ページトップ
  • 平成23年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について


第4 東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について

検査対象 環境本省、岩手県、宮城県
会計名 一般会計
補助事業等の概要 東日本大震災で発生した災害廃棄物等の処理を行うもの
災害廃棄物等の処理に係る補助金額等 7647億6878万円(平成23年度)

1 検査の背景

(1) 東日本大震災で発生した災害廃棄物等の処理

 平成23年3月11日の東日本大震災では、13道県(注1) 241市町村において総量約2162万tの災害廃棄物に加えて、沿岸部において津波による土砂及び泥状物(以下、これらを「津波堆積物」という。)総量約959万tが発生したと推計され、その処理が必要となっている。これらの災害廃棄物及び津波堆積物(以下「災害廃棄物等」という。)の推計量は、表1 のとおり、岩手、宮城及び福島の3県(以下「3県」という。)において膨大な量となった。

(注1)
13道県  北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、静岡、長野各県

表1  災害廃棄物等の推計量
県名 災害廃棄物等
岩手 532万t
宮城 1924万t
福島 518万t
(注)
環境省の「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表(参考資料)」(平成24年8月7日公表)による。

 環境省は、同年5月16日に、災害廃棄物等の適正かつ効率的な処理を進めるために、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」(以下「マスタープラン」という。)を策定して、国、県及び市町村の役割や、国庫補助率のかさ上げなどの財政措置を行うこと、中間処理・最終処分を25年度末を目途に行うことなどの方針を明示している。
 また、災害廃棄物等の処理に関して国の責務を明確にし、国が被害を受けた市町村に代わって災害廃棄物等を処理するなどのため「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」(平成23年法律第99号。以下「災害廃棄物処理特措法」という。)が同年8月18日に施行され、国は、災害廃棄物等の処理に関する基本的な方針、災害廃棄物等の処理の内容や実施時期等を明らかにした工程表を定めることとされた。これを受けて、環境省は、同年11月29日に、「復興施策に関する事業計画と工程表(公共インフラ全体版)」を策定し、3県を中心とした事業計画及び工程表を示した。そして、環境省は、24年8月に、目標期間内での処理を確実にするための目標達成計画として、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表」(以下「処理工程表」という。)を発表した。環境省は、これを23年11月29日に策定された上記の工程表の改定版と位置付けている。
 また、3県のうち、岩手、宮城両県については、県内での処理能力の不足から広域処理が必要とされており、環境省は、受入先の地方公共団体や住民の理解を得て広域処理が円滑に進むよう、「災害廃棄物の広域処理の推進について(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン)」(平成23年8月11日環境省作成)等に基づき、24年4月に、広域処理に係る受入基準、処理の方法、安全性の確認方法等について告示を行って、その旨を都道府県に通知している。

(2) 災害廃棄物等の処理に係る国庫補助

 環境省は、「災害等廃棄物処理事業費国庫補助金交付要綱」(平成19年4月2日環境事務次官通知)に基づき、市町村等が行う災害廃棄物等の処理事業に対して以前から災害等廃棄物処理事業費補助金(以下「事業費補助金」という。)を交付している。そして、環境省は、東日本大震災に係る大量の災害廃棄物等を処理するに当たって、同要綱を改正して、災害廃棄物等の処理事業に損壊家屋等の解体事業を含むこととし、必要があると認められた場合には補助金の全部又は一部について概算払ができることとする特例を定めた。
 さらに、環境省は、災害廃棄物等の処理が、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)第2条第2項に規定する特定被災地方公共団体(注2) に該当する市町村(以下「特定被災市町村」という。)における持続可能な社会の構築や雇用の機会の創出に資することに鑑み、同様の目的で造成された既存の基金制度の枠組みを活用することとし、基金制度を用いて特定被災市町村の費用負担の軽減等のために必要な措置を講ずることとした。そして、「平成23年度地域環境保全対策費補助金(再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金)及び災害廃棄物処理促進費補助金(災害等廃棄物処理基金)交付要綱」(平成23年11月30日環境事務次官通知)を制定し、これにより、特定被災市町村等が実施する災害廃棄物等の処理事業を支援するために、災害廃棄物処理促進費補助金(以下「促進費補助金」という。)を特定被災市町村が所在する道県に交付することとした。そして、道県は、交付を受けた促進費補助金により基金を造成している。

(注2)
特定被災地方公共団体  都道府県については、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟及び長野各県、市町村については、災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用され、かつ、住宅の全壊戸数が一定規模以上等の要件に該当する市町村が指定されている。

(3) 平成23年度補正予算の概要

 災害廃棄物等の処理事業に係る23年度の予算は、表2 のとおり計7647億余円となっている。

表2  災害廃棄物等の処理事業に係る予算(平成23年度補正予算)

(単位:百万円)

第1次補正予算 災害等廃棄物処理事業費補助金 351,933
第3次補正予算 災害等廃棄物処理事業費補助金 312,9704
災害等廃棄物処理事業費 4,769
災害廃棄物処理促進費補助金 67,963
災害廃棄物広域処理等支援事業 250
放射性物質汚染廃棄物処理事業費 26,882
764,768

 そして、環境省は、特定被災市町村が行う災害廃棄物等の処理事業(市町村が県へ事務委託を行う場合も含む。)について、国庫補助率のかさ上げを実施した上で、当該特定被災市町村に係る標準税収入(注3) に対する事業費の割合に応じて事業費補助金を交付している。また、道県が造成した基金を通じて、特定被災市町村に対して国庫負担割合が平均95%となるよう促進費補助金を併せて交付している。さらに、残りの5%分についても交付税が交付されることから、国の負担は実質100%となっている。

(注3)
標準税収入  公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)第2条第4項に規定する標準税収入をいい、標準税率をもって地方交付税法(昭和25年法律第211号)で定める方法により算定した地方税の収入見込額をいう。

 また、これらの補助金のほか、「平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき指定された福島県内の汚染廃棄物対策地域に係る災害廃棄物の処理等のための放射性物質汚染廃棄物処理事業費や、環境省が特定被災市町村の災害廃棄物等の処理を代行するための災害廃棄物処理事業費等が予算計上されている。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 東日本大震災に係る災害廃棄物等の処理は、原則として25年度末までに処理を終えることを目標としており、特に被害が大きかった3県の災害廃棄物等は、その量が膨大であることから、その処理の進捗状況については、国民の大きな関心の対象となっている。また、災害廃棄物等の処理に当たっては、初年度である23年度において、補正予算により多額の予算が措置されている。
 そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、災害廃棄物等の処理に係る実行計画等が25年度末までの期間内の終了に向けて適切に立案され、処理は計画どおり進捗しているか、23年度補正予算で予算措置された災害廃棄物等の処理事業に係る予算のうち、その大部分を占める事業費補助金及び促進費補助金の交付等は適時適切に実施されているかなどに着眼して検査を行った。

(2) 検査の対象及び方法

 本院は、23年度に実施された災害廃棄物等の処理事業を対象に、環境本省、岩手、宮城両県及び両県管内の9市町(注4) において会計実地検査を行った。なお、福島県については、岩手、宮城両県と異なり、県内に汚染廃棄物対策地域が設定されていて国が直轄処理することとされている地域があることなどから、環境本省において、環境省が行っている事業等について検査を実施した。

(注4)
両県管内の9市町  岩手県については、沿岸市町村のうち、事業費補助金の交付が多額となっている大槌町、釜石市、大船渡市及び陸前高田市の4市町を対象とした。また、宮城県については、仙台市及び県の事務委託に係る四つの地域ブロックのそれぞれから抽出した気仙沼ブロックの気仙沼市、石巻ブロックの石巻市、宮城東部ブロックの塩竈市及び亘理名取ブロックの亘理町を対象とした。

 検査に当たっては、環境本省から、災害廃棄物等の処理の進捗状況、事業費補助金、促進費補助金の執行状況等に係る書類の提出を受けるとともに、岩手、宮城両県から、実行計画等の計画、事業費補助金及び促進費補助金に係る交付申請書、年度終了実績報告書等の資料の提出を受けるなどして検査を行った。なお、今回の検査は計画や進捗状況を中心に行っており、個別の契約内容については検査を実施していない。

3 検査の状況

(1) 災害廃棄物等の処理・処分状況、事業費補助金及び促進費補助金の執行状況

 前記13道県に係る24年7月31日現在の災害廃棄物等の処理・処分状況は、表3 のとおり、災害廃棄物等の推計量が多い3県(合計2975万t、全体の95.3%)の平均進捗率が17.7%であるのに対し、他の10道県の平均進捗率は80.8%となっていて、このうち静岡及び長野の2県は処理・処分が完了している。なお、環境省は、焼却を要するものは焼却をもって処理・処分として取り扱っていて、焼却処理で発生する焼却灰(以下「焼却残さ」という。)の再生利用分や最終処分場への埋立分については、表3の「処理・処分量」の対象とはしていない。このため、処理・処分率が100%になっていても、焼却残さの処分が必ずしも完了したとは言えないことになっている。

表3  13道県に係る災害廃棄物等の処理・処分状況(平成24年7月31日現在)
道県名
災害廃棄物等(全体)
災害廃棄物
津波堆積物
推計量
(千t)
処理・処分量
(千t)
処理・処分率
(%)
市町村数
災害廃棄物推計量
(千t)
処理済市町村数
災害廃棄物処理・処分計
(千t)
処理・処分割合
(%)
市町村数
津波堆積物推計量
(千t)
処理済市町村数
津波堆積物処理・処分計
(千t)
処理・処分割合
(%)
北海道
9 7 81 20 9 14 7 81 0 0 0

青森県
190 102 54 6 151 5 92 61 2 39 1 9 24
岩手県
5,320 764 14 19 4,016 4 764 19 10 1,304 0 0 0
宮城県
19,246 3,804 20 35 12,525 6 3,398 27 14 6,722 2 406 6
福島県
5,180 685 13 45 3,668 9 672 18 5 1,513 0 13 1
茨城県
822 720 88 44 820 32 718 88 3 2 3 2 100
栃木県
219 185 84 26 219 15 185 84 0 0 0

群馬県
4 4 98 6 4 5 4 98 0 0 0

埼玉県
8 2 22 9 8 6 2 22 0 0 0

千葉県
147 106 72 26 136 19 102 75 1 11 0 4 35
新潟県
43 18 42 3 43 2 18 42 0 0 0

静岡県
1 1 100 1 1 1 1 100 0 0 0

長野県
21 21 100 1 21 1 21 100 0 0 0


31,210 6,418 21 241 21,620 119 5,984 28 35 9,591 6 434 5
(注)
環境省の「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理工程表(参考資料)」(平成24年8月7日公表)による。

 また、23年度の事業費補助金の予算現額と交付決定額等の状況は、表4 のとおりとなっていて、6649億余円という大型の予算(注5) が措置されていたが、予算現額に対する交付決定額は55.0%にとどまっていた。

(注5)
大型の予算  環境省は、同省が推計した災害廃棄物等の処理事業の総額に対応する補助金を平成23年度から25年度までの3年間で6対3対1の割合で割り振り、初年度である23年度に6割を予算計上したとしている。

表4  事業費補助金の予算現額及び交付決定額等(平成23年度)

(単位:千円)

予算 予算現額(A) 交付決定額(B) 支出済額(C) 地方繰越額(D) 不用額(E)
第1次補正 351,933,422 304,851,668 253,043,710 51,801,992 5,966
第3次補正 312,970,273 61,084,994 14,605,819 46,470,736 8,439
664,903,695 365,936,662 267,649,529 98,272,728 14,405

(B)/(A) (C)/(B) (D)/(B)
55.0% 73.1% 26.9%
(注)
(C)欄から(E)欄までは、交付決定を受けた市町村等の補助金の使用状況を示している。地方繰越額は市町村等において繰り越された額である。

 交付決定額計3659億余円を県別でみると、表5 のとおりとなっており、このうち、岩手県が全体の17.4%、宮城県が73.2%、福島県が6.8%をそれぞれ占めており、これら3県で計3564億余円(全体の97.4%)となっていた。

表5  13道県に係る事業費補助金の支出済額及び概算払額等(平成23年度)
道県名
    支出済額(A)
(千円)
概算払額(B)
(千円)
支出済額に対する割合
(B)/(A)
(%)
市町村等の数
特定被災地方公共団体
3県沿岸市町村
交付決定額
(千円)
構成割合
(%)
北海道
18 4
260,461 0.1 243,747 26,967 11.1
青森県
6 4
1,682,611 0.5 1,682,611 43,138 2.6
岩手県
19 17 12 63,727,077 17.4 55,287,586 60,804,409 110.0
宮城県
34 34 15 267,766,064 73.2 183,373,678 203,295,463 110.9
福島県
38 30 5 24,942,127 6.8 19,617,045 20,660,065 105.3
茨城県
41 35
4,393,807 1.2 4,288,359 1,137,477 26.5
栃木県
27 12
594,292 0.2 594,292 64,298 10.8
群馬県
3

39,251 0.0 39,251 39,251 100.0
埼玉県
7

12,759 0.0 12,759
0.0
千葉県
17 8
1,734,191 0.5 1,726,179 1,364,876 79.1
新潟県
4 2
223,214 0.1 223,214
0.0
長野県
1 1
556,564 0.2 556,564 556,564 100.0
静岡県
1

4,244 0.0 4,244
0.0

216 147 32 365,936,662 100.0 267,649,529 287,992,508 107.6
(注)
交付決定額、支出済額はともに平成23年度決算における金額であるため、決算確定以前に交付された概算払額については支出済額を上回っている場合がある。

 事業費補助金は、前記のとおり、特例で概算払が認められている。概算払は概算をもって支払をしなければ事務に支障を及ぼすような経費について、事後に精算が行われることを前提に金額の確定前に支払うことを認めるものであり、市町村等の資金需要に応えるために措置されたものであるが、概算払の金額と補助金の支出済額とを対比すると、表5のとおり、支出済額に対して107.6%となっており、特に被害が大きかった3県においては、必要な資金は、概算払によって対応されていた。しかし、交付時期については概算払の交付決定日が主に23年7月から同年12月までの間となっていて、会計実地検査を行った岩手、宮城両県等の担当部署からは、速やかな交付を望む声が聞かれた。これについて、環境省は、概算払の手続に当たって、市町村等が提出することとされている災害報告書の修正が完了した後は、交付決定までの手続を可能な限り短期間で行っているが、災害発生後の混乱の中で、市町村等による災害報告書の作成や修正の過程で時間を要したとしている。補助金を速やかに交付するため、環境省は、概算払の対応のための要綱改正(23年5月)を実施するとともに、交付決定までの手続の迅速な対応に努めているところではあるが、今後災害報告書の作成や修正に当たっての市町村等の事務負担の軽減につながるような方策の検討を行う必要があると認められる。
 また、もう一つの補助金である促進費補助金の予算現額と交付決定額の状況は、表6 のとおりとなっていて、予算現額に対する交付決定額は74.9%となっている。

表6  促進費補助金の予算現額及び交付決定額等(平成23年度)

(単位:千円)

予算 予算現額(A) 交付決定額(B) 支出済額(C)(=基金造成額) 基金から市町村へ交付された額(D)(=基金充当額)
第3次補正 67,963,526 50,886,965 50,886,965 36,413,027

(B)/(A) (C)/(B) (D)/(C)
74.9% 100.0% 71.6%
(注)
(C)欄は、交付決定を受けた道県が同額の補助金の交付を受け基金を造成した額であり、(D)欄は、当該基金から市町村へ交付された額である。

 これらの国庫補助金は、事業費補助金については直接市町村等へ、促進費補助金については県が基金を造成してその基金から市町村へそれぞれ交付されるものであるが、両補助金は交付申請等に係る事務を別々に行わなければならないこととされていて、市町村等及び県に負担をかける結果となっている。そして、岩手、宮城両県の担当部署等からは、本件のような緊急事態の場合には、一つの補助制度とするなど、事務負担の少ない助成制度の検討を望む声が聞かれた。

(2) 岩手県内の処理状況

 ア 処理・処分の進捗状況及び補助金の執行状況

 岩手県内における災害廃棄物等の処理・処分の流れは、図1 のとおりとなっている。

図1  岩手県内における災害廃棄物等の処理・処分の流れ

図1岩手県内における災害廃棄物等の処理・処分の流れ

(注)
岩手県災害廃棄物処理詳細計画(平成24年度改訂版)による。

 そして、会計実地検査を行った4市町における23年度の災害廃棄物等の処理・処分の進捗状況は、表7 のとおりとなっていた。沿岸市町村(図2 参照)全体の処理・処分の進捗率が10.4%と低くなっているのは、23年度については処理・処分に先立ち、被災現場から一次仮置場又は二次仮置場への搬入を主に行っていたことなどによるものである。

図2  岩手県内の12沿岸市町村

図2岩手県内の12沿岸市町村

表7  岩手県沿岸市町村における災害廃棄物等の処理・処分の進捗状況及び補助金の執行状況(平成23年度)

(単位:千t、千円)

ブロック等
市町村
発生量
処理・処分
事業費補助金
促進費補助金
備考
災害廃棄物等推計量
全体に占める割合
ブロック等に占める割合
処理・処分量計
進捗率
会計実地検査を行った4市町による県事務委託の状況
(a)
    (b)
(b/a)
支出済額
基金充当額

沿岸市町村
4,755

496 10.4%
54,889,211 6,053,956
久慈地域
270 5.7%

46 17.0%
1,486,252 285,055
宮古地域
1,242 26.1%

56 4.5%
10,082,326 1,257,201
  1,471 30.9%
100.0%
22 1.5%
10,400,542 1,174,813
釜石地域
大槌町
709 14.9%
48.2%
3 0.4%
3,209,973 371,345 二次仮置場における選別から処理・処分までの業務
釜石市
762 16.0%
51.8%
19 2.5%
7,190,569 803,468 一部の処理・処分業務
  1,772 37.3%
100.0%
373 21.0%
32,920,091 3,336,887
大船渡地域
大船渡市
756 15.9%
42.7%
267 35.3%
18,086,322 1,787,600 一部の処理・処分業務
陸前高田市
1,016 21.4%
57.3%
106 10.4%
14,833,769 1,549,287 一部の処理・処分業務
(注)
「発生量」及び「処理・処分」は、環境省の「沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況」(平成24年4月9日発表)による。

 また、表7 には事業費補助金及び促進費補助金の23年度の支出済額及び基金から市町村へ交付された額(以下「基金充当額」という。)を示しているが、これらの補助対象経費は、おおむね災害廃棄物等を被災現場から仮置場へ搬入する費用と仮置場に搬入された災害廃棄物等を処理・処分する費用である。そのため、処理の進捗状況と補助金の支出済額及び基金充当額に関して、市町間等の比較を行うには、図1 に示した処理・処分の流れの中で費用がどのように使われているかなどについて分析する必要があり、それらを行っていない現段階では市町間等の単純な比較はできない。

イ 実行計画と処理体制

 岩手県は、23年6月にマスタープランに基づき「岩手県災害廃棄物処理実行計画」を策定して災害廃棄物等の処理の基本的な考え方を示すとともに、同年8月に具体的な処理方法等を定めた「岩手県災害廃棄物処理詳細計画」(以下「詳細計画(23年度版)」という。)を策定し、さらに、23年度の処理状況等を踏まえて24年5月に改定版(以下「詳細計画(24年度版)」という。)を策定している。岩手県は、詳細計画(24年度版)において、被災現場で解体・撤去を行った災害廃棄物等を一次仮置場に集めて粗選別を行った後、二次仮置場でより細かく選別した上で、再生利用や処理・処分を行うとしている。そして、沿岸市町村は、状況に応じて災害廃棄物等の処理の一部について、県に事務委託(以下、市町村が県へ事務委託を行うことを「県事務委託」という。)を行うことにより処理を行っているが、県事務委託の範囲については市町村によって区々となっている。
 なお、県が処理・処分を行う災害廃棄物等の量は、詳細計画(24年度版)において見直されており、農地由来の津波堆積物、海から引き揚げられた災害廃棄物の量、解体の見込みが明らかになった大型建築物等の解体量を計上したことなどから、詳細計画(23年度版)の435万tから525万tに増加している。

ウ 詳細計画(24年度版)における23年度の処理実績

 岩手県では、詳細計画(24年度版)において、23年度の災害廃棄物等の処理実績を51万tとしており、その処理・処分先は、コンクリートがらなどの建設資源として処理されたもの30万t(全体の59.2%)、株式会社太平洋セメント大船渡工場(以下「太平洋セメント」という。)でセメント原燃料化されたもの4万t(同7.8%)、金属くず等がリサイクルされたもの7万t(同13.5%)等となっていて、焼却されたものや広域処理として処理されたものなど10万t(同19.5%)を除けば、大半が資源化やリサイクルに係るものとなっている。
 岩手県の災害廃棄物等の処理の特色は、太平洋セメントのロータリーキルン(注6) 2基(処理能力計750t/日)が県内における災害廃棄物等の処理の拠点となっていることである。セメント工場を活用する利点は、災害廃棄物等をセメント原燃料化することにより、焼却残さの埋立処分が不要になる点にあるとされている。しかし、23年度においては、被災の影響により、太平洋セメントのセメント原燃料化の機能が一定期間停止していたことから、ロータリーキルンにより焼却処理(6万t)を行ったものの、その焼却残さは奥州市に所在する産業廃棄物最終処分場「いわてクリーンセンター」で埋立処分されていた。また、既存の3焼却施設(処理能力計117.5t/日)を使用するとともに、焼却施設の処理能力を補うため、宮古市に処理能力95t/日の仮設焼却炉1基を賃貸借契約(26年3月までの支払予定額は計20億3866万余円)により設置し、釜石市に廃炉となっていた処理能力100t/日の焼却炉1基を修繕(修繕を含む23年度分の処理業務委託費3億4125万円)して仮設焼却炉として使用していて、県内の沿岸市町村全体の処理能力は7基合計で1,062.5t/日となっている。

(注6)
ロータリーキルン  円筒を横に置いたような形状の回転窯(がま)で、内部に隙間なく耐火レンガが貼り付けられていて高温に耐えられる構造になっている。

エ 今後の処理・処分について

 岩手県は、詳細計画(24年度版)において、今後の処理・処分として、推計量525万tから23年度の処理・処分量51万tを除いた474万tを対象に計画を策定している。そして、この474万tのうち、コンクリートがらや金属くずなどを除いた災害廃棄物等326万tの処理・処分先及びその構成割合は、表8 のとおりとなっている。

表8  326万tに係る処理・処分先とその構成割合
処理・処分先 処理・処分量(t) 構成割合(%)
〔1〕 復興資材 1,303,700 40.0
〔2〕 太平洋セメント 500,000 15.3
〔3〕 県内処理施設 270,000 8.3
〔4〕 広域処理 295,100 9.1
〔5〕 要検討 889,900 27.3
3,258,700 100.0
(注)
岩手県災害廃棄物処理詳細計画(平成24年度改訂版)による。

 このうち、県内の最終処分場における焼却残さ等の埋立処分が必要と見込まれるものは、〔3〕 県内処理施設と〔5〕 要検討の一部であり、復興資材等に利用可能なものはできる限り再生利用し、それ以外を焼却施設や最終処分場で処理するとしていて、県内の限られた最終処分場での処理を極力抑制する計画となっている。
 そして、最終処分場については、沿岸市町村以外の最終処分場は処理施設として挙げられておらず、また、沿岸市町村内にある最終処分場については、計算上、若干の余力があるものもあるが、自家焼却分のみ埋立てを可能としていて、受入が見込まれているのは前記の「いわてクリーンセンター」のみであり、最終処分場が十分確保できていない状況となっている。このように、県内の最終処分場を処理施設として挙げることに慎重なのは、県内の市町村において、新たな最終処分場の確保や増設が困難なためと思料される。
 また、広域処理については、前記のとおり、環境省から告示されているものの、23年度の実績は1万tにとどまっており、今後受入先との調整が必要であるとして処理工程表に掲載されている要調整量32万tについても、災害廃棄物等の種類によっては調整が進んでいるものもあるが、全体の見通しが立っていないものが多く見受けられる。
 岩手県は計画により25年度末までの処理を目指しているが、不燃物の処理、公共工事等における復興資材の需要、最終処分場の確保、広域処理の受入先の確定等が計画期間内の終了に係る不確定要素となっている。

(3) 宮城県内の処理状況

ア 処理・処分の進捗状況及び補助金の執行状況

 宮城県内における災害廃棄物等の処理・処分の流れは、図3 のとおりとなっている。

図3  宮城県内における災害廃棄物等の処理・処分の流れ

図3宮城県内における災害廃棄物等の処理・処分の流れ

(注)
宮城県災害廃棄物処理実行計画(第1次案)による。

 そして、会計実地検査を行った5市町における23年度の災害廃棄物等の処理・処分の進捗状況は、表9 のとおりとなっていた。沿岸市町(図4 参照)全体の処理の進捗率が8.1%と低くなっているのは、23年度については被災現場から一次仮置場又は二次仮置場への搬入を主に行っていたこと及び後述の県事務委託に係る二次仮置場が整備中であったことなどによるものである。

図4  宮城県内の15沿岸市町

図4宮城県内の15沿岸市町

表9  宮城県沿岸市町における災害廃棄物等の処理・処分の進捗状況及び補助金の執行状況(平成23年度)

(単位:千t、千円)

ブロック等
市町村
発生量
処理・処分
事業費補助金
促進費補助金
備考
災害廃棄物等推計量
全体に占める割合
ブロック等に占める割合
処理・処分量計
進捗率
会計実地検査を行った5市町による県事務委託の状況
(a)
    (b)
(b/a)
支出済額
基金充当額

沿岸市町
全体
15,691 100%

1,266 8.1%
177,456,559 20,049,520

仙台市
1,352 8.6%

189 14.0%
29,091,215 2,833,586 市単独
石巻   8,264 52.7%
100.0%
719 8.7%
75,360,351 8,609,491
石巻市 6,163 39.3%
74.6%
537 8.7%
55,193,114 6,248,760 二次仮置場における選別から処分までの業務
宮城東部   1,134 7.2%
100.0%
65 5.7%
13,544,420 1,795,200
塩竈市 251 1.6%
22.1%
0 0.0%
4,950,708 573,885 二次仮置場における選別から処分までの業務
気仙沼(気仙沼処理区)   1,927 12.3%
100.0%
35 1.8%
16,389,780 1,881,069
気仙沼市 1,367 8.7%
70.9%
25 1.8%
13,886,651 1,582,321 二次仮置場における選別から処分までの業務
亘理・名取(亘理処理区)   2,956 18.8%
100.0%
206 7.0%
41,612,603 4,721,265
亘理町 1,267 8.1%
42.9%
13 1.0%
15,787,968 1,772,149 二次仮置場における選別から処分までの業務
(注)
「発生量」及び「処理・処分」は、環境省の「沿岸市町村の廃棄物処理の進捗状況」(平成24年4月9日発表)による。

 また、表9 には事業費補助金及び促進費補助金の23年度の支出済額及び基金充当額を示しているが、これらの補助対象経費の使途は、おおむね岩手県と同様であり、市町間等の比較を行うには、図3 に示した処理・処分の流れの中で費用がどのように使われているかなどについて分析する必要があり、それらを行っていない現段階では、処理の進捗状況及び補助金の支出済額に関して、市町間等の単純な比較はできない。

イ 実行計画と処理体制

 宮城県は、23年7月にマスタープランに基づき「宮城県災害廃棄物処理実行計画(第1次案)—災害廃棄物処理の基本的考え方—」(以下「実行計画(第1次案)」という。)を策定し、主に沿岸市町において実施する処理を対象として、被災現場の災害廃棄物等を市町内に設置した一次仮置場に集積し選別を行った後、広域単位に設置した中間処理基地(二次仮置場)で中間処理を行った上で、再生利用や処理・処分を行うとしている。そして、沿岸市町のうち、単独処理を行う仙台市、松島町及び利府町を除いた12市町は県事務委託を行うことにより処理を行っていて、市町によって県事務委託の範囲は異なっているが、二次仮置場での中間処理から最終処分については、12市町全てが県事務委託を行っている。宮城県は、実行計画(第1次案)において、市町の枠を越えた地域ブロックとして、4地域ブロックを設定し、地域ブロックによっては処理区を設定することとしている。そして、宮城県は、地域ブロック又は処理区ごとに複数の事業者から広く技術提案を募り、選定した8企業体との間で計4136億余円のプロポーザル方式による契約を締結して計26基、処理能力計4,015t/日の仮設焼却炉を設置(24年7月末現在、一部建設中)し、この他に既存の2焼却施設を用いるなどして処理を行っている。
 宮城県は、上記のプロポーザル方式に係る契約の締結が全て終了して、地域ブロック内の処理・処分方法等が確定したことにより、24年7月に改めて「宮城県災害廃棄物処理実行計画(第2次案)」(以下「実行計画(第2次案)」という。)を策定している。そして、宮城県は、災害廃棄物の見直しに加えて、新たに津波堆積物を処理・処分の対象として計上したことから、県全体の災害廃棄物等の推計量を1924万tに変更しており、これを県事務委託により処理・処分を行う920万tと市町村独自に処理・処分を行う1004万tとに区分している。
 なお、仙台市は、自らの地域内で処理・処分を完結する仕組みを構築することとして、一次・二次仮置場を一元化した搬入場を3か所整備し、それぞれの搬入場に新たに処理能力計480t/日の仮設焼却炉計3基を賃貸借契約(26年3月までの支払予定額計77億余円)により設置して処理・処分を行っている。また、単独処理を行っている他の2町は、共同で既存の1焼却施設を用いている。これらと県事務委託分とを合わせると、県内の沿岸市町全体の処理能力は、焼却施設32基合計で4,541t/日となっている。

ウ 23年度の処理実績

 宮城県は、定期的に市町村から処理・処分の進捗状況について報告を受け、これらの報告を23年度実績として市町村独自分と県事務委託分とに区分してまとめている。23年度の処理・処分については、県事務委託に係る二次仮置場が整備中であったことから、市町村独自分の処理・処分が中心に進められ、市町村独自分の処理・処分量は、全体量1004万tに対し241万tで進捗率は24.0%となっていた。そして、この241万tの種別は、量の多い順にコンクリートがら153万t(全体の63.3%)、金属くず20万t(同8.4%)、木くず20万t(同8.3%)となっていて、コンクリートがらの占める割合が高くなっていた。コンクリートがらについては、建設資源として資源化されており、90.0%が資源化やリサイクルされていて再生割合が高くなっている。一方、県事務委託分に係る23年度の処理・処分量は、二次仮置場が整備中であったことから32万tにとどまっており、県事務委託分に係る災害廃棄物等の推計量920万tに対して進捗率は3.5%となっていた。そして、この32万tの種別のうち、コンクリートがら26万t(全体の80.8%)と木くず4万t(同12.3%)の2種で全体量の93.2%となっていた。なお、24年度以降は、二次仮置場が本格的に稼働することから、県事務委託分に係る処理・処分が相当程度進むことが見込まれる。

エ 今後の処理・処分について

(ア) 県事務委託分に係る処理量920万tの内訳

 宮城県は、実行計画(第2次案)において、図5 のとおり、県事務委託による処理量920万t(23年度処理実績を含む。)を対象に25年度までの処理計画を策定している。その内訳は、〔1〕 再生利用可能なもの648万t(全体の70.4%)、〔2〕 焼却可能なもの213万t(同23.2%)及び〔3〕 最終処分59万t(同6.4%)であり、再生利用される割合が高くなっている。

図5  県事務委託による処理・処分量の内訳

図5県事務委託による処理・処分量の内訳

(注)
宮城県災害廃棄物処理実行計画(第2次案)を基に作成

 焼却可能なもの213万tのうち、各地域ブロック等の仮設焼却炉で焼却される141万tについては、焼却残さ50万tが発生し、この焼却残さの最終処分が必要になるが、計画では、この焼却残さのうち32万tを主灰造粒固化物として資源化するとされている。このため、処理・処分の最終段階では、再生利用可能なもの680万t(全体の89.8%)と最終処分(埋立て)されるもの77万t(同10.2%)に二分されることになり、この割合をみると再生利用可能なものが全体の約90%を占めていて、県内の限られた最終処分場での埋立てを極力抑制する計画となっている。

(イ) 処理・処分先の確定状況について

 宮城県は、実行計画(第2次案)において、再生利用可能な災害廃棄物等648万tは、種別が土砂・汚泥の土木資材活用300万t(全体の46.3%)、コンクリートがら198万t(同30.6%)、木くず72万t(同11.1%)等としており、これらの処理・処分先については、県内598万t、県外7万t、計605万t(同93.4%)が確定したとしている。また、焼却残さ32万tについては、主灰造粒固化物として主に地域ブロック内の公共事業の再生砕石や路盤材、改良土に資源化することが確定したとしているが、実際の利用に当たっては、土木資材としての強度や耐久性、安全性等の評価結果が出た段階で、関係者(市町、港湾関係者、漁業協同組合等)との協議調整が必要となる。
 焼却可能な災害廃棄物等213万tについては、各地域ブロック・処理区の二次仮置場に設置された仮設焼却炉の処理能力を勘案して、前記のとおり、141万tをこれらの仮設焼却炉で焼却するとしているが、残りの72万tについては、別途委託による焼却処理を見込んでいる。これらの受入先については、県内と県外で計46万t(全体の63.9%)が確定したとしているが、残りの26万t(同36.1%)については確定していない。
 最終処分に関しては、処分先が確定しているのは、焼却残さの処分先である石巻ブロック内の公設最終処分場の4万tのみであり、最終処分が必要な77万tに対して確定割合は5.2%にとどまっている。また、77万tのうち52万tが混合ごみから生じる分別後の残さであるが、このうち43万tについて、県内で処分できないとして、広域処理を要するとしている。そして、広域処理について、処理工程表に掲載されている要調整量は、上記の43万tを含めた100万tとされていて、これらは、一部受入先と調整中のものもあるが、全体の見通しが立っていない状況となっている。
 上記のように、処分先等の確定については、再生利用するものについては進んでいるが、最終処分については最終処分場の確保の問題から調整が進んでいない状況となっている。宮城県は計画により25年度末までの処理を目指しているが、焼却残さの再生利用、最終処分場の確保、広域処理の受入先の確定等が計画期間内の終了に係る不確定要素となっている。

(ウ) 仙台市の今後の処理・処分(実行計画(第2次案)にはないもの)

 仙台市は、3か所の搬入場で災害廃棄物等を10種類以上に分別して、最終的に50%以上の再生利用を図ることとしている。再生利用できない可燃物については、計3基の仮設焼却炉で処理し、発生した焼却残さについては、市の最終処分場に埋め立て、不燃物については、同市内の民間の処分場に埋め立てることとしている。

(4) 福島県内の処理状況

 福島県内における災害廃棄物等の処理は、汚染廃棄物対策地域(注7) を除く内陸部の市町村及び沿岸部のいわき市においては、他県と同様に市町村による処理が行われているが、発生量の多い沿岸部の市町村においては、図6 のとおり、主として国の直轄処理又は代行処理により実施されている。

(注7)
汚染廃棄物対策地域  楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村の全域並びに田村市、南相馬市、川俣町及び川内村の区域のうち平成23年12月28日の時点で警戒区域又は計画的避難区域であった区域とされている。

図6  福島県内の国が直轄又は代行で災害廃棄物処理を行う市町村

図6福島県内の国が直轄又は代行で災害廃棄物処理を行う市町村

 市町村による独自処理・処分は、事業費補助金と促進費補助金等により助成されていて、前掲表5 のとおり、事業費補助金の23年度の支出済額は196億余円となっていた。
 汚染廃棄物対策地域においては、国が直轄で災害廃棄物等の処理を実施することとなっており、環境省は24年7月現在、緊急性の高い損壊家屋等の解体、仮置場・仮設処理施設等の設置に係る調整を行っている。なお、汚染廃棄物対策地域内の災害廃棄物等を処理するための予算として、23年度第3次補正予算において放射性物質汚染廃棄物処理事業費268億余円が計上されているが、処理施設等を設置する関係自治体等との調整に不測の日数を要したとして、23年度中の執行は0.07%にとどまっている。
 また、汚染廃棄物対策地域外の市町村のうち、沿岸部の新地町、相馬市、南相馬市の一部及び広野町においては、災害廃棄物処理特措法に基づき、国による災害廃棄物等の代行処理を実施又は予定しており、環境省はこれらの市町が仮置場に搬入し分別した後の可燃物の焼却処理・最終処分を代行することとしている。
 なお、環境省は、24年7月現在、新地町及び相馬市から代行処理の要請を既に受けており、仮設焼却炉の設置工事に着手している。また、代行処理のための国の予算として、23年度第3次補正予算において災害等廃棄物処理事業費47億余円が計上されているが、焼却炉の発注事務処理に1か月以上期間を要したことから、23年度は執行がなく、全額24年度に繰り越している。

(5) 震災廃棄物対策指針に基づく処理計画の活用状況

 旧厚生省(13年1月6日以降は環境省)は、阪神・淡路大震災の教訓から、10年10月に「震災廃棄物対策指針」を定め、都道府県及び市町村に対して震災に対する対応策を準備するよう求めている。この中で、災害廃棄物等については処理計画等の作成が必要であるとしており、発生量の推計方法や仮置場の確保・配置計画についても言及している。
 岩手、宮城両県は、これに対応する形で両県の地域防災計画において、廃棄物処理計画や処理活動を規定していたが、その内容は市町村が廃棄物の処理等を行い、県は必要な助言や情報収集等を行うというもので、具体的内容にまで踏み込んだものとはなっていなかった。また、今回の会計実地検査の対象とした市町の廃棄物処理に係る計画を確認したところ、その多くが県の計画と同様に、内容について具体性に欠けるものとなっていた。しかし、仮置場の候補地や災害廃棄物等の推計量にまで踏み込んで計画を策定していた市町の中には、想定をはるかに超える被害であり、十分な面積の仮置場を確保することができないなど困難な点があったとしながらも、基本的な処理の流れや処理方法を計画に沿って進めることができたとしている市も見受けられた。

4 本院の所見

(1) 災害廃棄物等の処理の進捗状況等

 岩手、宮城両県は、25年度末の処理に向けた実行計画等を策定しており、その内容は、可能な限り再生利用の割合を高めて最終処分場への埋立処分の割合を極力減らすとともに、地元企業によるセメント原燃料化や仮設焼却炉の設置等、地元で対応できるものは極力地元で対応するものとなっている。24年度にはこれらセメント原燃料化や仮設焼却炉の稼働が本格化して、処理が格段に進むものと見込まれている。
 しかし、不燃物の処理、復興資材の需要、最終処分場の確保、広域処理の受入先の確保等の問題は、24年7月末時点で計画期間内の終了に係る不確定要素となっている。特に、広域処理において、今後受入先との調整が必要な要調整量が岩手県で約32万t、宮城県で約100万tに上っていること、最終処分場について地元との協議に時間を要するなど困難な点が多いことなどから、広域処理や最終処分場の問題等については、引き続き国が支援する必要があると認められる。
 また、福島県については、主として環境省が直轄又は代行で災害廃棄物等の処理を行っているが、直轄においては処理施設等を設置する関係自治体等との調整に不測の日数を要したり、代行においては焼却炉の発注事務処理に1か月以上の期間を要したりしていることから、この処理に係る23年度の予算の執行は低調であり、24年度以降において処理を大きく進捗させる必要があると認められる。

(2) 事業費補助金及び促進費補助金の執行状況

 東日本大震災で発生した災害廃棄物等の処理に係る補助金のうち、大半を占める事業費補助金は、6649億余円という大型の予算が計上されており、市町村等が必要としている資金は概算払によって対応されていた。しかし、概算払の交付決定日が主に23年7月から12月までの間となっていて、速やかな交付を望む声があることから、環境省は、交付決定までの手続の迅速な対応に努めているところではあるが、災害報告書の作成や修正に当たっての市町村等の事務負担の軽減につながるような方策の検討が望まれる。また、事業費補助金と促進費補助金は、交付申請等に係る事務を別々に行わなければならないとされていて、決算に係る確定作業も含め、緊急時において市町村及び県の事務に負担をかける結果となっており、類似の事態の発生に備えて、環境省は、事務負担の少ない助成方法の検討を行う必要があると認められる。

(3) 災害廃棄物等の処理計画等の作成

 県及び市町は、東日本大震災前に、旧厚生省策定の「震災廃棄物対策指針」に基づき、災害廃棄物等の処理計画等を策定していたが、その内容は具体性に欠けるものが多く見受けられ、想定以上の災害であったことと相まって、計画がそのまま活用されてはいなかった。想定以上の災害の場合は、計画が必ずしも機能するとは限らないが、今回の震災後の災害廃棄物等に係る処理の実態を踏まえ、環境省は、その処理方法や手続等を今後にいかす新たな震災廃棄物対策指針を示す必要があると認められる。

 本院としては、東日本大震災に係る災害廃棄物等の処理は、復旧復興の大前提であり社会全体で取り組む必要があることに鑑み、今後とも引き続き注視していくこととする。