会社名 | (1)東日本電信電話株式会社 | ||
(2)西日本電信電話株式会社 | |||
科目 | 設備投資勘定 | ||
部局等 | (1)本社、16支店 | ||
(2)本社、32支店 | |||
電子基板の概要 | 専用線装置等に搭載して加入者回線を収容する電子基板 | ||
電子基板の購入数及び購入費 | (1)4,484枚 | 2億5518万余円 | (平成22、23両年度) |
(2)2,153枚 | 2億1388万余円 | (平成22、23両年度) | |
節減できた電子基板の購入数及び購入費 | (1)4,439枚 | 2億4690万円 | (平成22、23両年度) |
(2)2,136枚 | 2億1145万円 | (平成22、23両年度) |
東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)は、加入者が申し込んだ区間において専用の直通回線(以下「専用線」という。)を使用した専用サービス及びデータ伝送サービス(以下、これらを合わせて「専用線サービス」という。)を提供している。主な専用線サービスとしては、高速ディジタル伝送サービス、ATMメガリンクサービス及びメガデータネッツがある。
専用線サービスにおける加入者宅から電話局までの回線(以下「加入者回線」という。)は、高速ディジタル伝送サービスにおいては、電話局内に設置する専用サービスノード装置(以下「専用線装置」という。)に搭載する高速ディジタル伝送サービス用電子基板に収容されている。また、ATMメガリンクサービス及びメガデータネッツにおいては、ATM形加入者収容装置(以下、専用線装置とこの装置を合わせて「専用線装置等」という。)に搭載するATMメガリンクサービス用電子基板及びメガデータネッツ用電子基板(以下、これらを合わせて「ATM用電子基板」という。)に収容されている。
両会社は、両会社の各子会社に専用線サービスを含む設備運営業務をそれぞれ委託しており、業務委託仕様書において各子会社は物品在庫を適正に管理すると定めている。
そして、両会社は、専用線装置を導入する以前に設置した高速ディジタル伝送サービスに使用している旧装置の老朽化に伴い、加入者回線を旧装置から専用線装置へ収容替えする工事(以下「収容替え工事」という。)を毎年度計画的に行っている。収容替え工事の際には、専用線の設計を行うための両会社の社内システム(以下「専用線システム」という。)を各子会社に使用させている。また、専用線が廃止された場合は、加入者回線を収容しない状態で電子基板を専用線装置等に搭載しておき、収容替え工事や新たな契約で必要になると、これらの加入者回線を収容していない電子基板(以下「遊休電子基板」という。)を転用したり、電子基板を購入したりしている。
近年、加入者が申し込んだ複数の区間において通信ができる新たなサービスが提供されるようになったことから、専用線サービスの契約回線数は毎年度減少しており、多くの遊休電子基板が発生している。一方、両会社は、収容替え工事や新たな契約に必要であるとして電子基板を購入している。
そこで、本院は、経済性等の観点から、各支店の電子基板の調達が適切に行われているかなどに着眼して、NTT東日本の4支店(注1)
、NTT西日本の4支店(注2)
、計8支店において会計実地検査を行った。そして、NTT東日本の全17支店(注3)
が購入した電子基板、平成22年度1,369枚(1億0119万余円)、23年度3,115枚(1億5399万余円)、NTT西日本の全33支店(注4)
のうち32支店(注5)
が購入した22年度1,425枚(1億3776万余円)、23年度728枚(7612万余円)を対象として、全50支店における遊休電子基板の保有数に係る書類等により検査を行った。
検査したところ、電子基板の調達状況について次のような事態が見受けられた。
両会社の22、23両年度期首における遊休電子基板の保有状況についてみると、高速ディ ジタル伝送サービス用電子基板については、NTT東日本の全17支店が22年度期首に計16,265枚、23年度期首に計15,734枚、NTT西日本の全33支店が22年度期首に計6,938枚、23年度期首に計7,337枚をそれぞれ保有していた。また、ATM用電子基板については、NTT西日本の全33支店が22年度期首に計1,723枚、23年度期首に計1,767枚を保有していた。NTT東日本は、両年度期首のATM用電子基板の遊休電子基板の保有数を記録していなかったが、24年8月時点において両年度の購入数の約30倍に当たる1,069枚を保有しており、高速ディジタル伝送サービス用電子基板の24年度期首における遊休電子基板の保有数(18,682枚)が、22、23両年度期首の保有数と同程度であったことなどから、ATM用電子基板についても購入数を十分賄える枚数の遊休電子基板を両年度期首において保有していたと認められた(表1
及び表2
参照)。
表1 NTT東日本の遊休電子基板の保有数、電子基板の購入数等
品名 | 保有数(注) | 購入数 A | 転用できる遊休電子基板がなかったもの B | 転用できる遊休電子基板があったもの A—B | ||||
平成22年度期首 | 23年度期首 | 22年度 | 23年度 | 22年度 | 23年度 | 22年度 | 23年度 | |
高速ディジタル伝送サービス用電子基板 | 16,265 | 15,734 | 1,361 | 3,091 | 10 | 35 | 1,351 | 3,056 |
ATM用電子基板 | 1,069 | 1,069 | 8 | 24 | 0 | 0 | 8 | 24 |
計 | 17,334 | 16,803 | 1,369 | 3,115 | 10 | 35 | 1,359 | 3,080 |
表2 NTT西日本の遊休電子基板の保有数、電子基板の購入数等
(単位:枚)
品名 | 保有数 | 購入数 A | 転用できる遊休電子基板がなかったもの B | 転用できる遊休電子基板があったもの A—B | ||||
平成22年度期首 | 23年度期首 | 22年度 | 23年度 | 22年度 | 23年度 | 22年度 | 23年度 | |
高速ディジタル伝送サービス用電子基板 | 6,938 | 7,337 | 1,070 | 591 | 10 | 7 | 1,060 | 584 |
ATM用電子基板 | 1,723 | 1,767 | 355 | 137 | 0 | 0 | 355 | 137 |
計 | 8,661 | 9,104 | 1,425 | 728 | 10 | 7 | 1,415 | 721 |
このように、遊休電子基板を十分保有していたのに、両会社は、収容替え工事等に必要であるとの各子会社からの提案を受けて、前記のとおり、電子基板を購入していた。
しかし、専用線システムを使用すれば、両会社の遊休電子基板の保有状況を把握できることから、各子会社は、同システムで遊休電子基板の保有状況を確認できたと認められた。
したがって、各子会社は遊休電子基板の保有状況を十分確認せずに購入の提案を行っていたのに、両会社がこれを適切に審査せずに新たに電子基板を購入している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
電子基板の中には、特定の会社が製造した専用線装置等にしか搭載できないため、転用できないものがあることから、前記の購入数のうち、転用できないNTT東日本の22年度10枚、23年度35枚、NTT西日本の22年度10枚、23年度7枚を除き、遊休電子基板を支店内又は支店間で転用して利活用したとすれば、NTT東日本の16支店(注6) が購入した電子基板22年度1,359枚、23年度3,080枚、計4,439枚、NTT西日本の32支店が購入した電子基板22年度1,415枚、23年度721枚、計2,136枚は購入する必要がなく、NTT東日本で22年度9842万余円、23年度1億4847万余円、計2億4690万余円、NTT西日本で22年度1億3633万余円、23年度7511万余円、計2億1145万余円の購入費をそれぞれ節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 両会社の支店において、子会社が支店内及び他支店における遊休電子基板の保有状況を十分に確認せず購入を提案していたのに、提案の際の確認並びに子会社に対する指示及び監督が十分でなかったこと
イ 両会社の本社において、支店の電子基板の調達状況を確認しておらず、支店に対する遊休電子基板の利活用を図ることについての指導が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、NTT東日本は24年9月に、NTT西日本は24年8月に、それぞれ支店、子会社等に対して指示文書を発し、遊休電子基板の利活用を図るための具体的な指示及び指導を行うとともに、本社において遊休電子基板の保有状況を一元的に管理することにより、専用線装置等に搭載する電子基板の効率的な使用及び購入費の節減を図る処置を講じた。