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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について

検査対象 53省庁等
是正措置の概要 本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額 38省庁等、472件 12,429,279,285円
(検査報告昭和21年度〜平成22年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額 37省庁等、469件 11,618,383,317円

1 不当事項に係る是正措置の概要

 本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。
 省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。
 検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

〔1〕 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)

〔2〕 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付等することによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)

〔3〕 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)

〔4〕 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成22年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する53省庁等における24年7月末現在の是正措置の状況を対象として、32省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの21省等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

 (検査の結果)

 昭和21年度から平成22年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものは38省庁等における472件12,429,279,285円(注1) である。このうち金銭を返還させる是正措置を必要とするものは37省庁等における469件11,618,383,317円、金銭を還付する是正措置を必要とするものは5省等(注2) における13件4,427,273円、手直し工事等による是正措置を必要とするものは3府省(注3) における4件806,468,695円となっている。これを、平成22年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、平成21年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(注1)
 472件12,429,279,285円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがあるため、それぞれの是正措置の件数を合計しても472件とは一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。以下、件数及び金額の記載方法は、本文及び表において同じ。
(注2)
 5省等  厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人国立国際医療研究センター、独立行政法人国立成育医療研究センター
(注3)
 3府省  内閣府(内閣府本府)、農林水産省、国土交通省

(1) 平成22年度決算検査報告に掲記した不当事項の是正措置の状況

 検査の結果、平成22年度決算検査報告に掲記した不当事項425件(指摘金額の合計14,141,229,308円)のうち、395件13,493,224,190円(注4) については24年7月末までに是正措置が完了している。
 一方、残りの30件648,005,118円については24年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが29件532,103,277円あり、その状況は表1 のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが1団体(注5) における5件633,993円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが2省(注6) における3件115,267,848円ある。

(注4)
 395件13,493,224,190円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが345件7,693,419,733円あり、このうち、不納欠損として整理したものが2件17,807,206円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが3件54,367,357円、手直し工事等による是正措置が完了したものが25件763,126,747円、再発防止策による是正措置が講じられたものが47件4,982,310,353円となっている。
(注5)
 1団体  独立行政法人国立病院機構
(注6)
 2省  農林水産省、国土交通省

表1  平成22年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況
(単位:件、円)

省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの  
是正措置が未済となっているもの 返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
総務省 20 190,765,000 20 190,765,000
法務省 3 60,551,204 2 20,551,204 1 40,000,000 1 40,000,000
外務省 1 662,885 1 662,885
財務省 4 305,385,419 4 305,385,419
文部科学省 5 20,367,222 5 20,367,222
厚生労働省 247 6,205,595,073 233 5,891,550,344 14 314,044,729 12 237,848,082 2 76,196,647
農林水産省 37 236,603,306 32 201,373,025 5 35,230,281 5 35,230,281
経済産業省 11 196,017,075 11 196,017,075
国土交通省 16 567,176,279 15 557,201,482 1 9,974,797 1 9,974,797
環境省 5 128,143,523 4 17,451,523 1 110,692,000 1 110,692,000
防衛省 1 1,476,200 1 1,476,200
省庁計 350 7,912,743,186 328 7,402,801,379 22 509,941,807 2 49,974,797 18 383,770,363 2 76,196,647
日本私立学校振興・共済事業団 6 130,601,000 6 130,601,000
日本年金機構 1 5,976,000 1 5,976,000
独立行政法人情報通信研究機構 1 12,952,955 1 12,952,955 1 12,952,955
独立行政法人農畜産業振興機構 2 19,844,370 1 16,650,106 1 3,194,264 1 3,194,264
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 10,439,630 1 10,439,630
独立行政法人日本学術振興会 5 7,932,783 5 7,932,783
独立行政法人国立病院機構 7 98,939,340 2 92,925,089 5 6,014,251 5 6,014,251
独立行政法人都市再生機構 1 26,093,746 1 26,093,746
団体計 24 312,779,824 17 290,618,354 7 22,161,470 2 16,147,219 5 6,014,251
総合計 374 8,225,523,010 345 7,693,419,733 29 532,103,277 2 49,974,797 20 399,917,582 7 82,210,898
(注)
 平成24年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。

(2) 平成21年度以前の検査報告に掲記した不当事項の是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

 検査の結果、昭和21年度から平成21年度までの検査報告に掲記した不当事項において、23年7月末現在で是正措置が未済となっていた507件13,143,036,657円のうち、65件1,361,762,490円(注7) については24年7月末までに是正措置が完了している。
 一方、残りの442件11,781,274,167円については24年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが440件11,086,280,040円あり、その状況は表2 のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが5省等(注8) における8件3,793,280円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが1府(注9) における1件691,200,847円ある。

(注7)
 65件1,361,762,490円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが65件1,105,219,593円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが19件540,875,406円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが15件8,216,927円、手直し工事等による是正措置が完了したものが1件244,818,428円、再発防止策による是正措置が講じられたものが7件3,507,542円ある。
(注8)
 5省等  厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人国立国際医療研究センター、独立行政法人国立成育医療研究センター
(注9)
 1府  内閣府(内閣府本府)

表2  平成21年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況
(単位:件、円)

省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの  
是正措置が未済となっているもの 返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
法務省 8 260,360,737 1 3,770,081 7 256,590,656 6 256,263,656 1 327,000
外務省 2 20,179,404 1,000,000 2 19,179,404 1 11,914,499 1 7,264,905
財務省 22 429,179,851 1 9,198,377 21 419,981,474 7 321,254,253 14 98,727,221
文部科学省 1 33,606,972 1 33,606,972 1 33,606,972
厚生労働省 121 2,237,936,490 10 457,528,102 111 1,780,408,388 13 146,399,727 76 970,777,776 22 663,230,885
農林水産省 11 105,171,785 3 21,941,227 8 83,230,558 1 47,313,172 5 29,341,513 2 6,575,873
経済産業省 11 104,733,676 205,000 11 104,528,676 1 15,719,079 9 87,352,806 1 1,456,791
国土交通省 12 146,577,380 9 89,314,565 3 57,262,815 2 53,350,505 1 3,912,310
環境省 1 148,448,000 18,556,000 1 129,892,000 1 129,892,000
防衛省 7 75,131,511 572,244 7 74,559,267 6 70,843,592 1 3,715,675
省庁計 197 3,563,539,806 24 602,085,596 173 2,961,454,210 38 925,272,483 95 1,265,863,957 40 770,317,770
株式会社日本政策金融公庫 3 53,808,123 1 1,658,552 2 52,149,571 1 47,390,571 1 4,759,000
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門 1 8,362,535 1 8,362,535 1 8,362,535
全国健康保険協会 1 109,902,810 1 109,902,810
東日本高速道路株式会社 1 4,402,008 1 4,402,008 1 4,402,008
独立行政法人情報通信研究機構 1 905,000 1 905,000
独立行政法人国際交流基金 1 4,000,000 1 4,000,000 1 4,000,000
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 43,800,000 5,475,000 1 38,325,000 1 38,325,000
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 7,284,300 1,233,700 1 6,050,600 1 6,050,600
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 4 14,801,366 1 359,856 3 14,441,510 2 8,049,978 1 6,391,532
独立行政法人労働者健康福祉機構 4 10,605,550 4 10,605,550
独立行政法人国立病院機構 19 84,438,779 14 57,366,322 5 27,072,457 1 865,726 4 26,206,731
独立行政法人中小企業基盤整備機構 2 79,984,925 6,461 2 79,978,464 2 79,978,464
独立行政法人国立がん研究センター 3 32,510,111 1,080,000 3 31,430,111 3 31,430,111
独立行政法人国立循環器病研究センター 1 649,814 450 1 649,364 1 649,364
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 1 469,285 1 469,285
独立行政法人国立国際医療研究センター 2 4,286,830 31,600 2 4,255,230 2 4,255,230
独立行政法人国立成育医療研究センター 1 2,150,310 1,326,140 1 824,170 1 824,170
国立大学法人筑波大学 1 15,333,197 720,000 1 14,613,197 1 14,613,197
国立大学法人京都大学 1 21,968,650 980,000 1 20,988,650 1 20,988,650
国立大学法人大阪大学 1 1,440,000 400,000 1 1,040,000 1 1,040,000
国立大学法人奈良教育大学 1 8,808,000 66,000 1 8,742,000 1 8,742,000
国立大学法人山口大学 1 120,485,228 287,000 1 120,198,228 1 120,198,228
日本放送協会 2 125,208,140 2 125,208,140 2 125,208,140
東日本電信電話株式会社 1 35,323,995 60,000 1 35,263,995 1 35,263,995
郵便事業株式会社 15 936,837,737 2,060,000 15 934,777,737 12 804,283,558 3 130,494,179
株式会社ゆうちょ銀行 156 4,481,460,571 21 252,064,045 135 4,229,396,526 135 4,229,396,526
株式会社かんぽ生命保険 131 2,415,433,641 4 55,939,712 127 2,359,493,929 127 2,359,493,929
独立行政法人農業者年金基金 3 3,298,922 1 136,514 2 3,162,408 2 3,162,408
団体計 308 8,627,959,827 41 503,133,997 267 8,124,825,830 243 7,668,100,813 10 262,865,232 14 193,859,785
総合計 505 12,191,499,633 65 1,105,219,593 440 11,086,280,040 281 8,593,373,296 105 1,528,729,189 54 964,177,555
注(1)  平成23年8月1日から24年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、24年7月31日現在の名称としている。
注(2)  厚生労働省に係る債権のうち7件は、独立行政法人雇用・能力開発機構が平成23年10月1日に解散したことに伴い、同法人に対する不当事項に係る債権を承継したものである。
注(3)  郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が平成19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
注(4)  是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人中小企業基盤整備機構、東日本電信電話株式会社及び株式会社かんぽ生命保険の全件並びに株式会社日本政策金融公庫の1件47,390,571円、郵便事業株式会社の14件932,282,543円及び株式会社ゆうちょ銀行の134件4,227,996,526円に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

 昭和21年度から平成21年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので24年7月末現在で是正措置が未済となっているものが、表2 のとおり、440件11,086,280,040円ある。これらに対する直近1年間(23年8月1日から24年7月31日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注10)

 債務者等が複数存在するために1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は440件と一致しない。


(ア) 債務者等が分割納付等を実施中であるもの
省庁 103件 1,321,365,951円
団体 114件 3,223,943,211円

 これらは分割納付等が行われているが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注11) は、省庁139,817,962円、団体33,902,284円となっている。

 直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。


(イ) 債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの

省庁 100件 1,232,127,513円

団体 199件 4,896,882,619円

 これらは是正措置の完了に向け督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。
 このうち、団体における182件4,744,737,627円に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ) 債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁  19件   407,960,746円

団体   1件     4,000,000円

 これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

 2(2)イ のとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりなどしているために、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。
 本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。