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公的研究費により物品を購入するに当たり、内部規程を確実に厳守することにより、研究者以外の者が物品の発注を行うこととするなどして、公的研究費の経理等が適正に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


公的研究費により物品を購入するに当たり、内部規程を確実に厳守することにより、研究者以外の者が物品の発注を行うこととするなどして、公的研究費の経理等が適正に行われるよう是正改善の処置を求めたもの

科目 預り金
部局等 独立行政法人国立成育医療研究センター(平成22年3月31日以前は国立成育医療センター)
公的研究費の概要 文部科学省、厚生労働省等から研究者に交付される科学研究費補助金、厚生労働科学研究費補助金等
研究者から管理及び経理の事務を委任された公的研究費 65億7400万余円 (平成19年度〜23年度)
上記のうち不適正な経理手続に係る物品購入額 35億0796万円  

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 公的研究費の経理等について

(平成24年10月26日付け 独立行政法人国立成育医療研究センター理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 公的研究費の管理・監査等

(1) 貴センターの概要

 貴センター(平成22年3月31日以前は国立成育医療センター。 以下同じ。)は、「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律」(平成20年法律第93号)に基づき、成育に係る疾患に関する高度かつ専門的な医療の向上を図ることなどを目的として、成育に係る疾患に関する医療(以下「成育医療」という。)について、調査、研究等を行っている。
 そして、貴センターは、「独立行政法人国立成育医療研究センター中期目標」(平成22年4月1日)により、成育医療に関する医療政策をけん引していく拠点としての役割を果たすために、運営費交付金以外の外部資金の積極的な導入に努めることとされている。 このことなどを背景として、貴センターに勤務する多数の研究者は、科学研究費補助金(以下「科研費」という。)、厚生労働科学研究費補助金(以下「厚労科研費」という。)等の公的研究費の交付を受けて研究を行っている。

(2) 公的研究費の適正な管理等のための取組に対する要請

 公的研究費については、不正な使用等が後を絶たないことから、公的研究費を配分している文部科学省、厚生労働省等(以下「配分機関」という。)や各研究機関が様々な対策を講じてきた。 しかし、対策が十分とは言えない面があったため、内閣府に設置されている総合科学技術会議は、18年8月に「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」(以下「取組指針」という。)を策定し、関係府省及び配分機関が競争的資金(注) の交付に当たり、研究者本人が経費の支出手続に直接関わらない仕組みの徹底、研究機関における研究費の使用等の規則の整備及び明確化並びに管理及び監査体制の整備を求めており、また、研究機関において取組指針にのっとった取組にできるだけ早期に着手し、遅くとも19年度には具体的に推進することなどを求めている。
 文部科学省は、取組指針を踏まえて、19年2月に、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年2月文部科学大臣決定。以下「ガイドライン」という。)を制定し、文部科学省等が配分する公的研究費を適正に管理させるために、研究機関に対して、発注及び検収業務について当事者以外によるチェックが有効に機能するシステムを構築及び運営することや、内部監査制度を整備することなどを求めている。
 また、厚生労働省も、厚労科研費の経理等について定めた「厚生労働科学研究費補助金における事務委任について」(平成13年厚科第332号厚生科学課長決定。 以下「事務委任通知」という。)を20年2月に改正するなどして、研究機関に対して、厚労科研費の執行及び管理について、適切な経費の管理が可能な事務体制等の整備を図り、研究者本人が経費の支出手続にできる限り直接関わらない仕組みを構築することや、適正な経理を確保するために、内部監査を実施できる体制を整備することなどを求めている。

(注)
競争的資金  配分機関が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む多数の者による科学的及び技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金で、科研費及び厚労科研費もこれに含まれる。

(3) 貴センターにおける公的研究費の管理

 貴センターは、16年1月以降、研究者が交付を受けた公的研究費について、経理の適正化を図るために定めた「国立成育医療センター研究費事務委任要領」(以下「事務委任要領」という。)等に基づき、その管理及び経理の事務については研究者が総長に委任することとしたが、研究に必要な物品の発注及び検収については研究者が行うこととしていた。
 しかし、19年11月以降は、ガイドラインを踏まえて定めた「国立成育医療センターにおける公的研究費の管理・監査の実施基準」(以下「管理監査基準」という。)に基づき、会計課等の職員が物品の発注事務及び納入物品の検収を行うこととし、公的研究費の執行は国の会計等の基準に準拠することとしていた。
 そして、貴センターは、22年4月の独立行政法人化以降は、「独立行政法人国立成育医療研究センター競争的研究資金取扱規程」(平成22年規程第47号。 以下「取扱規程」という。)を定めて、公的研究費に係る契約等の経理については、「独立行政法人国立成育医療研究センター会計規程」(平成22年規程第57号。以下「会計規程」という。)等の規定に準じて取り扱うこととしている。また、「独立行政法人国立成育医療研究センター競争的研究資金管理・監査要領」(平成22年要領第10号。以下「管理監査要領」という。)を定めて、公的研究費の交付を受けた研究者はその管理及び経理の権限を総長に委任しなければならないこととしており、物品の発注事務については企画経営部研究医療課の職員が、納入物品の検収については総務部総務課の職員がそれぞれ行うこととしている。

(4) 貴センターにおける内部監査

 貴センターは、19年11月以降、ガイドラインを踏まえて、公的研究費の適正な管理のために、政策医療企画課の職員に内部監査を実施させている。また、22年4月の独立行政法人化以降は、取扱規程に基づき、会計書類に対する確認のほか、公的研究費の管理体制の不備についても検証を行うこととし、理事長に直属する監査室を設置して、同室に公的研究費の内部監査を行わせている。そして、監査室は、公的研究費を含めた内部監査の結果についての報告書を作成して、理事長に提出することとなっている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 株式会社メド城取(以下「メド城取」という。)が、23年10月に、民事再生法(平成11年法律第225号)の適用の申請において、貴センターがこれまで認識していなかった債権379,813,983円をメド城取に対して有しているとしたことを契機として、同年11月以降、研究用物品の架空発注等により取引業者に研究費をプールするいわゆる「預け金」の疑いがあるという報道がなされた。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、研究者に交付された公的研究費は取扱規程等に従って適切に管理されているか、特に物品の購入が適切に行われているかなどに着眼して、貴センターにおいて、検査した。

 (検査の対象及び方法)

 貴センターにおいて、19年度から23年度までの間に、公的研究費を交付された研究者から管理及び経理の事務を委任された1,283研究課題(公的研究費交付額合計65億7400万余円(科研費8億1882万余円、厚労科研費48億1678万余円、その他9億3838万余円))を対象として、物品の納品書、請求書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、メド城取が東京地方検察庁の捜査に関連して、会計帳簿等を同庁に提出しているため、現時点では、「預け金」の実態が確認できなかったものの、次のことが判明した。

ア メド城取の23年6月期の貸借対照表の仮受金の内訳書には、仮受金として貴センターの債権とされた379,813,983円と同額が計上されている。また、22年6月期及び21年6月期にも同様に、仮受金がそれぞれ399,211,376円、414,982,045円計上されている。

イ メド城取の再生計画案等を調査した公認会計士が裁判所の監督委員に提出した報告書には、メド城取が取引先に対して架空請求書を発行し、取引先からは売買代金名目にて金銭の支払を受けるとともに、取引先担当者との間では仮受金(預り金)として扱う取引を行っていたことが記載されている。

 そこで、公的研究費の経理状況等について更に検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 なお、疑いがあると報道された貴センターの「預け金」については、その実態を解明するために、引き続き検査していく。

(1)  公的研究費の経理

ア 物品の発注

 貴センターは、前記のとおり、19年11月以降は会計課の職員に、22年4月の独立行政法人化以降は企画経営部研究医療課の職員に研究者が研究に必要な物品の発注を行わせることとしていたが、19年11月から会計実地検査後の24年3月までの間は依然として研究者が物品の発注を行っていた。
 このことについて、貴センターは、独立行政法人化に伴う組織の変更や規程類の整備等の業務面における様々な改変等により日々の業務が煩雑となったため、発注体制の整備に早期に着手することができなかったなどのためとしている。

イ 予定価格調書の作成

 貴センターは、19年11月以降、管理監査基準等により、公的研究費で予定価格が100万円以上の物品を購入する場合には、会計課(22年4月の独立行政法人化以降は企画経営部研究医療課)の職員が、仕様書、設計書等に基づき、予定価格調書を作成することなどとしている。
 しかし、実際は、前記のとおり、研究者が物品の発注を行っており、契約も当該研究者名義で締結されていて、予定価格調書は作成されていなかった。

ウ 契約方式

 貴センターは、19年11月以降、管理監査基準等により、公的研究費で予定価格が160万円以上の物品を購入する場合には、一般競争契約又は指名競争契約に付すことなどとしている。
 しかし、実際は、前記のとおり、研究者が物品の発注を行っており、契約も当該研究者名義で締結されていて、一般競争契約又は指名競争契約は行われていなかった。

エ 検収

 貴センターは、前記のとおり、19年11月以降は会計課の職員等に、22年4月の独立行政法人化以降は総務部総務課の職員に、物品の検収を行わせることとしていたが、19年11月から21年10月までの間は依然として研究者が納入された物品の検収を行っていた。
 そして、同年11月以降は、会計課等(22年4月以降は総務部総務課)の職員が検収を行うよう改めていたものの、購入した100万円以上の研究用機器については、研究者が発注の際に仕様書、設計書等を作成していないため、必要な性能等を具備した物品であるか確認することができず、単に数量だけを確認して検収が行われたこととしていた。

 このように、適正とは認められない経理手続により、貴センターが19年度から23年度までの間に公的研究費により購入した物品の額は、合計35億0796万余円(科研費分の計5億2209万余円、厚労科研費分の計23億9687万余円、その他の分の計5億8899万余円)となっていた。 また、このうちメド城取から購入した物品の額は、6億4798万余円(科研費5042万余円、厚労科研費4億6741万余円、その他1億3014万余円)となっていた。

(2) 公的研究費の内部監査

 科研費の交付を受けた研究者がいる研究機関は、文部科学省が定める「科学研究費補助金の使用について各研究機関が行うべき事務等」に基づき、前年度に交付を受けた件数のおおむね10%以上について内部監査を実施して、文部科学省に報告することとされている。
 そして、監査室が22年度に実施した内部監査は、前年度に交付を受けた77研究課題のうちの4研究課題であり、実施率は5.1%にとどまっていたが、23年度は119研究課題のうちの12研究課題であり、実施率は10.0%になっていた。
 また、厚労科研費の交付を受けた研究者がいる研究機関は、事務委任通知に基づき、前年度に交付を受けた件数のおおむね10%について内部監査を実施して、厚生労働省に報告することとされている。
 しかし、監査室が実際に内部監査を実施したのは23年度からであり、その実施件数は前年度に交付を受けた170研究課題のうちの5研究課題であり、実施率は2.9%にとどまっていた。 また、貴センターは、この内部監査の結果を厚生労働省に報告していなかった。
 貴センターは、公的研究費の一部しか内部監査を実施していなかったことなどについて、22年度は監査室を設置した初年度であり、策定した内部監査計画における重点項目には、公的研究費を含めていなかったためであるとしている。 また、23年度は、貴センターの研究者が研究代表者として厚労科研費の交付を受けていた44研究課題のみが監査の対象であったとして、そのうちの10%に相当する件数を内部監査することとしていたためであるとしている。
 そして、貴センターは、内部監査の結果、公的研究費については適正な収支管理が行われていたなどとしていた。
 しかし、(1) のとおり、実際は、内部規程に違反した会計経理が行われるなどの事態となっていたのに、監査室は内部監査においてこれらの事態を看過するなどしていた。

 (是正改善を必要とする事態)

 研究者が物品の発注を行っていたり、仕様書、設計書等に基づき予定価格調書を作成していなかったり、一般競争契約又は指名競争契約に付していなかったりしていて内部規程に違反している事態や、仕様書、設計書等を作成していないため検収が適切に実施できないのに行われたとしている事態、内部規程に違反した会計経理を監査室による内部監査において看過するなどしている事態は適正ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、研究者において、適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたことにもよるが、貴センターにおいて、次のことなどによると認められる。

ア 公的研究費は個々の研究者に交付されるため個人への補助という性格を有するが、その原資が国民が納めた税金である以上、公的研究費の管理を貴センター自らの責任において適切に行うことが重要であるのに、その理解が十分でなかったこと

イ 公的研究費に係る内部監査の重要性について理解が十分でなかったことなどから、監査室の内部監査において内部規程に違反した会計経理を看過するなどしていたこと

3 本院が求める是正改善の処置

 公的研究費の経理等については、その原資が国民が納めた税金である以上、国民の信頼に応えるために、公的研究費を管理する研究機関においては、適正な事務処理の確保を図っていくことが重要である。そして、貴センターにおいては、今後とも多数の研究者が公的研究費の交付を受けて研究を行っていくことが見込まれている。
 ついては、貴センターにおいて、公的研究費の経理等が適正に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 公的研究費により物品を購入する場合は、内部規程を厳守して発注事務を行ったり、予定価格調書を作成したり、一般競争又は指名競争に付したりするよう徹底を図るとともに、仕様書、設計書等に基づき検収を適正に実施すること

イ 監査室の内部監査において、会計書類に対する確認のほか、内部規程に基づいた会計経理が行われているかなどについても十分に留意して内部監査を行うことなどとするとともに、内部監査計画において公的研究費を重点項目として位置付けるなどして内部監査を適正に行うようにすること