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請負契約による鉄道車両の定期検査において、実施基準等に基づいて実施され、検査の結果が適切に記録されて報告されるよう是正改善の処置を求めたもの


 請負契約による鉄道車両の定期検査において、実施基準等に基づいて実施され、検査の結果が適切に記録されて報告されるよう是正改善の処置を求めたもの

科目 (款)鉄道事業営業費
部局等 北海道旅客鉄道株式会社本社
契約名 車両検査工事
契約の概要 運転所等において、車両の定期検査として実施基準等に基づいて車両の各種装置の作用及び機能等について交番検査を実施するもの
契約 平成23年4月 随意契約(単価契約)
請負人 株式会社ジェイアール四国メンテナンス
交番検査を実施した延べ車両数 1,239両(平成23年度)
上記のうち検査が適切に実施されていなかったり実測値が記録されていなかったりしている延べ車両数  987両
交番検査に係る支払額 1億0288万余円 (平成23年度)
上記のうち検査が適切に実施されていなかったり実測値が記録されていなかったりしている額 8540万円  

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 鉄道車両の定期検査について

(平成24年10月26日付け 四国旅客鉄道株式会社代表取締役社長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 鉄道車両の定期検査の概要

(1) 鉄道車両の定期検査の基準

 貴会社は、「鉄道営業法」(明治33年法律第65号)、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令(」平成13年国土交通省令第151号。以下「技術基準」という。)及び「施設及び車両の定期検査に関する告示(」平成13年国土交通省告示第1786号。以下「告示」という。)に基づき、保有して運行している鉄道車両(以下「車両」という。)の定期検査を実施することとされている。
 そして、貴会社は、技術基準に基づき、気動車(ディーゼルカー)、電車等の車両の種類ごとに、検査周期等の技術基準の実施に関する基準として「内燃動車整備実施基準」(平成14年社達第54号)等(以下「実施基準」という。)を定めている。
 また、貴会社は、「車両管理規程」(昭和62年社達第31号)に基づき、定期検査の対象箇所等を「気動車整備準則」(平成7年運車第182号)等(以下「整備準則」という。)により定めるとともに、整備準則に基づき、定期検査の作業内容、技術的数値等について、「気動車整備要領」(平成7年運車第193号)等(以下「整備要領」という。)を定めている。

(2) 車両の定期検査の種類

 貴会社は、告示に従い、実施基準において、気動車、電車等の車両の種類ごとに、車両の定期検査の種類及び周期について定めており、気動車の場合を例にすると、次のとおり定めている。

ア 交番検査は、走行装置、動力発生装置、動力伝達装置、電気装置、ブレーキ装置、車体等の状態、作用及び機能について在姿状態で定期検査を行うものであり、90日を超えない期間ごとに行うこととする。

イ 要部検査は、動力発生装置、動力伝達装置、走行装置、ブレーキ装置、その他の重要な装置の主要部分について定期検査を行うものであり、48か月又は走行距離が50万㎞を超えない期間のいずれか短い期間ごとに行うこととする。

ウ 全般検査は、気動車全般について定期検査を行うものであり、96か月を超えない期間ごとに行うこととする。

 そして、貴会社は、実施基準、整備準則及び整備要領等(以下、これらを合わせて「実施基準等」という。)に基づき、交番検査については高松、松山、徳島、高知各運転所(以下、これらの交番検査実施運転所を「運転所」という。)、宇和島運転区において、また、要部検査及び全般検査については多度津工場において、それぞれ実施している。

(3) 車両の定期検査の実施状況

 貴会社は、平成23年度において、保有して運行する気動車、電車等の車両計431両について、多度津工場で直営により76両分の要部検査及び81両分の全般検査(これらに係る直営分費用(注) 14億3038万余円)、運転所等で車両検査工事契約(以下「請負契約」という。)により延べ1,239両分の交番検査(これに係る費用1億0288万余円)をそれぞれ実施している。

 直営分費用  直営により実施している検査に係る人件費や材料費等の費用

(4) 請負契約による交番検査

 貴会社は、運転所等において直営により実施していた交番検査について、経費削減等を目的として請負契約により実施することとしており、23年度においては、株式会社ジェイアール四国メンテナンスと随意契約を締結して実施している。
 そして、請負契約の契約書によれば、交番検査等の車両検査工事(以下「交番検査等工事」という。)は、車両検査工事共通示方書、交番検査等工事個別示方書等(以下、これらを「示方書」という。)に基づき行うこととされており、示方書によれば、請負人は、交番検査等工事を実施基準等に基づき実施して、車両ごとの工事完了時に検査の記録を貴会社に提出することとされている。
 また、示方書によれば、請負契約の適切な履行確認を行うため、契約ごとに検査員を指定することとなっており、運転所等の検査員は、交番検査等工事の検査の結果を記録した帳票類(以下「記録表」という。)の提出を受けたときは、示方書等の関係書類と照合し確認するなどの完了検査を行う旨が定められている。

(5) 交番検査の記録

 技術基準によれば、鉄道事業者が車両の定期検査を行ったときは、その記録を作成し、保存しなければならないとされていることから、貴会社は、整備要領において、車両の定期検査を行ったときには、交番検査記録表、車輪寸法記録表等の記録表に、装置の作用及び機能について測定するなどの検査の結果として記録すべきことを規定している。そして、請負契約においては、示方書により、交番検査等工事の完了時に、これらの記録表等を提出することとしており、交番検査等工事個別示方書では、寸法測定により良否の判定を行う検査項目については、実測値を記録表に記入することとされている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 定期検査は、車両を安全に運行できる状態を保つために必要不可欠であり、車両の装置の不具合を早期に把握するためにも重要なものであって、これに要する経費は毎年度多額に上っている。また、貴会社では、過去に車両故障等による輸送障害等が発生している。
 そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、車両の定期検査は実施基準等に基づいて適切に実施されているか、請負契約による定期検査は示方書等に基づいて適切に実施されているか、検査記録は適切に整備され、車両の管理に有効に活用される状態となっているかなどに着眼して検査した。

 (検査の対象及び方法)

 貴会社が23年度に保有して運行していた気動車、電車等の車両計431両の定期検査に係る費用のうち、車両数の少ない車種の車両計105両についての交番検査に係る費用を除いた15億1578万余円を対象として検査した。
 検査に当たっては、貴会社本社、多度津工場及び4運転所において、定期検査の実施状況について、契約書、記録表等の関係書類及び現場の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 交番検査の実施状況

 ブレーキシリンダのピストンが往復する距離については、整備準則等において、寸法測定により装置の状態について良否の判定を行うこととされている検査項目であるのに、4運転所は、請負人が寸法を測定しておらず、目視による機能確認しか行っていなかった。また、ブレーキ管圧力の減圧時間については、整備準則等において実際に減圧時間を測定し性能を確認することとされているのに、1運転所は、請負人が減圧時間を測定しておらず、目視によるブレーキ装置の機能確認しか行っていなかった。このように、交番検査の一部の検査項目が整備準則等に基づいて実施されておらず、装置に不具合があっても検査時に把握できない可能性がある状況になっている事態が、4運転所の延べ車両数881両分の交番検査(これに係る費用7725万余円)で見受けられた。
 そして、運転所の検査員は、請負人が整備準則等に基づいて検査を実施しておらず、提出された記録表に検査の結果についての記録が記入されていないのに、これを看過していた。
 これらについては、交番検査において、一部の検査項目が車両を安全に運転することができる状態に保持することを目的とした整備準則等に基づいて実施されておらず、また、運転所の検査員による履行確認が十分に行われていない事態であり、交番検査が適切に実施されていないと認められる。

(2) 交番検査の記録表の整備状況

 整備要領において寸法測定により検査を行うこととされている検査項目については、前記のとおり、請負契約による報告書として実測値を記録表に記入することとされているのに、運転所ごとに直営で交番検査を実施していた頃から使用している記録表に、実測値の記録すべき項目がないものもあり、記録内容が運転所により異なるものとなっていた。このように、整備要領等により検査項目は明確にされているのに、記録すべき項目が明確になっていないため、同一の検査を行っていても記録内容が異なっていて、車両故障等が発生したときにその原因を究明するための分析を行うなど車両の保守管理を行うために検査記録を有効に活用することができない状況になっているものが、4運転所の延べ車両数987両分の交番検査(これに係る費用8540万余円)で見受けられた。
 そして、運転所の検査員は、提出された記録表に検査の結果についての記録の一部が記入されていないのに、これを看過していた。
 これらについては、請負契約による報告書としての検査記録が適切に整備されておらず、車両の保守管理を行うために検査記録を有効に活用できない状況になっているとともに、運転所の検査員による履行確認が十分に行われていないと認められる。

 上記の(1)、(2)の各項目に係る車両には重複しているものがあり、その重複を除くと、4運転所の延べ車両数は987両分となり、これらの交番検査に係る費用は8540万余円となる。

 (是正改善を必要とする事態)

 上記のように、請負契約により実施している交番検査において、一部の検査項目が実施基準等や示方書等に基づいて実施されていなかったり、記録表が示方書等に基づいて作成されていなかったりしていて、貴会社による請負契約の履行確認が十分に行われていないとともに、検査記録が適切に整備されておらず、検査記録を車両の保守管理を行うために検査記録を有効に活用できない状況になっている事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、請負人において、車両の定期検査について、実施基準等や示方書等に基づき実施しなければならないという基本的な認識が十分でないことにもよるが、貴会社において、請負人に対する指導、監督等が十分でないこと、検査の結果を適切に記録し整備することについての認識が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 車両の定期検査は、鉄道輸送の信頼性を確保する上で重要なものであり、車両の装置に不具合があった場合に早期に把握するためにも、定期検査を適切に実施していくことが求められる。
 ついては、貴会社において、車両の定期検査が実施基準等や示方書等に基づき実施され、検査の結果が適切に記録されて報告されるよう、記録すべき項目を明確にして請負契約の履行確認を適切に行うなど、請負人に対する指導、監督等が適切に行われるよう体制を整備するとともに、実施基準等や示方書等の遵守と検査記録の適切な整備について運転所等へ周知することにより、請負契約による車両の定期検査が適切に実施されるよう是正改善の処置を求める。