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  • 平成24年10月

独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について


3 不要財産の処分の状況

 不要財産に係る国庫納付の方法については、通則法第46条の2第2項及び第3項の規定により、同条第1項の規定による政府出資等に係る不要財産の国庫への納付に代えて、主務大臣の認可を受けて(中期計画に定めた場合は当該認可は不要)、政府出資等に係る不要財産を譲渡し、これにより生じた収入の額の範囲内で主務大臣が定める基準により算定した金額を国庫に納付することができるなどとされており、法人が保有する土地、有価証券等の資産を譲渡し、その収入額を国庫に納付することが認められている。そして、附則第3条の規定により、改正法の施行日前に独立行政法人が行った財産の譲渡のうち主務大臣が定めるものについては、施行日に行われた不要財産の譲渡とみなすこととされている。また、民間等出資に対する払戻しについては、通則法第46条の3の規定により、民間等出資に係る不要財産の譲渡により生じた収入の額の範囲内で主務大臣が定める基準により算定した金額を払い戻すこととされている。
 不要財産の処分の状況の分析に当たっては、譲渡の方法、譲渡収入額の規模、資産の流動性等を考慮して、有価証券と有価証券以外の資産に区分し、さらに、有価証券以外の資産については、土地、建物並びに土地及び建物と併せて譲渡した資産(以下「不動産」という。)と不動産以外の資産(以下「動産等」という。)の譲渡に区分して分析を行った。
 また、通則法第46条の2第1項に基づき現金預金を現物納付したもののうち、販売用不動産を除く不動産の譲渡及び有価証券の譲渡に係るものについても、併せて処分の状況として記載した。なお、無償で譲渡した資産の契約については、記載から除いている。

(1) 譲渡収入額の状況

 各法人の処分の状況を示すと図表3-1 のとおりとなっており、23年度末までに国庫納付した不要財産に係る譲渡収入額は、42法人で6182億円となっている。そして、各法人は、この譲渡収入額から民間等出資に係る部分や譲渡に要した費用の額等を控除した金額を国庫納付している。

図表3-1 不要財産の処分による譲渡収入額の状況
(単位:千円)

法人名 譲渡収入額
不動産 動産等 有価証券
情報通信研究機構 10,438 - 9,619,790 9,630,228
国際協力機構 1,193,461 - - 1,193,461
国際交流基金 29,250 - 34,207,075 34,236,325
造幣局 2,775,174 - - 2,775,174
国立印刷局 31,392,884 - - 31,392,884
国立青少年教育振興機構 105,316 - 6,133,049 6,238,365
国立科学博物館 2,679 - - 2,679
放射線医学総合研究所 367,863 - - 367,863
科学技術振興機構 44,122 - - 44,122
理化学研究所 1,588,888 - - 1,588,888
日本学生支援機構 352,610 - - 352,610
国立高等専門学校機構 2,020 - - 2,020
勤労者退職金共済機構 69,700 - - 69,700
高齢・障害・求職者雇用支援機構 224,915 - - 224,915
福祉医療機構 217,000 - 256,178,736 256,395,736
労働者健康福祉機構 11,002 - - 11,002
国立病院機構 410,000 - - 410,000
医薬基盤研究所 32,147 - 3,409,435 3,441,582
年金積立金管理運用 67,100 - - 67,100
農林水産消費安全技術センター - 124 - 124
種苗管理センター 10,048 - - 10,048
家畜改良センター 13,020 - - 13,020
水産大学校 - 84,000 - 84,000
農業・食品産業技術総合研究機構 850,938 7,330 - 858,269
農業生物資源研究所 1,789,679 207 - 1,789,886
国際農林水産業研究センター - 44 - 44
森林総合研究所 638,154 - - 638,154
水産総合研究センター 8,855 30,345 - 39,200
農畜産業振興機構 1,194 - - 1,194
農業者年金基金 68,100 31 - 68,131
産業技術総合研究所 371,428 70,390 - 441,818
新エネルギー・産業技術総合開発機構 252,261 13,000 17,149,828 17,415,089
日本貿易振興機構 192,783 - 15,636,652 15,829,435
情報処理推進機構 - - 6,636,907 6,636,907
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 1,057,571 313,878 - 1,371,449
土木研究所 27,000 - - 27,000
航海訓練所 - 114,450 - 114,450
海技教育機構 5,250 1,890 - 7,140
航空大学校 - 22,675 - 22,675
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 3,869 1,500 4,497,152 4,502,521
住宅金融支援機構 - - 219,937,670 219,937,670
国立環境研究所 - 350 - 350
44,186,729 660,215 573,406,297 618,253,242
(注)
譲渡収入額は、国庫納付金の申請書等に記載された数字を用いている。

 処分した資産別の法人数についてみると不動産を譲渡した法人が34法人と最も多い。譲渡収入額についてみると、有価証券の譲渡収入額が5734億円となっていて、割合でみても全体の92%とそのほとんどを占めている。
 また、譲渡収入額について、通則及び改正法の国庫納付の根拠条文別にみると、図表3‐2 のとおりである。

図表3‐2 根拠条文別の譲渡収入額の状況
(単位:千円)

根拠条文 不動産 動産等 有価証券
附則第3条(改正法施行日前の譲渡) 35,581,693 333,212 280,347,098 316,262,004
第46条の2第2項(不要財産の譲渡収入(簿価超過額を除く。)の納付)及び第3項(不要財産の譲渡収入(簿価超過額)の納付) 4,897,748 327,002 90,723,700 95,948,450
第46条の2第2項(不要財産の譲渡収入(簿価超過額を除く。)の納付)及び第3項(不要財産の譲渡収入(簿価超過額)の納付)
第46条の3(民間等出資の払戻し)
9,186,236 9,186,236
第46条の2第1項(不要財産の現物納付) 3,707,288 193,149,262 196,856,551
44,186,729 660,215 573,406,297 618,253,242

 不動産の譲渡収入額については、附則第3条に基づく譲渡収入額が355億円となっており、改正法の施行日前に行われた財産の譲渡のうち、主務大臣が不要財産の譲渡とみなすと定めたものに係る譲渡収入額を国庫納付することとなったものが大半を占めている。
 また、通則法第46条の2第1項に基づく譲渡収入額が1968億円となっている。これは、改正法の施行日前に譲渡収入額の一部を事業費に充当するなどしたため、譲渡収入額から当該費用等を控除し、通則法第46条の2第1項の規定に基づく現金預金の現物納付として国庫納付しているものである。

(2) 不動産及び動産等の処分の状況

ア 不動産及び動産等の処分の概要

 不動産を不要財産として処分した状況については、図表3-3 のとおりであり、34法人が不動産を譲渡して441億円の譲渡収入を得ている。

図表3-3  不動産の処分の状況
(単位:千円)

法人名 数量 取得価額 帳簿価額
(A)
譲渡収入額
(B)
差額
(B)-(A)
物件数 土地(m2 ) 建物延べ面積(m2 )
  宿舎 福利厚生施設 その他
情報通信研究機構 1 - - 1 - 871.51 10,438 9,715 10,438 722
国際協力機構 94 89 3 2 14,838.89 12,868.12 3,355,153 1,046,644 1,193,461 146,817
国際交流基金 6 6 - - 133.98 331.70 51,220 29,113 29,250 136
造幣局 9 4 2 3 10,001.54 2,993.00 2,317,810 2,005,689 2,775,174 769,485
国立印刷局 32 14 4 14 26,437.67 2,261.63 24,032,321 23,640,336 31,392,884 7,752,548
国立青少年教育振興機構 1 - - 1 2,950.04 - 123,311 123,311 105,316 △ 17,995
国立科学博物館 1 - - 1 38.28 - 2,679 2,679 2,679 -
放射線医学総合研究所 1 - - 1 1,988.45 - 138,688 138,688 367,863 229,174
科学技術振興機構 3 1 - 2 41.06 160.28 129,088 93,329 44,122 △ 49,207
理化学研究所 1 - - 1 1,009.10 1,659.17 705,398 695,000 1,588,888 893,888
日本学生支援機構 2 - - 2 888.29 3,587.12 545,114 450,513 352,610 △ 97,903
国立高等専門学校機構 1 - - 1 87.11 - 1,585 1,585 2,020 435
勤労者退職金共済機構 1 1 - - 2,304.00 - 126,700 126,700 69,700 △ 57,000
高齢・障害・求職者雇用支援機構 3 1 - 2 2,411.40 857.01 178,235 159,703 224,915 65,211
福祉医療機構 1 1 - - 1,957.26 1,383.40 285,536 230,900 217,000 △ 13,900
労働者健康福祉機構 2 1 - 1 16,044.00 556.63 52,035 11,002 11,002 △ 0
国立病院機構 1 - - 1 35,766.96 - 1,111,863 1,111,863 410,000 △ 701,863
医薬基盤研究所 1 - - 1 823.34 - 26,620 26,620 32,147 5,527
年金積立金管理運用 1 1 - - 298.67 200.82 68,200 67,295 67,100 △ 195
種苗管理センター 2 - - 2 3,673.28 328.92 5,203 5,203 10,048 4,844
家畜改良センター 4 - - 4 27,639.87 - 3,918 3,918 13,020 9,101
農業・食品産業技術総合研究機構 7 - - 7 21,148.08 - 461,903 461,903 850,938 389,035
農業生物資源研究所 4 - - 4 107,789.26 238.80 5,524,388 2,244,312 1,789,679 △ 454,632
森林総合研究所 10 8 - 2 3,550.58 1,441.19 542,954 516,837 638,154 121,316
水産総合研究センター 3 - - 3 294.76 - 9,207 9,102 8,855 △ 246
農畜産業振興機構 1 1 - - 5.78 - 902 902 1,194 291
農業者年金基金 1 1 - - 659.64 723.95 117,869 42,649 68,100 25,450
産業技術総合研究所 1 - - 1 - 4,593.92 4,968,052 1,018,031 371,428 △ 646,603
新エネルギー・産業技術総合開発機構 2 1 - 1 639.26 289.83 205,335 204,100 252,261 48,161
日本貿易振興機構 4 1 - 3 1,078.13 1,971.25 1,053,500 281,187 192,783 △ 88,404
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 4 4 - - 6,057.97 5,213.11 1,201,410 723,000 1,057,571 334,571
土木研究所 1 - - 1 84,590.00 1,123.42 823,840 26,830 27,000 169
海技教育機構 1 - - 1 - 6,927.88 393,948 84,360 5,250 △ 79,110
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 3 - 3 - 16.60 23.14 7,000 6,420 3,869 △ 2,550
210 135 12 63 375,163.25 50,605.80 48,581,435 35,599,452 44,186,729 8,587,277
注(1)  科学技術振興機構の2物件及び鉄道建設・運輸施設整備支援機構の3物件はリゾート会員権である。
注(2)  宿舎のうち、国際協力機構の89物件、国際交流基金の6物件及び科学技術振興機構の1物件は区分所有宿舎である。
注(3)  建物附属設備のみの譲渡(水産総合研究センター)については、数量は計上していない。
注(4)  物件数について、敷地の一部を譲渡したものについても、1物件として計上している。

 不動産の種類別にみると、宿舎が135物件と最も多く、この大半は国際協力機構の区分所有宿舎89物件であり、その他については、主に研究施設や事業用地の譲渡である。譲渡収入額と帳簿価額との差額についてみると、全体としては、譲渡収入額が帳簿価額を85億円上回っている。この主な要因は、国立印刷局において、都心部の不動産を帳簿価額を上回る価格で売却したことによるものである。
 次に、動産等の処分の状況についてみると、図表3-4 のとおりであり、15法人で譲渡を行っている。

図表3-4 動産等の処分の状況
(単位:千円)

法人名 科目名 数量 取得価額 帳簿価額
(A)
譲渡収入額
(B)
差額
(B)-(A)
農林水産消費安全技術センター 工具器具備品 1 31,554 1,998 37 △ 1,960
預託金 9 86 86 86 -
水産大学校 船舶 1 472,485 47,248 84,000 36,751
農業・食品産業技術総合研究機構 工具器具備品 9 100,441 6,266 6,266 -
電話加入権 180 12,960 12,960 1,063 △ 11,896
農業生物資源研究所 電話加入権 52 3,744 208 207 △ 0
国際農林水産業研究センター 電話加入権 14 1,008 1,008 44 △ 963
水産総合研究センター 船舶 4 363,000 212,600 30,345 △ 182,255
農業者年金基金 車両運搬具 1 3,147 314 31 △ 283
産業技術総合研究所 工具器具備品 17 885,094 68,216 70,390 2,173
新エネルギー・産業技術総合開発機構 機械装置、構築物 2 42,122 11,994 13,000 1,005
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 機械装置 21 474,209 311,878 311,878 -
施設利用権 1 1,745 2,000 2,000 -
航海訓練所 船舶 2 195,000 60,678 114,450 53,772
海技教育機構 船舶 1 88,550 1,890 1,890 -
航空大学校 航空機 3 35,300 35,300 22,675 △ 12,625
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 敷金・保証金 1 1,500 1,500 1,500 -
国立環境研究所 車両運搬具 1 1,605 551 350 △ 201
320 2,713,554 776,699 660,215 △ 116,484

 動産等の処分の内訳は各法人で様々であり、譲渡収入額は船舶や機械装置等の事業用の資産によるものがほとんどを占めている。

イ 譲渡の方法

  各法人の不動産の譲渡の方法についてみると、図表3-5 のとおりである。

図表3-5 不動産の譲渡の方法
(単位:千円)

法人名 一般競争契約 随意契約
個別売却 一括売却 個別売却
契約件数 譲渡収入額 契約件数 物件数 譲渡収入額 契約件数 譲渡収入額
情報通信研究機構 - - - - - 1 10,438
国際協力機構 2 535,835 7 92 657,626 - -
国際交流基金 1 10,250 1 5 19,000 - -
造幣局 6 2,305,811 - - - 3 469,363
国立印刷局 23 9,071,551 - - - 9 22,321,333
国立青少年教育振興機構 - - - - - 1 105,316
国立科学博物館 - - - - - 1 2,679
放射線医学総合研究所 - - - - - 1 367,863
科学技術振興機構 1 29,482 - - - 2 14,640
理化学研究所 1 1,588,888 - - - - -
日本学生支援機構 - - 1 2 352,610 - -
国立高等専門学校機構 - - - - - 1 2,020
勤労者退職金共済機構 1 69,700 - - - - -
高齢・障害・求職者雇用支援機構 2 222,500 - - - 1 2,415
福祉医療機構 1 217,000 - - - - -
労働者健康福祉機構 2 11,002 - - - - -
国立病院機構 1 410,000 - - - - -
医薬基盤研究所 - - - - - 1 32,147
年金積立金管理運用 1 67,100 - - - - -
種苗管理センター - - - - - 2 10,048
家畜改良センター - - - - - 4 13,020
農業・食品産業技術総合研究機構 - - - - - 7 850,938
農業生物資源研究所 - - - - - 4 1,789,679
森林総合研究所 6 537,301 1 2 62,000 2 38,853
水産総合研究センター - - - - - 3 8,725
農畜産業振興機構 - - - - - 1 1,194
農業者年金基金 1 68,100 - - - - -
産業技術総合研究所 1 371,428 - - - - -
新エネルギー・産業技術総合開発機構 2 252,261 - - - - -
日本貿易振興機構 3 105,783 - - - 1 87,000
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 3 777,571 - - - 1 280,000
土木研究所 - - - - - 1 27,000
海技教育機構 - - - - - 1 5,250
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 - - - - - 3 3,869
58 16,651,565 10 101 1,091,236 51 26,443,798
注(1)  一括売却とは、複数の物件をまとめて売却したものをいう。
注(2)  個別売却の物件数は、契約件数と同数のため、記載を省略している。
注(3)  建物附属設備のみの譲渡(水産総合研究センター)については、上表による分析の対象から除いているため、譲渡収入額の計は図表3-3 と一致しない。

 一般競争契約により不動産の譲渡を行っている法人は19法人で、契約件数は68件となっており、このうち、一括売却により譲渡を行っている法人は4法人で契約件数は10件となっている。随意契約により譲渡を行っている法人は22法人で、契約件数は51件となっている。随意契約については、地方公共団体から道路拡張等の要請を受けたことにより、資産を譲渡しているものが多くを占めている。
 また、法人の中には、不動産の譲渡に当たり、当該譲渡に係る事務の補助に関する委託契約を結ぶなどして、仲介業者を使用している法人があり、その状況を示すと図表3-6 のとおりである。

図表3-6 仲介業者を使用して譲渡した不動産の状況
法人名 数量 譲渡収入額
(千円)
委託手数料の算定方法
(消費税抜き)
委託手数料
(円)
(消費税抜き)
物件数 土地(m2 ) 建物延べ面積(m2 )
国際協力機構 94 14,838.89 12,868.12 1,193,461 譲渡金額×3% 35,803,857
国立印刷局 12 7,533.36 - 760,634 譲渡金額×2% 15,212,680
3 3,540.21 2,261.63 954,328 譲渡金額×0.1% 954,328
科学技術振興機構 1 15.47 48.07 29,482 定額 483,000
理化学研究所 1 1,009.10 1,659.17 1,588,888 譲渡金額×0.0000001% 1
日本学生支援機構 2 888.29 3,587.12 352,610 定額 900,000
勤労者退職金共済機構 1 2,304.00 - 69,700 譲渡金額×0.1% 69,700
高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 987.98 455.89 14,500 定額 800,000
1 1,423.42 - 208,000 譲渡金額×0.3% 624,000
福祉医療機構 1 1,957.26 1,383.40 217,000 譲渡金額×0.1% 217,000
労働者健康福祉機構 2 16,044.00 556.63 11,002 譲渡金額×1.4% 154,028
年金積立金管理運用 1 298.67 200.82 67,100 譲渡金額×0.01% 6,710
森林総合研究所 1 125.05 52.06 43,000 定額 800,000
5 2,051.10 1,068.01 494,301 - -
2 808.47 321.12 62,000 譲渡金額×3% 1,860,000
農業者年金基金 1 659.64 723.95 68,100 - -
新エネルギー・産業技術総合開発機構 2 639.26 289.83 252,261 譲渡金額×0.001% 2,522
日本貿易振興機構 1 678.14 497.40 75,788 - -
2 399.99 1,100.85 29,995 譲渡金額×0.1% 29,995
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 4 6,057.97 5,213.11 1,057,571 譲渡金額の総額が8億円未満
(譲渡金額×1%+60,000円)、
8億円以上(譲渡金額×1.5% +60,000円)
15,923,565
138 62,260.27 32,287.18 7,549,723 73,841,386
注(1)  リゾート会員権に係る譲渡は除いている。
注(2)  委託手数料の算定方法及び委託手数料が「-」となっているものは、仲介業者が買手側からのみ手数料を受け取っているなどのものでる。

 仲介業者を使用している法人は15法人あり、不動産の売却に係る知見がないなどの理由から、仲介業者を使用している。委託手数料の算定方法についてみると、契約内容の違いなどがあるため、一概には比較できないが、手数料率では最も高いもので3%となっている。
 そして、委託手数料と業務の内容についてみたところ、契約書の作成が適切ではない事態が次のとおり見受けられた。

<事例3-1>
 高齢・障害・求職者雇用支援機構は、旧三重障害者職業センター(取得価額7673万余円、帳簿価額5870万余円)を平成23年度に売却し、譲渡収入額1450万円から譲渡に要した費用162万余円を控除した額1287万余円を23年度に不要財産として国庫納付した。
 同機構は、当該売却に関し、仲介業者と当該物件の問合せへの対応や宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第35条の重要事項の説明等の仲介業務を含む補助業務に関する委託契約を締結し、委託手数料80万円(消費税抜き)を定額で支払っていた。
 仲介業務に係る仲介手数料については、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)において、上限が定められており、売買に係る代金の額が400万円を超える場合の上限の算定式は、「売買金額×3%+6万円」となっている。そして、この算定式に上記の譲渡収入額を用いると、当該売却に係る仲介手数料の上限は49.5万円となる。
 しかし、当該契約書には、仲介業務の対価(仲介手数料)とそれ以外の業務の対価が区分されていないため、仲介業務の対価について、上限の範囲内で支払われたのかが不明となっている。
 したがって、契約書において、仲介業務の対価とそれ以外の業務の対価について、明確に区分する必要があったと認められる。

 次に、動産等を不要財産として譲渡した方法についてみると、図表3-7 のとおりである。

図表3-7 動産等の譲渡の方法
(単位:千円)

法人名 科目名 一般競争契約 指名競争契約 随意契約
契約件数 数量 譲渡収入額 契約件数 数量 譲渡収入額 契約件数 数量 譲渡収入額
農林水産消費安全技術センター 工具器具備品
-
-
-
-
-
-
1
1
37
預託金
4
4
42
-
-
-
5
5
43
水産大学校 船舶
1
1
84,000
-
-
-
-
-
-
農業・食品産業技術総合研究機構 工具器具備品
-
-
-
-
-
-
7
9
6,266
電話加入権
-
-
-
-
-
-
1
180
1,063
農業生物資源研究所 電話加入権
-
-
-
-
-
-
1
52
207
国際農林水産業研究センター 電話加入権
-
-
-
-
-
-
1
14
44
水産総合研究センター 船舶
2
2
19,950
-
-
-
2
2
10,395
農業者年金基金 車両運搬具
-
-
-
-
-
-
1
1
31
産業技術総合研究所 工具器具備品
5
5
7,990
-
-
-
1
12
62,400
新エネルギー・産業技術総合開発機構 機械装置、構築物
1
2
13,000
-
-
-
-
-
-
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 機械装置
-
-
-
-
-
-
4
21
311,878
施設利用権
-
-
-
-
-
-
1
1
2,000
航海訓練所 船舶
2
2
114,450
-
-
-
-
-
-
海技教育機構 船舶
-
-
-
1
1
1,890
-
-
-
航空大学校 航空機
3
3
22,675
-
-
-
-
-
-
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 敷金・保証金
-
-
-
-
-
-
1
1
1,500
国立環境研究所 車両運搬具
1
1
350
-
-
-
-
-
-
19
20
262,457
1
1
1,890
26
299
395,867

 一般競争契約により譲渡を行っている法人は8法人で契約件数は19件となっており、指名競争契約により譲渡を行っている法人は1法人で契約件数は1件となっている。随意契約により譲渡を行っている法人は9法人で契約件数は26件となっている。随意契約については、研究を委託している業者に対して委託契約の規定に基づき譲渡したものや、少額随意契約によるものが大半を占めている。

(3) 有価証券の処分の状況

ア 有価証券の処分の概要

 有価証券を不要財産として処分した状況について示すと、図表3-8 のとおり、10法人で譲渡を行っており、多くの法人は、有価証券を帳簿価額以上の金額で譲渡している。

図表3-8 有価証券の処分の状況
(単位:百万円)

法人名 銘柄数 取得価額 帳簿価額
(A)
譲渡収入額
(B)
差額
(B)-(A)
情報通信研究機構 33 9,426 9,485 9,619 134
国際交流基金 71 34,135 33,207 34,207 999

国立青少年教育振興機構

13 6,018 6,052 6,133 80
福祉医療機構 157 245,045 245,239 256,178 10,939
医薬基盤研究所 16 3,257 3,255 3,409 154
新エネルギー・産業技術総合開発機構 28 16,862 16,922 17,149 227
日本貿易振興機構 5 14,904 14,878 15,636 757
情報処理推進機構 10 6,450 6,540 6,636 96
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 14 4,798 4,799 4,497 △301
住宅金融支援機構 191 212,357 212,153 219,937

7,783

538 553,258 552,535 573,406 20,871

 しかし、これらの法人の中には帳簿価額よりも低い価格で有価証券を譲渡していた法人があり、その状況を示すと図表3-9 のとおりである。

図表3-9 譲渡収入額が帳簿価額を下回った債券の状況
(単位:千円)

法人名 銘柄 取得年月日 取得価額 帳簿価額
(A)
譲渡収入額
(B)
差額
(B)-(A)
国際交流基金 フランス国債Q2177 平成21年3月24日
882,066
860,126
841,340
△18,786
フランス国債P9179 平成21年3月26日
974,955
917,327
881,984
△35,342
フランス国債Q2170 平成21年11月5日
862,755
793,687
756,469
△37,218
鉄道建設・運輸施設整備支援機構

国際復興開発銀行債券

平成15年10月1日
1,200,000
1,200,000
786,600
△413,400
3,919,776
3,771,141
3,266,393
△504,747

  譲渡収入額が帳簿価額を下回っていた債券は、仕組債や外貨建債券であり、事例を示すと次のとおりである。

<事例3-2>
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、講ずべき措置において、高度船舶技術開発等業務の利子補給業務及び債務保証業務を終了して、当該業務に係る政府出資金10億円を国庫納付することとされたことを受け、保有していた有価証券14銘柄(取得価額47億9815万円、帳簿価額47億9908万余円)を平成23年7月に44億9715万余円で売却し、当該譲渡収入額と保有していた現金預金1247万余円を合わせた45億0962万余円のうち政府出資に相当する部分の8億4950万余円を国庫納付した。
 当該譲渡収入額と帳簿価額を比較してみると、譲渡を行った14銘柄のうち、13銘柄については、1億1146万余円の売却益がでていたものの、仕組債1銘柄(国際復興開発銀行債券:帳簿価額12億円)については、4億1340万円の売却損が生じていた。

 また、有価証券の譲渡の中には、外貨建債券を譲渡したことに伴い、為替差損が確定し、円貨債の売却により補填した事態が次のとおり見受けられた。

<事例3-3>
 国際交流基金は、国際交流基金法(平成14年法律第137号)第16条第2項において、支払が外国通貨で行われる事業の実施に必要な経費の財源を得ようとするときは、外貨建債券の取得により運用資金を運用することができると定められており、パリ日本文化会館におけるユーロ経費の支払のために外貨建外債を保有していた。同基金は、講ずべき措置において、日米親善交流基金及び日中21世紀基金を除く運用資金342億円を国庫納付することとされたことを受け、平成22年度に当該外貨建外債を不要財産として認定し、同じく不要財産と認定した円貨債と合わせた譲渡収入額計342億0707万余円(外貨建外債54億6403万余円、円貨債287億4303万余円)及び現金預金227万余円を合わせた合計342億0935万余円を国庫納付した。
 その際、外貨建外債については、為替相場が外貨建外債取得時よりも円高になり、譲渡時の円貨での売却収入が外貨建外債取得時の円貨での価格よりも10億0547万余円減少したため、円貨債の売却により差額を補填していた。

イ 譲渡の方法

 有価証券の譲渡の方法についてみると、図表3-10 のとおりである。

図表3-10 有価証券の譲渡の方法
(単位:百万円)

法人名 契約方式 銘柄数 引き合い者数
応札者数
売却方法 譲渡収入額
情報通信研究機構 随意契約 33 9 個別(銘柄ごと) 9,619
国際交流基金 指名競争契約 6 4 個別(銘柄ごと) 1,581
5 4 個別(銘柄ごと) 3,125
13 9 一括 4,654
18 9 一括 9,342
15 8 一括 8,317
7 10 一括 1,720
1 5 個別 521
3 4 一括 2,462
3 4 一括 2,479
国立青少年教育振興機構 随意契約 13 10 個別(銘柄ごと) 6,133
福祉医療機構 指名競争契約 157 5 一括 256,178
医薬基盤研究所 随意契約 16 4 個別(銘柄ごと) 3,409
新エネルギー・産業技術総合開発機構 随意契約 28 引き合いをかけていない 17,149
日本貿易振興機構 指名競争契約 2 4 個別(銘柄ごと) 13,509
一般競争契約 3 2 一括 2,127
情報処理推進機構 随意契約 10 4 一括 6,636
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 随意契約 14 引き合いをかけていない 4,497
住宅金融支援機構 指名競争契約 161 3 一括 169,362
30 4 一括 50,575
538 573,406
注(1)  「引き合い者数 応札者数」について、随意契約は引き合い者数を、一般競争契約及び指名競争契約は応札者数を記載している。
注(2)  一括売却とは、複数の有価証券をまとめて売却したものをいう。

 各法人の有価証券の譲渡先は、全て証券会社となっており、譲渡先の選定方法についてみると、多くの法人において、入札や引き合いを行って競争性を確保している。入札や引き合いを行っていない法人は2法人あり、このうち、新エネルギー・産業技術総合開発機構は、有価証券を売却する際に、譲渡収入が帳簿価額を上回ること及び23年1月中に一括売却することを条件として、格付等により判定した3者に対して引き合いに応じることが可能か確認したところ、2者から応じることができないとの回答を受けたため、22年度までに国庫納付することとする講ずべき措置に示された期限を考慮して、対応可能との回答があった証券会社に譲渡を行っている。
 そして、同じく引き合いを行っていない鉄道建設・運輸施設整備支援機構の事態は、次のとおりである。

<事例3-4>
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、仕組債1銘柄及び仕組債以外の13銘柄の有価証券を、それぞれ保管している証券会社(以下「管理会社」という。)に譲渡し、事例3-2 のとおり、8億4950万余円を国庫納付した。
 その際、同機構は、管理会社から、管理会社以外の証券会社に売却を行う場合は、各証券会社は、売却前のある時点の価格を出すため、保守的な価格を出さざるを得ないなどとの説明を受けたことから、管理会社が提示した額以上の価格で他の証券会社に売却することは不可能と判断して、管理会社からの提示額の妥当性を公社債店頭売買参考統計値等により確認の上、各管理会社にそれぞれ譲渡を行っていた。
 しかし、同機構以外の法人の中には、有価証券の譲渡に当たり、引き合いを行うなどした結果、管理会社が提示した額以上の価格で管理会社以外の証券会社に譲渡をしている法人もあることから、譲渡先の選定に当たっては、引き合いを行うなどして、競争性の確保に努めるべきであったと認められる。

 また、引き合いを行っていない2法人を除いた8法人の有価証券の譲渡の方法についてみると、個別売却のみの譲渡を行っている法人が3法人、一括売却のみの譲渡を行っている法人が3法人、個別売却、一括売却両方の方法により譲渡を行っている法人が2法人となっている。
 上記の譲渡の方法を選択した理由として、一括売却を行っている住宅金融支援機構を例にとると、売却した有価証券には、1億円未満の債券や国債以外の銘柄も含まれており、ある程度まとまった金額での売却の方が証券会社としても購入しやすく、より高い価格で譲渡できる可能性があるとの意見を踏まえ、また、事務処理リスクの観点から、一括売却で譲渡を行っている。
 一方、個別売却を行っている情報通信研究機構を例にとると、個別に売却を行う方が銘柄ごとに値段を競わせることができるため一括売却よりもより高く売却できるとして、個別売却で譲渡を行っている。
 有価証券の譲渡の方法については、銘柄数や譲渡規模、買手側の需要の状況が様々であるため、一概には比較できないが、有価証券の譲渡収入額は5734億円と多額に上っており、また、1銘柄当たりの譲渡収入額(平均で約10.6億円)も大きいことなどを踏まえると、有価証券の売却に際しては、譲渡取引において十分な競争性を確保することが必要である。