会社名 | (1) | 東日本電信電話株式会社 | |||
会社名 | (2) | 西日本電信電話株式会社 | |||
科目 | 営業費用 | ||||
部局等 | (1) | 本社、17支店 | |||
(2) | 本社、33支店 | ||||
遠隔加入者回線伝送装置の概要 | 電話局との距離が離れている加入者回線を集約し、電話局に伝送する装置 | ||||
平成24年6月末の設置台数 | (1) | 12,058台 | |||
(2) | 9,698台 | ||||
上記のうち契約電流が過大となっていた装置数及び節減できた基本料金(ア) | (1) | 1,599台 | 739万円 | (年額) | |
(2) | 447台 | 206万円 | (年額) | ||
設置台数のうち電力量を削減できる装置数及び電力量並びに節減できた電力量料金(イ) | (1) | 11,737台 | 183万kwh | 3505万円 | (年額) |
(2) | 9,334台 | 146万kwh | 2872万円 | (年額) | |
(ア)及び(イ)の合計額 | (1) | 4244万円 | (年額) | ||
(2) | 3078万円 | (年額) |
東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)は、加入電話、緊急通報、公衆電話等のあまねく日本全国において適切、公平かつ安定的に提供する必要がある電話サービス(以下「ユニバーサルサービス」という。)を固定電話網等により提供し、維持運営している。
固定電話網は、電話局に設置された伝送装置や交換機等に加え、電話局から遠方なため伝送損失が大きく多数の利用者が見込まれる地区に設置され、電話局に設置した伝送装置と接続し、加入者回線を集約する機能を持つ遠隔加入者回線伝送装置(以下「遠隔装置」という。)で構成されている。
(参考図)
遠隔装置は、1枚で加入者回線1回線を収容する電子基板(以下「回線基板」という。)を1台当たり最大512枚搭載できる仕様となっており、両会社は、路肩等や多数の利用者が見込まれる商業ビル等の建物の一角を賃借するなどして、平成24年6月末現在、遠隔装置を21,756台(NTT東日本12,058台、NTT西日本9,698台)設置している。
そして、遠隔装置は、1台当たり数kwの電力を必要とするため、両会社の各支店は、遠隔装置の設置箇所ごとに電力会社と電気の需給契約(以下「電力契約」という。)を締結するなどして受電している。
電気料金は、契約電流に応じた基本料金と電力使用量に応じた電力量料金等で構成されており、両会社の各支店は、電力契約の締結に当たり、遠隔装置の設置を請け負わせた通信建設会社に、本社が定めた技術資料に基づき、搭載枚数等に応じた最大電流を算出させ、それに応じた契約電流の決定と電力会社への電力供給申込みを行わせている。このうち、路肩等に設置する遠隔装置については、回線基板の搭載枚数にかかわらず契約種別及び契約電流を一律に定めている。
そして、支店は、遠隔装置の設置に際して、電話局外における設備の設置情報等を管理する「設備データベースマネジメントシステム」に遠隔装置の各種情報を、また、加入者回線を回線基板に割り付ける「回線マネジメントシステム」(以下、両システムを合わせて「社内システム」という。)に回線基板の情報をそれぞれ登録しており、受電開始後には、設置箇所ごとの電気料金請求明細書(以下「明細書」という。)に基づき電気料金を支払っている。
また、支店は、加入者から電話等の開通、解約等の申込みがあると、遠隔装置の設置箇所に通信建設会社の作業員を派遣して、回線の接続、切断等の作業(以下「派遣工事」という。)を行わせている。
両会社は、昭和58年から使用してきた旧型交換機の保守が困難になったため、平成20年から27年までの8年間に旧型交換機を更改する計画としており、これに合わせて旧型交換機に対応する遠隔装置も後継機種のものに交換している。なお、32年以降は固定電話網をルータ等を使用するIP通信網に順次切り替えることを計画しているため、遠隔装置は、少なくとも32年まで使用されることが見込まれている。
両会社が提供しているユニバーサルサービスのうち加入電話の回線数は、携帯電話の普及、他の電気通信事業者への契約変更、両会社が提供しているIP電話の拡大等により、毎年度9%程度の減少が続いている。また、23年3月の東日本大震災以降、電力需給状況はひっ迫しており、国内有数の電力の大口需要家である両会社は、各種の電力使用量の削減策に取り組んでいるが、23年度に両会社が支払った電気料金は計635億余円(NTT東日本327億余円、NTT西日本308億余円)に上っている。
そこで、本院は、経済性等の観点から、各支店に設置されている遠隔装置の電力契約に係る情報は社内システムを活用して適切に管理され、これにより電力使用量の削減等が行われているかなどに着眼して、電力契約、使用実績等についてNTT東日本9支店(注1)
、NTT西日本16支店(注2)
の計25支店において会計実地検査を行うとともに、両会社の本社から、遠隔装置に係る社内システムのデータ(24年6月、7月)の提出を受けるなどして、全50支店の遠隔装置に搭載されている回線基板の使用状況等について検査を行った。
(注1) | 9支店 東京、千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨、宮城、秋田、北海道各支店
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(注2) | 16支店 大阪、大阪東、大阪南、兵庫、名古屋、静岡、岐阜、金沢、富山、広島、島根、岡山、鳥取、愛媛、福岡、沖縄各支店
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検査したところ、次のような事態が見受けられた。
25支店において、支店が電力契約を締結している遠隔装置5,257台(NTT東日本3,761台、NTT西日本1,496台)について、派遣工事が増加し、これに伴い電力使用量も増える3月から5月までの明細書に基づき電力使用量等を検査したところ、ほとんどの支店では明細書を電力会社から紙媒体で受領しており、通信建設会社が電力供給申込みの際に契約名等を任意に届け出るなどしていたため、これらの明細書に記載された電力契約上の名称等からは特定できない遠隔装置が多く、また、社内システムには電力契約に関する情報を登録する項目がないなどのため、社内システムの情報と明細書の情報とを照合できず、電力使用量等を確認できた遠隔装置はNTT東日本で1,712台、NTT西日本で509台、計2,221台であった。
そして、契約電流は、想定される最大電流を賄えれば足りるものであるが、上記の遠隔装置2,221台については、過去の最大電流の記録がないため災害時等の最も電話利用が集中する場合の最大電流及び実際の電力使用量から求めた電流に余裕を考慮した最大電流をそれぞれ算出し、これらと契約電流とを比較した。その結果、NTT東日本で1,599台、NTT西日本で447台、計2,046台とその9割を超える遠隔装置において契約電流がいずれの最大電流も超えていて、過大となっており、これらに係る電力契約の基本料金が過大となっていた。
しかし、電力供給申込時の契約名称を社内システムに登録された名称に統一したり、明細書を電子媒体で入手したりすることにより、社内システムの情報と明細書とを効率的に照合できるよう管理していれば、加入者数が減少した場合でも各遠隔装置の最大電流等を適切に算出でき、これにより適切な契約電流で契約することが可能であったと認められた。
全50支店における、24年6月末現在の遠隔装置の設置状況及び回線基板の搭載状況は、表1 のとおりとなっており、搭載枚数に対する使用枚数の割合(以下「使用率」という。)は両会社が運用上の管理目標としている85%に比べて48%と低く、通信サービスに使用されないまま電力を消費している回線基板(以下「空き基板」という。)が半数以上を占めていた。
\ | 設置台数 (台) |
回線基板搭載枚数 A (枚)
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使用枚数 B (枚)
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使用率 B/A (%)
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空き基板枚数 (枚) |
使用率85%で必要な基板枚数 (枚) |
NTT東日本 | 12,058 | 2,249,885 | 1,080,571 | 48.0 | 1,169,314 | 1,275,028 | NTT西日本 | 9,698 | 1,818,630 | 886,499 | 48.7 | 932,131 | 1,044,644 |
計 | 21,756 | 4,068,515 | 1,967,070 | 48.3 | 2,101,445 | 2,319,672 |
そこで、撤去しても支障のない空き基板の枚数及びこれに係る消費電力を算出したところ、すべての遠隔装置の使用率が85%であるとした場合に、回線基板は、使用枚数を含めNTT東日本1,275,028枚、NTT西日本1,044,644枚、計2,319,672枚で足りることから、表2 のとおり、NTT東日本で974,857枚、NTT西日本で773,986枚、計1,748,843枚が撤去でき、年間消費電力をNTT東日本で約183万kwh、NTT西日本で約146万kwh、計約330万kwh削減することが可能であると認められた。
\ | 撤去できる空き基板が搭載されている台数 (台)
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撤去しても支障がない空き基板枚数 (枚)
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年間消費電力 (kwh)
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NTT東日本 | 11,737 | 974,857 | 1,839,924 | NTT西日本 | 9,334 | 773,986 | 1,460,280 |
計 | 21,071 | 1,748,843 | 3,300,204 |
以上のように、遠隔装置の電力契約に係る情報の適切な管理が行われていなかったために契約電流の見直しが行われず基本料金が過大となっていた事態や、節電が求められる状況下において、撤去しても支障がない空き基板を搭載したままにして電力を消費していた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
基本料金については、契約電流が過大となっており、かつ、契約電流の変更が可能な25支店の2,046台について、契約電流を引き下げることによりNTT東日本で年間739万余円、NTT西日本で同206万余円を節減でき、また、電力量料金については、空き基板の撤去が可能な全50支店の21,071台について、当該基板を撤去することによりNTT東日本で年間3505万余円、NTT西日本で同2872万余円を節減できたと認められた。
なお、両会社は32年までは、遠隔装置を使用することとしていることから、空き基板の撤去費を考慮してもそれ以上の節減効果を期待できると認められた。
このような事態が生じていたのは、電力契約の締結に当たり、通信建設会社に行わせている電力供給申込みについてその仕様を示していなかったり、電力契約締結後に電力会社から通知される顧客番号等の情報を社内システムの登録情報と関連付けていなかったりなどしていたこと、また、使用見込みのない空き基板を派遣工事に合わせて撤去していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、両会社は、24年9月に、遠隔装置の電力契約に係る情報の管理に関する指示文書等を各支店に発して、明細書を電子媒体で受領した上、電力契約に係る情報を社内システムの登録情報と関連付けて適切に管理するとともに、過大な契約電流を引き下げたり、空き基板を撤去したりするなどして、電力使用量を削減して経費の節減を図る処置を講じた。