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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成24年10月

公共土木施設等における地震・津波対策の実施状況等に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

 地震・津波に対する耐震基準等の改定状況

(1) 耐震基準等の改定状況

 我が国の公共土木施設等の耐震基準は、大正12年の関東大震災を契機として導入され、逐次改定されている。
 平成7年にマグニチュード7.3の阪神・淡路大震災が発生し、公共土木施設等が甚大な被害を受けたことから、多数の土木関係研究機関等が加盟する公益社団法人土木学会は、3次にわたる提言を行っている。この中で、〔1〕 「構造物の供用期間中に1、2度発生する確率を持つ地震動」(以下、このような地震動を「レベル1地震動」という。)と「現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動」(以下、このような地震動を「レベル2地震動」という。)の二つの段階の地震動に対して設計することと〔2〕 地震動の段階及び施設の重要度等に応じて、地震発生時に施設に必要とされる耐震性能を設定して照査を行うことの必要性等、現行の耐震基準の基本となる耐震設計の考え方が示された。そして、公共土木施設等の耐震基準において、地震動を2段階に分けて耐震性能の照査を行う規定が導入されるなどこれらの提言を踏まえた改定が行われている。また、津波についての規定は、昭和35年のチリ地震等を契機として導入されている。
 公共土木施設等の耐震基準は、継続的に見直しが行われ、大規模地震による被災状況、土木関係学会等の提言等を踏まえて、上記のように地震動を2段階とする規定や地盤の液状化の発生を判定する規定等が導入されている。また、耐震基準とは別に、既存の施設について、現行の耐震基準に適合しているかの照査等を行うための耐震点検の要領等が作成されるなどしている。
 そこで、各事業における公共土木施設等の耐震基準等の改定状況をみたところ、別表のとおりとなっていた。

(2) 土木関係学会等の見解

 東日本大震災に伴う被災状況を踏まえて、土木関係学会等により次のような見解が示されている。
 すなわち、近年の耐震設計基準を適用して設計及び築造を行い、維持管理してきた土木施設は、東日本大震災では被害がないか又は軽微であった。一方、道路盛土、河川堤防、下水道マンホールや管渠施設等の地下埋設物、ため池堤体等の古い基準等を適用していて現行基準を満足していない既存の施設及び耐震対策未対応の自然地盤、斜面等は、広域かつ多箇所において被災し、復旧、復興に非常に時間が掛かるなど深刻な事態となったとしている。
 また、東日本大震災では、防潮堤、防波堤等の津波防御施設の多くは、津波の高さが想定高さ以下までは機能していたが、想定高さを超えてからの越流、浸食、支持地盤の洗掘等により基礎地盤及び本体が崩壊したとしている。このため、津波を考慮した設計の課題として、〔1〕 基礎地盤の洗掘に強い防潮堤及び防波堤の設計、〔2〕 津波外力を考慮した港湾施設の設計、〔3〕 河川堤防の附帯施設の崩壊に対する設計、〔4〕 津波で流出しない背面盛土、橋桁、橋台及び基礎の設計、〔5〕 越流浸食、洗掘及び流出を防止する盛土の設計等が必要であるとしている。

(3) 耐震基準等の見直し状況

 公共土木施設等は、土木関係学会等の見解にもあるように、より新しい耐震基準で設計することが重要であり、既存の施設の耐震性能の把握については、個々の施設に対して現行の耐震基準に基づいた照査を全て行うと膨大な期間と費用を要するため、施設の重要度等を考慮して効率的に耐震点検等を実施する必要がある。
 また、東日本大震災に伴い発生した津波や液状化等により公共土木施設等は甚大な被害を受けており、これらの施設の耐震基準等の適切な見直しを行うことが重要な課題となっている。
 そこで、河川、海岸、砂防、道路整備、港湾整備、下水道、公園、治山、漁港整備、農業農村整備及び集落排水事業の計11事業に係る公共土木施設等の近年の耐震基準と耐震点検の実施方法等及び東日本大震災を踏まえたこれらの見直し状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

 河川事業

 国土交通省、地方公共団体等は、河川法(昭和39年法律第167号)等に基づき、洪水等による災害発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全を図るために河川を総合的に管理し、公共の安全を保持することなどを目的として、河川堤防、水門、揚排水機場等の河川管理施設の築造等を行う河川事業を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 国土交通省は、河川管理施設の構造については、河川管理上必要とされる一般的技術的基準として、河川管理施設等構造令(昭和51年政令第199号)等を定めており、河川管理施設の設計については、建設省河川砂防技術基準(案)同解説(国土交通省水管理・国土保全局監修。以下「河川砂防技術基準」という。)を作成している。また、同省は、河川砂防技術基準を補足するものとして、平成19年に「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」(平成19年国河治第190号国土交通省河川局治水課長通知。以下「H19河川耐震照査指針」という。)を定めて、地方整備局、地方公共団体等に通知している。
 そして、地方整備局、地方公共団体等は、河川砂防技術基準、H19河川耐震照査指針等に基づいて河川管理施設の設計等を行っている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 河川管理施設の耐震点検の実施に当たっては、阪神・淡路大震災を契機として、河川管理施設に要求される耐震性能の確保に関する取組が進められ、国土交通省は、7年にレベル1地震動相当の地震動に対する安全性照査のマニュアルとして、河川堤防耐震点検マニュアル(平成7年建設省河治発第8号建設省河川局治水課長通知)、河川構造物(水門、樋門及び樋管)耐震点検マニュアル(平成7年建設省河治発第36号建設省河川局治水課長通知)、揚排水機場耐震点検マニュアル(平成7年建設省河治発第50号建設省河川局治水課長通知)等(以下、これらを合わせて「H7河川耐震点検マニュアル」という。)を作成している。そして、「土木構造物の耐震設計ガイドライン」(平成13年土木学会)等において、レベル2地震動に対する指針が示されたことなどを受けて、同省は、H19河川耐震照査指針等を定めており、19年以降は、レベル1地震動及びレベル2地震動に対する耐震性能の照査はこれによることとされている。
 これらのマニュアル等による耐震点検の実施方法等は次のとおりとなっている。

a H7河川耐震点検マニュアル

 地震により損傷した場合に河川の流水が溢(いっ)水して堤内地が浸水し二次被害が発生するなどのおそれのある河川堤防、水門、揚排水機場等について耐震点検を実施するために、堤内地地盤高が朔(さく)望平均満潮位(注14)(湖沼及び堰上流区間にあっては平常時の最高水位)+1.0mと計画津波高のいずれかより低い区間にある河川堤防等を対象とする。そして、当該河川堤防等が設置されている基礎地盤の液状化を考慮するなどして概略点検を実施し、その結果、詳細検討が必要な区間等について安定計算等を行い、耐震対策工事が必要な区間等を抽出する。

 朔望平均満潮位  新月及び満月の日から前2日後4日以内に現れる各月の最高満潮位を平均した水面高

b H19河川耐震照査指針等

 河川堤防については、地震により損傷した場合に河川の流水が溢水して堤内地が浸水するなどの二次被害が発生するおそれのある区間等について耐震性能照査を実施するために、津波の河川遡上解析(注15)及び平常時の最高水位の算定を行い、高い方の水位を照査外水位として決定し、堤内地地盤高が照査外水位より低い区間等(以下「耐震性能照査範囲」という。)に設置されているものを対象とする。そして、当該河川堤防が設置されている基礎地盤の液状化を考慮するなどして耐震性能照査を行い、照査外水位が地震後の天端高を上回り越流するおそれのある区間等を耐震対策工事が必要な区間として抽出する。また、水門、揚排水機場等については、全ての施設を対象として、重要度等を勘案した耐震性能を設定した上で当該施設が設置されている基礎地盤の液状化を考慮するなどして耐震性能照査を行い、耐震対策工事が必要な施設を抽出する。

 津波の河川遡上解析  耐震性能照査において考慮する外水位としての津波の挙動の解析

(ウ) 耐震対策の内容

 耐震点検の結果、耐震対策工事が必要と診断された場合は、河川堤防については、腹付け盛土による断面拡大、地盤改良等の工事を実施し、水門、揚排水機場等については、門柱への鋼板巻立てなどの工事を実施する。

(エ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 河川津波対策検討会は、23年8月に「河川への遡上津波対策に関する緊急提言」を取りまとめ、河川管理における津波の位置付け、津波外力の扱いなどについて提言している。また、河川堤防耐震対策緊急検討委員会は、23年9月に「東日本大震災を踏まえた今後の河川堤防の耐震対策の進め方について」を取りまとめ、堤体の液状化に対する対策等を提言している。
 そして、国土交通省は、上記の取りまとめを踏まえるなどして、地方整備局、地方公共団体等に対して、23年9月に「河川津波対策について」(平成23年国水河計第20号ほか水管理・国土保全局河川計画課長ほか通知)を発し、また、24年2月にH19河川耐震照査指針を改定している。

 海岸事業

 国土交通省、農林水産省及び水産庁(以下、これらを合わせて「海岸関係省庁」という。)、地方公共団体等は、海岸法(昭和31年法律第101号)に基づき、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、もって国土の保全に資することを目的として、堤防、突堤、護岸、胸壁等の施設(以下、これらを合わせて「海岸保全施設」という。)の整備を行う海岸事業を実施している。
 そして、都道府県知事は、海岸法に基づき、防護すべき海岸に係る一定の区域を海岸保全区域として指定し、海岸の管理を行う者(以下「海岸管理者」という。)等は、海岸保全施設を整備している。

(ア) 近年の耐震基準等

 海岸関係省庁は、主要な海岸保全施設の形状、構造及び位置について、海岸の保全上必要とされる技術上の基準として、海岸保全施設の技術上の基準を定める省令(平成16年国土交通省、農林水産省令第1号。以下「海岸省令」という。)を定めており、海岸省令に関し、適切な解釈と運用に資するために、「海岸保全施設の技術上の基準について」(平成16年国河海第69号等国土交通省河川局長等3局長等連名通知。以下「海岸技術基準」という。)を海岸管理者に通知している。
 そして、海岸管理者は、海岸省令、海岸技術基準等に基づいて海岸保全施設の設計等を行っている。
 海岸省令等によれば、海岸保全施設のうち堤防、護岸及び胸壁(以下、これらを合わせて「海岸堤防」という。)の天端高と海岸保全施設の耐震設計については、次のようにすることとされている。

a 海岸堤防の天端高

 海岸堤防の型式、天端高、天端幅、法勾配等は、高潮又は津波による海水の侵入を防止するなどの機能が確保されるよう定めることとし、海岸堤防の天端高は、次の〔1〕 から〔3〕 までのいずれかの値に、海岸堤防の背後地の状況等を考慮して必要と認められる余裕高を加えた値以上とすることとされている。

〔1〕 既往の最高潮位又は朔望平均満潮位に既往の最大潮位偏差を加えるなどした潮位(以下「設計高潮位」という。)に、設計波の打上げ高を加えた値

〔2〕 設計高潮位のときの設計波により越波する海水の量を十分減少させるために必要な値

〔3〕 設計津波の水位

 そして、従前、海岸堤防の天端高を設計する際に考慮する設計津波は、過去に発生した最大の津波又は今後発生すると考えられる最大の津波を踏まえて、海岸堤防の整備に必要な費用、海岸の利用に及ぼす影響、海岸の背後地の状況等も考慮して海岸管理者が定めることとされている。
 なお、海岸関係省庁は、東北地方太平洋沖地震に起因する津波災害を踏まえて、今後の設計津波の水位設定の考え方を示す通達を発しており、その内容は(エ) において後述する。

b 海岸保全施設の耐震設計

 海岸保全施設の耐震設計は、施設の機能及び構造、海岸の背後地の状況、地盤高等を考慮して、当該海岸保全施設に要求される耐震性能を満足することを適切に照査することとされている。そして、レベル1地震動に対しては、所要の構造の安全を確保し、かつ、海岸保全施設の機能を損なわないものであることとされ、施設の機能、海岸の背後地の状況等に基づいて、より高い耐震性能が必要と判断される海岸保全施設に係る耐震設計は、レベル2地震動を想定し、これに対して生ずる被害が軽微であり、かつ、地震後の速やかな機能の回復が可能なものであることとされている。
 また、レベル2地震動の設定に際しては、対象地点に最大級の強さの地震動をもたらし得る地震を選定することとされており、地震動には振幅、周波数特性、継続時間等の様々な側面があることから、対象施設の特性に応じて地震動を評価することとされている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 海岸関係省庁は、阪神・淡路大震災を契機に、海岸保全施設に要求される耐震性能の確保に関する取組を行い、海岸保全施設の耐震性能を合理的に評価し、海岸保全施設の耐震化に資することを目的として、7年4月に海岸保全施設耐震点検マニュアル(平成7年農林水産省、水産庁、運輸省及び建設省作成。以下「海岸点検マニュアル」という。)を作成している。
 海岸点検マニュアルによれば、耐震点検の実施方法は、概略点検として、地震による被害の発生しやすい施設及び区間を選定した上で、津波、高潮等の外力の大きさ、背後地の高さ、背後地の利用状況等により想定される二次被害を考慮して詳細点検の必要な施設及び区間を抽出し、詳細点検として、耐震性能の評価を行うなどして耐震対策工事の必要な施設及び区間を抽出することとされている。

(ウ) 耐震対策の内容

 津波等による海水の侵入防止等を主要機能とした海岸堤防については、地震により海岸堤防が沈下しても海水の侵入防止等のために必要となる天端高を維持できることが重要である。そして、これら沈下等を防止することを目的として、構造物の型式、基礎地盤等の特性を検討した上で適切な対策工法を採用する必要がある。
 耐震対策としては、海岸堤防の裾幅を拡げ勾配を緩やかにすることにより耐震性を高める工法、海岸堤防の法尻に鋼矢板を二重に設置し液状化に伴う地盤の流動化を抑えて沈下を軽減させる工法、地盤中に砂杭を造成し、その周辺地盤を締め固めることにより地盤を改良して液状化に対する強度を増大させる工法等がある。

(エ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 「海岸における津波対策検討委員会」は、23年11月に「平成23年東北地方太平洋沖地震及び津波により被災した海岸堤防等の復旧に関する基本的な考え方」を取りまとめている。これによれば、海岸堤防等の設計に用いる設計津波高は、比較的頻度の高い(数十年から百数十年に一度程度)一定程度の津波を用いることとされており、沿岸域を一連のまとまりのある海岸線ごとに、痕跡高や歴史記録、文献等の調査で判明した過去の津波の実績と、必要に応じて行う想定に基づくデータを用いて、一定頻度で発生する津波の高さを想定し、その高さを基準として設定することとされている。
 また、海岸堤防等の構造については、施設の効果が粘り強く発揮できるような構造の基本的な考え方が示され、その基本的な考え方は、設計津波高を超え、海岸堤防等の天端を越流した場合であっても、施設が破壊又は倒壊するまでの時間を少しでも長くする、あるいは、施設が完全に流失した状態である全壊に至る可能性を少しでも減らすといった減災効果を目指した構造上の工夫を施すこととされている。
 さらに、海岸堤防が防護対象としている規模の津波を生じさせる地震により、津波到達前に機能を損なわないよう耐震対策を実施する必要があるとされている。
 そして、海岸関係省庁は、前記の検討委員会における検討内容を踏まえて、海岸管理者に対して、23年7月に「設計津波の水位の設定方法等について」(平成23年国水海第2号国土交通省水管理・国土保全局砂防部保全課海岸室長等連名通知)を発し、同年12月に「海岸堤防等の粘り強い構造及び耐震対策について」(平成23年国水海第47号国土交通省水管理・国土保全局砂防部保全課海岸室長等連名通知)を発している。
 また、国土交通省は、23年7月に「平成23年東北地方太平洋沖地震による津波の対策のための津波浸水シミュレーションの手引き」(平成23年国水海第6号国土交通省水管理・国土保全局砂防部保全課海岸室長通知)を緊急的に取りまとめ、迅速かつ適切に津波浸水の想定を実施するための標準的な方法や条件設定の考え方を具体的に示している。

ウ 砂防事業

 国土交通省及び地方公共団体は、砂防法(明治30年法律第29号)等に基づき、豪雨、地震等による土砂災害の発生のおそれのある箇所等において、国土の保全と民生の安定に資することを目的として、砂防えん堤、集水井、擁壁等の砂防設備、地すべり防止施設及び急傾斜地崩壊防止施設(以下、これらを合わせて「土砂災害防止施設」という。)の整備を行う、通常砂防事業、地すべり対策事業、急傾斜地崩壊対策事業等(以下、これらを合わせて「砂防事業」という。)を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 国土交通省及び地方公共団体は、土砂災害防止施設の設計に当たり、河川砂防技術基準等に準拠して実施している。そして、従来、土砂災害防止施設については地震時の設計は考慮されていなかったが、河川管理施設等構造令等において、高さ15m以上のダムについては地震時の検討を行うこととされたことなどから、高さ15m以上の砂防えん堤等については昭和60年の河川砂防技術基準の改定において、地震時の設計を行うこととされた。また、「道路土工・擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編)等において高さ8mを超える擁壁について地震時の検討を行うこととされたことなどから、高さ8mを超える擁壁については平成9年の同技術基準の改定において、地震時の設計を行うこととされた。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 上記の地震時の設計を行うこととされた、河川砂防技術基準より前の技術基準に基づき築造された高さ15m以上の砂防えん堤等及び高さ8mを超える擁壁が、現行の河川砂防技術基準で要求されている耐震性を確保しているかについて確認するための耐震点検の要領等は作成されていない。

(ウ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 国土交通省は、東日本大震災において、土砂災害防止施設に機能が損なわれるような被害がほとんど生じなかったため、その効果が発揮されたとして、耐震基準等の見直しを行っていない。

エ 道路整備事業

 国土交通省、都道府県等は、道路法(昭和27年法律第180号)等に基づき、道路網の整備を図り、交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的として、橋りょう等の道路構造物、道路盛土、切土法面、斜面等の土工構造物の築造等を行う道路整備事業を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 国土交通省は、橋りょうを整備するに当たり設計等に必要な技術的基準について定めた道路橋示方書(以下「示方書」という。)を「橋、高架の道路等の技術基準について」(平成13年国都街第91号及び国道企第126号国土交通省都市・地域整備局長及び道路局長連名通知)により地方整備局、都道府県等に通知している。また、土工構造物については、「道路土工要綱」及び「道路土工指針」(社団法人日本道路協会編。以下、これらを合わせて「道路土工指針類」という。)を共通仕様書等において、設計の基準となる図書として位置付けている。
 そして、国土交通省、都道府県等は、示方書、道路土工指針類等に基づいて、次のとおり道路施設の設計等を行っている。

a 橋りょう

 示方書によれば、橋りょうの耐震設計は、橋りょうの重要度に応じて、レベル1地震動とレベル2地震動の二つの地震動に対して要求される耐震性能を確保することとされており、橋りょうの重要度は、災害に対する応急復旧活動に必要とされる度合いなど地域防災計画上の位置付けなどを考慮して設定することとされている。
 また、上記の耐震設計で想定していない挙動や地盤の破壊等により構造上の破壊が生じても、上部構造の落下を防止できるよう落橋防止構造等を設置することなどとされている。

b 土工構造物

 道路土工指針類によれば、道路盛土の耐震設計は、道路盛土の重要度に応じて、レベル1地震動とレベル2地震動の二つの地震動に対して要求される耐震性能を確保することとされており、道路盛土の重要度は、う回路の有無や緊急輸送道路としての選定の有無等、道路盛土が損傷した場合の交通機能への影響と隣接する施設に及ぼす影響の重要性を考慮して設定することとされている。
 切土法面及び斜面については、現在、明確に耐震設計として規定したものがなく、耐震対策としては、通常の崩壊・地すべり対策と同一のものになっている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

a 橋りょう

 国土交通省は、既設の橋りょうの耐震性能の把握に当たり、橋梁震災点検要領(平成3年建設省道防発第13号建設省道路局長通知)、道路防災総点検実施要領(平成8年建設省道防発第6号建設省道路局長通知)等の耐震点検の要領を作成している。
 そして、国土交通省は、道路の地震対策等の基礎資料を得るために、従来、耐震点検を推進してきており、阪神・淡路大震災発生後の8、9両年度には、都道府県及び市町村を含めて全国一斉に道路防災総点検を実施している。そして、国土交通省、都道府県及び市町村は、これらの結果に基づくなどして、橋りょうの耐震対策工事の必要性を把握し、耐震対策工事の重点的な推進を図っている。

b 土工構造物

 国土交通省は、21年の駿河湾を震源とした地震による道路盛土の大規模崩壊の発生に伴い、盛土のり面の緊急点検要領(平成21年国道防第8号ほか国土交通省道路局国道・防災課長ほか連名通知。以下「盛土点検要領」という。)を策定し、これに基づき緊急点検を実施している。緊急点検の実施に当たっては、盛土高さ10m以上の箇所等(以下「緊急点検対象箇所」という。)を抽出して簡易調査を行い、その結果、ボーリング調査等の詳細な調査が必要とされた箇所について、詳細調査を実施し、必要な対策工事を実施している。
 切土法面及び斜面については、国土交通省、都道府県及び市町村は、8、9両年度の道路防災総点検等により、対策工事が必要とされた箇所(以下「要対策箇所」という。)について、落石対策、崩壊、地すべり対策等の所要の対策工事を実施している。

(ウ) 耐震対策の内容

a 橋りょう

 国土交通省、都道府県及び市町村は、全ての既設橋りょうに対して耐震対策工事を一度に実施することが困難であることから、緊急輸送道路等の橋りょう及び阪神・淡路大震災で被災の度合いが高く耐震性が低いとされた昭和55年の示方書より古い示方書(以下「橋りょう55旧基準」という。)を適用した橋りょうについて優先的に耐震対策工事を実施している。実施に当たっては、原則として、平成8年以降の示方書(以下「橋りょう新基準」という。)の耐震基準と同等レベルの耐震化を図ることとしている(耐震対策工事の主な工法は、別表-道路3 参照)。
 また、段階的な措置として、阪神・淡路大震災と同程度の地震でも落橋等に至るような致命的な損傷とならないよう、耐震対策工事の工種のうち特に優先的に実施する必要があるとして、落橋防止構造の設置や橋脚の段落とし部の補強を実施するなど一定の耐震化が図られる工事(以下「一定補強工事」という。)を実施する取組を行っている。

b 土工構造物

 道路盛土の耐震対策工法には、排水施設工等により地下水位を下げて法面の安定を維持する工法、補強土工、擁壁等により法面の安定を確保する工法、地盤改良等により地盤対策を行う工法等がある。
 切土法面及び斜面の耐震対策工法には、グラウンドアンカー工法、落石防護工法等がある。しかし、一般にこれらの対策工事は、箇所ごとに地盤の性状が複雑であることから、個々の現場ごとの現状の把握に時間を要し、また、対策工事が多岐にわたる大規模な工事となることが多いことなどから、一度に対策を図ることは困難なものとなっている。

(エ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 国土交通省は、示方書について、継続的に見直しを行っており、24年2月には、東日本大震災に伴う被災状況に対する検討結果を取り入れた改定を行っている。その主な改定内容は、〔1〕 レベル2地震動の見直し、〔2〕 地域防災計画上の津波対策を考慮するとした規定の追加等となっている。そして、国土交通省は、24年2月に、各道路管理者に対して、「橋、高架の道路等の技術基準の改定について」(平成24年国都街第98号及び国道企第87号国土交通省都市局長及び道路局長連名通知)を発し、改定を周知している。

オ 港湾整備事業

 国土交通省、地方公共団体等の港湾管理者は、港湾法(昭和25年法律第218号)等に基づき、環境の保全に配慮しつつ、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し、及び保全することを目的として、航路等の水域施設、防波堤等の外郭施設、岸壁等の係留施設等(以下、これらを合わせて「港湾施設」という。)の整備を行う港湾整備事業等を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 港湾施設に関する技術上の基準として、「港湾の施設の技術上の基準を定める省令」(平成19年国土交通省令第15号)及び「港湾の施設の技術上の基準の細目を定める告示」(平成19年国土交通省告示第395号)(以下、これらを合わせて「港湾技術基準」という。)を定めており、その考え方を設計に的確に反映させるために、「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(国土交通省港湾局監修。以下「港湾技術基準の解説」という。)を作成している。
 そして、国土交通省及び港湾管理者は、港湾技術基準、港湾技術基準の解説等に基づいて港湾施設の設計等を行っている。
 港湾技術基準の解説によれば、津波やレベル2地震動等が発生した際に施設に要求される耐震性は、〔1〕 使用上の不都合を生じずに使用できる性能としての「使用性」、〔2〕 技術的に可能で経済的に妥当な範囲の修繕で継続的に使用できる性能としての「修復性」、〔3〕 人命の安全等を確保できる性能としての「安全性」等に区分されている。
 そして、震災時における避難者や緊急物資等の輸送を確保するために、耐震性を強化した係留施設(以下「耐震強化岸壁」という。)等の特に耐震性を強化した港湾施設(以下「耐震強化施設」という。)は、レベル2地震動の作用後に発揮すべき機能により、使用性が確保された耐震強化施設(特定(緊急物資輸送対応))と修復性が確保された耐震強化施設(標準(緊急物資輸送対応))等とに分類されている。すなわち、耐震強化施設(特定(緊急物資輸送対応))は地震作用後に必要とされる機能を損なわず継続して使用することに影響を及ぼさない性能を確保し、速やかに船舶の利用、人の乗降及び緊急物資等の荷役を行うことができる施設であり、耐震強化施設(標準(緊急物資輸送対応))は地震作用後、構造的な安定が保たれ一週間程度の一定期間のうちに緊急物資等の荷役を行うことができる施設とされている。また、港湾技術基準の解説では、災対法における緊急物資輸送の対象品目を段階別に想定して、1段階目として、耐震強化施設(特定(緊急物資輸送対応))を利用して、救助及び救急活動の従事者等人命救助に要する人員及び物資の輸送、輸送拠点の応急復旧、交通規制等に必要な人員及び物資の輸送等を実施し、2段階目以降は、耐震強化施設(特定(緊急物資輸送対応))に加えて、耐震強化施設(標準(緊急物資輸送対応))も利用して、食料、水等生命の維持に必要な物資の輸送、被災者等の被災地外への輸送、災害復旧に必要な人員及び物資の輸送等を実施するとされている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 港湾施設のうち、耐震強化岸壁は、11年の港湾技術基準の見直し以降、レベル2地震動に対応した設計を行うこととされている。そして、元年及びそれ以前に定められた港湾技術基準に基づき設計された耐震強化岸壁については、レベル2地震動に対する耐震性能の再点検を行うこととされており、国土交通省は、耐震点検の実施方法について、24年3月に各地方整備局等に対して「耐震強化岸壁の耐震性能の再点検について」(国土交通省港湾局事務連絡)を発して周知している。

(ウ) 耐震対策の内容

 既存の岸壁の耐震補強としては、岸壁周辺部の地盤改良を行うことにより液状化の防止等を行う工法、構造物の重量を中詰材の変更やコンクリートの増設等によって増加させ水平抵抗力の増加を図る工法、構造部材を新設することにより既存施設の水平抵抗力を増加させる工法等がある。

(エ) 津波対策

 津波については、港湾技術基準において、設計条件が定められ、既往の津波記録又は数値解析を基に、津波高さなどを適切に設定することとされている。
 そして、津波防波堤については、港湾技術基準において、通常の防波堤に要求される港内の静穏度の確保に加えて、津波等に対して修復性を確保する必要があるとされており、港湾技術基準の解説では、防波堤による津波の影響の低減効果等を考慮して、天端高等を適切に設定することとされている。

(オ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 国土交通省に設置されている交通政策審議会港湾分科会防災部会は、東日本大震災を踏まえた地震・津波対策の検討状況として、24年6月に「港湾における地震・津波対策のあり方」を取りまとめている。これによると、東日本大震災において長時間の地震動により液状化の被害が拡大したことから、これまでの液状化対策の有効性を検証することなどとされている。そして、国土交通省は、これを踏まえるなどして、新たな液状化予測及び判定方法を確立し、24年8月に港湾技術基準の解説の一部改定を行っている。
 また、防波堤については、必要に応じて耐津波性を確保し、粘り強い構造とする補強対策を検討するとしている。

カ 下水道事業

 地方公共団体等は、下水道法(昭和33年法律第79号)等に基づき、都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、併せて公共用水域の水質の保全に資することを目的として、雨水や家庭等から排出される汚水等の下水を排除させる管きょ及びマンホール(以下「管路」という。)の敷設、下水を処理するための終末処理場の整備等を行う下水道事業を実施している(以下、下水道事業を実施する者を「下水道事業主体」という。)。

(ア) 近年の耐震基準等

 下水道事業で整備する施設(以下「下水道施設」という。)の技術上の基準は下水道法施行令(昭和34年政令第147号)に規定されており、国土交通省は、同施行令の規定に基づき、「下水道法施行令第5条の8第5号の国土交通大臣が定める措置を定める件」(平成17年国土交通省告示第1291号)を定めている。また、同施行令等に基づき、下水道施設の構造設計面での指針として「下水道施設の耐震対策指針と解説」(社団法人日本下水道協会編。以下「下水道耐震指針」という。)が作成されている。
 そして、下水道事業主体は、下水道耐震指針等に準拠して下水道施設の設計等を行っている。
 下水道施設の耐震対策は、地震動レベルや施設の重要度に応じて、個々の施設において必要とされる構造面での耐震性能を確保することが基本とされている。
 下水道施設のうち管路の重要度については、緊急輸送道路等に埋設されている管路、地域防災計画等により必要と定められた施設からの排水を受ける管路等の重要な幹線等(以下「重要な管路」という。)と、その他の管路とに区分され、終末処理場の施設等については、全てが重要な施設とされている。
 下水道施設に要求される耐震性能は、次のとおりである。

〔1〕 重要な管路については、レベル1地震動に対して設計流下能力を確保するとともに、レベル2地震動に対しては、補修等の対策を講ずるまでの間、管路としての一定の流下機能を確保する。

〔2〕 その他の管路については、レベル1地震動に対して設計流下能力を確保する。

〔3〕 終末処理場の施設等の土木構造物の部分については、レベル1地震動に対して設計時の機能を確保するとともに、レベル2地震動に対しては、構造物が損傷を受けるなどしても比較的早期の機能回復を可能とする耐震性能を確保する。

〔4〕 終末処理場の施設等の建築構造物の部分については、建築基準法に基づき要求される耐震性能を確保する。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 既存の下水道施設については、下水道耐震指針によれば、施設数が膨大であり、耐震対策には相当の期間と多大な費用が必要であることなどから、地震発生時における下水道の機能の必要度や耐震対策の緊急度に応じた目標を設定するなどした下水道地震対策計画を策定して、段階的に耐震対策を実施することが必要であるとされている。このため、要求される耐震性能が確保されているか判断することを目的に耐震点検を行うこととされている。
 また、下水道耐震指針によれば、既存の下水道施設における耐震点検として、簡易点検又は詳細点検を行うこととされている。このうち簡易点検は、既存の資料や現地調査等から耐震性能を評価するもので、例えば、内径700mm以下の管きょについては、施工条件、地盤条件によっては設計上の計算を行わなくても要求される耐震性能を満足していると評価できるとされている。そして、詳細点検は、簡易点検のみで評価が困難な場合、必要に応じて行う土質調査の調査結果等に基づき耐震性能を評価することとされている。

(ウ) 耐震対策の内容

 既存の下水道施設の耐震対策については、管路の場合、敷設替えが可能であれば耐震性を有する管路への敷設替えが最も効果的であるが、施工が困難な場合が多い。このため、現時点では、既存の管路を利用した耐震性を向上させるための具体的な方法としては、マンホールと管きょとの接続部に伸縮、振動等を吸収する継ぎ手を設置すること、耐震性を考慮した上で既存の管路の内部を補強することなどが有効と考えられている。
 また、終末処理場の施設等の土木構造物又は建築構造物は、く体や基礎等で構成されており、種々の特性を考慮した上で適切な耐震対策を検討する必要がある。く体の耐震対策には、耐震壁や筋交いの増設を行う工法、柱及び梁(はり)を補強する工法等がある。また、基礎の耐震対策には、杭頭部をコンクリートや鉄板で巻き立てるなど杭自体を補強する工法のほか、構造物の外周等に増し杭をしたり、基礎耐力向上のため地盤改良を行ったりすることにより既設杭の要求される耐震性能を確保する工法等がある。

(エ) 管路における液状化対策

 国土交通省は、16年の新潟県中越地震等の被害を踏まえて、管路の周辺地盤又は埋戻し土に液状化が生ずるおそれがある場合、道路管理者と調整の上、〔1〕 埋戻し土の十分な締固めに関して、密度試験での締固め度が90%程度以上に保たれるように施工管っている。このほか、20年10月の下水道地震対策技術検討委員会の報告書によれば、〔1〕 埋戻し土の十分な締固めに関理を確実に行うこと、〔2〕 埋戻し土の固化に関して、所要の強度を確保することなどの技術的助言を行しては、現場での施工管理の頻度は、即時、結果の分かる試験であれば各層ごとに延長方向で数箇所実施することが望ましいとされ、即時、結果の分かる試験によらない場合は、例えば深さ方向に2か所程度以上、延長方向に1か所程度以上実施するなど、施工品質が確保できる頻度を明確に設定する必要があること、〔2〕 埋戻し土の固化に関して、セメント系固化剤による固化は、埋戻し土の製造から埋戻し完了までの時間を極力短くする必要があることなどの留意点が示されている。

(オ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 下水道地震・津波対策技術検討委員会は、24年3月に「東日本大震災における下水道施設被害の総括と耐震・耐津波対策の現状を踏まえた今後の対策のあり方」を取りまとめている。これによれば、今後の地震・津波対策における新たな視点として、〔1〕 管路施設の耐震対策については、埋戻し部の液状化対策としての施工管理上の問題と解決策の検討や工法の技術的な理解度を向上させるためのマニュアル等の充実化が必要であること、〔2〕 終末処理場等の津波対策については、施設及び設備の防水化、津波の荷重及び侵入方向を考慮した施設構造の採用等、段階的な対策が必要であることなどが示されている。
 そして、これを踏まえて、下水道耐震指針が25年度までに改定されることになっている。

キ 公園事業

 国、地方公共団体等は、都市公園法(昭和31年法律第79号)等に基づき、都市公園の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することなどを目的として広場や緑地等の整備を行う公園事業を実施している(以下、公園事業を実施する者を「公園事業主体」という。)。

(ア) 近年の耐震基準等

 都市公園は、園路、広場、管理施設等の多様な施設によって構成されており、その整備に当たっては、基盤整備、施設整備等のそれぞれの工事区分に応じた耐震基準により実施されている。
 そして、国、地方公共団体等の公園事業主体は、防災の役割を担う都市公園(以下「防災公園」という。)の整備に当たって、計画及び設計に係る技術的な指針として11年に作成された「防災公園計画・設計ガイドライン」(建設省都市局公園緑地課監修。以下「公園ガイドライン」という。)等に準拠して実施している。

(イ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 国土交通省は、東日本大震災からの復興に係る公園緑地整備検討委員会を設置し、24年3月に「東日本大震災からの復興に係る公園緑地整備に関する技術的指針」を取りまとめて、公表している。
 同指針によれば、公園緑地整備に関する基本的な考え方として、津波の高さより高い場所に迅速に避難するために、避難地となる公園は、避難階段及び避難タワーの設置、津波避難ビルの指定等と合わせた配置計画とすることが必要とされており、避難地の整備に当たっては、津波による被害が少なくなるように、津波の到達する方向に留意することなどとされている。

ク 治山事業

 林野庁及び地方公共団体は、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき、森林生産力増進等を図り、もって国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的として、土留、法面保護、谷止等の治山施設の整備等を行う治山事業を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 林野庁及び地方公共団体は、治山施設の設計に当たり、治山の調査、計画及び設計を実施するために必要な技術上の基本的事項を示した治山技術基準解説(林野庁監修)等に準拠して実施している。
 そして、従来、治山施設について地震時の設計は考慮されていなかったが、堤高がおおむね15m以上の治山ダムについては昭和58年の治山技術基準解説の改定において、また、高さ8mを超える土留等については平成11年の治山技術基準解説の改定において、それぞれレベル1地震動相当の地震動を用いることとされている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 上記の地震時の設計を行うこととされた、治山技術基準解説より前の技術基準に基づき築造された堤高がおおむね15m以上の治山ダム及び高さ8mを超える土留等が、現行の治山技術基準解説で要求されている耐震性を確保しているかについて確認するための耐震点検の要領等は作成されていない。

(ウ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 林野庁は、東日本大震災において、治山ダム等に機能が損なわれるような被害が生じなかったため、その効果が発揮されたとして、耐震基準等の見直しを行っていない。

ケ 漁港整備事業

 水産庁、地方公共団体等は、漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)等に基づき、水産業の健全な発展等を図るために、環境との調和に配慮しつつ、漁港漁場整備事業を総合的かつ計画的に推進し、及び漁港の維持管理を適正にすることなどを目的として、防波堤、護岸等の外郭施設、岸壁等の係留施設等の整備を行う漁港整備事業等を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 水産庁は、漁港漁場整備基本方針において、漁港漁場整備事業の施行上必要とされる技術的指針に関する事項を定めており、その技術的指針を漁港及び漁場の施設の設計に反映させるために、「漁港・漁場の施設の設計の手引(2003年版)」(水産庁監修。以下「漁港手引」という。)等を作成している。
 そして、地方公共団体等の事業主体は、漁港手引等に基づいて漁港施設の設計等を行っている。
 漁港手引によれば、漁港施設のうち防波堤、護岸の外郭施設、岸壁、物揚場の係留施設等については、レベル1地震動に対して所期の機能を維持することを目的として設計することとされており、地域防災計画に位置付けられている重要な施設等については、それぞれの重要度に対応して設計することが望ましいとされている。そして、係留施設のうち耐震強化岸壁については、震災直後の緊急物資や避難者の海上輸送等を考慮し、レベル2地震動に対して要求される耐震性能を確保して設計することとされている。
 また、地震により地盤が液状化して、漁港施設に被害を及ぼすおそれがある場合には、液状化について十分に考慮することとし、耐震強化岸壁、防災拠点漁港の諸施設及びそれらに準ずる重要度の高い構造物に対しては、液状化に対する検討を必ず行うこととされている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 漁港施設は、既存の施設については、通常は老朽化対策等の改修事業の際に耐震対策を行うこととされており、基本的には耐震点検を行うことにはなっていない。
 しかし、耐震強化岸壁については、水産庁は、18年に「漁業地域の耐震対策を進めるにあたっての設計等の考え方について」(18水港第587号水産庁漁港漁場整備部整備課長通知。以下「耐震対策通知」という。)により、大規模地震動に対する安全性が確保されていない施設が存在する可能性があるため必要に応じて早急に耐震対策を行う必要があるとして漁港管理者に通知している。

(ウ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 水産庁は、東日本大震災を踏まえた漁業地域の防災対策検討会を設置しており、同検討会は、24年4月に地震及び津波対策の検討状況として「平成23年東日本大震災を踏まえた漁港施設の地震・津波対策の基本的な考え方」を取りまとめている。これによれば、〔1〕 防災上重要な漁港等において、設計対象津波が到達する前に施設の機能が損なわれないようにするため、重要度の高い防波堤や岸壁について、発生頻度の高い津波を生じさせる地震も設計の対象とすること、〔2〕 粘り強い構造にするために、防波堤については、堤体の滑動及び転倒抑制対策や基礎部分の洗掘防止対策等を行い、岸壁については、堤体の傾斜抑制策や前面の洗掘防止対策等を行うことなどとされている。
 そして、水産庁は、24年4月に、関係都道府県等に対して、上記の「平成23年東日本大震災を踏まえた漁港施設の地震・津波対策の基本的な考え方」(24水港第115号水産庁漁港漁場整備部整備課長通知)を発して周知している。

コ 農業農村整備事業

 農林水産省、地方公共団体等は、土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づき、農業生産の基盤の整備及び開発を図り、農業の生産性の向上、農業総生産の増大等に資することを目的として、頭首工(注16) 、ポンプ場、ファームポンド(注17) 、ため池等の農業用施設の整備等を行う土地改良事業(以下「農業農村整備事業」という。)を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 農林水産省は、国営土地改良事業の工事の設計及び施工の基準に関する訓令(昭和44年農林省訓令第26号)を定めており、同訓令の適切な解釈に資するなどのために、頭首工、ポンプ場、ファームポンド、ため池等の施設ごとに、土地改良事業計画設計基準等(以下「農業設計基準等」という。)を作成している。
 そして、農林水産省は、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえた「平成7年兵庫県南部地震農地・農業用施設に係わる技術検討書」の提言等を参考として、農業用施設における耐震性についての考え方を示した「土地改良施設耐震設計の手引き」(平成16年3月発行。以下「農業耐震手引」という。)を地方農政局に参考として通知している。
 なお、国が行うこととなっている農業農村整備事業(以下「国営事業」という。)とは別に都道府県が行うこととなっている農業農村整備事業(以下「都道府県営事業」という。)等においても、事業主体は、農業用施設の設計を行う際は農業耐震手引等に準拠している。
 そして、農業用施設の耐震設計は、農業耐震手引等によれば、施設の重要度に応じてレベル1地震動及びレベル2地震動に対して所要の耐震性能を確保しなければならないこととされており、地域防災計画によって避難路に指定されている道路に隣接するなど、避難行動及び救護活動への影響が極めて大きい施設である場合には、レベル2地震動を考慮することなどとされている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 農業耐震手引によれば、農業用施設の耐震点検は、重大な二次被害を起こす可能性のある施設や基幹施設であって代替施設のない施設等であるかなどに留意して実施することとされている。耐震点検の実施方法は、概略的な方法による一次診断と、より詳細な方法による二次診断によって行うものとされており、一次診断では、建設年代、準拠基準等、概略の構造特性及び地盤条件により耐震補強が必要と判断される構造物と、二次診断により詳細な検討を必要とする構造物を抽出することとされている。そして、二次診断では、一次診断で耐震性能の詳細な検討が必要と判断された構造物に関して設計図書や地盤条件により、また、必要に応じて対象構造物の現場測量、試験及び地盤条件の調査を行い、要求される耐震性能を有しているかを診断して耐震対策工事が必要な施設を抽出することとされている。

(ウ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 農林水産省は、食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会技術小委員会において、24年1月から東日本大震災を踏まえて農業用施設の耐震設計や耐震対策の在り方等について検討を行っている。
 その主な内容は、〔1〕 ため池の決壊により人命に被害が生じたことから、大規模地震により人命に被害が生ずる可能性があるため池については、フィルダム(注18) 並みのレベル2地震動による耐震設計の検討、〔2〕 ポンプ場については、津波により電源設備及びポンプ設備が冠水し排水機能が消失したことから、津波対策としての電気設備等の盤上げや耐水化対策の効果の検証、〔3〕 農業用パイプラインについては、地震により管路の浮上、継ぎ目の損傷等の被害が生じたことから、長時間に及ぶ地震動のパイプラインに与える影響の現行基準に基づいた検証となっている。
 そして、農林水産省は、同委員会の審議等を踏まえて、今後、各施設の農業設計基準等の改定を検討することとしている。

(注16)
 頭首工  河川から必要な農業用水を用水路に引き入れるための施設
(注17)
 ファームポンド  かんがい用水を調整、配水するための農業用貯水施設
(注18)
 フィルダム  堤体が土質材料及び岩石質材料を主要材料として作られたダム

サ 集落排水事業

 地方公共団体等は、農村等の生活環境の改善を図り、併せて公共用水域の水質保全に寄与することなどを目的として、汚水処理場及び管路、公共汚水ますなどから構成される管路施設並びにこれらの附帯施設から成る集落排水施設等を整備する事業(以下「集落排水事業」という。)を実施している。

(ア) 近年の耐震基準等

 地方公共団体等は、農業集落における集落排水施設(以下「農業集落排水施設」という。)の設計を、農業集落排水施設設計指針(平成19年農業集落排水事業諸基準等作成全国検討委員会作成。以下「農業集落排水設計指針」という。)等に基づき行っている。また、漁業集落及び林業集落における集落排水施設の設計は、農業集落排水設計指針を準用するなどしている。
 農業集落排水設計指針によれば、汚水処理施設の耐震設計については規定されているが、管路の耐震設計については、管径が比較的小さく軽量であり地震力が管路に与える影響が小さいため、地震力による荷重は特別な場合を除き考慮しないのが通例とされていて規定されていない。
 そして、汚水処理施設の耐震設計については、水槽と建屋が上下一体構造となる場合又は水槽と建屋が分離していて水槽の地表面からの突出部分が5mを超える場合には、耐震設計を行うこととされている。また、施設の災害により地域住民の人命及び財産やライフラインに重大な影響を及ぼすなどの場合には、レベル1地震動及びレベル2地震動に対して要求される耐震性能を確保することとされている。

(イ) 耐震点検の実施方法等

 農林水産省は、農業集落排水施設の具体的な点検方法等が記載された耐震点検の要領等を作成しておらず、農業集落排水施設の設置及び管理は地方公共団体の自治事務として実施されることから、施設の耐震点検については、地方公共団体が必要に応じて実施の有無を判断することとしている。

(ウ) 液状化対策

 集落排水施設の液状化対策は、農業集落排水設計指針により、汚水処理施設については、建造地点の地盤が地震時において液状化する可能性がある場合は、この影響を考慮して耐震設計を行う必要があるとされているが、管路施設については規定されていない。
 しかし、新潟県中越地震では、管路の周辺地盤が液状化のおそれのない地盤において、埋戻し土の液状化が発生するとともに、開削工法で施工した掘削部の路面沈下や管路とマンホールの浮上が発生し、これらが農業集落排水施設の被害を大きくした。このことから、社団法人地域資源循環技術センター(23年4月1日以降は社団法人地域環境資源センター)は、集落排水施設に相当の被害が生ずることが想定される地震が発生する場合に備えて講ずるべき対策等を取りまとめた農業集落排水施設震災対策マニュアル(平成19年作成。以下「集落排水震災対策マニュアル」という。)を作成している。
 そして、集落排水震災対策マニュアルによれば、液状化が発生する要因として、地下水が高いことや砂質系の埋戻し土を使用していること、締固め度が低いことなどが考えられることから、管路の液状化対策については、開削工事において良質な砂や発生土を用いる場合は、液状化による浮き上がり被害を防止するために、埋戻し土の締固めについて、現場での密度試験による締固め度を90%以上に保ちながら埋戻すなど、施工管理を確実に行う必要があるとされている。
 なお、農林水産省は、集落排水震災対策マニュアルが施設管理者である市町村等が行う震災対応の参考図書として作成されていることから、埋戻し土の締固め等の液状化対策の遵守の要否はあくまでも事業主体である地方公共団体等が判断することとしている。

(エ) 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の検討状況等

 農林水産省は、大規模災害における農業集落排水施設のあり方に関する検討会を設置しており、同検討会は24年3月に東日本大震災を踏まえて「農業集落排水施設震災対応の手引き(案)」を参考図書として作成し、都道府県を通じて関係市町村等に配布している。これによれば、〔1〕 管路の設計に当たっては、過去の震災における被災の過半が埋戻し材や砂質基礎材の液状化によるものであったことから、地区全体の地質条件を把握して埋戻し材料等の液状化の可能性について検討し必要な対策を講ずること、〔2〕 液状化対策の工法は、集落排水震災対策マニュアルと同様に締固め度を管理した埋戻し等が有効であること、〔3〕 津波対策として、汚水処理施設の電気設備の高位部への設置や機械設備の機器部材に防錆材質の採用を検討することなどとされている。

(4) 総括

 地震・津波に対する耐震基準等の改定状況は、前記の(1)から(3)までで記述したとおりであり、11事業において、〔1〕 レベル2地震動の耐震基準への導入、〔2〕 地域防災計画上の施設における耐震性能等の設定、〔3〕 耐震点検の要領等の整備及び〔4〕 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の見直しについて行われていたものを整理すると次のとおりである。

 レベル2地震動の耐震基準への導入

 レベル2地震動に関する規定は、阪神・淡路大震災以降、河川、海岸、道路整備、港湾整備、下水道、漁港整備、農業農村整備、集落排水各事業の主要な施設の耐震基準に導入されていた。その導入時期には差違があり、図表-基準1 のとおりとなっていた。

図表-基準1  レベル2地震動に関する規定の主な施設の耐震基準への導入状況

図表-基準1レベル2地震動に関する規定の主な施設の耐震基準への導入状況

 地域防災計画上の施設における耐震性能等の設定

 施設に要求される耐震性能は施設の重要度等に応じて設定されることになるが、耐震基準において、明確に、地域防災計画における位置付けを考慮して施設の重要度を評価し、それに対応する耐震性能等が示されているのは、道路整備、下水道、漁港整備、農業農村整備各事業の主な施設であり、その内容は図表-基準2 のとおりとなっていた。

図表-基準2  耐震基準における地域防災計画上の施設の重要度の評価
事業名 施設名 耐震基準 重要とされている地域防災計画上の施設
道路整備事業 橋りょう 示方書
(平成14年)
地域防災計画上の位置付けとして、災害に対する応急復旧活動等に必要とされる度合いが高い橋りょう
下水道事業 管路 下水道耐震指針(平成18年) 緊急輸送道路等に埋設されている管路、地域防災計画上必要と定めた施設から排水を受ける管路等
漁港整備事業 岸壁、護岸 漁港手引(平成15年) 地域防災計画に位置付けられている重要な施設等
農業農村整備事業 頭首工、ため池 農業耐震手引(平成16年) 地域防災計画によって避難路に指定されている道路に隣接するなど、避難行動及び救護活動への影響が極めて大きい施設

 耐震点検の実施方法等

 耐震点検を実施することになっている河川、海岸、道路整備、港湾整備、下水道、漁港整備、農業農村整備各事業の施設については、耐震点検の要領等が整備され、施設管理者に通知等が行われており、耐震点検の実施方法又は対象は、図表-基準3 のとおりとなっていた。

図表-基準3  耐震点検の実施方法等
事業名 施設名 耐震点検の要領等 耐震点検の実施方法又は対象
河川事業 河川堤防、水門等 H19河川耐震照査指針等 津波の河川遡上解析及び平常時の最高水位の算定を行い、高い方の水位を照査外水位として決定し、堤内地地盤高が照査外水位より低い区間等に設置されている河川堤防等を対象に耐震性能照査を行う。
海岸事業 海岸堤防 海岸点検マニュアル 概略点検において、地震による被害の発生しやすい施設及び区間を選定した上で、津波、高潮等の外力の大きさ、背後地の高さ、背後地の利用状況等により想定される二次被害を考慮して詳細点検の必要な施設及び区間を抽出する。
道路整備事業 橋りょう 橋梁震災点検要領等 緊急輸送道路上の橋りょう、橋りょう55旧基準が適用されている橋りょうなど
道路盛土 盛土のり面の緊急点検要領 盛土高さ10m以上の箇所等
港湾整備事業 港湾施設 耐震強化岸壁の耐震性能の再点検について(事務連絡) 耐震強化岸壁
下水道事業 管路、終末処理場の施設等 下水道耐震指針 簡易点検において、既存の資料や現地調査等から耐震性能を評価し、簡易点検のみで評価が困難な場合、必施に応じて行う土質調査の調査結果等に基づき耐震性能を評価する。
漁港整備事業 漁港施設 漁業地域の耐震対耐策を進めるにあたっての設計等の考え方について(通知) 耐震強化岸壁
農業農村整備事業 頭首工、ポンプ場等 農業耐震手引 一次診断において、建設年代、準拠基準等、概略の構造特性及び地盤条件により耐震対策が必要とされる施設と二次診断により詳細な検討を必要とする施設を抽出する。

 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の見直し状況

 東日本大震災を踏まえた耐震基準等の見直しは、河川、海岸、道路整備、港湾整備、下水道、公園、漁港整備、農業農村整備、集落排水各事業の施設の耐震基準等において行われており、設計に用いる地震動の見直し、耐震設計の対象の見直し、津波の影響に対する設計方法の導入等の状況は、図表-基準4 のとおりとなっていた。

図表-基準4  東日本大震災を踏まえた耐震基準等の見直しの状況
事業名 見直しの状況
地震対策 津波対策
通知、改定等の主な内容 通知、改定等の状況 通知、改定等の主な内容 通知、改定等の状況
河川事業 ・堤体の液状化対策の導入 平成24年2月にH19河川耐震照査指針を改定している。 ・河川管理における津波の位置付け、津波外力の扱いについて 平成23年9月に通知を発している。
海岸事業 ・海岸堤防等が防護対象としている規模の津波を生じさせる地震により、津波到達前に機能を損なわない耐震対策の必要性の検討 平成23年12月に通知を発している。 ・設計津波高の設定方法の見直し
・設計津波高を越えた場合でも施設の効果が粘り強く発揮できる構造とする考え方の導入
・迅速かつ適切に津波浸水想定を実施するための標準的な方法や条件設定の考え方を具体化
平成23年7月及び同年12月に通知を発している。
道路整備事業 ・橋りょうの設計におけるレベル2地震動の見直し 平成24年2月に示方書を改定している。 ・橋りょうの設計において地域防災計画上の津波対策を考慮するとした規定の導入 平成24年2月に示方書を改定している。
港湾整備事業 ・地震動の継続時間を考慮した液状化予測及び判定方法の見直し 港湾技術基準の改定を予定している(平成24年8月に液状化予測及び判定法についての一部改定を行っている。)。 ・防波堤について、必要に応じて耐津波性を確保し、粘り強い構造となるよう補強対策を検討 港湾技術基準の改定を予定している。
下水道事業 ・埋戻し部の液状化対策としての施工管理上の問題と解決策の検討、工法の技術的な理解を向上させるためのマニュアル等の充実化が必要 検討委員会の取りまとめを踏まえ、平成25年度までに下水道耐震指針が改定されることになっている。 ・終末処理場の施設及び設備の防水化、津波の荷重及び侵入方向を考慮した施設構造の採用等の対策が必要 検討委員会の取りまとめを踏まえ、25年度までに下水道耐震指針が改定されることになっている。
公園事業 ・地震により公園施設の機能を喪失するような被害が生じていないことから、見直しは行っていない。 ・避難地となる公園は、避難階段、避難タワーの設置、津波避難ビルの指定等と合わせた配置計画とすることが必要
・避難地となる公園の津波の到達する方向に留意した整備の実施
平成24年3月に東日本大震災からの復興に係る公園緑地整備に関する技術的指針を公表している。
漁港整備事業 ・防災上重要な漁港等において、設計津波が到達する前に施設の機能が損なわれないようにするため、重要度の高い防波堤や岸壁について発生頻度の高い津波を生じさせる地震動を設計対象に導入 平成24年4月に通知を発している。 ・津波に対して粘り強い構造にするために、防波堤の堤体の滑動及び転倒抑制対策や基礎部分の洗掘防止対策、岸壁の堤体の傾斜抑制策や前面の洗掘防止対策等の実施 平成24年4月に通知を発している。
農業農村整備事業 ・大規模地震により人命に被害が生ずる可能性のあるため池についてフィルダム並みの耐震設計の検討
・農業用パイプラインの長時間に及ぶ地震動による影響の検証
小委員会の審議等を踏まえ、農業設計基準等の改定を検討する予定としている。 ・ポンプ場について電気設備等の盤上げや耐水化対策の効果の検証 小委員会の審議等を踏まえ、農業設計基準等の改定を検討する予定としている。
集落排水事業 ・管路の設計において、地区全体の地質条件を把握し、埋戻し材料等の液状化の可能性について検討し必要な対策の実施
・有効な液状化対策工法の例示
平成24年3月に農業集落排水施設震災対応の手引き(案)を配布している。 ・汚水処理施設の電気設備の高位部への設置や機械設備の機器部材に防錆材質の採用を検討 平成24年3月に農業集落排水施設震災対応の手引き(案)を配布している。