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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第82 株式会社ゆうちょ銀行|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

販売促進施策に使用する奨励物品の調達について、本社がエリア本部における調達状況を定期的に把握するなどの体制を整備し、一括して調達することが可能なものについては一括して調達することなどにより、契約事務を適切に実施するよう改善させたもの


販売促進施策に使用する奨励物品の調達について、本社がエリア本部における調達状況を定期的に把握するなどの体制を整備し、一括して調達することが可能なものについては一括して調達することなどにより、契約事務を適切に実施するよう改善させたもの

科目 経常費用

部局等

株式会社ゆうちょ銀行本社、5エリア本部

奨励物品の概要

概要金融商品の販売促進施策の一環として、店舗において顧客に対し配布する日用品等の物品

随意契約による奨励物品の調達に係る契約件数及び契約金額 1,272件 13億7887万余円 (平成22、23両年度)

上記のうち一括して調達するなどできた契約件数及び契約金額

47件 1億2390万円

1 奨励物品の調達等の概要

(1) 奨励物品の概要

 株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)は、平成19年10月1日に、郵政民営化法(平成17年法律第97号)に基づき設立され、銀行法(昭和56年法律第59号)等に基づく預金の受入れなどの業務(以下「銀行業務」という。)を本店、支店及び出張所において行っている。また、ゆうちょ銀行は、郵便局株式会社(24年10月1日以降は日本郵便株式会社)と銀行代理業務に係る契約を締結して、郵便局における銀行業務を委託している。
 そして、ゆうちょ銀行は、貯金の金利優遇を始めとする金融商品の販売促進施策(以下「販売促進施策」という。)を実施しており、その一環として、年数回、対象となる金融商品を一定の期間中に購入した顧客等に対し、本店、支店、出張所及び郵便局(以下「店舗」という。)において、日用品等の物品(以下「奨励物品」という。)を配布している。

(2) 奨励物品の調達の概要

 ゆうちょ銀行は、全国13か所に設置されたエリア本部(注1) において、当該エリア本部の管内の店舗において配布する奨励物品の調達を行っている。奨励物品の調達の契約事務は、同本部内の営業企画部からの調達要求に応じて、同本部内の総務部がその都度行っている。
 ゆうちょ銀行本社(以下「本社」という。)は、会計業務の適正を期することなどを目的として、「株式会社ゆうちょ銀行会計業務規程」(財務第100101号)、「会計業務マニュアル」等(以下、これらを合わせて「マニュアル等」という。)を定めている。そして、マニュアル等によれば、物品の調達等の契約事務を適正かつ効率的に行うこと、契約に当たってはゆうちょ銀行にとって最も有利な契約方式を選択することとされており、調達予定額が消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)を含めて500万円を超える場合等においては一般競争契約、500万円を超えない場合等は原則として随意契約によることとされている(以下、調達予定額が消費税を含めて500万円を超えないことを理由とした随意契約を「少額随契」という。)。

(注1)
全国13か所に設置されたエリア本部  北海道、東北、関東、南関東、東京、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄各エリア本部

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、経済性、効率性等の観点から、奨励物品の調達がマニュアル等に沿って適切に行われているかなどに着眼して、22、23両年度に12エリア本部(注2) が奨励物品の調達のために締結した契約1,381件(契約金額計27億0548万余円)を対象として、調達に係るりん議書、契約書、仕様書等の書類により会計実地検査を行った。

(注2)
12エリア本部  全13エリア本部中、東日本大震災の影響により会計実地検査を行わなかった東北エリア本部を除いた12エリア本部

 (検査の結果)

 検査したところ、奨励物品の調達に係る上記1,381件の契約のうち、9エリア本部(注3) が契約を締結した109件(契約金額計13億2661万余円)については、年度当初にあらかじめ実施時期が定められていた販売促進施策に係るものであり、複数の品目を販売促進施策ごとに一括して調達することなどにより1契約での調達予定額が500万円を超えていたことなどから、一般競争契約であった。そして、これらの契約については、契約金額の予定価格に対する落札比率の平均は90%となっていた。

(注3)
9エリア本部  北海道、関東、南関東、信越、東海、近畿、中国、四国、九州各エリア本部

 一方、上記の109件を除いた1,272件(契約金額計13億7887万余円)については、店舗からの求めに応じてその都度調達したり、品目ごとに調達したりなどしていたことにより、1契約での調達予定額が500万円を超えないことから、少額随契であった。
 しかし、これらの少額随契のうち、5エリア本部(注4) における47件(契約金額計1億2390万余円)については、年度当初にあらかじめ実施時期が定められていた販売促進施策に係るものであり、一括して調達することを検討すべきであったのに、これを十分行わないまま個別に調達を行うなどしていて、マニュアル等に沿った経済的かつ効率的な調達となっていないと認められた。

(注4)
5エリア本部  北海道、南関東、信越、近畿、九州各エリア本部

 これらを態様別に示すと、次のとおりである。

ア 年度当初にあらかじめ実施時期が定められていた販売促進施策に係る奨励物品を個別に少額随契により調達していたもの

 年度当初にあらかじめ実施時期が定められており、同一の又は同時期に行われる販売促進施策であったのに、これらに係る奨励物品を一括して調達することの検討を十分行わず、店舗ごと又は品目ごとに個別に同一の契約相手方から少額随契により調達していたものが、4エリア本部(注5) において40件(契約金額計9578万余円)見受けられた。
 しかし、これらの奨励物品について、調達要求、契約締結等の状況をみたところ、事務手続がほぼ同時期に実施されており、一括して調達することを十分検討していれば、一般競争契約とすることができたものと認められた。

(注5)
4エリア本部  北海道、南関東、近畿、九州各エリア本部

<事例>

 九州エリア本部は、平成23年6月20日から8月19日までの間に店舗が共同で販売促進施策を実施することとし、各店舗に指示して、要望する奨励物品の品目、数量等を同本部に報告させていた。その結果、納入時期がほぼ同一であったことから、これらを一括して調達することを検討すべきであったのに、これを十分行わずに地域の店舗ごとに契約を締結することとし、5月27日に計9件の契約(契約金額計2235万余円)をいずれも少額随契により締結していた。

イ 1件ごとの調達予定額が500万円を超えないように調整して少額随契としていたもの

 信越エリア本部は、23年6月から11月までの間に使用する奨励物品の品目、数量等を4月25日に決定していた。
 しかし、同本部営業企画部は、通常は奨励物品の品目、数量等を決定してから数日中に調達要求を行っているのに、直ちに調達要求を行わず、調達要求のりん議書を3週間後の5月17日に起案してその翌日に本部長の決裁を受けていた。その際、同部は、販売促進施策が開始される6月10日までに納品させる必要があるとし、一般競争契約の事務手続を行うために要する期間である約35日間が確保できないとして、調達予定の7品目の奨励物品(調達予定額計1795万余円)について、契約1件当たりの調達予定額が500万円を超えないように5件の契約に分割して、全て少額随契とすることを求めた。これを受けて、同本部総務部は、契約の締結を決定するためのりん議書を5月25日に起案し、同月30日に本部長の決裁を受けて、少額随契により計5件の契約(契約金額計1795万余円)を締結していた。

ウ 調達予定額には消費税を含めないと誤解して500万円を超える調達を少額随契としていたもの
 前記のとおり、マニュアル等においては、調達予定額が消費税を含めて500万円を超える場合には、一般競争契約によることとされている。
 しかし、2エリア本部(注6) は、消費税を含まない調達予定額が500万円を超えていない場合は少額随契によることとされていると誤解していた。このため、調達予定額が消費税を含めて500万円を超えていたのに少額随契としていたものが、2件(契約金額計1015万余円)見受けられた。

(注6)
2エリア本部  近畿、九州両エリア本部

 上記のように、同一の又は同時期に行われる販売促進施策に使用する奨励物品を一括して調達する検討を十分に行わないまま少額随契としていたり、1件ごとの調達予定額が500万円を超えないように調整して少額随契としていたりなどしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、エリア本部において、奨励物品の調達に当たり最も有利な契約方式を選択することなどマニュアル等に沿った適切な契約事務の実施についての認識が十分でなかったこと、また、本社において、エリア本部における奨励物品の調達状況の把握及び指導が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記について本院の指摘に基づき、ゆうちょ銀行は、24年8月に各エリア本部に対して指示文書を発するなどして、次のような処置を講じた。

ア 同一の又は同時期に行われる販売促進施策に使用する奨励物品については、エリア本部が一括して調達することが可能か否かの検討を行い、可能なものについては一括して調達することとした。

イ 調達予定額が消費税を含めて500万円を超えないように奨励物品の調達内容を意図的に分割して少額随契とすることがないようにすること、少額随契の対象は調達予定額が消費税を含めて500万円を超えない場合であることなどを周知した。

ウ 本社において、奨励物品の調達状況を定期的に把握するとともに、エリア本部に対する必要な指導等を行う体制を整備した。