科目 | 管理費用 | |
部局等 | 阪神高速道路株式会社本社、大阪管理部 | |
契約名 | 保全管理工事(22—土木)等2契約 | |
工事の概要 | 高速道路の土木維持工事、高速道路清掃業務及び緑地維持業務を委託するもの | |
契約の相手方 | 阪神高速技術株式会社 | |
契約 | 平成22年4月、23年4月 随意契約(単価契約) | |
上記の契約に係る支払額 | 165億1546万余円 | (平成22、23両年度) |
簡易補修工(2tトラック)の直接工事費の積算額 | 3億8640万余円 | (平成22、23両年度) |
上記のうち諸雑費の積算額 | 6168万余円 | |
低減できた諸雑費の積算額 | 4800万円 | (平成22、23両年度) |
阪神高速道路株式会社(以下「会社」という。)の大阪管理部は、毎年度、7月1日から翌年の6月30日までを契約期間として、土木維持工事、高速道路清掃業務及び緑地維持業務を行う保全管理工事を、阪神高速技術株式会社に随意契約(単価契約)により委託して実施している。 そして、この契約に係る支払額は、平成22年度契約分で計87億8706万余円、23年度契約分で計77億2839万余円、合計165億1546万余円となっている。
上記の土木維持工事のうち道路維持工事は、簡易補修工、区画線補修工等の種類に区分されていて、このうち簡易補修工は、日常点検等において確認された道路構造物の損傷について、後日、少量の材料を用いて簡易な補修を行うことで機能回復等を図るものであり、補修の対象は、遮音壁、塗装等多岐にわたっている。
大阪管理部は、簡易補修工の積算に当たっては、会社制定の「土木工事設計積算基準(保全工事編)」等(以下「積算基準」という。)に基づき行っており、積算基準によると、簡易補修工は、補修の対象や作業内容に応じて、遮音壁補修材、塗装補修材、ガードレール補修材等の工種に区分されている。
大阪管理部は、2tトラックを使用する簡易補修工(以下「簡易補修工(2tトラック)」という。)の積算に当たっては、直接工事費のうち、一般運転手の労務費、2tトラックの損料及び燃料費(以下、これらを合わせて「トラック運転費」という。)並びに諸雑費により、作業1回当たりの単価(以下「直工単価」という。)を算定している。 このうち諸雑費は、積算基準によれば、工種の区分にかかわらず、発電機、ガス切断機、電気ドリル、ディスクサンダー等の補修機器等の損料等として、トラック運転費に諸雑費率19%を乗じた額を計上することとされている。
大阪管理部は、毎年度、簡易補修工(2tトラック)の直工単価を過年度における実績数量等を参考にして施工箇所の地区別(大阪、兵庫、京都)、昼夜間別、所要作業時間別(1日、半日)及び施工箇所別(高速道路上、高速道路外)の各条件を組み合わせた施工条件ごとに算定しており、その額は、22年度では12,211円から34,867円までの額、23年度では12,065円から35,183円までの額となっている。
会社は、毎年、簡易補修工を多数実施しており、これに要する費用は多額となっている。
そこで、本院は、本社及び大阪管理部において、経済性等の観点から、簡易補修工の積算が施工の実態に即したものとなっているかなどに着眼して、簡易補修工(2tトラック)の作業実施回数22年度6,776回及び23年度7,702回に係る直接工事費の積算額計3億8640万余円(22年度計1億7677万余円、23年度計2億0963万余円 。このうち諸雑費22年度計2822万余円、23年度計3346万余円、合計6168万余円)を対象として、契約書、設計書、施工写真等の関係書類の内容を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
会社は、旧阪神高速道路公団時の17年度に補修機器等の費用とトラック運転費を調査した結果に基づき、同年度以降、諸雑費率を19%としてきたが、この補修機器等の費用は、工種にかかわらず、1回の作業において全ての種類の補修機器等が使用されることを前提にして算定したものであった。
しかし、補修機器等の使用実態について工種ごとにみたところ、例えば、遮音壁補修材の場合では発電機、ガス切断機、インパクトレンチ等は使用されているがディスクサンダー等は使用されていなかったり、塗装補修材の場合では発電機、ディスクサンダー等は使用されているがガス切断機等は使用されていなかったりなど、実際には工種によって必要となる種類の補修機器等だけが使用されていた。 そこで、22、23両年度の補修機器等の使用実態に即して諸雑費率を計算すると4.2%となり、この率を用いて簡易補修工(2tトラック)の直工単価を算定すると、22年度は10,693円から30,530円までの額、23年度は10,564円から30,807円までの額となった。
上記のように、簡易補修工の積算に当たり、簡易補修工(2tトラック)の直工単価について、工種にかかわらず全ての種類の補修機器等が使用されることを前提とした諸雑費率を用いて算定していて、直接工事費の積算が補修機器等の使用実態に即したものとなっていなかった事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記のとおり補修機器等の使用実態に即して算定した簡易補修工(2tトラック)の直工単価を基に直接工事費の積算額を算出すると、22年度計1億5478万余円、23年度計1億8355万余円、合計3億3834万余円、このうち諸雑費は22年度計623万余円、23年度計739万余円、合計1363万余円となり、前記の諸雑費計6168万余円を計約4800万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、会社において、簡易補修工(2tトラック)の各工種における補修機器等の使用実態を把握していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社は、24年8月に、積算基準を改正し、簡易補修工の諸雑費率を補修機器等の使用実態に即したものに改定して各部局へ通知するとともに、24年度契約について、委託先と協議を実施して、同年10月出来高分から改正後の積算基準を適用する契約変更を行うこととする処置を講じた。