関係機関との協議等を行うこと