科目 | 経常収益 | |
部局等 | 国立大学法人大阪大学 | |
貸付けの概要 | 自動販売機、売店等を設置するために施設等の一部を貸し付けるもの | |
貸付けの相手方 | 一般財団法人恵済団(平成23年11月30日以前は財団法人恵済団) | |
競争性及び透明性を確保する必要がある不動産賃貸借契約に係る貸付料 | 1482万円 | (平成22、23両事業年度) |
一般財団法人恵済団が販売会社から支払を受けていた手数料等 | 1億1580万余円 | (平成22、23両事業年度) |
国立大学法人大阪大学が増収を図ることができた額 | 6311万円 | (平成22、23両事業年度) |
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴法人は、学生及び教職員の福利厚生並びに医学部附属病院(以下「病院」という。)の患者等の便宜のために、大学構内に飲料等の自動販売機、飲食物等の売店、食堂等(以下、これらを合わせて「自販機等」という。)を設置している。 そして、貴法人は、病院等において、貴法人以外の者に自販機等を設置及び運営させるため、「国立大学法人大阪大学資産貸付取扱要領」(平成16年制定。以下「貸付要領」という。)に基づき、施設等の一部(以下、単に「施設」という。)を貸し付けている。
貸付要領によれば、施設の貸付料については、自販機等の売上額の多寡にかかわらず、新規貸付けの場合は近隣に所在する類似貸付事例や民間精通者の意見等により算定すること、継続貸付けの場合は前回の貸付料に所定の率を乗ずるなどして算定することとされている。
貴法人は、貸付要領に基づき、平成22、23両事業年度に、一般財団法人恵済団(23年11月30日以前は財団法人恵済団。以下「恵済団」という。)及び民間業者等15社(以下、これらを合わせて「恵済団等」という。)と計49件の不動産賃貸借契約を締結して施設を貸し付けており、22事業年度は自動販売機105台及び売店等15か所に係る貸付料計796万余円、23事業年度は自動販売機109台及び売店等14か所に係る貸付料計781万余円、合計1578万余円の支払を受けている。
貴法人が行う契約については、国立大学法人大阪大学会計規程(平成16年総長制定)等により、公告して申込みをさせることにより競争に付するものとされている。 ただし、契約の性質又は目的が競争を許さないときなどは随意契約によるものとされており、また、予定賃借料の総額が500万円を超えない物件を貸し付けるときなどにも随意契約(以下、このような随意契約を「少額随契」という。)によることができることとされている。
一方、貴法人が19年12月に策定した「随意契約見直し計画」によると、随意契約によることが真にやむを得ないもの以外、企画競争又は総合評価落札方式の導入を図るなどの措置を講ずることとされている。
また、21年6月に文部科学大臣が決定した「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」によると、財務内容を改善させるため、「国立大学法人は多様な資金調達による自己収入の増加等について更に努めること」、効果的・効率的な法人運営を推進するため、「随意契約について、各法人の見直し計画に基づく取組を着実に実施するとともに、一般競争入札等により契約を行う場合であっても、特に企画競争等を行う場合には競争性、透明性を確保するなど、随意契約の適正化の推進に努めること」とされている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、自販機等を設置するための施設の貸付けに係る契約が適切に行われているか、自販機等の運営による利益を貴法人が適切に享受しているかなどに着眼して、貴法人が22、23両事業年度に恵済団等と締結した前記の不動産賃貸借契約計49件、貸付料計1578万余円を対象として検査した。 検査に当たっては、貴法人において、施設の貸付けに関する書類等により会計実地検査を行うとともに、貸付先による自販機等の運営の状況等についても、貴法人に対して調査及び報告を求めるなどして検査した。
検査したところ、22、23両事業年度の恵済団に対する施設の貸付けにおいて、次のような事態が見受けられた。
貴法人は、自販機等を設置させるため、表のとおり、恵済団に対して施設の貸付けを行い、22事業年度748万余円、23事業年度733万余円、計1482万余円の貸付料の支払を受けていた。
貸付対象施設 | 事業年度 | 貸付料(円) | 自動販売機(台) | 売店等(箇所) |
病院の施設 | 22 | 7,450,744 | 52 | 14 |
23 | 7,295,117 | 52 | 13 | |
計 | 14,745,861 | \ | \ | |
医学部の施設 | 22 | 38,153 | 7 | 0 |
23 | 37,376 | 7 | 0 | |
計 | 75,529 | \ | \ | |
合計 | 22 | 7,488,897 | 59 | 14 |
23 | 7,332,493 | 59 | 13 | |
計 | 14,821,390 | \ | \ |
そして、恵済団は、売店等4か所を除く自販機等の設置及び運営を計18社(22事業年度は計19社)の飲食物等の販売会社に委託して行わせており(以下、このような設置及び運営の形態を「委託方式」という。)、恵済団から貴法人に支払われた当該自販機等に係る施設の分の貸付料は、22事業年度215万余円、23事業年度205万余円、計420万余円となっていた。
貴法人は、恵済団に前記の施設の貸付けを行うに当たり、病院の施設の貸付け(22、23両事業年度の貸付料計1474万余円)については、一般競争入札等によって契約する業者を決定した場合、自販機等の設置及び運営に不慣れな業者等が落札して契約上の義務違反等が生じて病院運営に多大な支障を来すおそれがあることなどから、契約の性質又は目的が競争を許さないとして、また、医学部の施設の貸付け(同計7万余円)については、少額随契に該当するとして、いずれも随意契約により不動産賃貸借契約を締結していた。
しかし、病院の施設の貸付けについては、貴法人において、企画競争による随意契約や総合評価落札方式による一般競争入札を行うに当たり、業務遂行能力を適切に確認した上で契約する業者を決定することとすれば、自販機等の設置及び運営に不慣れな業者等を排除できることから、契約上の義務違反等により病院運営に多大な支障を来す事態の発生を防ぐことは十分可能と認められる。
また、前記のとおり、恵済団は、大半の自販機等の設置及び運営を委託方式により行っているが、この場合、自販機等の設置及び運営に係る実際の業務、すなわち自動販売機に係る機械の設置、商品の補充、売店等の営業等の業務は販売会社が実施していることから、貴法人は、契約の相手方を恵済団に限定しなくても、競争性及び透明性を確保した上で、実際に当該業務を実施している者と直接契約することが可能と認められる。
以上のことから、貴法人が、契約の競争性及び透明性を確保しないまま随意契約により恵済団に対して病院の施設の貸付けを行っているのは適切とは認められない。
また、医学部の施設の貸付けについては、少額随契に該当するとして不動産賃貸借契約を締結しているが、自動販売機の設置及び運営を委託方式により行っていることから、貴法人において、病院の施設の貸付けに係る契約と合わせて、原則として、契約の競争性及び透明性を確保した上で、契約する必要があると認められる。
ア 恵済団における利益
貴法人は、恵済団に施設の貸付けを行うに当たり、貸付要領に基づき、自販機等の売上額の多寡にかかわらず、前年度の貸付料に所定の率を乗ずるなどして貸付料を算定していた。
一方、恵済団は、前記のとおり、一部の売店等を除く自販機等の設置及び運営を委託方式により行っているが、販売会社との契約において、自販機等の売上額に応じた手数料等の支払を受けることなどを定めており、販売会社から22事業年度5826万余円、23事業年度5753万余円、計1億1580万余円の手数料等の支払を受けていた。
そこで、恵済団が販売会社から支払を受けた手数料等を収入とし、貴法人に支払った当該自販機等に係る施設の分の貸付料を支出として、恵済団における委託方式による自販機等の運営に係る収支をみると、恵済団は、22、23両事業年度において計1億1159万余円の利益を得ていたと考えられる。
イ 貴法人が得ることができた増収額
貴法人は、恵済団から、貴法人の病院等における研究助成を目的とする寄附金及び病院で使用する医療機器等の現物寄附(以下、これらを合わせて「寄附金等」という。)として、22事業年度2722万余円、23事業年度2126万余円、計4848万余円相当の納付を受けていた。
上記の寄附金等は、恵済団の定款に基づくものであり、貴法人との間の不動産賃貸借契約書において納付する旨が定められているものではないが、毎年度、恵済団全体の事業活動による収入を基に支払われている。そのため、貴法人は、寄附金等の納付を受けることにより、恵済団における自販機等の運営による利益の一部を享受する結果になっていると考えられる。
しかし、前記のとおり、貴法人が恵済団から納付を受けた寄附金等の額は、22、23両事業年度ともに、恵済団における委託方式による自販機等の運営による利益の額を大幅に下回っていた。
したがって、恵済団が病院及び医学部において委託方式により行っている自販機等の設置及び運営の業務について、貴法人が販売会社に当該自販機等に係る施設の貸付けを直接行い、恵済団と同様にその売上額に応じた手数料等の支払を受けることとしていれば、恵済団から貴法人への当該自販機等に係る施設の分の貸付料の支払額及び前記の寄附金等の納付額を差し引いても、貴法人は、22事業年度2889万余円、23事業年度3421万余円、計6311万余円の増収を図ることができたと認められる。
以上のように、病院及び医学部に自販機等を設置させるための施設の貸付けに係る契約について、貴法人が競争性及び透明性を確保した上で契約の相手方を決定することができるのに、恵済団と随意契約を締結している事態、その結果、貴法人が販売会社に施設の貸付けを直接行っていれば得ることができた適切な利益を享受していない事態は、いずれも適切でなく、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴法人において、次のことなどによると認められる。
ア 自販機等を設置するための施設の貸付けを行うに当たり、競争性及び透明性を確保した上で契約することの重要性についての認識が十分でないこと
イ 自販機等の運営による適切な利益を享受することについての検討が十分でないこと
貴法人は、学生及び教職員の福利厚生並びに病院の患者等の便宜のために、今後も引き続き自販機等を設置するための施設の貸付けを行うことが見込まれる。また、貴法人は、各種契約における競争性及び透明性の確保や自己収入の増加に努めることが求められている。
ついては、貴法人において、学生及び教職員の福利厚生並びに病院の患者等の便宜を損なわないことを前提としつつ、自販機等を設置するための施設の貸付けに係る契約の方法及び内容を見直すことにより、契約の競争性及び透明性を確保するとともに、自己収入の増加を図るよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 契約の相手方については、原則として自販機等の設置及び運営を自ら行う販売会社等を対象として、競争性及び透明性を確保した上で決定すること
イ 施設の貸付けに係る契約において、自販機等の収支等を踏まえた上でその売上額に応じた手数料等の支払を受けることとするなどして、自販機等の運営による適切な利益を享受できるようにすること