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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第80 郵便事業株式会社)、第81 郵便局株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

熱需給契約における基本料金の節減を図るため、使用実績を踏まえて契約容量を適切に見直すとともに、契約容量の見直しを適時適切に行うための体制を整備するよう改善させたもの


(1)(2) 熱需給契約における基本料金の節減を図るため、使用実績を踏まえて契約容量を適切に見直すとともに、契約容量の見直しを適時適切に行うための体制を整備するよう改善させたもの

会社名 (1) 郵便事業株式会社
(2) 郵便局株式会社
((1)及び(2)は平成24年10月1日以降は「日本郵便株式会社」)
科目 (1) 営業原価
(2) 販売費及び一般管理費
部局等 (1) 本社、5支店
(2) 本社、2支社
熱需給契約の概要 各施設における空調等の設備の運用に必要な冷水、高温水、蒸気等の供給を受けるもの
契約の相手方 (1) 3熱供給事業者
(2) 2熱供給事業者
契約容量の概要 熱需給契約に基づき支払う使用料金のうち基本料金の算定の基となる契約上使用できる単位時間当たり最大熱量
基本料金の支払額 (1) 2億9723万余円 (平成22、23両年度)
(2) 3億2717万余円 (平成22、23両年度)
6億2440万余円  
上記のうち最大熱負荷容量の実績が契約容量を下回っていた支社等に係る支払額 (1) 8895万余円  
(2) 2億8752万余円  
3億7647万余円  
上記のうち節減できた額 (1) 817万円  
(2) 2376万円  
3194万円  

1 熱需給契約等の概要

(1) 施設の概要

 郵便局株式会社(以下「局会社」という。)及び郵便事業株式会社(以下「事業会社」という。)の両会社(平成24年10月1日以降は合併により「日本郵便株式会社」。以下、両会社を「2会社」という。)は、それぞれ郵便窓口業務等、郵便の業務等を行うため、本社のほか支社、直営郵便局、支店等の組織を各地に設置している。これらの組織は、24年3月末現在で、局会社においては本社のほか13支社、20,217直営郵便局等、事業会社においては本社のほか13支社、1,090支店等となっている。
 上記の組織のうち局会社の各支社の施設には事業会社等の他の日本郵政グループの会社が複数入居していること、また、事業会社の各支店の施設では郵便物等の区分等の業務が行われていることから、いずれの施設も比較的規模が大きい建物となっており、これらの施設が備える空調等の設備も大規模なものとなっている。
 そして、局会社の2支社(注1) 及び事業会社の8支店(注2) (以下「10支社等」という。)は、その管理する施設において空調等の設備の運用に必要な冷水、高温水、蒸気等(以下「冷水等」という。)の供給を受けるため、熱供給事業法(昭和47年法律第88号)等に基づき熱供給事業(注3) を営む者(以下「熱供給事業者」という。)との間で熱需給契約を締結している。

(注1)
 2支社  北海道、関東両支社
(注2)
 8支店  札幌、厚別、札幌南、日立、新宿、多摩、都筑、大阪国際各支店
(注3)
 熱供給事業  一般的に地域冷暖房と呼ばれており、一定地域内の建物群に対して、冷水等の熱媒を熱源プラントから導管を通じて供給する事業

(2) 熱需給契約の概要等

 10支社等が熱供給事業者と締結する熱需給契約、熱供給事業法等に基づき熱供給事業者が定めて経済産業大臣が認可する熱供給規程(以下「熱供給規程」という。)等においては、契約上使用できる最大熱負荷容量(注4) (以下「契約容量」という。)、使用料金等に係る事項が定められている。このうち使用料金は、固定額である基本料金と使用量に応じて課金される従量料金等との合計とされており、基本料金については、契約容量に所定の単価を乗ずるなどしてその月額を算定することとされている。
 そして、2会社は、20年から地球温暖化対策を始めとする環境保護への取組及び経費の削減を推進するため、その管理する施設について光熱水の使用量等の削減を目指す施策を実施しており、局会社及び事業会社の各支社等は、冷水等や各種エネルギーの使用量の削減に努めている。

 最大熱負荷容量  熱供給を受ける者が必要とする単位時間当たり最大熱量。 単位はメガジュール毎時(MJ/h)であり、メガジュール(MJ)は、熱供給事業で用いられる発熱量の計量単位の一つで、1メガジュールは約239キロカロリーに相当する。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 2会社は、前記のとおり、環境保護への取組等を推進して光熱水の使用量等を削減するための施策を実施していることから、冷水等の最大熱負荷容量の実績も減少する可能性がある。
 そこで、本院は、経済性等の観点から、各施設における過去の最大熱負荷容量の実績等を踏まえて契約容量が適切に設定されているかなどに着眼して、10支社等における22、23両年度の熱需給契約に係る基本料金の支払額計6億2440万余円(局会社の2支社の支払額3億2717万余円及び事業会社の8支店の支払額2億9723万余円)を対象として、熱需給契約書等の書類により会計実地検査を行うとともに、2会社本社から関係書類の提出を受けるなどして検査した。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 10支社等における契約容量の変更については、これらの支社等に適用されるいずれの熱供給規程においても、建物の増設、改造又は用途変更等により最大熱負荷容量に増減を生ずる場合に、熱供給事業者と協議の上これを行うことができることとされていた。そして、熱供給規程の実施上必要な事項について熱供給事業者が定めて経済産業大臣に届け出る熱供給規程実施細則(以下「実施細則」という。)をみると、事業会社8支店のうちの3支店(注5) に適用される各実施細則においては、最大熱負荷容量が契約容量を下回って契約容量を引き下げることとなる場合の具体的な条件が定められており、これに合致する場合には契約容量の引下げが行われていた。
 一方、局会社の2支社及び事業会社の5支店(注6) (以下「7支社等」という。)については、これらの支社等に適用されるいずれの実施細則においても、最大熱負荷容量が契約容量を下回って契約容量を引き下げることとなる場合の具体的な条件が定められておらず、契約容量見直しの時期についても特段規定されていなかった。
 そこで、7支社等について、19年度以降の最大熱負荷容量の実績と22、23両年度の契約容量とを比較したところ、 のとおり、事業会社の札幌南支店を除く6支社等において、最大熱負荷容量の実績が22、23両年度の契約容量を下回っていた。

表 最大熱負荷容量(平成19〜23年度)及び契約容量(平成22、23両年度)の比較

(単位:MJ/h)

会社 支社等 熱媒の種類 期間 区分 平成
19年度
20年度 21年度 22年度 23年度 19年度以降の最大熱負荷容量の実績が22、23両年度の契約容量を下回っているもの(〇)


北海道
支社
高温水 冬期 最大熱負荷容量 7,100 6,100 5,300 5,310 5,570
契約容量 7,702 7,702
夏期 最大熱負荷容量 4,700 4,100 4,700 4,610 4,610
契約容量 4,772 4,772
関東
支社
冷水 全期間 最大熱負荷容量 16,800 15,800 15,600 16,720 13,960
契約容量 19,650 19,650
蒸気 全期間 最大熱負荷容量 9,537 6,023 9,066 8,714 9,268
契約容量 10,537 10,537



札幌
支店
高温水 冬期 最大熱負荷容量 5,779 4,383 4,936 4,931 4,164
契約容量 6,000 6,000
夏期 最大熱負荷容量 4,598 3,746 2,867 5,782 3,627
契約容量 6,000 6,000
厚別
支店
温熱 冬期 最大熱負荷容量 2,310 2,470 1,560 2,740 3,370
契約容量 3,859 3,859
中間期 最大熱負荷容量 200 250 200 150 160
契約容量 188 188
夏期 最大熱負荷容量 2,490 2,420 2,280 2,100 2,240
契約容量 1,046 1,046
新宿
支店
冷水 全期間 最大熱負荷容量 2,800 3,000 3,000 3,320 2,600
契約容量 3,493 3,493
蒸気 全期間 最大熱負荷容量 2,521 2,520 2,520 2,974 2,822
契約容量 2,949 2,949
多摩
支店
蒸気 全期間 最大熱負荷容量 1,169 906 945 993 901
契約容量 1,443 1,218
注(1)  平成19年9月30日以前の最大熱負荷容量は、2会社が旧日本郵政公社であった当時の実績である。
注(2)  表中太枠の最大熱負荷容量は、平成19年度から23年度までの間の最大値を示している。

 しかし、前記のとおり、契約容量は、各熱供給事業者の熱供給規程において、建物の増設、改造又は用途変更等により最大熱負荷容量に増減を生ずる場合に熱供給事業者と協議の上変更することができるとされており、見直しの時期については特段定められていないことから、上記の6支社等は、適時に上記の協議を行って契約容量を見直すべきであった。
 また、7支社等のうち事業会社の札幌南支店は、最大熱負荷容量の実績を把握するために必要な計量器を設置しておらず、実績に基づく契約容量の見直しを行えない状況となっていた。
 以上のように、熱需給契約における基本料金の節減を図るための契約容量の見直しを適時適切に行っていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(注5)
 3支店  日立、都筑、大阪国際各支店
(注6)
 5支店  札幌、厚別、札幌南、新宿、多摩各支店

 (節減できた基本料金)

 6支社等が過去の最大熱負荷容量の実績を踏まえて毎年度契約容量を見直していたとすれば、22、23両年度の熱需給契約における基本料金の支払額3億7647万余円(局会社2億8752万余円、事業会社8895万余円)は3億4453万余円(局会社2億6375万余円、事業会社8078万余円)となり、3194万余円(局会社2376万余円、事業会社817万余円)を節減できたと認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、熱需給契約を締結している7支社等において、冷水等の経済的な調達を行うことの認識が十分でなく契約容量を適時適切に見直していなかったこと、また、2会社本社において、7支社等に対する契約容量の見直しに係る指導が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、2会社は、熱需給契約における基本料金の節減を図るため、次のような処置を講じた。

ア 7支社等のうち事業会社の札幌南支店を除く6支社等は、過去の最大熱負荷容量の実績を踏まえて契約容量を見直し、熱供給事業者と協議の上24年4月に契約容量の引下げを行うなどした。 また、事業会社の札幌南支店は、24年1月に計量器を設置し、最大熱負荷容量の実績を把握して契約容量の見直しを行えるようにした。

イ 2会社本社は、24年8月に各支社等に指示文書を発するなどして、その管理する施設について最大熱負荷容量の実績の把握や今後の使用量の見積りなどを的確に行い、契約容量の見直しを適時適切に行うよう周知徹底を図るとともに、この取組が確実に行われるよう、各支社等から2会社本社に対して契約容量の見直し状況の報告を定期的に行わせることとするなどの体制を整備した。