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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成24年10月

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について


2 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

(1) 東日本大震災の復旧・復興に係る予算及びその財源の状況

 国は、東日本大震災の発生直後の23年3月に、22年度の予備費を活用して、順次、被災地の緊急支援(301億余円)、自衛隊の救援活動等(53億余円)、海上保安庁の海難救助等(4億余円)、災害救助費等負担金(300億余円)及びエネルギーの供給の確保(16億余円)のための経費に充てることとした。また、国は、23年4月に、23年度の予備費を活用して、災害救助費等負担金(503億余円)のための経費に充当した。その後、当面の復旧事業を中心に、がれき処理、仮設住宅の建設、道路・港湾の復旧等に係る経費として財政措置された4兆0153億余円を計上した1次補正が同年5月2日に、原子力損害賠償、被災者支援等に係る経費として財政措置された1兆9106億余円を計上した2次補正が同年7月25日にそれぞれ成立した。
 さらに、東日本大震災からの復旧・復興に係る経費9兆2438億余円(年金臨時財源の補填分2兆4896億余円を除く。)を計上した平成23年度第3次補正予算(以下「3次補正」という。)が同年11月21日に成立した。
 1次補正から3次補正までの当初の補正予算額に係る東日本大震災関係経費(以下、この経費の内訳事項を「経費項目」という。)は、表14 のとおりとなっており、各経費項目の内容及び予算額についてみると、以下のとおりとなっている。

表14 東日本大震災関係経費(平成23年度補正予算)

(単位:億円)

経費項目 1次
補正
2次
補正
3次
補正
災害救助等関係経費(1次補正、3次補正)
(応急仮設住宅建設、被災児童生徒就学支援等)
4,828 941 5,770
災害廃棄物処理事業費(がれき等処理) 3,519 3,859 7,378
災害対応公共事業関係費(1次補正) 12,019   30,914
施設費災害復旧費等(1次補正) 4,160      
公共事業等の追加(3次補正)     14,734  
災害関連融資関係経費
(中小企業、農林漁業者等への融資等)
6,406 6,715 13,122
地方交付税交付金(災害対応の特別交付税増額等) 1,200 4,573 16,635 22,408
東日本大震災復興交付金 15,611 15,611
全国防災対策費 5,751 5,751
その他の東日本大震災関係経費(1次補正、3次補正)
(雇用対策費、住宅関係、節電エコ補助金等)
8,018 24,631 32,649
被災者支援関係経費(2次補正) 3,773 3,773
東日本大震災復興対策本部運営経費 5 5
原子力損害賠償法等関係経費(2次補正)、原子力災害復興関係経費(3次補正) 2,754 3,557 6,311
東日本大震災復旧・復興予備費 8,000 8,000
        (△2,343)
        5,656
40,153 19,106 92,438 149,354
注(1)  2次補正の地方交付税交付金は、5454億余円から普通交付税増額分881億余円を控除した額である。
注(2)  東日本大震災復旧・復興予備費において2343億余円は、3次補正で台風12号対策等の財源に充当されているため、8000億円から控除している。
注(3)  3次補正で計上された年金臨時財源補填分2兆4896億余円は、除外している。

〔1〕 「災害救助等関係経費」は、地方公共団体が行う災害救助等に必要な経費の追加を行うもので、1次補正4828億余円、3次補正941億余円、計5770億余円が計上されている。この経費のうち主なものは、災害応急住宅の建設(約7.2万戸)及び民間賃貸住宅を活用した応急仮設住宅の設置(約1.4万戸)等3625億余円、遺族に対して支給される災害弔慰金等485億余円、被災した世帯に対して貸し付けられる災害援護貸付金等349億余円等となっている。

〔2〕 「災害廃棄物処理事業費」は、東日本大震災により被害を受けた地域の地方公共団体が行う災害廃棄物等(がれき)の処理に要する費用の一部補助、国が代行して行う災害廃棄物処理に要する費用等で、1次補正3519億余円、3次補正3859億余円、計7378億余円が計上されている。

〔3〕 「災害対応公共事業関係費」は、公共土木施設の災害復旧等に必要な経費である災害復旧等事業費1兆0438億余円、治水、治山、海岸、道路、港湾、農業、森林、水産基盤等の諸施設について、早急に復旧するために必要な経費として一般公共事業関係費1581億余円、計1兆2019億余円が計上されている。
 「施設費災害復旧費等」には、公立学校施設、公立社会教育施設、私立学校施設等に対して、地方公共団体等が行う復旧に要する費用の一部補助等に要する経費として、また、緊急に地方公共団体が行う公立学校施設の耐震改修事業に要する経費に充てる交付金の追加交付及び社会福祉施設、農業・林業施設、消防施設等の災害復旧に必要な経費として、計4160億余円が計上されている。
 「公共事業等の追加」には、公共土木施設等の災害復旧事業費8705億余円、治水、道路施設等の早急に復旧が必要な経費である一般公共事業費関係費1990億余円、公立学校施設等の耐震改修に必要な経費である施設費等4038億余円、計1兆4734億余円が計上されている。

〔4〕 「災害関連融資関係経費」は、被災中小企業者等の事業再建及び経営安定のための融資の実施等に必要な経費である中小企業等関係費として1次補正5121億余円、3次補正6530億余円、独立行政法人住宅金融支援機構が行う災害復興住宅融資等に必要な経費である災害復興住宅融資等緊急対策費として1次補正560億円、被災農林漁業者等の経営再建等のための融資の実施等に必要な経費である農林漁業者等関係費として1次補正400億余円、3次補正185億余円等であり、1次補正計6406億余円、3次補正計6715億余円、計1兆3122億余円が計上されている。

〔5〕 「地方交付税交付金」は、補正予算に関連して多額の経費(地方負担額)が見込まれるため、地方公共団体に対して地方交付税交付金のうち特別交付税の増額を図るもので、1次補正1200億円、2次補正4573億余円を計上し、また、復旧・復興経費に係る被災地方公共団体の財政負担を全額措置するため、3次補正において1兆6635億余円の震災復興特別交付税を創設したもので、計2兆2408億余円が計上されている。これにより、1次補正、2次補正、3次補正及び予備費による直轄及び補助事業に係る地方負担額、公営企業への一般会計負担額等について手当され、これら地方負担額等に係る被災地方公共団体の負担は実質的にゼロとなることとなった。

〔6〕 「東日本大震災復興交付金」は、地方公共団体が自ら策定する復興プランの下、復興に必要な各種施策が展開できる、使い勝手のよい自由度の高い交付金として創設されたものであり、交付を受けた地方公共団体は、復興交付金事業の実施に当たり基金を造成し、復興交付金事業計画の計画期間内にこれを取り崩して事業を実施することができることとなっており、3次補正で1兆5611億余円が計上されている。

〔7〕 「全国防災対策費」は、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等の事業に必要な経費であって、3次補正で5751億余円が計上されている。

〔8〕 「その他の東日本大震災関係経費」は、1次補正8018億余円、3次補正2兆4631億余円、計3兆2649億余円が計上されている。この経費のうち主なものは、1次補正では、自衛隊、消防、警察、海上保安官等の活動経費等2592億余円等として計8018億余円、3次補正では、産業の空洞化や雇用の喪失を防ぐため、サプライチェーンの中核となる部品・素材分野と高付加価値の成長分野における全国の生産、研究開発拠点に国内立地補助金として5000億円、被災した失業者等の雇用機会の創出を促進するための重点分野雇用創造事業の実施のための経費である重点分野創造事業費として3510億円、被害を受けた住宅等について再建等を図ろうとする被災者に対して、災害復興住宅融資、住宅エコポイント等に係る事業費を追加するための経費として3112億円、全国の一般家庭や中小企業等における省エネルギー・節電の支援等を行うために必要な経費として2324億余円等となっている。

〔9〕 「被災者支援関係経費」は、東日本大震災により住宅が全壊した世帯等に対し支給される被災者生活再建支援金に要する費用の一部補助を追加するのに必要な経費であり、被災者生活再建支援金補助金3000億円等、2次補正で計3773億余円が計上されている。

〔10〕 「東日本大震災復興対策本部運営経費」は、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図るために設置された東日本大震災復興対策本部の運営に必要な経費であり、2次補正で5億余円が計上されている。

〔11〕 「原子力損害賠償法等関係経費」は、原子力事業者に対する補償金を支払うために必要な経費等で、2次補正で2754億余円が計上されている。また、「原子力災害復興関係経費」は、事故による汚染を除去するために行う放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施等に必要な経費であり、3次補正で3557億余円が計上されている。

〔12〕 「東日本大震災復旧・復興予備費」は、東日本大震災に係る復旧及び復興に関連する経費の予見し難い予算の不足に充てるための予備費で、2次補正で8000億円が計上された。その後、3次補正で台風12号対策等の財源に充当されているため、8000億円から2343億余円を控除した5656億余円が計上されている。

 なお、平成23年度第4次補正予算が24年2月8日に成立し、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構の社債又は借入金に係る債務について、政府保証枠5000億円が設定されている。
 1次補正から3次補正までにより措置された上記予算の財源についてみると、表15 のとおり、1次補正は既定経費の減額等として4兆0153億余円、2次補正は前年度剰余金受入として1兆9106億余円、3次補正は復興債、既定経費の減額等として9兆2438億余円が充てられている。なお、3次補正の財源のうち、復興債は、復興財源確保法に基づき、復興費用の財源として、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で発行することができることとなっていて、この償還財源として復興特別税の臨時増税が措置されている。

表15 東日本大震災関係経費の財源(平成23年度補正予算)

(単位:億円)

経費項目 1次
補正
2次
補正
3次
補正
既定経費の減額
(基礎年金国庫負担の年金特別会計へ繰入れの減額等、経済危機対応・地域活性化予備費の減額等)
37,102 1,648 38,750
税外収入
((独)日本高速道路保有・債務返済機構納付金等)
3,050 186 3,237
平成22年度剰余金受入 19,106 19,106
復興債 90,603 90,603
40,153 19,106 92,438 151,698

(2) 東日本大震災復旧・復興事業の実施状況

 前記のとおり、東日本大震災は、被災地域が広範囲にわたる大規模なものであるとともに、地震、津波及び原子力発電所の事故による複合的な災害であるため、未曽有の被害をもたらしている。そして、このような状況の下で、国は、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指すことに総力を挙げて取り組むこととし、前記のとおり、復旧・復興に係る予算を措置している。
 そこで、会計検査院は、復興庁を始めとした16府省庁に措置された23年度の東日本大震災からの復旧・復興に係る予備費及び1次補正から3次補正までについて、どのような経費に配分されているか、また、復旧・復興事業は円滑かつ迅速に実施されているかなどに着眼して分析を行うこととした。
 なお、各府省庁において、復旧・復興事業の進捗状況を逐次全て把握できる体制となっていないことから、補助事業等の実施状況を正確に把握することについては、事業主体に直接確認するなどしない限り極めて困難である。しかし、各事業の進捗状況は、予算の執行状況に現れてくるものもあることから、各府省庁から特別調書を徴するなどして、東日本大震災復旧・復興関係経費に係る決算の数値を把握し、復旧・復興予算の執行状況について分析を行うこととした。分析に用いた数値は、各府省庁において24年8月末時点で整理したものであり、この時点では、経費項目別等の分類が確定していないことなどから、今回の分析により集計した決算数値は、例年11月に公表される決算額と相違する場合がある。

ア 経費項目別の執行状況

 各府省庁所管の復旧・復興事業の実施状況について、23年度の予備費及び1次補正から3次補正までの経費項目別に、歳出予算現額(歳出予算額(当初予算額、補正予算額及び予算移替額の合計)、前年度繰越額、予備費使用額及び流用等増減額を加除したもの。以下「予算現額」という。)、支出済歳出額(以下「支出済額」という。)、翌年度繰越額(以下「繰越額」という。)及び不用額を調査するとともに、復旧・復興事業に係る支出済額の予算現額に対する割合(以下「執行率」という。)、繰越額の予算現額に対する割合(以下「繰越率」という。)及び不用額の予算現額に対する割合(以下「不用率」という。)を求め、各経費の執行状況について分析した。

(ア) 一般会計における執行状況

 一般会計における23年度の執行状況についてみると、表16-1 のとおり、予算現額14兆9243億余円、支出済額9兆0513億余円、繰越額4兆7694億余円、不用額1兆1035億余円となっている。
 そして、各補正予算の一般会計における執行率についてみると、表16-1 から表16-5 までのとおり、予備費100%、1次補正61.8%、2次補正75.1%、3次補正57.3%、計60.6%となっている。これらを経費項目別にみると、全て執行されている経費項目が多くある一方で、年度内に全く執行されないままその大半が翌年度に繰り越されている経費や執行率が20%程度と低くなっている経費項目も見受けられ、経費項目別の執行率が区々となっている。

表16-1 予備費及び1次補正から3次補正までの平成23年度の執行状況(一般会計)

(単位:億円、%)

補正
予算
予備費 1次補正 2次補正 3次補正
予算現額 A 503 39,537 16,763 92,438 149,243
支出済額 B 503 24,436 12,595 52,978 90,513
繰越額  C 8,136 3,219 36,337 47,694
不用額 D=A-B-C 6,965 948 3,122 11,035
執行率 B/A 100.0 61.8 75.1 57.3 60.6
繰越率 C/A 20.5 19.2 39.3 31.9
不用率 D/A 17.6 5.6 3.3 7.3

1次補正から3次補正までの支出済額、繰越額及び不用額

1次補正から3次補正までの支出済額、繰越額及び不用額

表16-2 予備費の平成23年度の執行状況(一般会計)

(単位:億円、%)

経費項目 所管 予算現額
A
支出済額
B
繰越額
C
不用額
D=A-B-C
執行率
B/A
繰越率
C/A
不用率
D/A
災害救助費等負担金 厚生労働省 503 503 - - 100.0 - -
(注)
 災害救助費等負担金は、応急仮設住宅の供与等に必要な経費の一部負担として地方公共団体に補助しているものである。


表16-3 1次補正における経費項目別の平成23年度の執行状況(一般会計)

(単位:億円、%)

経費項目 所管 予算現額
A
支出済額
B
繰越額
C
不用額
D=A-B-C
執行率
B/A
繰越率
C/A
不用率
D/A
(1)災害救助等関係経費   4,828 4,647 181 96.2 3.7
  〔1〕 災害救助費 厚生労働省 3,750 3,750 100.0
  〔2〕 災害援護貸付金 厚生労働省 224 195 29 87.0 12.9
  〔3〕 生活福祉資金貸付事業費 厚生労働省 256 203 53 79.1 20.8
  〔4〕 災害弔慰金等 厚生労働省 485 389 95 80.2 19.7
  〔5〕 被災者緊急支援経費 厚生労働省 111 109 2 97.7 2.2
(2)災害廃棄物処理事業費 環境省 3,519 2,530 739 249 71.9 21.0 7.0
(3)災害対応公共事業関係費   12,019 2,731 4,989 4,297 22.7 41.5 35.7
  〔1〕 災害復旧等事業費 国土交通省等5省 10,438 2,379 4,882 3,176 22.7 46.7 30.4
  〔2〕 一般公共事業関係費 国土交通省等2省 1,581 352 107 1,121 22.2 6.8 70.9
(4)施設費災害復旧費等   3,884 1,096 1,755 1,031 28.2 45.2 26.5
  〔1〕 文教施設災害復旧費 文部科学省 1,840 634 664 542 34.4 36.0 29.4
  〔2〕 社会福祉施設等災害復旧費等 厚生労働省 844 94 472 277 11.1 55.9 32.8
  〔3〕 農業・林業施設等災害復旧費等 農林水産省 358 79 124 154 22.2 34.6 43.1
  〔4〕 消防防災施設災害復旧費 総務省 207 21 184 1 10.1 88.9 0.8
  〔5〕 中小企業組合等共同施設等災害復旧費 経済産業省 189 99 79 9 52.6 42.1 5.1
  〔6〕 港湾荷役機械等災害復旧費 国土交通省 97 19 69 7 20.4 71.4 8.1
  〔7〕 警察施設等災害復旧費 内閣府 55 30 12 13 53.8 21.5 24.5
  〔8〕 その他 国土交通省等7省等 290 117 149 23 40.5 51.3 8.1
(5)災害関連融資関係経費   6,403 6,308 94 98.5 1.4
  〔1〕 中小企業等関係費 財務省等3省 5,121 5,121 100.0
  〔2〕 災害復興住宅融資等緊急対策費 国土交通省 560 560 100.0
  〔3〕 農林漁業者等関係費 農林水産省 396 301 94 76.0 23.9
  〔4〕 その他 文部科学省等2省 325 325 100.0
(6)地方交付税交付金 総務省 1,200 1,200 100.0
(7)その他の東日本大震災関係経費   7,682 5,920 651 1,110 77.0 8.4 14.4
  〔1〕 被災者生活再建支援金補助金 内閣府 520 520 100.0
  〔2〕 市町村行政機能応急復旧補助金 総務省 37 25 11 0 69.3 30.5 0.0
  〔3〕 教育研究設備等災害復旧費 文部科学省 393 383 9 97.5 2.4
  〔4〕 被災児童生徒等支援関係経費 文部科学省 219 204 14 93.1 6.8
  〔5〕 医療保険制度等の保険料減免等に対する特別措置 厚生労働省 1,142 1,085 57 95.0 4.9
  〔6〕 雇用対策費 厚生労働省 513 503 10 97.9 2.0
  〔7〕 漁船保険・漁業共済の支払支援経費 農林水産省 939 827 112 88.0 11.9
  〔8〕 漁場・養殖施設等復旧対策費 農林水産省 681 188 400 92 27.6 58.7 13.5
  〔9〕 農林水産業共同利用施設災害復旧事業費等 農林水産省 185 88 25 71 47.8 13.6 38.5
  〔10〕 中小企業対策費 経済産業省 23 21 2 91.5 8.4
  〔11〕 燃料安定供給対策費 経済産業省 136 136 100.0
  〔12〕 企業等の電力需給対策費 経済産業省 178 178 100.0
  〔13〕 原子力災害対策費 文部科学省等3省 49 39 9 79.8 20.1
  〔14〕 自衛隊活動経費等 防衛省等4府省 2,297 1,519 160 617 66.1 6.9 26.8
  〔15〕 その他 厚生労働省等9府省 365 198 53 113 54.2 14.7 30.9
39,537 24,436 8,136 6,965 61.8 20.5 17.6

表16-4 2次補正における経費項目別の平成23年度の執行状況(一般会計)

(単位:億円、%)

経費項目 所管 予算現額
A
支出済額
B
繰越額
C
不用額
D=A-B-C
執行率
B/A
繰越率
C/A
不用率
D/A
1原子力損害賠償法等関係経費   2,754 2,566 55 131 93.1 2.0 4.7
  (1)原子力損害賠償法関係経費   2,473 2,380 55 37 96.2 2.2 1.5
  〔1〕 原子力損害賠償補償金 文部科学省 1,200 1,200 100.0
  〔2〕 健康管理・調査事業費 経済産業省 781 781 100.0
  〔3〕 特別緊急除染事業費 内閣府 179 179 100.0
  〔4〕 環境放射線モニタリング強化事業費 文部科学省等5省 192 153 13 25 79.8 7.0 13.1
  〔5〕 対外発信強化事業費 経済産業省等4省等 52 30 19 2 57.0 37.4 5.5
  〔6〕 校庭等の放射線低減事業費 文部科学省等2省 49 27 22 0 54.6 45.1 0.1
  〔7〕 原子力損害賠償和解仲介業務経費 文部科学省 10 3 6 37.8 62.1
  〔8〕 その他 文部科学省等3府省等 7 4 3 55.9 44.0
(2)原子力損害賠償支援機構法関係経費   280 186 93 66.4 33.5
  〔1〕 交付国債の償還財源に係る利子負担 経済産業省 200 110 89 55.2 44.7
  〔2〕 原子力損害賠償支援機構に対する出資 経済産業省 70 70 100.0
  〔3〕 東京電力に関する経営・財務調査委員会経費 内閣 10 5 4 57.0 42.9
2被災者支援関係経費   3,773 1,770 1,970 33 46.9 52.2 0.8
  (1)二重債務問題対策関係経費   773 607 132 33 78.5 17.1 4.2
  〔1〕 旧債務 経済産業省等2省 255 229 25 0 89.8 10.0 0.0
  〔2〕 新債務 経済産業省等3省 518 378 107 32 73.0 20.6 6.3
(2)被災者生活再建支援金補助金 内閣府 3,000 1,162 1,837 38.7 61.2
3東日本大震災復興対策本部運営経費 復興庁及び内閣 5 3 1 67.7 32.2
4東日本大震災復旧・復興予備費 内閣府等7府省庁等 5,656 3,681 1,193 781 65.0 21.1 13.8
5地方交付税交付金 総務省 4,573 4,573 100.0
16,763 12,595 3,219 948 75.1 19.2 5.6

表16-5 3次補正における経費項目別の平成23年度の執行状況(一般会計)

(単位:億円、%)

経費項目 所管 予算現額
A
支出済額
B
繰越額
C
不用額
D=A-B-C
執行率
B/A
繰越率
C/A
不用率
D/A
(1)災害救助等関係経費   941 794 101 45 84.4 10.7 4.7
  〔1〕 災害救助費 厚生労働省 300 300 100.0
  〔2〕 生活福祉資金貸付事業費 厚生労働省 165 82 82 49.7 50.2
  〔3〕 被災者緊急支援経費 文部科学省等10府省庁等 475 412 18 45 86.6 3.8 9.4
(2)災害廃棄物処理事業費 環境省 3,859 656 3,202 1 17.0 82.9 0.0
(3)公共事業等の追加   14,734 1,611 11,338 1,784 10.9 76.9 12.1
  〔1〕 災害復旧等事業費 農林水産省等4省 8,705 514 6,975 1,215 5.9 80.1 13.9
  〔2〕 一般公共事業関係費 国土交通省等4省 1,990 429 1,541 19 21.5 77.4 0.9
  〔3〕 施設費等 文部科学省等11府省等 4,038 666 2,822 549 16.5 69.8 13.6
(4)災害関連融資関係経費   6,711 6,684 27 99.5 0.4
  〔1〕 中小企業等関係費 財務省等3省 6,530 6,530 100.0
  〔2〕 農林漁業者等関係費 農林水産省 181 154 27 84.8 15.1
(5)地方交付税交付金 総務省 16,635 16,635 100.0
(6)東日本大震災復興交付金 復興庁等6省庁 15,611 2,506 13,105 0 16.0 83.9 0.0
(7)原子力災害復興関係経費 環境省等11省等 3,557 1,474 1,791 291 41.4 50.3 8.1
(8)全国防災対策費   5,751 1,107 4,453 190 19.2 77.4 3.3
  〔1〕 学校施設耐震化・防災機能強化 文部科学省 2,050 71 1,989 △10 3.5 96.9 △0.5
  〔2〕 一般公共事業関係費 国土交通省等3府省 2,492 624 1,810 57 25.0 72.6 2.3
  〔3〕 海上保安庁船舶建造費等 国土交通省 338 82 234 21 24.4 69.2 6.3
  〔4〕 警察・消防関係費 総務省等2府省 301 2 266 32 0.7 88.4 10.8
  〔5〕 医療施設等防災対策費等 厚生労働省 245 192 12 39 78.6 5.1 16.1
  〔6〕 自衛隊の災害対処能力の向上 防衛省 145 42 68 34 29.0 47.0 23.9
  〔7〕 地下タンク環境保全対策促進事業費 経済産業省 69 69 100.0
  〔8〕 その他 法務省等9府省等 107 20 71 14 19.4 66.6 13.9
(9)その他の東日本大震災関係経費   24,635 21,508 2,345 781 87.3 9.5 3.1
  〔1〕 震災関係資料収集、デジタル化促進、被災実態調査等 総務省等4府省等 27 4 12 9 17.9 46.9 35.1
  〔2〕 警察・消防関係 内閣府等3府省 229 96 77 56 41.8 33.6 24.5
  〔3〕 情報通信関係 総務省 168 5 160 3 3.3 94.8 1.7
  〔4〕 国際協力等を通じた復興 外務省 176 175 1 99.3 0.6
  〔5〕 復旧・復興に向けた教育支援等 文部科学省 411 298 100 11 72.6 24.5 2.8
  〔6〕 医療、介護、福祉等 厚生労働省 1,230 1,145 76 8 93.0 6.2 0.6
  〔7〕 雇用対策費 厚生労働省 3,779 3,766 13 99.6 0.3
  〔8〕 農業関係 農林水産省 197 130 28 37 66.1 14.6 19.2
  〔9〕 森林・林業の復興 農林水産省 1,399 1,399 100.0
  〔10〕 水産業の復旧・復興 農林水産省 1,579 937 382 259 59.3 24.1 16.4
  〔11〕 中小企業対策 経済産業省 455 270 181 4 59.3 39.7 0.8
  〔12〕 立地補助金 経済産業省 5,000 5,000 100.0
  〔13〕 資源権益確保関連経費 経済産業省 282 282 100.0
  〔14〕 節電エコ補助金等 経済産業省 2,324 1,956 355 11 84.1 15.3 0.5
  〔15〕 住宅関係 国土交通省等2省 3,112 3,112 100.0
  〔16〕 自立・分散型エネルギー供給等によるエコタウン化事業 環境省 840 839 0 99.9 0.0
  〔17〕 自衛隊施設及び装備品等の復旧等 防衛省 1,469 892 272 304 60.7 18.5 20.7
  〔18〕 その他 経済産業省等6省 1,949 1,193 696 59 61.2 35.7 3.0
92,438 52,978 36,337 3,122 57.3 39.3 3.3

(イ) 一般会計及び特別会計における執行状況

 一般会計における執行状況は、上記のとおりであるが、この中には、一般会計から特別会計に繰り入れて、復旧・復興事業を行っているものが含まれている。
 そして、一般会計から特別会計に全額繰り入れて実施している事業の中には、一般会計では、執行率が100%となっている一方で、特別会計では、必ずしも全ての事業費が執行されているわけではない。
 そこで、特別会計において実施されている復旧・復興事業の執行状況を、前記一般会計における執行状況に反映してみると、表17 のとおりとなる。ただし、特別会計における支出見込額に応じて一般会計から特別会計に繰り入れている場合等は、その額を用いて算出している(以下、一般会計における執行率と区分するため、一般会計における執行状況だけでなく、特別会計における執行状況を反映した支出済額の予算現額に対する割合を「支出率」という。)。
 支出率についてみると、予備費100%、1次補正61.6%、2次補正69.0%、3次補正48.1%、計54.2%と、一般会計における執行率の計60.6%と比較して低くなっている(一般会計から特別会計に繰入れを行っていない予備費を除く1次補正から3次補正までの経費項目別の状況は巻末別表2 参照)。
 これは、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れられた地方交付税交付金のように、一般会計では執行率100%として整理しているが、特別会計では、各市町村等における復旧・復興に係る補助事業等の実施状況等に応じて交付額を決定して交付し、残額については繰越額として整理(支出率2次補正78.1%、3次補正48.8%)していることなどによるためである。

表17 予備費及び1次補正から3次補正までの平成23年度の執行状況(一般会計及び特別会計)

(単位:億円、%)

補正
予算
予備費 1次補正 2次補正 3次補正
予算現額 A 503 39,537 16,763 92,438 149,243
支出済額 B 503 24,356 11,568 44,477 80,906
繰越額  C 8,142 4,222 44,838 57,203
不用額 D=A-B-C 7,038 972 3,122 11,132
支出率 B/A 100.0 61.6 69.0 48.1 54.2
繰越率 C/A 20.5 25.1 48.5 38.3
不用率 D/A 17.8 5.7 3.3 7.4
(注)
 復旧・復興事業が実施されている特別会計のうち、支出見込額に応じて一般会計から特別会計に繰り入れている場合等については、一般会計における支出済額を用いているため、支出済額8兆0906億余円を下回ることが想定される。

イ 事業別の執行状況(1次補正から3次補正まで)

 経費項目別の支出率は、各経費項目における支出済額の予算現額に対する割合を算定したものであるが、各経費項目に係る事業についてみると、事業数は、表18 のとおり、1次補正237件、2次補正56件、3次補正628件、計921件となっており、その支出率は区々となっている(巻末別表3 参照)。
 事業数については、同一事業が複数の府省庁で実施されている場合は、府省庁別に事業を整理して各府省庁に計上して集計している。また、同一事業が複数の事業で実施されていても、事業の実施方法等の相違するものが含まれる場合は、事業を分割して集計しているものもある。

(ア) 支出率の状況

 各府省庁において実施されている921件の復旧・復興事業の執行状況についてみると、予算現額の全額を執行している経費がある一方で、予算現額の全額が、年度内に全く執行されずに翌年度に繰り越されたり、不用とされたりしているものが見受けられるなど態様が区々となっている。
 そこで、支出率別、補正予算別の事業数についてみると、表18 のとおり、支出率が80%以上となっている事業は、1次補正108件(45.5%)、2次補正30件(53.5%)、3次補正209件(33.2%)、計347件(37.6%)となっており、いずれも高い割合となっている。また、支出率が20%未満となっている事業は、1次補正33件(13.9%)、2次補正7件(12.5%)、3次補正297件(47.2%)、計337件(36.5%)となっており、3次補正が1次補正及び2次補正に比べて高い割合となっている。これは、3次補正が23年11月に成立したことから、事業執行期間が約5か月となっていることなどによる。さらに、1次補正の事業であるにもかかわらず支出率が0%となっている事業がある一方で、3次補正の事業でも支出率が100%となっている事業も見受けられる。
 そして、1次補正から3次補正までの計をみると、921件の事業のうち、支出率が80%以上及び20%未満となっている事業の合計は684件(74.2%)と、その大半を占めている。

表18 支出率別・補正予算別の事業数(平成23年度)

(単位:件、%)

補正予算
支出率
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 割合 事業数 割合 事業数 割合 事業数 割合
80%以上100%以下 108 45.5 30 53.5 209 33.2 347 37.6
  100% 51 21.5 18 32.1 126 20.0 195 21.1
  90%以上100%未満 33 13.9 10 17.8 64 10.1 107 11.6
  80%以上90%未満 24 10.1 2 3.5 19 3.0 45 4.8
60%以上80%未満 42 17.7 5 8.9 38 6.0 85 9.2
40%以上60%未満 26 10.9 6 10.7 38 6.0 70 7.6
20%以上40%未満 28 11.8 8 14.2 46 7.3 82 8.9
0%以上20%未満 33 13.9 7 12.5 297 47.2 337 36.5
  10%以上20%未満 14 5.9 3 5.3 43 6.8 60 6.5
  0%超10%未満 17 7.1 2 3.5 129 20.5 148 16.0
  0% 2 0.8 2 3.5 125 19.9 129 14.0
237 100.0 56 100.0 628 100.0 921 100.0

 各事業の予算現額の規模別の事業数についてみると、表19 のとおり、921件の事業のうち、10億円未満は481件(52.2%)、10億円未満を含めた100億円未満は762件(82.7%)となっている。そして、各事業の予算現額別の支出率には特段の傾向は見受けられないものの、1000億円以上の事業全30件についてみると、支出率が100%の事業が13件、支出率が10%未満の事業が7件となっている。

表19 予算現額の規模別の支出率の状況(平成23年度)

(単位:件、%)

予算現額
支出率
10億円未満 10億円以上
100億円未満
100億円以上
500億円未満
500億円以上
1000億円未満
1000億円以上
2000億円未満
2000億円以上
80%以上100%以下 181 94 41 18 7 6 347
  100% 69 66 33 14 7 6 195
  90%以上100%未満 79 21 3 4 0 0 107
  80%以上90%未満 33 7 5 0 0 0 45
60%以上80%未満 39 33 7 4 0 2 85
40%以上60%未満 42 18 9 0 0 1 70
20%以上40%未満 44 21 8 4 3 2 82
0%以上20%未満 175 115 34 4 4 5 337
  10%以上20%未満 24 24 9 1 2 0 60
  0%超10%未満 54 64 23 2 2 3 148
  0% 97 27 2 1 0 2 129
481 281 99 30 14 16 921
(割合) (52.2) (30.5) (10.7) (3.2) (1.5) (1.7) (100.0)

 復旧・復興事業は、多数多岐にわたり、前記のとおり、各補正予算ごとの支出率や経費項目別の支出率も区々となっていることから、経費項目別の執行状況だけでなく、各府省庁別に復旧・復興事業の執行状況を調査した。そして、各事業の目的、内容、予算現額の多寡等も踏まえつつ、繰越額及び不用額が発生している事業については、各府省庁から主な事由等を徴するなどして整理した。
 上記のうち、予算現額が1000億円以上で支出率が10%未満となっている事業全7件のうち6件(予算現額が2000億円以上かつ支出率が0%の1件は復興交付金1兆3101億余円であり、復興庁から関係行政機関への配分予算1兆5611億余円の残額で復興庁において未配分額と整理していることから除外している。)について示すと、以下のとおりである。

<事例1>
予算現額が1000億円以上かつ支出率が10%未満となっている事業 6件

〔1〕 災害対応公共事業関係費(一般公共事業関係費)(1次補正)

災害公営住宅整備事業等(補助)(国土交通省)

予算現額1115億余円、支出済額1億余円、繰越額2億余円、不用額1112億余円

 東日本大震災による被災者向けの公営住宅の供給を強力に促進するため、災害公営住宅の整備や用地の取得・造成等に係る地方公共団体の負担を軽減するための支援策の充実を図るものである。
 しかし、交付決定件数は5件、交付決定額3億余円のうち支出済額は1億余円となっており、支出率0.1%、繰越率0.1%、不用率99.6%となっている。
 このように支出済額が予算現額を大幅に下回っているのは、国土交通省は、1次補正が成立した震災直後は応急仮設住宅の建設に重点を置かざるを得なかったこと、災害公営住宅の供給計画の検討に時間を要したことなどによるとしている。
 また、3次補正において東日本大震災復興交付金が創設され、災害公営住宅の整備に当たっては、補助率がより高い同交付金の活用により実施することとなったことも、不用額が多額に上る一因となっている。
 なお、平成23年度に国土交通省が交付決定した復興交付金事業60件のうち、31件に災害公営住宅整備事業が含まれており、同事業に係る交付金額は1186億余円(効果促進事業を除く。)となっている。(巻末別表3 参照)

〔2〕 災害廃棄物処理事業費 (3次補正)

災害等廃棄物処理事業費補助金 (環境省)

予算現額3129億余円、支出済額146億余円、繰越額2983億余円、不用額843万余円

 東日本大震災により発生した災害廃棄物を処理するため、市町村が実施する災害廃棄物の収集、運搬及び処分に係る事業等に対し財政的支援を行うものであり、支出率4.6%、繰越率95.3%、不用率0.0%となっている。
 このように支出済額が予算現額を大幅に下回っているのは、環境省は、住民の理解が得られないことなどにより、関係自治体等が災害廃棄物の仮置場及び仮設焼却施設を設置するに当たり、調整に不測の日数を要するなどしたためであるとしている。(巻末別表3 参照)

〔3〕 公共事業等の追加(災害復旧等事業費) (3次補正)

災害復旧等事業費(補助) (国土交通省)

予算現額2143億余円、支出済額0円、繰越額1381億余円、不用額761億余円

 東日本大震災により被災した河川、海岸、道路、港湾等の公共土木施設等を原形復旧するなどの経費の一部を国が負担し、被災した施設の速やかな復旧を図ることを目的とするものであり、支出率0%、繰越率64.4%、不用率35.5%となっている。
 このように全額が繰越額又は不用額となっているのは、国土交通省は、工事着工箇所の決定に不測の日数を要したため、地方公共団体からの交付申請がなかったことなどによるとしている。(巻末別表3 参照)

〔4〕 公共事業等の追加(災害復旧等事業費) (3次補正)

災害復旧等事業費(農地・農業用施設) (農林水産省)

予算現額2061億余円、支出済額53億余円、繰越額1909億余円、不用額98億余円

 地震、津波により被災した農地・農業用施設及び海岸保全施設等の災害復旧事業や、再度の災害防止のために災害復旧事業に併せて行う施設の改築又は補強及び農地の区画整理等を行うものであり、支出率2.6%、繰越率92.6%、不用率4.7%となっている。
 このように支出済額が予算現額を大幅に下回っているのは、農林水産省は、復興計画との調整や復旧する農地所有者との調整に不測の日数を要したことなどによるとしている。 (巻末別表3 参照)

〔5〕 公共事業等の追加(災害復旧等事業費) (3次補正)

災害復旧等事業費(水産) (農林水産省)

予算現額2346億余円、支出済額162億余円、繰越額2144億余円、不用額39億余円

 地震、津波により被災した漁港、海岸等の災害復旧の実施や、漁港や海岸等の災害復旧事業の実施のみでは、再度災害の防止に十分な効果が期待できないと認められる場合に、当該被災箇所又はこれを含めた一連の施設について、構造物の強化等を行う災害関連事業を実施するものであり、支出率6.9%、繰越率91.4%、不用率1.6%となっている。
 このように支出済額が予算現額を大幅に下回っているのは、農林水産省は、背後集落の復興計画との調整や漁業者、住民等との合意形成に時間を要したことなどによるとしている。(巻末別表3 参照)

〔6〕 全国防災対策費 (3次補正)

公立学校施設耐震化等 (文部科学省)

予算現額1626億余円、支出済額4億余円、繰越額1621億余円、不用額6623万余円

 東日本大震災を受け全国の公立学校施設の補強や改築等の施設整備事業を実施するもので、支出率0.2%、繰越率99.6%、不用率0.0%となっている。
 このように予算現額の大部分を翌年度に繰り越して執行しているのは、文部科学省は、事業主体である地方公共団体において、地域住民との協議や調整等に不測の日数を要し、事業計画の見直しが生ずるなどしたためとしている。
 なお、文部科学省では、24年度も引き続き同事業を実施し、23年度の当初予算及び1次補正の執行後に約86%であった公立小中学校の耐震化率は、24年度の予算執行後には約90%となる見込みであるとしている。(巻末別表3 参照)

 また、予算現額が2000億円以上で支出率が100%となっている事業全6件のうち5件(国土交通省に移替えされた復興交付金1件は、基金を造成し、これを取り崩して復興交付金事業等を実施している分で支出率を100%としているが、単年度で事業を実施している分を合わせると支出率が99.8%となることから除外している。)についてみると、以下のとおりである。

<事例2>
予算現額が2000億円以上かつ支出率が100%となっている事業 5件

〔1〕 災害救助等関係経費(災害救助費) (1次補正)

 災害救助費等負担金 (厚生労働省)

予算現額3750億余円、支出済額3750億余円、繰越額0円、不用額0円

 (歳出予算額は3625億余円であるが目間流用を行い、上記予算現額となっている。)
 災害救助法では、災害時における避難所や仮設住宅の設置、食品、飲料水の給与等の費用については、都道府県及び国で負担することとなっており、東日本大震災についてはその救助費用の全額を国が負担することとしている。
 東日本大震災の被害が甚大であった10都県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、長野、新潟、栃木、千葉各県及び東京都。以下「被災都県」という。)の救助費用及び9県(上記10都県から東京都を除く。以下「被災県」という。)からの避難者を受け入れた被災県以外の都道府県に対して被災県が負担した救助費用については、国が当該被災都県に対し、後日負担金として交付することになっている。
 平成22、23両年度における上記負担金についてみると、被災都県の資金需要に万全を期し、被災県以外の都道府県における被災者の積極的な受け入れを促進するため22年度予備費で300億余円、23年度予備費で503億余円、23年度1次補正で3750億余円を計上したものであり、支出率は100%である。(巻末別表3 参照)

〔2〕 災害関連融資関係経費(中小企業等関係費) (1次補正)
〔3〕 災害関連融資関係経費(中小企業等関係費) (3次補正)

 株式会社日本政策金融公庫出資金(保険)(財務省)

〔2〕 予算現額2813億円、支出済額2813億円、繰越額0円、不用額0円(1次補正)
〔3〕 予算現額3402億円、支出済額3402億円、繰越額0円、不用額0円(3次補正)

 東日本大震災復興緊急保証を実施するため、日本政策金融公庫(信用保険等業務)に対する必要な出資を行い、同公庫の財政基盤を強化するものである。
 国から公庫へは、1次補正に係る予算現額2813億円及び3次補正に係る予算現額3402億円の全額がそれぞれ出資金として支払われたため、支出率が100%となっている。
 (巻末別表3(2か所参照1  2 ))

〔4〕 その他の東日本大震災関係経費(雇用対策費)(3次補正)

 重点分野雇用創造事業の拡充(震災対応事業の延長)(厚生労働省)

予算現額2000億円、支出済額2000億円、繰越額0円、不用額0円

 同事業は、重点分野雇用創造事業により実施する震災対応事業について、都道府県に交付金を交付し、各都道府県は基金を積み増すとともに事業実施期間を延長して震災等緊急雇用対応事業として実施し、被災者を含め、震災等の影響による失業者について、雇用の場を確保し、生活の安定を図るものである。
 1次補正では被災地を中心に一部の都道県を交付先として同事業を行っていたが、3次補正においては被災求職者(被災県の災害救助法適用地域に所在する事業所に雇用されていた者及び当該地域に居住していた求職者)が全国各地に避難をしたことなどから、全都道府県を交付先としており、支出率は100%となっている。(巻末別表3 参照)

〔5〕 その他東日本大震災関係経費(立地補助金)(3次補正)

 国内立地推進事業費補助金(経済産業省)

予算現額2950億円、支出済額2950億円、繰越額0円、不用額0円

 東日本大震災からの復興を図ることを目的として復興基本方針及び復興基本法第2条の規定に定める基本理念に基づき実施する施策であり、供給網(サプライチェーン)の中核分野となる代替が効かない部品・素材分野と我が国の将来の雇用を支える高付加価値の成長分野における生産拠点に対し、国内立地補助を措置することにより、企業の我が国における立地環境の改善を図りつつ、国内への新たな投資を促進して、雇用を維持し創出することを目的とするものである。
 経済産業省は、民間委託した基金管理団体に全額、補助金を交付し、交付を受けた基金管理団体は当該補助金で基金の造成を行っている。そのため、支出率は100%となっている。なお、経済産業省は、補助事業の執行業務を実施するための事務局を別団体に業務委託しており、事業採択案件の選定に際しては、当該事務局に第三者からなる審査委員会を設置し、当該審査委員会が採択案件を選定している。(巻末別表3 参照)

 上記事例のとおり、支出率が低くなっている事業は、計画の検討、関係自治体等との協議、復興計画との調整、住民等との合意形成等に時間を要したことなどの理由から、翌年度に繰り越すなどしている。
 一方、支出率が100%となっている事業には、2(2)エ に後述するとおり、負担金や出資金、基金の造成のための補助金等が多く含まれている。

(イ) 繰越しの状況

 繰越額についてみると、表17 のとおり、1次補正8142億余円、2次補正4222億余円、3次補正4兆4838億余円、計5兆7203億余円となっていて、全体の38.3%が翌年度に繰り越されている。
 最も繰越額が多い事業についてみると、1次補正では、国土交通省等5省所管の「(3)災害対応公共事業関係費〔1〕 災害復旧等事業費」4882億余円、2次補正では、内閣府所管の「2被災者支援関係経費(2)被災者生活再建支援金補助金」1837億余円、3次補正では、復興庁等6省庁所管の「(6)東日本大震災復興交付金」1兆3105億余円となっている(巻末別表2 参照)。
 そして、921件の事業の繰越率別の事業数と全事業に占める割合についてみると、表20 のとおり、繰越率が100%となっている事業は、1次補正2件(0.8%)、2次補正1件(1.7%)、3次補正83件(13.2%)となっていて、3次補正が件数、割合ともに高く、628件の事業のうち240件(38.2%)が予算現額の80%以上を翌年度に繰り越している。一方、繰越率が0%となっている事業についてみると、1次補正145件(61.1%)、2次補正43件(76.7%)、3次補正279件(44.4%)となっていて、1次補正、2次補正ともに割合が高くなっているが、3次補正は他の補正予算と比べて低い割合となっている。

表20 繰越率別・補正予算別の事業数(平成23年度)

(単位:件、%)

補正予算
繰越率
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 割合 事業数 割合 事業数 割合 事業数 割合
80%以上100%以下 11 4.6 4 7.1 240 38.2 255 27.6
  100% 2 0.8 1 1.7 83 13.2 86 9.3
  90%以上100%未満 2 0.8 0 0.0 116 18.4 118 12.8
  80%以上90%未満 7 2.9 3 5.3 41 6.5 51 5.5
60%以上80%未満 16 6.7 4 7.1 43 6.8 63 6.8
40%以上60%未満 20 8.4 0 0.0 25 3.9 45 4.8
20%以上40%未満 23 9.7 4 7.1 24 3.8 51 5.5
0%以上20%未満 167 70.4 44 78.5 296 47.1 507 55.0
  10%以上20%未満 11 4.6 0 0.0 8 1.2 19 2.0
  0%超10%未満 11 4.6 1 1.7 9 1.4 21 2.2
  0% 145 61.1 43 76.7 279 44.4 467 50.7
237 100.0 56 100.0 628 100.0 921 100.0
(注)
 3次補正のうち、繰越率100%の83件は、繰越率が100%超となっている5件を含んだ件数である。

 921事業のうち、繰越率が0%となっている467件を除いた454件について、各府省庁から主な繰越事由を徴するなどして調査したところ、その大半が明許繰越(財政法(昭和22年法律第34号)第14条の3の規定に基づき、あらかじめ繰越明許費として国会の議決を経て翌年度に繰り越すもの)となっていた。そこで各府省庁が財務省が定めた「箇所別調書及び理由書の繰越事由欄の記載方法」の区分(巻末別表4 参照)に基づき区分した繰越事由ごとに、事業数及び繰越額についてみると、表21 のとおりである(事業別の繰越事由は巻末別表3 参照)。
 繰越事由のうち、最も多くなっているのは、1次補正、2次補正、3次補正ともに「計画に関する諸条件」で全体で350件(繰越しがある事業計454件の77.0%)となっている。
 そして、「計画に関する諸条件」のうち、1次補正、2次補正及び3次補正の合計で、最も事業数が多い繰越事由は「基本計画の策定・変更」の127件(27.9%)であり、その具体的な内容は、実施事業を精査したところ、事業実施期間を十分に確保する必要があったこと、基本計画の策定に当たり、所有者同士の合意形成に時間を要したことなどのためであるとしている。また、繰越事由の「その他」の具体的な内容は、復興計画等との調整を要したこと、外部有識者からの指摘に基づき事業期間を見直したことなどのためであるとしている。
 なお、3次補正の成立は23年11月であり、事業の着手が24年1月以降となった事業もあり、このため、1次補正及び2次補正と比べて事業実施期間が短期間となったことが、繰越しが多くなった一因となっていると認められる。

表21 繰越事由別・補正予算別の事業数及び繰越額(平成23年度)

(単位:件、百万円、%)

補正予算
繰越事由
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 繰越額 事業数 繰越額 事業数 繰越額 事業数 繰越額
  割合   割合   割合   割合   割合   割合   割合   割合
計画に関する諸条件 73 79.3 766,376 94.1 8 61.5 302,614 71.6 269 77.0 3,355,972 74.8 350 77.0 4,424,963 77.3
  公害等に係る地元との調整 11 11.9 151,674 18.6 1 7.6 1,629 0.3 43 12.3 828,708 18.4 55 12.1 982,012 17.1
  状況変化による施行能率の低下 5 5.4 40,289 4.9 - - - - 2 0.5 230 0.0 7 1.5 40,519 0.7
  運搬路に係る地元との調整 1 1.0 9,394 1.1 - - - - 1 0.2 756 0.0 2 0.4 10,150 0.1
  基本計画の策定・変更 26 28.2 416,627 51.1 5 38.4 114,697 27.1 96 27.5 477,780 10.6 127 27.9 1,009,105 17.6
  他事業との調整 1 1.0 5,456 0.6 - - - - 8 2.2 6,500 0.1 9 1.9 11,957 0.2
  関係機関との協議・許認可等 1 1.0 234 0.0 - - - - 25 7.1 1,529,396 34.1 26 5.7 1,529,631 26.7
  その他 28 30.4 142,699 17.5 2 15.3 186,287 44.1 94 26.9 512,599 11.4 124 27.3 841,586 14.7
設計に関する諸条件 3 3.2 10,423 1.2 - - - - 18 5.1 49,440 1.1 21 4.6 59,863 1.0
  工法選択 2 2.1 10,224 1.2 - - - - 9 2.5 16,679 0.3 11 2.4 26,903 0.4
  設計変更等 1 1.0 198 0.0 - - - - 7 2.0 26,799 0.5 8 1.7 26,997 0.4
  その他 - - - - - - - - 2 0.5 5,961 0.1 2 0.4 5,961 0.1
気象の関係 - - - - 1 7.6 1,672 0.3 6 1.7 4,631 0.1 7 1.5 6,304 0.1
  豪雨 - - - - - - - - - - - - - - - -
  豪雪 - - - - 1 7.6 1,672 0.3 6 1.7 4,631 0.1 7 1.5 6,304 0.1
  風浪 - - - - - - - - - - - - - - - -
  その他 - - - - - - - - - - - - - - - -
用地の関係 1 1.0 43 0.0 - - - - 5 1.4 7,622 0.1 6 1.3 7,665 0.1
  用地買収交渉 - - - - - - - - - - - - - - - -
  工事用用地の借上げ - - - - - - - - 5 1.4 7,622 0.1 5 1.1 7,622 0.1
  その他 1 1.0 43 0.0 - - - - - - - - 1 0.2 43 0.0
補償処理の困難 - - - - - - - - 1 0.2 97 0.0 1 0.2 97 0.0
  補償交渉 - - - - - - - - 1 0.2 97 0.0 1 0.2 97 0.0
  地元との調整 - - - - - - - - - - - - - - - -
  その他 - - - - - - - - - - - - - - - -
資材の入手難 9 9.7 36,760 4.5 1 7.6 4,588 1.0 37 10.6 196,086 4.3 47 10.3 237,435 4.1
  資材不足 4 4.3 33,391 4.1 1 7.6 4,588 1.0 9 2.5 138,970 3.0 14 3.0 176,950 3.0
  労務者手配調整 2 2.1 911 0.1 - - - - 3 0.8 7,579 0.1 5 1.1 8,491 0.1
  資材運搬不能 1 1.0 988 0.1 - - - - - - - - 1 0.2 988 0.0
  特注品納期遅延 2 2.1 1,468 0.1 - - - - 17 4.8 30,193 0.6 19 4.1 31,661 0.5
  その他 - - - - - - - - 8 2.2 19,343 0.4 8 1.7 19,343 0.3
試験研究に際しての事前の調査
又は研究方式の決定困難
- - - - - - - - 8 2.2 19,332 0.4 8 1.7 19,332 0.3
  事前調査 - - - - - - - - - - - - - - - -
  研究方式 - - - - - - - - 8 2.2 19,332 0.4 8 1.7 19,332 0.3
  その他 - - - - - - - - - - - - - - - -
上記以外のもの 2 2.1 79 0.0 3 23.0 113,388 26.8 3 0.8 850,087 18.9 8 1.7 963,556 16.8
その他のやむを得ない事由
(事故繰越を含む。)
4 4.3 558 0.0 - - - - 2 0.5 604 0.0 6 1.3 1,162 0.0
92 100.0 814,241 100.0 13 100.0 422,264 100.0 349 100.0 4,483,875 100.0 454 100.0 5,720,381 100.0

(ウ) 不用の状況

 不用額についてみると、表17 のとおり、1次補正7038億余円、2次補正972億余円、3次補正3122億余円、計1兆1132億余円となっていて、全体の7.4%が不用となっている。最も不用額が多い事業についてみると、1次補正では国土交通省等5省所管の「(3)災害対応公共事業関係費〔1〕 災害復旧等事業費」3176億余円、2次補正では「4東日本大震災復旧・復興予備費」を除くと、経済産業省所管の「(2)原子力損害賠償支援機構法関係経費〔1〕 交付国債の償還財源に係る利子負担」97億余円、3次補正では農林水産省等4省所管の「(3)公共事業等の追加〔1〕 災害復旧等事業費」1215億余円となっている(巻末別表2 参照)。
 そして、921件の事業の不用率別の事業数と全事業に占める割合についてみると、表22 のとおり、不用率が100%となっている事業は、1次補正0件(0%)、2次補正1件(1.7%)、3次補正4件(0.6%)となっている。一方、不用率が0%となっている事業についてみると、1次補正57件(24.0%)、2次補正22件(39.2%)、3次補正261件(41.5%)となっていて、補正予算別の顕著な差異は見受けられない。

表22 不用率別・補正予算別の事業数(平成23年度)

(単位:件、%)

補正予算
不用率
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 割合 事業数 割合 事業数 割合 事業数 割合
80%以上100%以下 8 3.3 3 5.3 22 3.5 33 3.5
  100% 0 0.0 1 1.7 4 0.6 5 0.5
  90%以上100%未満 4 1.6 1 1.7 12 1.9 17 1.8
  80%以上90%未満 4 1.6 1 1.7 6 0.9 11 1.1
60%以上80%未満 11 4.6 4 7.1 21 3.3 36 3.9
40%以上60%未満 19 8.0 4 7.1 29 4.6 52 5.6
20%以上40%未満 35 14.7 4 7.1 40 6.3 79 8.5
0%以上20%未満 164 69.1 41 73.2 516 82.1 721 78.2
  10%以上20%未満 25 10.5 3 5.3 42 6.6 70 7.6
  0%超10%未満 82 34.5 16 28.5 213 33.9 311 33.7
  0% 57 24.0 22 39.2 261 41.5 340 36.9
237 100.0 56 100.0 628 100.0 921 100.0
(注)
 3次補正のうち、不用率0%の261件は、不用率がマイナスとなっている6件を含んだ件数である。

 また、全体の不用率の分布状況をみると、不用率が20%未満の事業が大半を占めているが、不用率が100%となっている事業全5件のうちの3件(東日本大震災復旧・復興予備費5657億余円のうち使用した4909億余円を除いた残額747億余円である2次補正の東日本大震災復旧・復興予備費1件、東日本大震災復興調整費49億余円のうち関係行政機関への配分予算を除いた33億余円の残額で復興庁において未配分額として整理されている3次補正の東日本大震災復興調整費1件、計2件を除く。)についてみると、以下のとおりである。

<事例3>
不用率が100%となっている事業 3件

〔1〕 災害救助等関係経費(被災者緊急支援経費)(3次補正)

 復興特区支援利子補給金(復興庁)

予算現額2億余円、支出済額0円、繰越額0円、不用額2億余円

 被災地の復興に向け、復興推進計画を実施する上で中核となる事業に必要な資金の融資に対して利子補給金を支給することにより事業の円滑な実施を支援するものである。
 不用率が100%となっているのは、復興庁は、特定地方公共団体からの復興推進計画に係る認定申請の遅れにより、融資時期が予定より遅くなり、平成23年度に復興特区支援利子補給金を要することがなかったためとしている。(巻末別表3 参照)

〔2〕 その他の東日本大震災関係経費(雇用対策費)(3次補正)

 被災地の新卒者等に対する面接会の実施(厚生労働省)

予算現額972万余円、支出済額0円、繰越額0円、不用額972万余円

 新規学校卒業者の就職環境は非常に厳しい状況にあり、被災地の新規学校卒業者が一人でも多く卒業までに就職できるよう一層の支援の強化を図るため、被災地に常設面接会場を借り上げ、就職面接機会を継続的に提供することを目的とした各都道府県労働局が行う直轄事業である。
 不用率が100%となっているのは、厚生労働省は、震災後の厳しい物件事情により長期にわたり利用できる施設を早期に借り上げることが困難であったこと、また、新規学校卒業者に対する一日も早い面接機会を提供するため、ハローワーク等の既存の会議室等を利活用したことなどから、本件会場借上費が不要となったためとしている。(巻末別表3 参照)

〔3〕 その他の東日本大震災関係経費(農業関係)(3次補正)

 農林水産業共同利用施設災害復旧事業(農林水産省)

予算現額14億余円、支出済額0円、繰越額0円、不用額14億余円

 東日本大震災により被災した、農林水産業共同利用施設(農協等が所有する農林水産物倉庫、処理加工施設、共同作業場、市場施設、種苗生産施設、養殖施設、家畜繁殖施設、共同放牧施設、公害防止施設等)の復旧に要する経費の一部を国が負担するものである。
 本事業に係る必要額は、各県からの被害報告額等から需要額を89億余円と見込み、1次補正において75億余円を計上し、3次補正において残額の14億余円を計上し、災害復旧事業費として不足額が生じないようにした。
 しかし、農林漁業者の事業再開の遅れに加え、本事業が被災前の状態へ復旧を図るものであり、単なる復旧を超えて新たに整備を行う場合は対象外となるため、当初想定していた需要が見込めなかったことなどにより、3次補正で計上した14億余円は全額不用となり、不用率が100%となった。
 なお、1次補正の支出済額は13億余円、繰越額は25億余円、不用額は37億余円となっており、3次補正を合計した事業全体でみると、予算現額は89億余円、不用額は51億余円となり、不用率は57.1%となっている。(巻末別表3 参照)

 上記事例のとおり、不用額が生じている事由は、震災後の被災地の事情により事業の実施が困難であったり、当初想定していた需要が見込めなかったりしていたことなどであるとしている。
 そこで、不用が生じている事業581件について、不用額が生じた事由を、各府省庁から主な不用事由を徴するなどして調査したところ、〔1〕 予定より実績が下回ったもの、〔2〕 事業計画の変更により減額したもの、〔3〕 事業執行に伴い節減したもの、〔4〕 契約価格が予定を下回ったもの、〔5〕 その他等となっていた。
 そして、不用額及び不用が生じた事業数を上記の〔1〕 から〔5〕 に分類した不用事由別及び補正予算別に区分してみると、表23 のとおり、不用額は、〔1〕 予定より実績が下回ったものが最も多くなっていて、1次補正4099億余円、2次補正154億余円、3次補正1841億余円、計6095億余円となっている。また、事業数は、〔4〕 契約価格が予定を下回ったものが最も多くなっていて、1次補正67件、2次補正11件、3次補正200件、計278件となっている。

表23 不用事由別・補正予算別の事業数及び不用額(平成23年度)

(単位:件、百万円)

補正予算
不用事由
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額
〔1〕 予定より実績が下回ったもの 74 409,918 15 15,443 94 184,192 183 609,553
〔2〕 事業計画により減額したもの 19 73,413 2 55 31 47,634 52 121,103
〔3〕 事業執行に伴い節減したもの 5 5,328 2 166 17 1,470 24 6,966
〔4〕 契約価格が予定を下回ったもの 67 27,534 11 4,612 200 26,980 278 59,127
〔5〕 その他 15 187,661 4 76,933 25 55,374 44 319,969
180 703,856 34 97,211 367 315,652 581 1,116,720

 不用額が最も多かった、〔1〕 予定より実績が下回ったものの具体的な内容は、補正予算編成時に、過去の災害における復旧費を参考に算出した単価を採用して東日本大震災に係る復旧費を計上したのに対して、実際には、地域によって被害の状況が異なり、想定していたよりも少なかったり、被災者からの仮払いの請求が見込みを下回ったりしたことなどとなっていた。
 このように、復旧・復興事業に係る予算に不用額が生じていたのは、東日本大震災は過去の災害等と比べて、規模、範囲ともに被害が甚大で、被害状況等の現況把握や復旧対象工事の数量や単価の算出が困難であったこと、早期の復旧や被災者支援の観点から、予算が不足することがないよう積算していたことなどによると認められる。

ウ 所管別の執行状況(1次補正から3次補正まで)

 所管別の予算現額、支出済額及び支出率についてみると、表24 のとおり、1次補正から3次補正までの計で予算現額が1兆円以上となっている府省庁は、国土交通省2兆4186億余円、総務省2兆3747億余円、経済産業省1兆7352億余円、農林水産省1兆5217億余円、厚生労働省1兆4211億余円、復興庁1兆3141億余円及び環境省1兆1766億余円となっている。
 そして、支出率が90%以上となっている府省庁が見受けられる一方、10%以下と著しく低くなっている府省庁も見受けられた。このうち、復興庁の支出率が0.1%に満たないのは、復興庁の23年度末の予算現額1兆3141億余円には、主に復興庁から関係行政機関へ復興交付金2510億余円を配分した残額1兆3101億余円が含まれているためである。なお、上記1兆3101億余円は、全額が翌年度に繰り越されているが、復興庁は、当初予定した計画で市町村への配分等を行うための手続を進めていたところ、関係行政機関との協議に不測の日数を要したためであるとしている。また、裁判所の3次補正の支出率が0.2%となっているのは、裁判所庁舎耐震化事業の予算現額59億余円の大半が繰り越されたためであり、裁判所は、保存樹木に関する地元自治体との協議や耐震に関するデータの見直しによる基本計画の変更等に不測の日数を要したことなどによるものであるとしている。

表24 所管別・補正予算別の予算現額、支出済額及び支出率(平成23年度)

(単位:億円、%)

補正予算
所管
1次補正 2次補正 3次補正
予算
現額
A
支出済

B
支出率
C=B/A
予算
現額
D
支出済

E
支出率
F=E/D
予算
現額
G
支出済

H
支出率
I=H/G
予算
現額
J
支出済

K
支出率
L=K/J
国会 - - - - - - 23 1 7.6 23 1 7.6
裁判所 5 5 99.8 - - - 59 0 0.2 65 5 8.2
内閣 0 0 99.3 29 22 75.8 8 3 40.3 38 26 68.0
内閣府 745 685 91.9 5,962 3,958 66.3 582 176 30.3 7,290 4,820 66.1
復興庁 - - - 3 1 48.4 13,138 0 0.0 13,141 2 0.0
総務省 1,881 1,328 70.6 4,573 3,573 78.1 17,293 8,195 47.3 23,747 13,097 55.1
法務省 24 18 77.4 - - - 72 31 42.9 97 50 51.6
外務省 - - - 15 13 89.2 186 185 99.3 201 198 98.6
財務省 3,624 3,619 99.8 753 6 0.7 4,266 4,239 99.3 8,644 7,865 90.9
文部科学省 2,758 1,507 54.6 1,434 1,349 94.0 5,352 1,440 26.9 9,546 4,297 45.0
厚生労働省 7,790 6,573 84.3 45 42 93.1 6,375 5,568 87.3 14,211 12,184 85.7
農林水産省 3,802 1,792 47.1 1,083 1,003 92.5 10,331 3,259 31.5 15,217 6,056 39.7
経済産業省 2,135 1,888 88.4 2,854 1,589 55.7 12,362 11,112 89.8 17,352 14,591 84.0
国土交通省 11,489 3,166 27.5 1 1 99.9 12,695 6,284 49.5 24,186 9,452 39.0
環境省 3,687 2,574 69.8 5 5 97.3 8,074 3,042 37.6 11,766 5,623 47.7
防衛省 1,592 1,194 75.0 - - - 1,615 935 57.8 3,207 2,129 66.4
39,537 24,356 61.6 16,763 11,568 69.0 92,438 44,477 48.1 148,740 80,403 54.0

 また、所管別の事業数についてみると、表25 のとおり、農林水産省177件、国土交通省169件、経済産業省147件、文部科学省125件等となっている。

表25 所管別・補正予算別の事業数(平成23年度)

(単位:件)

補正予算
所管
1次補正 2次補正 3次補正
国会 6 6
裁判所 1 2 3
内閣 1 6 5 12
内閣府 6 10 34 50
復興庁 2 6 8
総務省 13 1 28 42
法務省 3 12 15
外務省 1 10 11
財務省 7 2 11 20
文部科学省 33 7 85 125
厚生労働省 38 5 53 96
農林水産省 53 9 115 177
経済産業省 31 11 105 147
国土交通省 44 1 124 169
環境省 3 1 28 32
防衛省 4 4 8
237 56 628 921

エ 実施方法別の執行状況(1次補正から3次補正まで)

 東日本大震災からの復旧・復興事業は、国自らが直轄事業として実施する道路、河川、港湾等の公共事業、各種の防災強化事業、雇用対策事業及び原子力災害対策復興関係経費と地方自治体等の補助事業や各種交付金等による事業等がある。上記事業のうち、原則として、契約の履行が確認され契約の相手等から支払請求等があった後に支出を行う直轄事業及び補助事業の一部と、国が事業主体等に対して事業完了前に交付等を行う基金造成、運営費交付金、拠出金等とに区分して整理することとした。
 上記各事業の実施方法を、〔1〕 各府省庁が、委託契約を締結する場合も含めて、直接事業を実施する方法を「直轄(委託等を含む。)」、〔2〕 国以外の者が行う事業等に助成等を行う補助事業の実施方法のうち、基金造成(以下「補助(基金)」という。)、運営費交付金(以下「補助(運営費交付金)」という。)及び拠出金(以下「補助(拠出金)」という。)による方法を除いたものを「補助(基金造成等を除く。)」、〔3〕 事業の実施に当たり〔1〕 、〔2〕 等を合わせた複数の方法で行うものを「直轄、補助等」、〔4〕 それ以外の実施方法(補助(基金)、補助(運営費交付金)、補助(拠出金)、出資、地方交付税交付金等による方法)を「基金等」、と4区分することにより整理した。これらの実施方法別に各経費項目の予算現額、支出済額及び支出率をみると、表26-1 から表26-4 までのとおりとなっている。
 実施方法別の支出率についてみると、直轄は、1次補正62.0%、2次補正81.2%、3次補正33.5%、計50.5%、補助は、1次補正49.9%、2次補正45.4%、3次補正8.4%、計29.2%となっていて、3次補正に比べ1次補正の支出率が高くなっている。また、補助に比べて直轄の支出率が高い傾向が見受けられた。これは、補助が直轄に比べて、復旧・復興事業の実施に当たり、関係機関等との調整や地域住民との協議や調整等に日数を要した事業が多かったことなどが一因と認められた。
 1次補正から3次補正までの計の支出済額及び支出率についてみると、直轄が7178億余円、50.5%、補助が1兆7488億余円、29.2%、直轄、補助等が2126億余円、20.0%、基金等が5兆3610億余円、83.6%となっていて、基金等が支出済額及び支出率ともに突出している。これは、国から都道府県や株式会社日本政策金融公庫等に対して資金が全額支出されたことによるものである(前記<事例2> 参照)。

表26-1 1次補正から3次補正までの実施方法別の執行状況(平成23年度)

(単位:件、億円、%)

補正予算
実施方法
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 予算現額
A
支出済額
B
支出率
C=B/A
事業数 予算現額
D
支出済額
E
支出率
F=E/D
事業数 予算現額
G
支出済額
H
支出率
I=H/G
事業数 予算現額
J
支出済額
K
支出率
L=K/J
〔1〕 直轄(委託等を含む。) 82 5,366 3,327 62.0 29 1,845 1,499 81.2 226 6,998 2,350 33.5 337 14,209 7,178 50.5
〔2〕 補助(基金等を除く。) 107 24,936 12,447 49.9 12 5,690 2,589 45.4 257 29,184 2,451 8.4 376 59,811 17,488 29.2
〔3〕 直轄、補助等 10 983 360 36.6 1 5 4 91.7 40 9,637 1,760 18.2 51 10,626 2,126 20.0
〔4〕 基金等 38 8,251 8,221 99.6 14 9,221 7,474 81.0 105 46,618 37,914 81.3 157 64,092 53,610 83.6
237 39,537 24,356 61.6 56 16,763 11,568 69.0 628 92,438 44,477 48.1 921 148,740 80,403 54.0

表26-2 1次補正に計上された経費項目の実施方法別の執行状況(平成23年度)

(単位:件、億円、%)

実施方法
経費項目
〔1〕 直轄
(委託等を含む。)
〔2〕 補助
(基金造成等を除く。)
〔3〕 直轄、補助等 〔4〕 基金等
事業数 予算現額
A
支出済額
B
支出率
C=B/A
事業数 予算現額
D
支出済額
E
支出率
F=E/D
事業数 予算現額
G
支出済額
H
支出率
I=H/G
事業数 予算現額
J
支出済額
K
支出率
L=K/J
(1)災害救助等関係経費 1 0 0 60.0 5 4,730 4,550 96.1 2 97 97 100.0
  〔1〕 災害救助費 1 3,750 3,750 100.0
  〔2〕 災害援護貸付金 1 224 195 87.0
  〔3〕 生活福祉資金貸付事業費 1 256 203 79.1
  〔4〕 災害弔慰金等 1 485 389 80.2
  〔5〕 被災者緊急支援経費 1 0 0 60.0 1 13 11 83.1 2 97 97 100.0
(2)災害廃棄物処理事業費 1 3,519 2,530 71.9
(3)災害対応公共事業関係費 21 2,176 927 42.6 14 9,029 1,571 17.4 4 761 199 26.2 2 52 32 62.0
  〔1〕 災害復旧等事業費 5 1,819 608 33.4 8 7,833 1,555 19.8 2 733 182 24.9 2 52 32 62.0
  〔2〕 一般公共事業関係費 16 357 319 89.5 6 1,195 15 1.2 2 28 16 59.3
(4)施設費災害復旧費等 11 177 54 30.7 42 3,651 1,012 27.7 1 55 30 53.8
  〔1〕 文教施設災害復旧費 9 1,840 634 34.4
  〔2〕 社会福祉施設等災害復旧費等 9 844 94 11.1
  〔3〕 農業・林業施設等災害復旧費等 3 1 0 73.0 4 357 78 22.0
  〔4〕 消防防災施設災害復旧費 1 207 21 10.1
  〔5〕 中小企業組合等共同施設等災害復旧費 1 189 99 52.6
  〔6〕 港湾荷役機械等災害復旧費 1 97 19 20.4
  〔7〕 警察施設等災害復旧費 1 55 30 53.8
  〔8〕 その他 8 176 53 30.4 17 114 64 56.1
(5)災害関連融資関係経費 3 426 341 80.1 16 5,977 5,966 99.8
  〔1〕 中小企業等関係費 9 5,121 5,121 100.0
  〔2〕 災害復興住宅融資等緊急対策費 2 560 560 100.0
  〔3〕 農林漁業者等関係費 2 200 116 57.8 4 196 185 94.7
  〔4〕 その他 1 225 225 100.0 1 100 100 100.0
(6)地方交付税交付金 1 1,200 1,200 100.0
(7)その他の東日本大震災関係経費 49 3,011 2,344 77.8 42 3,580 2,441 68.1 5 166 130 78.8 17 924 924 100.0
  〔1〕 被災者生活再建支援金補助金 1 520 520 100.0
  〔2〕 市町村行政機能応急復旧補助金 1 37 25 69.3
  〔3〕 教育研究設備等災害復旧費 2 212 202 95.4 2 181 181 100.0
  〔4〕 被災児童生徒等支援関係経費 1 30 15 50.3 1 33 33 100.0 4 155 155 100.0
  〔5〕 医療保険制度等の保険料減免等に対する特別措置 3 1,142 1,085 95.0
  〔6〕 雇用対策費 3 12 2 23.6 2 1 0 36.0 1 500 500 100.0
  〔7〕 漁船保険・漁業共済の支払支援経費 1 859 777 90.4 1 79 49 62.2
  〔8〕 漁場・養殖施設等復旧対策費 4 681 188 27.6
  〔9〕 農林水産業共同利用施設災害復旧事業費等 3 185 88 47.8
  〔10〕 中小企業対策費 1 2 2 83.3 1 3 2 61.8 2 16 16 100.0
  〔11〕 燃料安定供給対策費 1 5 0 8.1 4 80 65 81.9 1 50 50 100.0
  〔12〕 企業等の電力需給対策費 2 78 48 61.5 1 99 73 73.5
  〔13〕 原子力災害対策費 10 23 14 61.6 3 17 14 79.2 2 4 3 87.6 3 3 3 100.0
  〔14〕 自衛隊活動経費等 9 1,839 1,358 73.8 4 296 33 11.2 3 162 127 78.6
  〔15〕 その他 21 159 124 77.7 11 188 57 30.3 4 16 16 100.0
82 5,366 3,327 62.0 107 24,936 12,447 49.9 10 983 360 36.6 38 8,251 8,221 99.6

表26-3 2次補正に計上された経費項目の実施方法別の執行状況(平成23年度)

(単位:件、億円、%)

実施方法
経費項目
〔1〕 直轄
(委託等を含む。)
〔2〕 補助
(基金造成等を除く。)
〔3〕 直轄、補助等 〔4〕 基金等
事業数 予算現額
A
支出済額
B
支出率
C=B/A
事業数 予算現額
D
支出済額
E
支出率
F=E/D
事業数 予算現額
G
支出済額
H
支出率
I=H/G
事業数 予算現額
J
支出済額
K
支出率
L=K/J
1原子力損害賠償法等関係経費 20 1,647 1,475 89.5 4 69 27 39.0 1 5 4 91.7 3 1,031 1,031 100.0
  (1)原子力損害賠償法関係経費 18 1,437 1,367 95.1 4 69 27 39.0 1 5 4 91.7 2 961 961 100.0
  〔1〕 原子力損害賠償補償金 1 1,200 1,200 100.0
  〔2〕 健康管理・調査事業費 1 781 781 100.0
  〔3〕 特別緊急除染事業費 1 179 179 100.0
  〔4〕 環境放射線モニタリング強化事業費 10 192 134 69.8
  〔5〕 対外発信強化事業費 3 28 25 91.0 1 19 1 5 4 91.7
  〔6〕 校庭等の放射線低減事業費 3 49 27 54.6
  〔7〕 原子力損害賠償和解仲介業務経費 1 10 3 37.8
  〔8〕 その他 3 7 4 55.9
(2)原子力損害賠償支援機構法関係経費 2 210 108 51.4 1 70 70 100.0
  〔1〕 交付国債の償還財源に係る利子負担 1 200 102 51.2
  〔2〕 原子力損害賠償支援機構に対する出資 1 70 70 100.0
  〔3〕 東京電力に関する経営・財務調査委員会経費 1 10 5 57.0
2被災者支援関係経費 2 31 5 16.7 4 3,476 1,499 43.1 5 265 265 100.0
  (1)二重債務問題対策関係経費 2 31 5 16.7 3 476 336 70.6 5 265 265 100.0
  〔1〕 旧債務 1 30 4 14.1 1 184 184 100.0 2 40 40 100.0
  〔2〕 新債務 1 1 0 94.8 2 292 152 52.1 3 224 224 100.0
(2)被災者生活再建支援金補助金 1 3,000 1,162 38.7
3東日本大震災復興対策本部運営経費 2 5 3 67.7
4東日本大震災復旧・復興予備費 5 161 15 9.4 4 2,144 1,062 49.5 5 3,350 2,603 77.7
5地方交付税交付金 1 4,573 3,573 78.1
29 1,845 1,499 81.2 12 5,690 2,589 45.4 1 5 4 91.7 14 9,221 7,474 81.0

表26-4 3次補正に計上された経費項目の実施方法別の執行状況(平成23年度)

(単位:件、億円、%)

実施方法
経費項目
〔1〕 直轄
(委託等を含む。)
〔2〕 補助
(基金造成等を除く。)
〔3〕 直轄、補助等 〔4〕 基金等
事業数 予算現額
A
支出済額
B
支出率
C=B/A
事業数 予算現額
D
支出済額
E
支出率
F=E/D
事業数 予算現額
G
支出済額
H
支出率
I=H/G
事業数 予算現額
J
支出済額
K
支出率
L=K/J
(1)災害救助等関係経費 9 16 3 22.9 53 505 405 80.1 1 33 6 385 385 100.0
  〔1〕 災害救助費 1 300 300 100.0
  〔2〕 生活福祉資金貸付事業費 1 165 82 49.7
  〔3〕 被災者緊急支援経費 9 16 3 22.9 51 39 22 56.3 1 33 6 385 385 100.0
(2)災害廃棄物処理事業費 2 50 1 2.7 1 3,129 146 4.6 1 679 508 74.8
(3)公共事業等の追加 38 2,229 468 21.0 72 6,298 253 4.0 14 5,817 499 8.5 5 389 389 100.0
  〔1〕 災害復旧等事業費 4 1,453 277 19.1 4 2,452 18 0.7 3 4,800 218 4.5
  〔2〕 一般公共事業関係費 18 455 107 23.6 17 672 68 10.2 2 862 253 29.3
  〔3〕 施設費等 16 320 82 25.8 51 3,173 166 5.2 9 155 28 18.3 5 389 389 100.0
(4)災害関連融資関係経費 4 75 71 94.0 17 6,635 6,612 99.6
  〔1〕 中小企業等関係費 14 6,530 6,530 100.0
  〔2〕 農林漁業者等関係費 4 75 71 94.0 3 105 82 78.3
(5)地方交付税交付金 1 16,635 8,134 48.8
(6)東日本大震災復興交付金 3 13,105 4 2,506 2,506 100.0
(7)原子力災害復興関係経費 25 825 78 9.5 15 82 8 9.9 5 2,007 746 37.1 9 641 641 100.0
(8)全国防災対策費 59 1,274 250 19.6 35 3,053 386 12.6 4 1,339 385 28.7 3 84 84 100.0
  〔1〕 学校施設耐震化・防災機能強化 7 1,994 15 0.7 1 56 56 100.0
  〔2〕 一般公共事業関係費 15 660 107 16.2 14 691 131 19.0 2 1,140 385 33.7
  〔3〕 海上保安庁船舶建造費等 23 303 82 27.1 6 34 0 0.9
  〔4〕 警察・消防関係費 4 83 0 1.1 1 18 0 4.5 2 198 0 0.1
  〔5〕 医療施設等防災対策費等 1 0 1 215 164 76.0 2 28 28 100.0
  〔6〕 自衛隊の災害対処能力の向上 1 145 42 29.0
  〔7〕 地下タンク環境保全対策促進事業費 1 69 69 100.0
  〔8〕 その他 15 79 17 22.4 5 28 3 11.0
(9)その他の東日本大震災関係経費 93 2,602 1,546 59.4 74 2,933 1,181 40.2 16 439 129 29.3 59 18,659 18,650 99.9
  〔1〕 震災関係資料収集、デジタル化促進、被災実態調査等 13 27 4 17.9
  〔2〕 警察・消防関係 3 51 34 66.3 3 50 2 4.7 3 127 59 46.5
  〔3〕 情報通信関係 1 74 0 0.0 2 20 5 28.2 1 73 0 0.0
  〔4〕 国際協力等を通じた復興 2 6 6 96.4 1 1 0 51.2 1 3 3 100.0 4 165 165 99.9
  〔5〕 復旧・復興に向けた教育支援等 6 21 9 45.6 4 160 73 45.8 3 39 25 64.7 1 189 189 100.0
  〔6〕 医療、介護、福祉等 3 4 0 7.8 9 959 882 92.0 8 266 262 98.3
  〔7〕 雇用対策費 6 269 256 95.0 2 3,510 3,510 100.0
  〔8〕 農業関係 6 13 7 56.8 9 73 13 18.4 1 5 4 86.3 3 104 104 100.0
  〔9〕 森林・林業の復興 1 0 0 100.0 1 1,399 1,399 100.0
  〔10〕 水産業の復旧・復興 2 1 1 85.3 9 720 78 10.9 2 857 857 99.9
  〔11〕 中小企業対策 5 103 1 1.3 8 95 19 20.5 4 9 2 28.1 7 246 246 100.0
  〔12〕 立地補助金 3 5,000 5,000 100.0
  〔13〕 資源権益確保関連経費 2 282 282 100.0
  〔14〕 節電エコ補助金等 3 399 32 8.1 6 1,924 1,923 99.9
  〔15〕 住宅関係 5 3,112 3,112 100.0
  〔16〕 自立・分散型エネルギー供給等によるエコタウン化事業 1 840 839 99.9
  〔17〕 自衛隊施設及び装備品等の復旧等 3 1,469 892 60.7
  〔18〕 その他 43 557 331 59.5 25 452 71 15.8 3 179 33 18.3 14 760 756 99.4
226 6,998 2,350 33.5 257 29,184 2,451 8.4 40 9,637 1,760 18.2 105 46,618 37,914 81.3

 上記のとおり、直轄や補助に比べて、基金等による実施方法の支出率が高くなっているのは、基金等以外の事業は原則として事業が完了するまでは全額が執行されないのに対して、基金等は国から事業主体等に資金が支出された時点で全額が執行されることとなるためである。そこで、基金等による実施方法を内容別に区分して、方法の内訳別、補正予算別の執行状況についてみると、表27 のとおりとなっている。
 基金等は、1次補正38件、2次補正14件、3次補正105件、計157件となっていて、全事業数に占める割合は、1次補正16.0%、2次補正25.0%、3次補正16.7%、計17.0%となっている。また、全予算現額に占める割合は、1次補正20.8%、2次補正55.0%、3次補正50.4%、計43.0%となっている。なお、基金等の事業数157件のうち140件(89.1%)が支出率100%となっている。
 そして、基金等の実施方法のうち件数、予算現額ともに最も多くなっているのは、補助(基金)によるものが67件、2兆7482億余円となっている。

表27 実施方法の内訳別・補正予算別の執行状況(平成23年度)

(単位:件、億円、%)

補正予算
実施方法
1次補正 2次補正 3次補正
事業数 予算現額
A
支出済額
B
支出率
C=B/A
事業数 予算現額
D
支出済額
E
支出率
F=E/D
事業数 予算現額
G
支出済額
H
支出率
I=H/G
事業数 予算現額
J
支出済額
K
支出率
L=K/J
直轄等a 199 31,286 16,135 51.5 42 7,541 4,093 54.2 523 45,820 6,563 14.3 764 84,647 26,792 31.6
  直轄 82 5,366 3,327 62.0 29 1,845 1,499 81.2 226 6,998 2,350 33.5 337 14,209 7,178 50.5
  補助 107 24,936 12,447 49.9 12 5,690 2,589 45.4 257 29,184 2,451 8.4 376 59,811 17,488 29.2
  直轄、補助等 10 983 360 36.6 1 5 4 91.7 40 9,637 1,760 18.2 51 10,626 2,126 20.0
基金等b 38 8,251 8,221 99.6 14 9,221 7,474 81.0 105 46,618 37,914 81.3 157 64,092 53,610 83.6
  補助(基金) 10 1,819 1,819 100.0 4 3,365 3,365 100.0 53 22,297 22,126 99.2 67 27,482 27,311 99.3
  補助(運営費交付金) 12 223 223 100.0 2 215 215 100.0 19 628 628 100.0 33 1,068 1,068 100.0
  補助(拠出金) 4 83 83 99.9 4 83 83 99.9
  出資 8 4,725 4,725 100.0 6 320 320 100.0 21 6,677 6,677 100.0 35 11,722 11,722 100.0
  地方交付税交付金 1 1,200 1,200 100.0 1 4,573 3,573 78.1 1 16,635 8,134 48.8 3 22,408 12,907 57.6
  上記以外のもの 7 283 252 89.3 1 747 7 296 264 89.1 15 1,326 517 38.9
各補正予算の計c=a+b 237 39,537 24,356 61.6 56 16,763 11,568 69.0 628 92,438 44,477 48.1 921 148,740 80,403 54.0
各補正予算に占める直轄等の割合d=a/c 83.9 79.1 66.2 75.0 44.9 35.3 83.2 49.5 14.7 82.9 56.9 33.3
各補正予算に占める基金等の割合e=b/c 16.0 20.8 33.7 25.0 55.0 64.6 16.7 50.4 85.2 17.0 43.0 66.6

オ 復興施策等別の執行状況(3次補正)

 国は、前記の復興基本方針に基づき、各府省一体となって、「災害に強い地域づくり」、「地域における暮らしの再生」、「地域経済活動の再生」及び「大震災の教訓を踏まえた国づくり」の4項目の復興施策を総合的かつ計画的に実施するとし、その際、各府省は、被災した地方公共団体の意向等を踏まえつつ、所管する復興施策についての事業計画や工程表を可能な限り速やかに策定し、その事業目的や実施方法等を公表することとされている。
 また、復興基本方針では、原子力災害からの地域再生及び復興に向けた十分な対策を講ずるため、法的措置を含めた検討を行うとともに、原子力災害からの復興として、「応急対策、復旧対策」、「復興対策」及び「政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進」の3項目について迅速な対応を図るとされ、府省庁では、2(5)ウ で後述するように、原子力災害からの復興に関連した各種事業を実施している。
 そこで、復興基本方針が策定された23年7月29日以降に成立した3次補正(予算現額9兆2438億余円)で実施している628事業のうち、復興基本方針における復興施策等との関連が明確にある562事業に着目して、上記7項目の復興施策等がどのように実施されているか、特に、復興施策等の項目別の事業件数、予算現額、支出済額及び支出率はどのようになっているか、さらに、2(3)ア で後述するように、特定被災地域の地方公共団体が作成している復興計画に掲げられた施策にも着目し、市町村が取り組もうとしている復興施策等と各府省庁が実施している復興事業との関連についても検査した。
 上記の562事業を復興施策等の項目別に分類すると、表28 のとおりである。これらの事業には基金等99事業(予算現額2兆7418億余円)が含まれていることから、基金等を除いた463事業(予算現額2兆7289億余円)についても分類している。分類に当たっては、被災した港湾施設を復旧する港湾整備事業のように、「災害に強い地域づくり」、「地域経済活動の再生」及び「大震災の教訓を踏まえた国づくり」にも寄与するなどとして複数の復興施策等項目にまたがっている事業が多数含まれていることから、これらについては、各復興施策等項目にそれぞれ該当するとして、重複して計上している。このため、総事業数は693件、うち基金等を除いた事業数は579件、基金等は114件となる。また、予算現額や支出済額についても、複数の復興施策等項目にまたがっている事業については、各復興施策等の項目別に事業費を算出することは困難であることから、該当する全ての復興施策等項目にその予算現額及び支出済額を全額計上することとした。

表28 復興施策等別の執行状況(平成23年度)

(単位:件、億円、%)

復興基本方針における
復興施策等
事業数 予算現額 支出済額 支出率
  うち基
金等
を除
いた件
  うち基金
等を除い
た額
  うち基金
等を除い
た額
  うち基金
等を除い
た率
    A D B E C=B/A F=E/D
5復興施策 633 529 62,672 32,547 37,045 7,142 59.1 21.9
  (1)災害に強い地域づくり 63 58 9,211 7,382 3,112 1,282 33.7 17.3
  〔1〕 高齢化や人口減少等に対応した新しい地域づくり 8 7 289 130 161 2 55.8 1.8
  〔2〕 「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員 32 32 6,206 6,206 831 831 13.4 13.4
  〔3〕 土地利用の再編等を速やかに実現できる仕組み等 4 4 21 21 3 3 14.5 14.5
  〔4〕 被災者の居住の安定確保 8 6 2,478 971 1,929 422 77.8 43.4
  〔5〕 市町村の計画策定に対する人的支援、復興事業の担い手等 11 9 216 52 186 22 86.0 42.6
(2)地域における暮らしの再生 101 80 8,330 3,582 6,256 1,512 75.0 42.2
  〔1〕 地域の支え合い 39 31 2,096 1,835 1,340 1,084 63.9 59.0
  〔2〕 雇用対策 11 8 3,771 254 3,756 239 99.6 94.3
  〔3〕 教育の振興 38 30 2,339 1,407 1,093 161 46.7 11.5
  〔4〕 復興を支える人材の育成 6 4 77 38 62 23 80.7 61.5
  〔5〕 文化・スポーツの振興 7 7 46 46 2 2 5.8 5.8
(3)地域経済活動の再生 217 164 28,773 9,366 20,271 1,081 70.4 11.5
  〔1〕 企業、産業・技術等 67 52 6,739 1,118 5,725 104 84.9 9.3
  〔2〕 中小企業 26 9 6,648 136 6,522 10 98.1 7.8
  〔3〕 農業 29 27 407 341 179 113 44.0 33.1
  〔4〕 林業 10 9 1,777 378 1,425 25 80.1 6.8
  〔5〕 水産業 25 22 2,611 1,711 989 112 37.8 6.5
  〔6〕 観光 8 8 43 43 36 36 84.3 84.3
  〔7〕 コミュニティを支える生業支援 2 2 16 16 12 12 74.6 74.6
  〔8〕 二重債務問題等 11 2 2,425 51 2,351 0 96.9 0.4
  〔9〕 交通・物流、情報通信 24 24 2,168 2,168 507 507 23.3 23.3
  〔10〕 再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上 6 2 1,190 175 1,014 - 85.2 -
  〔11〕 環境先進地域の実現 3 2 843 3 840 0 99.6 21.4
  〔12〕 膨大な災害廃棄物の処理の促進 6 5 3,902 3,222 666 157 17.0 4.8
(4)大震災の教訓を踏まえた国づくり 252 227 16,355 12,215 7,406 3,267 45.2 26.7
  〔1〕 電力安定供給の確保とエネルギー戦略の見直し 9 4 263 137 183 58 69.6 42.5
  〔2〕 再生可能エネルギーの導入促進及び省エネルギー対策等の推進 23 17 4,548 2,368 2,823 644 62.0 27.1
  〔3〕 世界に開かれた復興 27 23 306 141 207 42 67.7 30.1
  〔4〕 社会的包摂の実現と「新しい公共」の推進 6 5 18 9 16 7 87.7 76.8
  〔5〕 今後の災害への備え 169 160 11,044 9,384 4,159 2,499 37.6 26.6
  〔6〕 震災に関する学術調査、災害の記録と伝承 18 18 173 173 15 15 8.6 8.6
6原子力災害からの復興 60 50 3,994 2,957 1,881 844 47.0 28.5
  (1)応急対策、復旧対策 58 49 3,599 2,957 1,486 844 41.2 28.5
  〔1〕 応急対策、各種支援、情報提供等 23 19 145 100 82 37 56.9 37.4
  〔2〕 安全対策・健康管理対策等 8 5 523 8 519 5 99.3 58.7
  〔3〕 賠償・行政サービスの維持等 8 8 313 313 21 21 6.7 6.7
  〔4〕 放射性物質の除去等 19 17 2,617 2,535 862 780 32.9 30.7
(2)復興対策 2 1 394 0 394 0 99.9 71.6
  〔1〕 医療産業の拠点整備 1 - 394 - 394 - 100.0 -
  〔2〕 再生可能エネルギーの拠点整備 1 1 0 0 0 0 71.6 71.6
(3)政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進 - - - - - - - -
693 579 66,666 35,504 38,926 7,987 58.3 22.4

 表28 のとおり、復興基本方針の「5復興施策」に掲げられた4項目に関連する事業は延べ633件、「6原子力災害からの復興」に掲げられた3項目に関連する事業は延べ60件、合計693件であった。
 各府省庁が復興事業を実施する際に掲げた復興施策についてみると、表28のとおり、「5復興施策」633件のうち、「大震災の教訓を踏まえた国づくり」の252件と「地域経済活動の再生」の217件が多く、次いで「地域における暮らしの再生」の101件などとなっている。また、「6原子力災害からの復興」の60件のうち、「応急対策、復旧対策」の58件が大半を占めている。
 復興基本方針には、復興施策等の項目別の内訳項目が掲げられていることから、これら内訳項目についてみると、表28 のとおり、「大震災の教訓を踏まえた国づくり」の内訳項目である「今後の災害への備え」の169件、次いで「地域経済活動の再生」の「企業、産業・技術等」の67件が多くなっている。
 一方、特定被災区域の市町村においても、復興基本方針を受け、復興後の地域の在り方を踏まえた復興施策を復興計画として、いち早く具体化して復興に取り組むこととしている。そこで、24年7月末現在で、復興計画が策定されている84市町村が取り組もうとしている復興施策についてみると、「5復興施策」の「災害に強い地域づくり」の項目では、「「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員」及び「被災者の居住の安定確保」の割合が高く、「地域における暮らしの再生」の項目では、「地域の支え合い」及び「教育の振興」の割合が高く、「地域経済活動の再生」の項目では、「交通・物流、情報通信」、「農業」及び「企業、産業・技術等」の割合が高くなっている。また、「6原子力災害からの復興」については、「応急対策、復旧対策」の項目の「応急対策、各種支援、情報提供等」の割合が高くなっている。
 国及び市町村が掲げる復興施策についてみると、各府省庁が最も多く掲げていた「今後の災害の備え」は、防災基本計画の見直しや、津波災害に強い地域づくりを推進するに当たっての全国で活用可能な一般的な制度の創設、東海・東南海・南海地震による被害軽減のための対策の検討等であり、「大震災の教訓を踏まえた国づくり」や「地域経済活動の再生」など、国自らが実施する施策等が多く掲げられていた。また、市町村では、「地域における暮らしの再生」などのインフラの整備や住民の安心・安全、コミュニティーに関する施策が多く掲げられているなどの特徴が見受けられた。
 復興施策等の項目別の予算現額及び支出済額についてみると、前記のとおり、複数の復興施策等項目にまたがっている事業については、該当する全ての復興施策等項目にその予算現額及び支出済額をそれぞれ計上していることから、前記562事業の予算現額等の合計額とは一致しない。しかし、復興施策等の項目別の支出率については、該当する事業ごとの予算現額と支出済額の合計額を基に比率を算出していることから、その執行状況の一定の傾向を推し量ることが可能となる。そこで、復興施策等の執行状況についてみると、表28のとおり、「5復興施策」は、予算現額6兆2672億余円、支出済額3兆7045億余円、支出率59.1%となっている。また、「6原子力災害からの復興」は、予算現額3994億余円、支出済額1881億余円、支出率47.0%となっている。
 次に、復興施策等項目の内訳別の支出率についてみると、「5復興施策」は、「地域における暮らしの再生」の75.0%、「地域経済活動の再生」の70.4%の順となっている。また、「6原子力災害からの復興」は、「復興対策」の99.9%、「応急対策、復旧対策」の41.2%の順となっている。
 基金等を除いた復興施策等の執行状況についてみると、事業数は、表28のとおり、「5復興施策」に関する事業延べ529件、「6原子力災害からの復興」に関する事業延べ50件、合計579件となっていた。また、「5復興施策」は、予算現額3兆2547億余円、支出済額7142億余円、支出率21.9%となっている。「6原子力災害からの復興」では、予算現額2957億余円、支出済額844億余円、支出率28.5%となっていて、基金を含めた場合と比べて大きな差異が見受けられた。
 基金等を除いた支出率の高い項目についてみると、「5復興施策」は、「地域における暮らしの再生」の42.2%、「大震災の教訓を踏まえた国づくり」の26.7%、また、「6原子力災害からの復興」では、「復興対策」の71.6%、「応急対策、復旧対策」の28.5%の順となっている。

 これらのことから、東日本大震災復旧・復興関係経費の執行に当たっては、計画に基づき円滑かつ迅速に事業が実施されるよう、関係行政機関等が実施する事業の進捗状況を的確に把握するとともに、施策の実施の推進及び総合調整を行いつつ、関係行政機関等との連絡調整を速やかに行い、被災した地方公共団体の意向や要望、取り組んでいる復興施策等を踏まえた経費の配分や事業費の積算を行うなどして、適切、有効かつ効率的な執行に努める必要がある。また、東日本大震災からの復旧・復興事業の執行に当たっては、多額の資金を交付するなどして新たに設置造成された基金により事業を実施しているものが多数見受けられることから、これら基金についても適切な管理等に努める必要がある。

(3) 復興特別区域制度における各種計画の実施状況等

 復興特別区域制度は、復興基本方針に基づき新たに創設された制度であり、地域が主体となった復興を強力に支援するため、オーダーメードで地域における創意工夫を活かして、旧来の発想にとらわれず、区域限定で思い切った規制・制度の特例や経済的支援等の被災地からの提案を一元的かつ迅速に実現することを目的として、前述のとおり、東日本大震災復興特別区域法により制度化された。同制度は、復興を担う地方公共団体が、自らの被災状況や復興の方向性に合致し、活用等が可能な特例等を選び取る仕組みとなっていて、地方公共団体は、個別の規制・手続の特例や税制上の特例等を受けるために復興推進計画を、土地利用の再編を図りながら復興に向けたまちづくり・地域づくりを進めることが必要な地域等において、土地利用の再編に係る特例許可・手続の特例等を受けるために復興整備計画を、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域において復興交付金事業を実施するために復興交付金事業計画をそれぞれ作成することとなっている。
 また、復興基本方針は、復興特別区域制度を創設するに当たり、被災地域の要望を踏まえ、土地利用再編手続の一元化、迅速化等の規制、手続等の特例措置を講ずるとともに、必要となる税・財政・金融上の支援、地域の復興計画作りの進捗等に応じて、国と被災した地方公共団体が協議し、必要となる特例等を迅速に措置していく仕組みを導入することとしていて、被災した地方公共団体が、被災の状況を踏まえて復興に関する基本的な考え方や施策の方向性をまとめる復興計画を独自に策定し、これを基に復興に必要な施策を実行することを想定している。
 そこで、まず、特定被災区域の227市町村の復興計画の策定状況及び復興計画において掲げられている施策を検査するとともに、復興特別区域制度の復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画がどのように地方公共団体の復興に活用されているかに着眼して、これらの計画の作成状況について検査した。
 その結果、24年7月末現在で、84市町村において復興計画が作成されていた。また、24年8月10日現在で、復興推進計画については144市町村、復興整備計画については21市町村、復興交付金事業計画については82市町村、合計154市町村においていずれかの計画が作成され活用されていた(巻末別表5 参照)。各市町村における復興計画の策定状況等並びに復興特別区域制度における復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画それぞれについて各市町村の活用状況をみると以下のとおりとなっていた。

ア 特定被災区域の市町村における復興計画の策定状況等

(ア) 特定被災区域の市町村における復興計画の策定状況

 復興基本方針は、復興を担う行政主体について、住民に最も身近で地域の特性を理解している市町村が基本となるものとし、国は、復興基本方針を示しつつ、市町村が能力を発揮できるよう、現場の意向を踏まえ、各種の支援を実施するものとしている。
 甚大な被害を受けた多くの市町村では、上記の復興基本方針を受け、専門家や住民の意見を取り入れながら、復興後の地域の在り方を踏まえた復興施策を復興計画として、いち早く具体化し、これを基にして、円滑かつ迅速にまちづくり、地域づくりなどの復興に取り組むこととしている。
 そこで、特定被災区域に指定されている227市町村の復興計画の策定状況を調べたところ、表29 及び図5 のとおり、24年7月末現在で37.0%に当たる84市町村において策定されていた。
 これを、図6 のとおり、津波による被害を受けた沿岸部の59市町村(注2) (以下「沿岸部の市町村」という。)とそれ以外の168市町村(以下「内陸部等の市町村」という。)とに分けてみると、沿岸部の市町村では、23年12月末時点で35市町村(59.3%)、24年7月末時点では46市町村(77.9%)の市町村が復興計画を策定していた。沿岸部の市町村のうち、青森県、岩手県及び宮城県内の全ての市町村が復興計画を策定していた一方で、福島第一原発の警戒区域に所在し長期避難を余儀なくされた福島県内の4町並びに茨城県及び千葉県内の9市町村は復興計画を策定していなかった。また、内陸部等の市町村では、復興計画を策定した市町村は、23年12月末時点で12市町村(7.1%)にとどまっていたが、24年に入ってから徐々に増加し、24年7月末時点では38市町村(22.6%)となっている。
 このように、沿岸部の市町村の多くで復興計画が策定されているのは、沿岸部の市町村では津波等による被害がより甚大であったことなどから、復興に向けての計画をいち早く具体化する必要性があったことがうかがわれる。

 59市町村  東日本大震災復興特別区域法の対象区域のうち、国土地理院が公表(平成23年4月18日)した津波浸水地域のある市町村

表29 特定被災区域の227市町村における復興計画の策定状況
策定状況の集計時点 市町村数(割合)  
うち沿岸部の市町村数(割合) うち内陸部等の市町村数(割合)
平成23年9月末 15(6.6%) 12(20.3%) 3(1.7%)
23年12月末 47(20.7%) 35(59.3%) 12(7.1%)
24年3月末 79(34.8%) 43(72.8%) 36(21.4%)
24年7月末 84(37.0%) 46(77.9%) 38(22.6%)
24年7月末現在未策定 143(62.9%) 13(22.0%) 130(77.3%)
227(100%) 59(100%) 168(100%)

図5 特定被災区域の227市町村における復興計画の策定状況

図5特定被災区域の227市町村における復興計画の策定状況

図6 沿岸部の市町村及び内陸部等の市町村

図6沿岸部の市町村及び内陸部等の市町村

(注)
 網掛けしてある市町村は、東日本大震災復興特別区域法の対象区域のうち、国土地理院が公表(平成23年4月18日)した津波浸水地域のある市町村

(イ) 復興計画における施策

 前記のように、多くの地方公共団体は、国が示した復興基本方針を踏まえるなどして、復興に向けた施策を復興計画としてまとめている。そこで、復興計画を策定している前記の84市町村が復興計画において掲げている施策を復興基本方針が示した施策の項目別に分類することにより、各市町村が取り組むこととしている復興施策についてみることとした。
 その結果、表30 のとおり、多くの市町村が取り組むこととしている復興施策は、「5(1)災害に強い地域づくり」については、今後の災害に対する備え、防災に資する対策、集団移転促進事業等に係る「〔2〕 「減災」の考えに基づくソフト・ハードの施策の総動員」(83市町村)、被災者の住居に関する施策に係る「〔4〕 被災者の居住の安定確保」(75市町村)となっていて、被害を受けた施設等の復旧にとどまらず、今後の震災に備えた防災拠点施設の整備や公共施設の耐震化等「減災」の考えに基づく事業や、仮の住まいでの生活を余儀なくされている住民の生活の安定のための災害公営住宅の建設を計画している市町村が多く見受けられる。そして、24年7月末現在、前記84市町村のうち、2(3)エ(ウ)b において後述するように、47の市町村が復興交付金を活用して、防災集団移転促進事業、災害公営住宅整備事業等の市街地や住居の再建に関連する事業を行うこととしていて、その多くの市町村が、復興計画に「5(1)災害に強い地域づくり」に取り組むとしている。
 「5(2)地域における暮らしの再生」については、保健、医療、介護、福祉、住まい等の住民の暮らしに関する多様な支援に係る「〔1〕 地域の支え合い」(83市町村)、被災した教育施設の防災機能の強化、被災児童等の支援等に係る「〔3〕 教育の振興」(79市町村)、文化及びスポーツの振興に関する施策等に係る「〔5〕 文化・スポーツの振興」(69市町村)を記述する市町村が多く見受けられ、このほかにも、医療、介護サービスの充実や、心のケア、地域住民同士のつながりの強化等、住民の暮らしに関する多様な支援や、学校の耐震化等の防災機能の強化、被災した生徒・児童等に対する授業料の免除や、健康相談等、被災地の未来を担う子どもたちに対する支援を多くの市町村が記述している。
 「5(3)地域経済活動の再生」については、産業の振興、企業の支援等に係る「〔1〕 企業、産業・技術等」(71市町村)、農林水産業の支援に係る「〔3〕 農業」(74市町村)、観光の振興に係る「〔6〕 観光」(70市町村)、災害に強い交通・物流網の構築、情報通信技術の利活用促進等に係る「〔9〕 交通・物流、情報通信」(76市町村)を記述する市町村が多く見受けられ、このほかにも、既存の産業の継続支援、新規産業の誘致、農地のがれき除去・除塩、観光資源を活用した観光スタイルの構築、道路、港湾、臨海鉄道等の物流インフラの早期復興等を多くの市町村が記述している。そして、24年8月3日現在、2(3)イ において後述するように、これまでに半数超の市町村が復興推進計画を作成し、復興産業集積関係の課税の特例等及び医療機器製造販売業等の許可基準の緩和の認定を受けることとしていて、その多くの市町村が、復興計画に「5(3)地域経済活動の再生」に取り組むとしている。

表30 市町村の復興計画に掲げられている施策の復興課題別分類
国が決定した基本方針 市町村が策定した復興計画
「東日本大震災からの復興の基本方針」の分類 左の分類に相当する内容を復興計画に掲げた市町村数(割合)
  津波による浸水被害のあった市町村数(割合) 内陸部等の市町村数(割合)
5.復興施策      
    (1)災害に強い地域づくり      
  〔1〕 高齢化や人口減少に対応した新しい地域づくり 32(38.0%) 22(47.8%) 10(26.3%)
  〔2〕 「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員 83(98.8%) 46(100.0%) 37(97.3%)
  〔3〕 土地利用の再編等を速やかに実現できる仕組み等 32(38.0%) 29(63.0%) 3(7.8%)
  〔4〕 被災者の居住の安定確保 75(89.2%) 44(95.6%) 31(81.5%)
  〔5〕 市町村の計画策定に対する人的支援、復興事業の担い手等 35(41.6%) 24(52.1%) 11(28.9%)
  (2)地域における暮らしの再生      
  〔1〕 地域の支え合い 83(98.8%) 46(100.0%) 37(97.3%)
  〔2〕 雇用対策 66(78.5%) 39(84.7%) 27(71.0%)
  〔3〕 教育の振興 79(94.0%) 46(100.0%) 33(86.8%)
  〔4〕 復興を支える人材の育成 20(23.8%) 16(34.7%) 4(10.5%)
  〔5〕 文化・スポーツの振興 69(82.1%) 39(84.7%) 30(78.9%)
  (3)地域経済活動の再生      
  〔1〕 企業、産業・技術等 71(84.5%) 41(89.1%) 30(78.9%)
  〔2〕 中小企業 55(65.4%) 34(73.9%) 21(55.2%)
  〔3〕 農業 74(88.0%) 42(91.3%) 32(84.2%)
  〔4〕 林業 34(40.4%) 17(36.9%) 17(44.7%)
  〔5〕 水産業 41(48.8%) 40(86.9%) 1(2.6%)
  〔6〕 観光 70(83.3%) 39(84.7%) 31(81.5%)
  〔7〕 コミュニティを支える生業支援 48(57.1%) 27(58.6%) 21(55.2%)
  〔8〕 二重債務問題等 16(19.0%) 14(30.4%) 2(5.2%)
  〔9〕 交通・物流、情報通信 76(90.4%) 45(97.8%) 31(81.5%)
  〔10〕 再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上 67(79.7%) 36(78.2%) 31(81.5%)
  〔11〕 環境先進地域の実現 26(30.9%) 16(34.7%) 10(26.3%)
  〔12〕 膨大な災害廃棄物の処理の促進 52(61.9%) 34(73.9%) 18(47.3%)
  (4)大震災の教訓を踏まえた国づくり      
  〔1〕 震災に関する学術調査、災害の記録と伝承 52(61.9%) 39(84.7%) 13(34.2%)
6.原子力災害からの復興      
    〔1〕 応急対策、各種支援、情報提供等 63(75.0%) 28(60.8%) 35(92.1%)
  〔2〕 安全対策・健康管理対策等 45(53.5%) 13(28.2%) 32(84.2%)
  〔3〕 賠償・行政サービスの維持等 32(38.0%) 7(15.2%) 25(65.7%)
  〔4〕 放射性物質の除去等 34(40.4%) 8(17.3%) 26(68.4%)
  〔5〕 医療産業の拠点整備 4(4.7%) 2(4.3%) 2(5.2%)
  〔6〕 再生可能エネルギーの拠点整備 12(14.2%) 8(17.3%) 4(10.5%)
  〔7〕 政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進 5(5.9%) 3(6.5%) 2(5.2%)
(注)
 割合は、80%以上を太字、20%未満を斜体で記載した。

 そして、これを沿岸部の市町村、内陸部等の市町村の別でみると、沿岸部の市町村では「5(1)〔3〕 土地利用の再編等を速やかに実現できる仕組み等」、「5(3)〔5〕 水産業」、「5(4)〔1〕 震災に関する学術調査、災害の記録と伝承」の割合が相対的に高くなっている。土地利用の再編については、土地利用方針の策定に当たり、住民の意向を踏まえた住宅の高台移転や避難場所等の整備、安全性及び利便性に配慮したインフラの整備等の一体的な推進等について記述している市町村が多く見受けられ、2(3)ウ において後述するように、これまでに、沿岸部の28市町村において復興整備協議会が組織され、復興整備計画の作成が行われている。また、震災に関する記録の収集及び伝承、鎮魂及び復興の象徴となる施設の整備、水産業の復興に向けた海底のがれき除去や卸売市場等の施設の復旧、堤防の耐震化等の促進、漁船の安全確保や漁業再開の支援を通じた産業の立て直しなどに関する事業を検討する市町村が多く見受けられた。

イ 復興推進計画の認定状況

 復興推進計画は、1(3)オ(ア) のとおり、地方公共団体が単独又は共同して作成し、復興庁の長である内閣総理大臣の認定を受けることにより、住宅、産業、まちづくり、医療・福祉等の各分野にわたる規制・手続に関する特例や雇用の創出等を支援する税・金融上の特例の適用を受けることができることとされている。これまでに、青森、岩手、宮城、福島、茨城各県の地方公共団体から申請された20の復興推進計画における28分類の特例が認定されている(24年8月3日現在。巻末別表6 参照)。
 上記の特例のうち、多くの地方公共団体の区域で認定されている特例は、図7 のとおり、復興産業集積関係の課税の特例等(143市町村)、医療機器製造販売業等の許可基準の緩和(127市町村)及び医療機関・介護施設等に係る基準等の特例(127市町村)である。

図7 特例の認定状況(平成24年8月3日現在)

図7特例の認定状況(平成24年8月3日現在)

 復興産業集積関係の課税の特例等には、企業等の新規立地促進税制(新設企業を5年間無税とする措置)、事業用設備等の特別償却、被災者雇用に係る法人税等の特別控除、研究開発税制の特例等のほか、地方公共団体の地方税の課税免除又は不均一課税に伴う減収に対する補填措置がある。東日本大震災により多数の被災者が離職を余儀なくされ、又は生産活動の基盤に著しい被害を受けた地域を有する地方公共団体は、単独で、又は同地域と一定の関係を有する地域がある地方公共団体と共同で、これらの地域に課税の特例を適用する復興産業集積区域を設定した復興推進計画を作成し、同計画の認定により、産業の形成及び活性化を通じて雇用機会の確保に寄与する事業の促進を図ることができる。24年8月3日現在の認定状況についてみると、青森、岩手、宮城、福島、茨城各県の区域において、各県及び県内市町村が作成主体となり共同申請した復興推進計画において認定されているほか、宮城県の仙台、塩竈、石巻各市では、これに加えて、共同申請した復興推進計画とは異なる産業分野の産業集積区域に係る市単独の復興推進計画において認定されている。
 医療機器製造販売業等の許可基準の緩和は、道県が医療機器製造販売業等促進事業を復興推進計画で定めることにより、医療機器の製造販売業者の総括製造販売責任者及び製造業の責任技術者の資格要件の一つである実務経験の要件に関する基準について、品質管理及び製造販売後安全管理上並びに保健衛生上の観点から薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)に定める許可基準に相当する基準を定めることで許可基準の緩和を認めるものであり、同日現在、東北3県の復興推進計画において認定されている。
 医療機関・介護施設等に係る基準等の特例は、道県が地域医療確保事業を復興推進計画で定めることにより、復興推進計画の区域内の病院又は介護施設等に対して、他の病院又は診療所との密接な連携を確保するなど適切な医療等を提供するための取組を行うと認められる病院等であることなどの一定の条件の下で、その置くべき医師数等の標準や介護施設の開設の条件について緩和を認めるものであり、同日現在、東北3県の復興推進計画において認定されている。
 一方、これまでに認定の実績がない特例もあるが、復興庁は、これらについても地方公共団体の関心は高く、地方公共団体から相談を受けているものもあり、復興の進捗に応じて活用が進むものもあるとしている。
 このような状況の中、地域の実情や産業に応じて、それまで他の地方公共団体において活用の実績がなかった特例に係る復興推進計画を申請したり、県との共同申請の復興推進計画に含まれない産業分野の集積に係る復興推進計画を申請したりして、復興の促進・加速に役立てようとしている地方公共団体も見受けられる。これらの市町村の取組は、他の地方公共団体の参考になるものもあると考えられることから、復興庁において、特例の活用事例等について周知するなどして、他の特例の活用を促したり、助言を行ったりして、地方公共団体に対する迅速かつ着実な支援に寄与することが期待される。

ウ 復興整備計画の作成状況

 復興整備計画は、1(3)オ(イ) のとおり、土地利用の再編に係る特例許可・手続の特例等を受けるために市町村が単独又は道県と共同して作成する計画であり、復興整備協議会での協議を経るなどして、事業に必要な許可の特例が適用されるものである。復興整備計画及び復興整備協議会の状況(24年8月10日現在)を示すと、表31 のとおりであり、28市町村が復興整備協議会を組織して復興整備計画を作成済み又は作成中としており、そのうち21市町村が公表している。復興整備計画を作成できる市町村は津波浸水地域を含む市町村のほか、原子力発電所の事故の影響により土地利用を見直す必要が生じ得る地域を含む市町村や地盤の液状化や崩落を始めとする各種被害からの市街地の円滑かつ迅速な復興を図る必要がある地域を含む市町村等であるが、上記の28市町村は全て沿岸部の市町村であり、内陸部等の市町村で復興整備協議会を組織して復興整備計画を作成済み又は作成中としている市町村はない。

表31 復興整備計画及び復興整備協議会の状況(平成24年8月10日現在)
県名 市町村名 復興整備協議会の有無 復興整備計画の有無 復興整備計画の公表日
岩手県 *宮古市 - -
*大船渡市 24年3月30日
*久慈市 24年8月1日
*陸前高田市 24年3月30日
24年8月1日(第1回変更)
*釜石市 24年8月2日
*大槌町 - -
*山田町 24年3月30日
*岩泉町 - -
*田野畑村 24年8月1日
*野田村 24年3月30日
宮城県 *仙台市 24年7月9日
*石巻市 24年3月30日
24年4月27日(第1回変更)
24年7月9日(第2回変更)
24年8月7日(第3回変更)
*塩竈市 - -
*気仙沼市 24年5月25日
24年7月9日(第1回変更)
*名取市 24年3月30日
*岩沼市 24年3月30日
24年5月30日(第1回変更)
*東松島市 24年5月30日
24年8月7日(第1回変更)
*亘理町 24年7月9日
*山元町 24年3月30日
*松島町 - -
*七ヶ浜町 - -
*利府町 - -
*女川町 24年3月30日
24年7月9日(第1回変更)
*南三陸町 24年7月9日
24年8月3日(第1回変更)
福島県 *いわき市 24年6月12日
24年8月3日(第1回変更)
*相馬市 24年6月12日
24年8月3日(第1回変更)
*南相馬市 24年8月6日
*新地町 24年8月3日
(注)
 市町村名の左に「*」がある市町村は、津波による被害を受けた沿岸部の市町村である。

 また、各市町村が作成する復興整備計画には、復興整備計画の区域及び目標や土地利用方針のほか、復興整備計画の目標を達成するために必要な事業(以下「復興整備事業」という。)を記載することとなっている。復興整備事業については、実施主体、実施区域、実施予定期間等について、公聴会を開催するなど住民の意向を反映したものとして構想が固まっていれば、事業計画や設計といった詳細が固まっていない段階でも、復興整備計画に記載することができることとされており、これを記載することにより、各種の特例措置を適用することが可能となる。そして、各種の特例措置には、土地利用基本計画の変更等の設定区域の変更等や農地転用の許可等許認可に関するもの、それらの手続に関するものなど復興整備事業に共通して適用できるもののほか、各々の復興整備事業に関する特例もある。
 復興整備事業には、東日本大震災復興特別区域法に基づき、市街地開発事業等計13の事業が掲げられており、前記の21市町村が公表した復興整備計画に記載した復興整備事業について、事業別に市町村数等を示すと表32 のとおりとなる。事業別の市町村数の多い事業は、集団移転促進事業、市街地開発事業及び都市施設の整備に関する事業である。

表32 復興整備事業別の市町村数等(平成24年8月10日現在)
復興整備事業 市町村数 市町村名
市街地開発事業 8市町村 陸前高田市、釜石市、野田村、石巻市、名取市、東松島市、女川町、いわき市
土地改良事業 1市 釜石市
復興一体事業
集団移転促進事業 17市町村 大船渡市、陸前高田市、釜石市、山田町、野田村、仙台市、石巻市、気仙沼市、岩沼市、東松島市、亘理町、女川町、南三陸町、いわき市、相馬市、南相馬市、新地町
住宅地区改良事業
都市施設の整備に関する事業 6市町村 久慈市、陸前高田市、釜石市、野田村、名取市、南三陸町
津波防護施設の整備に関する事業
漁港漁場整備事業
保安施設事業
液状化対策事業
造成宅地滑動崩落対策事業
地籍調査事業
その他施設の整備に関する事業 13市町村 久慈市、釜石市、田野畑村、石巻市、岩沼市、東松島市、亘理町、山元町、南三陸町、いわき市、相馬市、南相馬市、新地町
21市町村

(ア) 集団移転促進事業(17市町村)

 集団移転促進事業は、都市計画法(昭和43年法律第100号)第29条第1項又は第2項の規定に基づく都市計画区域における開発行為の許可や農地法(昭和27年法律第229号)第4条第1項又は第5条第1項の規定に基づく農地転用の許可等事業実施のために必要な許認可が緩和されるなどとともに、個別法において必要となる許認可は復興整備協議会において一括して処理される。また、集団移転促進事業に関する特例として、現行制度上、市町村が作成することとされていた集団移転促進事業計画は、県が作成できることとされるとともに、公益的施設の用地の造成等に要する経費の一部を国が補助することとし、かつ、住宅団地の用地を造成等した後に譲渡する場合であっても、当該用地の造成等に要する経費が譲渡の対価を上回る場合には、当該経費の一部を国が補助することとされている。

(イ) 市街地開発事業(8市町村)

 市街地開発事業は、都市計画法第4条第2項等の規定に基づく都市計画区域の指定、変更又は廃止等設定区域の変更等や農地法第4条第1項又は第5条第1項の規定に基づく農地転用の許可等、事業実施のために必要な許認可が緩和されるなどとともに、個別法において必要となる許認可は復興整備協議会において一括して処理される。また、土地区画整理事業の特例として、現行制度上、地方公共団体は、市街化調整区域において土地区画整理事業を施行することができないが、被災地域の円滑かつ迅速な復興のため、市街化調整区域において、土地区画整理事業を施行できることとされている。

(ウ) 都市施設の整備に関する事業(6市町村)

 都市施設の整備に関する事業は、都市計画法第11条第1項各号に掲げる道路、公園等の整備に関する事業について、国土利用計画法(昭和49年法律第92号)第9条第1項に規定する土地利用基本計画の変更等設定区域の変更等や農地法第4条第1項又は第5条第1項の規定に基づく農地転用の許可等、事業実施のために必要な許認可が緩和されるなどとともに、個別法において必要となる許認可は復興整備協議会において一括して処理される。

 一方、13復興整備事業のうち、復興整備計画に全く記載されていない復興整備事業は、24年8月10日現在で、復興一体事業、住宅地区改良事業、津波防護施設の整備に関する事業、漁港漁場整備事業、保安施設事業、液状化対策事業、造成宅地滑動崩落対策事業及び地籍調査事業の8事業である。

エ 復興交付金事業計画の申請、交付状況等

(ア) 復興交付金事業計画の提出から復興交付金の交付決定までの手続

 復興交付金事業計画は、1(3)オ(ウ) のとおり、東日本大震災による相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の市町村又は各市町村と道県が共同して円滑かつ迅速な復興のために実施する必要がある事業に関して作成するものであり、基幹事業及び効果促進事業のうち復興交付金事業計画に定めた目標を実現するために必要な事業を復興交付金事業計画に記載し、復興庁に提出することとされている。復興交付金事業計画の提出を受けた復興庁は、復興交付金事業計画に係る事業に要する経費について、事業を所管する関係5省と協議し、関係5省が交付の事務を行うこととなる事業ごとの交付額を明らかにして、予算の範囲内で配分計画を作成し、これに基づき関係5省へ予算の移替えを行うこととなっている。これとともに、復興庁は、復興交付金事業計画を提出した市町村又は県に対して、配分計画に基づく交付可能額を通知することとされている。
 この配分計画の作成に当たって、復興庁は、東日本大震災復興特別区域法、東日本大震災復興交付金制度要綱等に基づき、市町村又は各道県から提出された交付金事業計画の事業が、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の円滑かつ迅速な復興のための事業に該当するかどうかなどを判断した上で、復興交付金事業等の必要性、効率性、事業実施の確実性及び進捗状況等を勘案し、復興交付金の交付可能額を決定することとしている。
 そして、交付可能額の通知に基づき、市町村又は道県は、復興庁を経由して、関係5省に対し、関係5省がそれぞれ定める交付要綱等に基づき、交付の申請を行うこととなっている。交付申請を受けた関係5省は、これについて審査して、交付決定を行い、復興交付金を交付することとしている(図8 参照)。また、市町村又は道県は、事業の実施に当たり基金を造成して、復興交付金事業計画の計画期間内にこれを取り崩して事業を実施することができることとなっている。なお、復興交付金事業計画に係る事業を全て終了したときは、基金の残余額を国庫に返納しなければならないこととされている。

 図8  復興交付金事業計画の提出から復興交付金の交付決定までの流れ

図8復興交付金事業計画の提出から復興交付金の交付決定までの流れ

(イ) 復興交付金の交付状況

 復興庁は、24年7月までに計3回の復興交付金事業計画を各市町村から受け付けており、第1回復興交付金事業計画は同年1月31日、第2回復興交付金事業計画は4月4日、第3回復興交付金事業計画は6月26日をそれぞれ提出期限としていた。そして、復興庁は、第1回復興交付金事業計画については同年3月2日に、第2回復興交付金事業計画については5月25日に、第3回復興交付金事業計画については8月24日に、それぞれ各市町村に対して交付可能額を通知している。
 会計検査院は、会計実地検査において復興庁から第1回復興交付金及び第2回復興交付金の復興交付金事業計画(上記提出期限時点のもの)及び交付可能額通知の提出を受けるなどして、復興交付金の交付状況について検査した。その結果、各市町村が復興庁に提出した復興交付金事業計画、復興庁が各市町村に通知した交付可能額及び交付可能額に基づく復興交付金の交付済額は、表33 のとおりである。なお、復興交付金事業計画には23年度から27年度までの要望に係る年度ごとの事業費を記載することになっていて、復興庁は、直近の年度の要望事業費を当面の要望事業費としてとりまとめて、公表している。
 復興庁は、表33 及び図9 のとおり、市町村から計3回の復興交付金事業計画の提出を受け、第1回復興交付金については市町村からの当面の要望事業費計4939億余円に対して3054億余円を対象事業費として計2510億余円、第2回復興交付金については同2139億余円に対してこれを上回る3165億余円を対象事業費として計2611億余円、それぞれ交付可能額として通知している。また、第1回復興交付金及び第2回復興交付金の交付対象事業費計6220億余円(復興交付金交付可能額計5122億余円)のうち、効果促進事業の交付対象事業費は、第1回交付可能額で60億余円、第2回交付可能額で521億余円、計581億余円となっている。

表33 復興交付金交付回数別当面の要望事業費、交付可能額及び交付済額

(単位:百万円)

区分 復興交付金事業計画
(市町村から国への申請)
交付可能額通知
(国から市町村への通知)
交付済額
(平成23年度末)
当面の要望事業費
(うち効果促進事業費)
交付対象事業費
(うち効果促進事業費)
復興交付金
〔国費〕
(うち効果促進事業費)
復興交付金
〔国費〕
第1回復興交付金 493,943
(12,872)
305,488
(6,001)
251,016
(4,801)
250,640
(4,786)
第2回復興交付金 213,957
(17,655)
316,538
(52,117)
261,192
(41,567)
-
(-)
第3回復興交付金 143,148
(3,851)
-
(-)
-
(-)
-
(-)
622,027
(58,119)
512,208
(46,368)
250,640
(4,786)
注(1)  復興交付金事業計画(提出期限時点のもの)及び交付可能額通知の計数は、会計実地検査において復興庁から提出された復興交付金事業計画を基に会計検査院が集計したものである。このうち復興交付金事業計画は修正されることがあるため、当面の要望事業費は集計時点により変動する。
注(2)  交付済額の計数は、会計実地検査において関係5省から提出された復興交付金に係る調書を基に会計検査院が集計したものである。
注(3)  当面の要望事業費は、第1回復興交付金については平成23、24両年度の事業費であり、第2回復興交付金及び第3回復興交付金については24年度の事業費である。

図9 復興交付金交付回数別当面の要望事業費及び交付可能額

図9復興交付金交付回数別当面の要望事業費及び交付可能額

(ウ) 復興交付金の市町村別及び事業別の交付可能額

 復興交付金が配分されている市町村の傾向や、これにより市町村が実施する事業の傾向を把握するため、第1回交付可能額及び第2回交付可能額について市町村別及び事業別でみると次のとおりとなる。

a 復興交付金の市町村別の交付可能額

 前記の第1回交付可能額及び第2回交付可能額は、82市町村(交付対象事業費6220億余円)に対して通知されたものである。
 そこで、県別の交付対象事業費をみると、表34 及び図10 のとおり、第1回は、岩手県内の13市町村に対する957億余円(交付対象事業費全体の31.3%)、宮城県内の19市町に対する1437億余円(同47.0%)、福島県内の11市町村に対する603億余円(同19.7%)、その他4県内の16市町村に対する56億余円(同1.8%)となっており、第1回交付可能額は、東北3県の交付対象事業費2998億余円(同98.1%)に対するものがほとんどとなっていた。
 第2回は、岩手県内の12市町村に対する980億余円(交付対象事業費全体の30.9%)、宮城県内の20市町に対する1703億余円(同53.8%)、福島県内の20市町村に対する370億余円(同11.7%)、その他5県内の19市町村に対する110億余円(同3.4%)となっており、第2回交付可能額も、東北3県の交付対象事業費3055億余円(同96.5%)に対するものがほとんどとなっていた。
 一方、第1回交付可能額と第2回交付可能額を比較すると、東北3県以外の県の市町村への交付可能額の交付対象事業費は56億余円から110億余円へ、交付対象事業費全体に占める割合は1.8%から3.4%に上昇している。

表34 復興交付金の交付可能額に係る交付対象事業費の県別内訳
区分 岩手県 宮城県 福島県 その他 全体
第1回交付可能額 市町村数 13市町村 19市町 11市町村 16市町村 59市町村
交付対象事業費(百万円) 95,720 143,780 60,343 5,645 305,488
全体に占める割合(%) 31.3 47.0 19.7 1.8 100.0
第2回交付可能額 市町村数 12市町村 20市町 20市町村 19市町村 71市町村
交付対象事業費(百万円) 98,060 170,363 37,092 11,021 316,538
全体に占める割合(%) 30.9 53.8 11.7 3.4 100.0
市町村数 14市町村 22市町 22市町村 24市町村 82市町村
交付対象事業費(百万円) 193,781 314,143 97,435 16,666 622,027
全体に占める割合(%) 31.1 50.5 15.6 2.6 100.0

図10 復興交付金の交付可能額に係る交付対象事業費の県別内訳

図10復興交付金の交付可能額に係る交付対象事業費の県別内訳

 また、前記の交付対象事業費6220億余円について、第1回交付可能額、第2回交付可能額別、沿岸部の市町村、内陸部等の市町村別に分けると、表35 及び図11 のとおり、第1回交付可能額の交付対象事業費については、沿岸部の45市町村に対する3017億余円(交付対象事業費全体の98.7%)、内陸部等の14市町村に対する37億余円(同1.2%)となっており、第1回交付可能額はそのほとんどが沿岸部の市町村に対するものとなっている。
 第2回交付可能額の交付対象事業費については、沿岸部の43市町村に対する3035億余円(交付対象事業費全体の95.8%)、内陸部等の28市町村に対する129億余円(同4.1%)となっており、第2回交付可能額についてもそのほとんどが沿岸部の市町村に対するものとなっている。
 一方、第1回交付可能額と第2回交付可能額とを比較すると、内陸部等の市町村への交付可能額の交付対象事業費も37億余円から129億余円へ増額されており、交付対象事業費全体に占める割合も1.2%から4.1%に上昇している。

表35 復興交付金の交付可能額の沿岸部の市町村、内陸部等の市町村別内訳
区分 沿岸部の市町村 内陸部等の市町村 全体
第1回交付可能額 市町村数 45市町村 14市町村 59市町村
交付対象事業費(百万円) 301,757 3,731 305,488
全体に占める割合(%) 98.7 1.2 100.0
第2回交付可能額 市町村数 43市町村 28市町村 71市町村
交付対象事業費(百万円) 303,555 12,982 316,538
全体に占める割合(%) 95.8 4.1 100.0
市町村数 49市町村 33市町村 82市町村
交付対象事業費(百万円) 605,312 16,714 622,027
全体に占める割合(%) 97.3 2.6 100.0

図11 復興交付金の交付可能額の沿岸部の市町村、内陸部等の市町村別内訳

図11復興交付金の交付可能額の沿岸部の市町村、内陸部等の市町村別内訳

 以上のように、第1回交付可能額及び第2回交付可能額の配分は、ほとんどが東北3県の市町村や沿岸部の市町村に配分されているが、表34 及び表35 のとおり、第2回交付可能額では第1回交付可能額より、東北3県以外の市町村や内陸部等への市町村への交付可能額が上昇している。これらについて、復興交付金の市町村別の交付可能額を示すと表36 のとおりである。

表36 復興交付金の市町村別の交付可能額

(単位:百万円)

  市町村名 第1回交付可能額 第2回交付可能額
交付対象事業費 復興交付金
〔国費〕
交付対象事業費 復興交付金
〔国費〕
交付対象事業費 復興交付金
〔国費〕
  青森県
*   八戸市 1,624 1,411 79 63 1,704 1,474
*   三沢市 30 22 - - 30 22
*   おいらせ町 30 22 - - 30 22
*   階上町 146 109 15 11 161 121
  岩手県
*   宮古市 13,488 11,013 2,767 2,243 16,255 13,256
*   大船渡市 9,867 8,485 8,395 5,903 18,263 14,388
    北上市 - - 12 8 12 8
*   久慈市 1,423 995 2,080 1,555 3,503 2,550
    一関市 242 182 - - 242 182
*   陸前高田市 13,797 11,520 28,170 22,467 41,968 33,988
*   釜石市 17,572 14,853 16,493 13,738 34,065 28,592
*   大槌町 12,619 10,800 4,690 4,038 17,309 14,839
*   山田町 7,926 6,816 31,790 27,007 39,716 33,823
*   岩泉町 2,963 2,342 596 481 3,559 2,823
*   田野畑村 9,238 7,539 2,085 1,633 11,324 9,172
*   普代村 1,306 924 263 210 1,569 1,134
*   野田村 4,017 3,340 716 568 4,734 3,909
*   洋野町 1,256 948 - - 1,256 948
  宮城県
*   仙台市 50,982 40,753 43,687 37,364 94,670 78,117
*   石巻市 15,145 12,329 30,882 25,405 46,027 37,735
*   塩竈市 7,190 5,543 2,058 1,762 9,248 7,306
*   気仙沼市 5,316 4,225 6,136 5,234 11,452 9,459
    白石市 549 414 - - 549 414
*   名取市 7,986 6,336 1,572 1,244 9,558 7,580
*   多賀城市 4,562 3,895 669 502 5,232 4,398
*   岩沼市 3,104 2,516 17,605 15,075 20,709 17,592
    登米市 15 11 631 552 647 564
    栗原市 - - 116 101 116 101
*   東松島市 8,474 7,071 15,767 13,287 24,242 20,358
    大崎市 1,021 887 3,256 2,830 4,277 3,718
*   亘理町 13,215 11,271 23,365 18,630 36,580 29,901
*   山元町 5,796 4,780 12,223 9,623 18,019 14,404
*   松島町 1,042 863 427 326 1,469 1,189
*   七ヶ浜町 6,743 5,748 1,779 1,337 8,522 7,085
*   利府町 363 271 438 340 801 611
    大郷町 - - 71 59 71 59
    涌谷町 - - 723 631 723 631
    美里町 4 3 - - 4 3
*   女川町 5,169 3,926 7,464 6,341 12,634 10,267
*   南三陸町 7,096 5,380 1,486 1,163 8,582 6,544
  福島県
    福島市 - - 5 3 5 3
    郡山市 87 65 32 24 120 90
*   いわき市 15,336 12,159 15,168 12,766 30,505 24,925
    白河市 - - 70 52 70 52
    須賀川市 33 24 154 116 187 141
*   相馬市 19,686 16,538 4,838 3,785 24,524 20,323
    二本松市 30 22 20 13 50 36
    田村市 - - 11 7 11 7
*   南相馬市 23,054 20,021 6,079 4,915 29,134 24,936
    桑折町 - - 208 156 208 156
    国見町 - - 12 9 12 9
    鏡石町 20 15 58 44 78 59
    西郷村 579 434 - - 579 434
    矢吹町 - - 30 22 30 22
    矢祭町 - - 349 262 349 262
    石川町 - - 55 41 55 41
*   広野町 65 49 1,368 1,117 1,433 1,167
*   楢葉町 - - 204 171 204 171
    川内村 - - 330 250 330 250
*   双葉町 68 52 - - 68 52
*   新地町 1,380 1,129 7,955 6,743 9,336 7,872
    飯舘村 - - 139 104 139 104
  茨城県
*   水戸市 - - 371 325 371 325
*   日立市 - - 201 141 201 141
*   高萩市 38 32 366 284 404 317
*   北茨城市 22 16 2,606 2,280 2,628 2,296
*   ひたちなか市 698 544 180 137 878 681
*   鹿嶋市 554 461 29 22 583 483
    潮来市 177 125 304 228 482 354
    稲敷市 - - 141 105 141 105
*   神栖市 418 314 69 51 487 366
*   大洗町 274 214 190 145 464 360
*   東海村 637 478 - - 637 478
  栃木県
    矢板市 807 614 - - 807 614
  千葉県
    千葉市 - - 12 9 12 9
*   旭市 - - 219 165 219 165
    我孫子市 - - 239 173 239 173
    浦安市 92 69 4,213 3,274 4,306 3,343
    香取市 70 52 701 577 771 629
    山武市 21 16 - - 21 16
  新潟県
    十日町市 - - 92 77 92 77
  長野県
    栄村 - - 988 837 988 837
  305,488 251,016 316,538 261,192 622,027 512,208
(注)
 市町村名の左に「*」がある市町村は、津波による被害を受けた沿岸部の市町村である。

b 復興交付金の事業別の交付可能額

 前記のとおり、復興交付金事業計画に記載する事業には、基幹事業とされる5省40事業がある。これらのうち、第1回復興交付金及び第2回復興交付金の交付対象事業費における交付可能額は、5省35事業に対するものとなっている。
 東日本大震災により沿岸の市町村において建物が全壊した戸数は約12万戸、半壊した戸数は約19万戸であったが、基幹事業のうち、市街地や住宅の再建に関連する事業としては、表37 の5事業(以下「市街地・居住地復興のための5事業」という。)が挙げられる。

表37 市街地・居住地復興のための5事業
事業名 事業の概要
漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤嵩上げ、生活基盤整備等) 被災地の漁業集落において、安全安心な居住環境を確保するための地盤嵩上げ、生活基盤や防災安全施設の整備等を実施し、災害に強い漁業地域づくりを推進
災害公営住宅整備事業(災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等) 東日本大震災による被災者の居住の安定確保を図るため、災害公営住宅の整備等に係る費用を支援
津波復興拠点整備事業 復興の拠点となる市街地(一団地の津波防災拠点市街地形成施設)を用地買収方式で緊急に整備する事業に対して支援を行う津波復興拠点整備事業を創設
都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) 広範かつ甚大な被災を受けた市街地の復興に対応するため、それぞれの地域の復興ニーズに的確に対応し、被災市街地復興土地区画整理事業等(緊急防災空地整備事業、都市再生事業計画案作成事業、被災市街地復興土地区画整理事業)により緊急かつ健全な市街地の復興を推進
防災集団移転促進事業 東日本大震災により被災した地域において、住民の居住に適当でないと認められる区域内の住居の集団移転を支援

 復興交付金の交付可能額に係る交付対象事業費についてみると、上位3事業は、図12 のとおり、24市町に対する防災集団移転促進事業(交付対象事業費2178億余円(交付対象事業費全体の35.0%))、45市町村に対する災害公営住宅整備事業(災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等)(同1785億余円(同28.7%))及び18市町に対する都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等)(同368億余円(同5.9%))である。

図12 復興交付金の第1回交付可能額及び第2回交付可能額に係る交付対象事業費の事業別内訳(全市町村分)

図12復興交付金の第1回交付可能額及び第2回交付可能額に係る交付対象事業費の事業別内訳(全市町村分)

 また、市街地・居住地復興のための5事業の交付対象事業費は、前記の82市町村に対する交付対象事業費6220億余円のうち、47市町村に対する4528億余円(交付対象事業費全体の72.7%)となっており、復興交付金事業においては市街地・居住地復興のための5事業が占める割合が大きくなっている。
 一方、復興交付金の交付可能額に係る交付対象事業費が全くない事業は、医療施設耐震化事業、公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベーター改修)、住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等)、住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備)及び都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業)である。
 沿岸部の市町村と内陸部等の市町村別に、復興交付金の交付可能額に係る各事業の交付対象事業費をみると、沿岸部の市町村における交付対象事業費の上位3事業は、
図13 のとおり、24市町村に対する防災集団移転促進事業(交付対象事業費2178億余円(沿岸部の市町村の交付対象事業費全体の35.9%))、37市町村に対する災害公営住宅整備事業(災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等)(交付対象事業費1723億余円(同28.4%))及び18市町村に対する都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等)(交付対象事業費368億余円(同6.0%))となっている。
 一方、内陸部等の市町村における交付対象事業費の上位3事業は、図14 のとおり、8市町に対する災害公営住宅整備事業(災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等)(交付対象事業費61億余円(内陸部等の市町村の交付対象事業費全体の36.8%))、2市村に対する道路事業(市街地相互の接続道路等)(交付対象事業費35億余円(同21.3%))及び9市町村に対する造成宅地滑動崩落緊急対策事業(交付対象事業費23億余円(同13.8%))となっている。

図13 復興交付金の交付可能額(第1回及び第2回)に係る交付対象事業費の事業内訳(沿岸部の市町村分)
図14 復興交付金の交付可能額(第1回及び第2回)に係る交付対象事業費の事業内訳(内陸部等の市町村分)

図14復興交付金の交付可能額(第1回及び第2回)に係る交付対象事業費の事業内訳(内陸部等の市町村分)

 さらに、各事業別に、沿岸部の市町村に係る交付対象事業費と内陸部等の市町村に係る交付対象事業費とを比べると、表38 のとおり、ほとんどの事業において沿岸部の市町村の交付対象事業費が大きくなっている一方で、小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住宅の建設等)及び都市防災推進事業(市街地液状化対策事業)については、内陸部等の市町村の交付対象事業費の方が大きくなっている。このうち、都市防災推進事業(市街地液状化対策事業)は地盤の液状化により著しい被害を受けた地域において、再度災害の発生を抑制するため、道路・下水道等の公共施設と隣接宅地等との一体的な液状化対策を推進するものであり、地盤の液状化による被害を受けた内陸部等の市町村において多く実施されていると見受けられる。

表38 復興交付金の事業別、沿岸部及び内陸部等の市町村別の交付可能額

(単位:箇所、百万円、%)

所管省庁 事業名 復興交付金交付可能額の通知を受けた市町村  
うち沿岸部の市町村 うち内陸部等の市町村
上段:市町村数
中段:交付対象事業費
下段:国費
計に占める割合 上段:市町村数
中段:交付対象事業費
下段:国費
計に占める割合 上段:市町村数
中段:交付対象事業費
下段:国費
計に占める割合
文部科学省 公立学校施設整備費国庫負担事業(公立小中学校等の新増築・統合) 4 4.8 4 8.1 - -
591 0.0 591 0.0 - -
470 0.0 470 0.0 - -
学校施設環境改善事業(公立学校の耐震化等) 11 13.4 8 16.3 3 9.0
564 0.0 441 0.0 122 0.7
409 0.0 327 0.0 81 0.5
幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 1 1.2 1 2.0 - -
76 0.0 76 0.0 - -
57 0.0 57 0.0 - -
埋蔵文化財発掘調査事業 30 36.5 26 53.0 4 12.1
1,254 0.2 1,221 0.2 32 0.1
946 0.1 922 0.1 24 0.1
厚生労働省 医療施設耐震化事業 - - - - - -
- - - - - -
- - - - - -
介護基盤復興まちづくり整備事業(「定期巡回・随時対応サービス」や「訪問看護ステーション」の整備等) 1 1.2 1 2.0 - -
30 0.0 30 0.0 - -
30 0.0 30 0.0 - -
保育所等の複合化・多機能化推進事業 1 1.2 1 2.0 - -
47 0.0 47 0.0 - -
35 0.0 35 0.0 - -
農林水産省 農山漁村地域復興基盤総合整備事業(集落排水等の集落基盤、農地等の生産基盤整備等) 27 32.9 23 46.9 4 12.1
8,008 1.2 7,664 1.2 344 2.0
6,298 1.2 6,035 1.2 263 1.9
農山漁村活性化プロジェクト支援(復興対策)事業(被災した生産施設、生活環境施設、地域間交流拠点整備等) 8 9.7 8 16.3 - -
1,872 0.3 1,872 0.3 - -
1,405 0.2 1,405 0.2 - -
震災対策・戦略作物生産基盤整備事業(麦・大豆等の生産に必要となる水利施設整備等) 1 1.2 1 2.0 - -
28 0.0 28 0.0 - -
21 0.0 21 0.0 - -
被災地域農業復興総合支援事業(農業用施設整備等) 21 25.6 16 32.6 5 15.1
25,595 4.1 23,608 3.9 1,986 11.8
19,292 3.7 17,710 3.5 1,582 11.7
漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤嵩上げ、生活基盤整備等) 13 15.8 13 26.5 - -
14,363 2.3 4,363 2.3 - -
10,910 2.1 10,910 2.1 - -
漁港施設機能強化事業(漁港施設用地嵩上げ、排水対策等) 17 20.7 17 34.6 - -
3,416 0.5 3,416 0.5 - -
2,571 0.5 2,571 0.5 - -
水産業共同利用施設復興整備事業(水産業共同利用施設、漁港施設、放流用種苗生産施設整備等) 19 23.1 19 38.7 - -
25,632 4.1 25,632 4.2 - -
18,059 3.5 18,059 3.6 - -
農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 5 6.0 4 8.1 1 3.0
2,743 0.4 2,655 0.4 87 0.5
2,057 0.4 1,991 0.3 65 0.4
木質バイオマス施設等緊急整備事業 8 9.7 5 10.2 3 9.0
604 0.0 465 0.0 139 0.8
440 0.0 335 0.0 105 0.7
国土交通省 道路事業(市街地相互の接続道路等) 38 46.3 36 73.4 2 6.0
34,108 5.4 30,544 5.0 3,563 21.3
26,800 5.2 24,011 4.8 2,789 20.6
道路事業(高台移転等に伴う道路整備(区画整理)) 2 2.4 2 4.0 - -
3,221 0.5 3,221 0.5 - -
2,507 0.4 2,507 0.5 - -
道路事業(道路の防災・震災対策等) 9 10.9 9 18.3 - -
397 0.0 397 0.0 - -
315 0.0 315 0.0 - -
災害公営住宅整備事業(災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等) 45 54.8 37 75.5 8 24.2
178,561 28.7 172,399 28.4 6,161 36.8
155,578 30.3 150,198 30.1 5,379 39.8
災害公営住宅家賃低廉化事業 10 12.1 10 20.4 - -
172 0.0 172 0.0 - -
150 0.0 150 0.0 - -
東日本大震災特別家賃低減事業 10 12.1 10 20.4 - -
43 0.0 43 0.0 - -
32 0.0 32 0.0 - -
公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベーター改修) - - - - - -
- - - - - -
- - - - - -
住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等) - - - - - -
- - - - - -
- - - - - -
小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住宅の建設等) 2 2.4 1 2.0 1 3.0
222 0.0 25 0.0 197 1.1
160 0.0 18 0.0 141 1.0
住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備) - - - - - -
- - - - - -
- - - - - -
優良建築物等整備事業(市街地住宅の供給、任意の再開発等) 1 1.2 1 2.0 - -
74 0.0 74 0.0 - -
44 0.0 44 0.0 - -
住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震改修事業事業) 3 3.6 3 6.1 - -
62 0.0 62 0.0 - -
40 0.0 40 0.0 - -
住宅・建築物安全ストック形成事業(がけ地近接等危険住宅移転事業) 12 14.6 12 24.4 - -
8,667 1.3 8,66 1.4 - -
6,500 1.2 6,500 1.3 - -
造成宅地滑動崩落緊急対策事業 17 20.7 8 16.3 9 27.2
33,201 5.3 30,886 5.1 2,314 13.8
25,113 4.9 23,367 4.6 1,745 12.9
津波復興拠点整備事業 11 13.4 11 22.4 - -
5,127 0.8 5,127 0.8 - -
3,890 0.7 3,890 0.7 - -
市街地再開発事業 4 4.8 3 6.1 1 3.0
672 0.1 518 0.0 154 0.9
481 0.0 365 0.0 116 0.8
都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) 18 21.9 18 36.7 - -
36,869 5.9 36,869 6.0 - -
28,015 5.4 28,015 5.6 - -
都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業) - - - - - -
- - - - - -
- - - - - -
都市防災推進事業(市街地液状化対策事業) 10 12.1 4 8.1 6 18.1
1,621 0.2 644 0.1 976 5.8
1,216 0.2 483 0.0 733 5.4
都市防災総合推進事業(津波シミュレーション等の計画策定等) 52 63.4 45 91.8 7 21.2
7,316 1.1 7,144 1.1 171 1.0
5,544 1.0 5,417 1.0 127 0.9
下水道事業 20 24.3 19 38.7 1 3.0
5,113 0.8 4,663 0.7 450 2.6
3,894 0.7 3,556 0.7 337 2.4
都市公園事業 14 17.0 14 28.5 - -
3,668 0.5 3,668 0.6 - -
2,622 0.5 2,622 0.5 - -
防災集団移転促進事業 24 29.2 24 48.9 - -
217,880 35.0 217,880 35.9 - -
186,146 36.3 186,146 37.3 - -
環境省 低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業 9 10.9 8 16.3 1 3.0
197 0.0 186 0.0 11 0.0
147 0.0 139 0.0 8 0.0
82 100.0 49 100.0 33 100.0
622,027 100.0 605,312 100.0 16,714 100.0
512,208 100.0 498,707 100.0 13,501 100.0
うち市街地・居住地復興のための5事業 47 57.3 39 79.5 8 24.2
452,802 72.7 446,640 73.7 6,161 36.8
384,540 75.0 379,160 76.0 5,379 39.8
(注)
 網掛けしてある事業は、市街地・居住地復興のための5事業に係るものである。

(エ) 復興交付金事業計画の当面の要望事業費と交付可能額

 復興庁は、第1回復興交付金事業計画及び第2回復興交付金事業計画の提出を受けて、それぞれに対する復興交付金の交付可能額を各市町村に通知している。
 復興交付金事業計画の当面の要望事業費と交付可能額に係る交付対象事業費を年度別(基幹事業に関連する効果促進事業を含む。)に比較すると以下のとおりとなる。

a 第1回復興交付金事業計画の当面の要望事業費と交付可能額

 第1回復興交付金事業計画の当面の要望事業費(23、24両年度の事業費)と交付可能額に係る交付対象事業費とを比較すると、表39 のとおり、当面の要望事業費4939億余円に対して、交付可能額に係る交付対象事業費は3054億余円となっている。これを年度別にみると、23、24両年度は、それぞれ当面の要望事業費が825億余円、4113億余円に対して、交付可能額の交付対象事業費が254億余円、2241億余円となっている一方、25年度は、当面の要望事業費には含められていないが、交付可能額の交付対象事業費は559億余円となっている。

表39 第1回復興交付金事業計画の当面の要望事業費と第1回交付可能額の年度別内訳

(単位:百万円)

年度 第1回復興交付金事業計画の当面の要望事業費
(A)
第1回交付可能額通知 要望事業費と交付可能額との差
(B-A)
交付対象事業費
(B)
復興交付金
〔国費〕
平成23 82,545 25,439 20,368 △57,105
24 411,398 224,109 181,745 △187,288
25 - 55,939 48,901 55,939
493,943 305,488 251,016 △188,454
(注)
 復興交付金事業計画(提出期限時点のもの)及び交付可能額通知の計数は、会計実地検査において復興庁から提出された復興交付金事業計画を基に会計検査院が集計したものである。このうち復興交付金事業計画は修正されることがあるため、当面の要望事業費は集計時点により変動する。

b 第2回復興交付金事業計画の当面の要望事業費と交付可能額

 第2回の復興交付金事業計画の当面の要望事業費(24年度の事業費)と交付可能額に係る交付対象事業費とを比較すると、表40 のとおり、当面の要望事業費2139億余円に対して、交付可能額に係る交付対象事業費は1025億余円上回る3165億余円となっている。これを年度別にみると、24年度は、当面の要望事業費2139億余円に対して、交付可能額に係る交付対象事業費が2084億余円となっている一方、25年度、26年度及び27年度は、当面の要望事業費には含められていないが、交付可能額に係る交付対象事業費はそれぞれ1067億余円、7億余円、5億余円となっている。

表40 第2回復興交付金事業計画の当面の要望事業費と第2回交付可能額の年度別内訳

(単位:百万円)

年度 第2回復興交付金事業計画の当面の要望事業費
(A)
第2回交付可能額通知 要望事業費と交付可能額との差
(B-A)
交付対象事業費
(B)
復興交付金
〔国費〕
平成24 213,957 208,407 166,894 △5,550
25 - 106,789 93,264 106,789
26 - 790 607 790
27 - 551 426 551
213,957 316,538 261,192 102,580
(注)
 復興交付金事業計画(提出期限時点のもの)及び交付可能額通知の計数は、会計実地検査において復興庁から提出された復興交付金事業計画を基に会計検査院が集計したものである。このうち復興交付金事業計画は修正されることがあるため、当面の要望事業費は集計時点により変動する。

 以上のように、23、24両年度は、当面の要望事業費に対して交付可能額が大幅に下回っている一方で、25年度以降は、当面の要望事業費に含められていないが交付可能額に含まれているものがある。これらの理由について、復興庁は、復興交付金の配分の考え方として、まずは著しい被害を受けた地域の復興地域づくりのための事業に対応し、これとは関係のない事業については別途の制度による対応とすることとし、また、著しい被害を受けた地域の復興地域づくりのための事業であっても、事業実施のめどが明確でないものなどは地方自治体と一体となって計画策定を進めながら、その進展等に応じて適切に対応するとともに、市街地・居住地の復興関連の防災集団移転促進事業、災害公営住宅整備事業(災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等)、都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等)及び漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤嵩上げ、生活基盤整備等)のうち早期実施が見込まれるものについては、実施のめどが立った事業費に係る復興交付金を追加で配分したと説明している。
 特に、第1回復興交付金は交付可能額が事業計画の当面の要望事業費に対して大幅に少なくなっていた。これは、特定被災区域の市町村が交付金事業計画を作成するに当たっては、各市町村の復興計画を具体的に事業化するための調整や地元住民との合意形成に一定の時間を要する事情がある中で、事業計画の提出手続を定めた東日本大震災復興交付金制度要綱が24年1月6日に制定され、第1回復興交付金事業計画の提出期限が同年1月末となったことから、各市町村において交付金事業計画を短期間に作成せざるを得ず、交付金事業計画の内容が十分でないものがあったことも影響していると考えられる。

(オ) 復興交付金に係る交付決定、基金の造成状況等

a 第1回交付可能額の市町村分、道県分、間接補助分別内訳

 各市町村に通知された復興交付金の交付可能額については、その復興交付金(国費)の内訳が市町村交付分と道県交付分とに分けられ、さらに、道県交付分が道県分と市町村に対する間接補助分とに分けられている。そして、各市町村は交付可能額について、道県は間接補助分も含めた道県分について、前記のとおり、関係5省に対し、交付要綱等に基づき、交付申請を行うこととなっている。交付申請を受けた関係5省は、これについて審査し、交付決定した上で、市町村交付分を市町村へ、間接補助分も含めた道県分を道県へ交付することとされている。
 また、復興交付金事業等の実施に当たり、市町村又は道県は、基金を造成して、復興交付金事業計画の計画期間内にこれを取り崩して復興交付金事業等を実施することができることとされており、市町村又は道県は、単年度で復興交付金事業等を実施する(以下「単年度型」という。)か、基金を造成しこれを取り崩して復興交付金事業等を実施する(以下「基金型」という。)かを選択することができることとされている。
 23年度に通知された第1回交付可能額について、市町村ごとに、市町村分、道県分及び間接補助分の内訳並びに単年度型又は基金型の種別を示すと表41 のとおりとなる。

表41 第1回交付可能額の市町村交付分、道県交付分、間接補助分別の内訳

(単位:百万円)

県名 市町村名 単年度型 基金型 第1回復興交付金交付可能額
  うち市町村交付分(%) うち道県交付分(%)
  うち間接補助分(%)
青森県 八戸市   1,411 1,394 (98.8) 16 (1.1) (-)
三沢市   22 22 (100.0) (-) (-)
おいらせ町   22 22 (100.0) (-) (-)
階上町   109 109 (100.0) (-) (-)
岩手県 宮古市   11,013 3,635 (33.0) 7,378 (66.9) 323 (2.9)
大船渡市   8,485 3,117 (36.7) 5,368 (63.2) (-)
久慈市   995 960 (96.5) 34 (3.4) 9 (0.9)
一関市   182 182 (100.0) (-) (-)
陸前高田市   11,520 4,736 (41.1) 6,784 (58.8) (-)
釜石市   14,853 7,334 (49.3) 7,519 (50.6) 562 (3.7)
大槌町   10,800 3,466 (32.0) 7,333 (67.9) 18 (0.1)
山田町   6,816 254 (3.7) 6,561 (96.2) 36 (0.5)
岩泉町   2,342 1,250 (53.3) 1,091 (46.6) 1,082 (46.2)
田野畑村   7,539 4,235 (56.1) 3,304 (43.8) 3,150 (41.7)
普代村   924 720 (77.8) 204 (22.1) 91 (9.9)
野田村   3,340 2,263 (67.7) 1,077 (32.2) 350 (10.4)
洋野町   948 791 (83.4) 156 (16.5) 96 (10.1)
宮城県 仙台市   40,753 40,742 (99.9) 11 (0.0) (-)
石巻市   12,329 11,676 (94.7) 653 (5.2) (-)
塩竈市   5,543 5,134 (92.6) 409 (7.3) 385 (6.9)
気仙沼市   4,225 2,893 (68.4) 1,332 (31.5) (-)
白石市   414 25 (6.1) 388 (93.8) 388 (93.8)
名取市   6,336 6,076 (95.8) 259 (4.1) 75 (1.1)
多賀城市   3,895 3,893 (99.9) 1 (0.0) (-)
岩沼市   2,516 2,267 (90.1) 249 (9.8) (-)
登米市   11 11 (100.0) (-) (-)
東松島市   7,071 6,438 (91.0) 633 (8.9) (-)
大崎市   887 887 (100.0) (-) (-)
亘理町   11,271 9,519 (84.4) 1,751 (15.5) 876 (7.7)
山元町   4,780 4,529 (94.7) 250 (5.2) 49 (1.0)
松島町   863 860 (99.6) 2 (0.3) (-)
七ヶ浜町   5,748 5,622 (97.8) 126 (2.1) 48 (0.8)
利府町   271 152 (56.3) 118 (43.6) 118 (43.6)
美里町   3 3 (100.0) (-) (-)
女川町   3,926 2,383 (60.6) 1,543 (39.3) 779 (19.8)
南三陸町   5,380 3,706 (68.8) 1,674 (31.1) (-)
福島県 郡山市(注(2)     65 (-) 65 (100.0) (-)
いわき市   12,159 11,847 (97.4) 312 (2.5) 44 (0.3)
須賀川市   24 24 (100.0) (-) (-)
相馬市   16,538 15,627 (94.4) 911 (5.5) 819 (4.9)
二本松市   22 22 (100.0) (-) (-)
南相馬市   20,021 19,611 (97.9) 409 (2.0) 305 (1.5)
鏡石町   15 15 (100.0) (-) (-)
西郷村   434 434 (100.0) (-) (-)
広野町   49 33 (67.8) 16 (32.1) (-)
双葉町   52 52 (100.0) (-) (-)
新地町   1,129 849 (75.2) 280 (24.7) (-)
茨城県 高萩市   32 32 (100.0) (-) (-)
北茨城市   16 16 (100.0) (-) (-)
ひたちなか市   544 407 (74.9) 136 (25.0) 11 (2.0)
鹿嶋市   461 461 (100.0) (-) (-)
潮来市   125 125 (100.0) (-) (-)
神栖市   314 314 (100.0) (-) (-)
大洗町   214 214 (100.0) (-) (-)
東海村   478 478 (100.0) (-) (-)
栃木県 矢板市   614 614 (100.0) (-) (-)
千葉県 浦安市   69 69 (100.0) (-) (-)
香取市   52 52 (100.0) (-) (-)
山武市   16 16 (100.0) (-) (-)
3 55 251,016 192,646 (76.7) 58,370 (23.2) 9,624 (3.8)
注(1)  県が選択した単年度型又は基金型の種別は、青森県が単年度型、岩手県、宮城県、福島県及び茨城県が基金型となっている。
注(2)  福島県郡山市には市町村交付分がないため、単年度型、基金型の種別を記載していない。

b 第1回復興交付金の道県、市町村別の交付決定、基金造成状況等

 国から道県又は市町村に交付された復興交付金について、単年度型、基金型の別にみた23年度の道県、市町村ごとの交付決定額は、次のとおりとなっている。
 復興交付金について単年度型を選択したのは、表42 のとおり、1県3市町であり、これらに係る復興交付金の交付可能額2億余円に対し、23年度の交付決定額も同額となっている。

表42 県・市町村別の復興交付金(単年度型)の交付決定の状況(平成23年度)

(単位:百万円)

  県・市町村名 交付可能額
(国費)
交付決定額
  青森県 16 16
* 三沢市 22 22
* おいらせ町 22 22
  一関市 182 182
  243 243
注(1)  県・市町村名の左に「*」がある市町村は、津波による被害を受けた沿岸部の市町村である。
注(2)  交付可能額(国費)については、各市町村に通知された交付可能額のうちの市町村交付分を各市町村の欄に、道県交付分(間接補助分を含む。)の合計額を道県の欄にそれぞれ記載している。

 また、基金型を選択したのは、表43 のとおり、4県55市町村である。これらに係る復興交付金の交付可能額2507億余円に対し、23年度の交付決定額は2506億余円、23年度中に同額が基金として造成されている。交付可能額と交付決定額の差額1億余円は、環境省の事業に係るものであり、同省が24年度に交付決定を行ったことによるものである。

表43 県・市町村別の復興交付金(基金型)の基金造成状況(平成23年度)

(単位:百万円)

  県・市町村名 交付可能額
(国費)
交付決定額 基金造成額
  岩手県 46,815 46,815 46,815
宮城県 9,406 9,406 9,406
福島県 1,995 1,995 1,995
茨城県 136 136 136
* 八戸市 1,394 1,394 1,394
* 階上町 109 109 109
* 宮古市 3,635 3,627 3,627
* 大船渡市 3,117 3,078 3,078
* 久慈市 960 960 960
* 陸前高田市 4,736 4,709 4,709
* 釜石市 7,334 7,326 7,326
* 大槌町 3,466 3,441 3,441
* 山田町 254 254 254
* 岩泉町 1,250 1,228 1,228
* 田野畑村 4,235 4,235 4,235
* 普代村 720 720 720
* 野田村 2,263 2,263 2,263
* 洋野町 791 791 791
* 仙台市 40,742 40,742 40,742
* 石巻市 11,676 11,676 11,676
* 塩竈市 5,134 5,134 5,134
* 気仙沼市 2,893 2,893 2,893
  白石市 25 25 25
* 名取市 6,076 6,072 6,072
* 多賀城市 3,893 3,893 3,893
* 岩沼市 2,267 2,267 2,267
  登米市 11 11 11
* 東松島市 6,438 6,438 6,438
  大崎市 887 887 887
* 亘理町 9,519 9,519 9,519
* 山元町 4,529 4,529 4,529
* 松島町 860 860 860
* 七ヶ浜町 5,622 5,622 5,622
* 利府町 152 152 152
  美里町 3 3 3
* 女川町 2,383 2,383 2,383
* 南三陸町 3,706 3,706 3,706
* いわき市 11,847 11,847 11,847
  須賀川市 24 24 24
* 相馬市 15,627 15,627 15,627
  二本松市 22 22 22
* 南相馬市 19,611 19,611 19,611
  鏡石町 15 15 15
  西郷村 434 434 434
* 広野町 33 33 33
* 双葉町 52 52 52
* 新地町 849 849 849
* 高萩市 32 32 32
* 北茨城市 16 16 16
* ひたちなか市 407 407 407
* 鹿嶋市 461 461 461
  潮来市 125 125 125
* 神栖市 314 314 314
* 大洗町 214 214 214
* 東海村 478 478 478
  矢板市 614 614 614
  浦安市 69 69 69
  香取市 52 52 52
* 山武市 16 16 16
  250,772 250,640 250,640
注(1)  市町村名の左に「*」がある市町村は、津波による被害を受けた沿岸部の市町村である。
注(2)  交付可能額(国費)については、各市町村に通知された交付可能額のうちの市町村交付分を各市町村の欄に、道県交付分(間接補助分を含む。)の合計額を道県の欄にそれぞれ記載している。

 復興計画の策定状況については、特定被災区域である227市町村のうち、84市町村において復興計画が作成されており、その内容をみると、多くの市町村の復興計画に記述された施策がある一方で、沿岸部の市町村と内陸部等の市町村の復興計画に記述された施策には、被災地域の被害状況を反映した違いも見受けられた。
 そして、復興推進計画については、認定された20の復興推進計画における28分類の特例についてみると、多くの地方公共団体の区域で認定されている特例がある一方、これまでに認定の実績がない特例もある。復興整備計画の作成状況については、復興整備協議会を組織しているのは全て沿岸部の市町村であり、また、公表されている21市町村の復興整備計画についてみると、復興整備計画に記述する事業には13の事業があるが、多くの市町村の復興整備計画に記述されている事業がある一方、全く記載されていない事業も8事業ある。復興交付金事業計画については、第1回復興交付金及び第2回復興交付金の交付対象事業費6220億余円に対して交付可能額の合計は5122億余円となっており、これを県別、沿岸部・内陸部等の市町村別にみると、そのほとんどが東北3県、沿岸部の市町村に配分されているが、第2回交付可能額では、第1回交付可能額より、東北3県以外の市町村、内陸部等の市町村に対する交付可能額の割合も上昇している。
 また、上記の第1回復興交付金及び第2回復興交付金の交付対象事業費6220億余円を基幹事業別にみると、市街地・居住地復興のための5事業が4528億余円と多くを占めている一方、交付可能額に含まれていない事業も5事業あった。さらに、これを沿岸部・内陸部等の市町村別にみると、交付対象事業費の大きい上位3事業には違いが見受けられた。
 このように、復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画に記載する事業については、沿岸部、内陸部等の市町村によって違いが見受けられた。これは、被害の実情や復興の実情が、各市町村により、大きく異なることが影響していると考えられる。
 特定被災区域の市町村においては、今後、復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画に係る事業が実施され、本格的な復興に向かうことが見込まれる。
 したがって、国においては、復興特別区域制度が、各被災地域の被害や復興の実情を踏まえ、今後もより一層、地域が主体となった復興を強力に支援するものとして活用されるよう、制度の運用に当たっては、各被災地域の被害及び復興の実情に応じて柔軟に対応するとともに、地方公共団体と十分な意見交換を行いつつ、復興推進計画の特例や復興交付金事業を活用した取組等について把握した上で、情報提供、助言その他必要な協力を行い、地方公共団体の迅速かつ着実な復興の支援に努めることが期待される。

(4) 被災市町村における復興事業等の実施状況

 復興基本方針では、東日本大震災からの復興を担う行政主体は市町村が基本となるとしている。そこで、特定被災区域の227市町村のうち、特に著しい被害を受けるなどして、第1回復興交付金事業計画に基づく復興交付金交付可能額の通知を受けた前記59市町村のうち、道県分のみが交付され、当該市町村交付分の該当がない1市を除く58市町村について、23年度の各種復旧・復興事業に対する国庫補助金や復興交付金等の交付状況及びその実施状況を検査した。

ア 市町村に対する東日本大震災関係経費の交付決定等の状況

 23年度における国及び地方公共団体が実施する復旧・復興事業の経費についてみると、前記の表14 に示したとおり、〔1〕 災害廃棄物処理事業費(7378億余円)、〔2〕 災害対応公共事業関係費(3兆0914億余円)、〔3〕 震災復興特別交付税(1兆6635億余円)を含む地方交付税交付金(2兆2408億余円)、〔4〕 復興交付金(1兆5611億余円)等、計14兆9354億余円が1次補正から3次補正までにより予算措置されている。
 しかし、上記の補正予算には、国が自ら実施する道路、港湾等の復旧事業、仮設住宅の建設、除染の実施等のほか、全国の都道府県や市町村を対象とする全国防災対策費等が含まれており、被災市町村ごとの復旧・復興事業に係る補助金及び交付金の交付状況や事業の実施状況等を把握することは、事業主体に直接確認するなどしない限り極めて困難である。
 そこで、会計検査院は、被災市町村の負担を考慮して、58市町村に調査票を送付し、その回答を求めるなどして各市町村の復旧・復興事業に係る補助金及び交付金の交付状況や事業の実施状況を検査するとともに、併せて各市町村の実施体制に係る現状や要望等について、率直な意見を求めることとした。
 検査の対象は、23年度の1次補正から3次補正までに計上された復旧・復興に係る予算のうち、国から58市町村に直接交付された国庫補助金及び復興交付金並びにこれらにより実施された復旧・復興事業に係る市町村負担分をゼロとすることなどのために交付された震災復興特別交付税とした。そして、震災復興特別交付税の対象となった国庫補助金の交付決定額及び交付額や復興交付金により造成された基金の取崩し状況等について、調査票により把握し、その内容を聴取して確認するなどの方法により検査した。
 調査票に基づき、58市町村に対する国庫補助金の交付決定額や復興交付金の交付可能額等の内訳を示すと表44 のとおりである。なお、これらの計数には、市町村において23年度決算が確定していないなどの理由から交付決定額等が概算額となっているものや、震災復興特別交付税のように市町村等から提出された23年度の復旧・復興事業の実施見込みなどの調査等に基づき決定して交付し、事業実施後の実績等により過大又は過小に算定されていた額を減額又は加算するものなどが含まれている。
 表44 によると、国庫補助金交付決定額計5778億余円、復興交付金交付可能額計1926億余円及び震災復興特別交付税交付額計2119億余円が58市町村に対して交付決定又は交付可能額として通知され、復興交付金の大半及び震災復興特別交付税の全額が23年度中に各市町村に交付されている。また、国庫補助金は、23年度の事業実績に基づいて交付されることから、上記の交付決定額から翌年度に繰り越された事業費等を除く計2862億余円が交付されていて、これら国庫補助金等の23年度交付額の合計は6904億余円となっており、1市町村当たりの交付額の平均は119億余円となる。
 上記のとおり、国庫補助金は、交付決定額と交付額ともに最も多くなっているが、復興交付金は、国庫補助金と異なり、これを元に基金を設置造成し、事業の進捗に合わせてこの基金を取り崩して事業費に充てられるなど市町村が復興事業の実施に当たり柔軟に活用できること、また、震災復興特別交付税は、復旧・復興事業に係る市町村負担分をゼロとすることなどを目的として各年度ごとに市町村に対する調査に基づき交付され、復旧・復興事業実施後の実績等に基づき過大又は過小に算定された額を減額又は加算されるため、市町村にとって財源の裏付けとなることから、会計検査院が調査票の徴取と併せて実施したアンケートにおいても、復興交付金及び震災復興特別交付税に対する期待と要望が高くなっている。
 地域別の交付状況の特徴についてみると、津波により甚大な被害を受けた岩手県及び宮城県内では、復興交付金交付額が国庫補助金交付額を上回っている市町村があり、青森県、福島県、茨城県及び千葉県内の市町村では、震災復興特別交付税交付額が最も大きな割合を占めていた。

表44 国庫補助金等の交付状況と交付額全体に占める割合(平成23年度)

(単位:百万円、%)

県名 市町村名 国庫補助金 第1回復興交付金 震災復興特別交付税 平成23年度に各市町村に交付された国庫補助金等の合計
(D)=(a)+(b)+(c)
交付額全体に占める国庫補助金等の各割合
交付決定額
(A)
交付額
(a)
交付可能額
(B)
交付額
(b)
交付額
(c)
(a/D) (b/D) (c/D)
青森県 八戸市 4,071 3,377 1,394 1,394 3,838 8,610 39.2 16.2 44.5
三沢市 272 235 22 0 286 521 45.0 0.0 54.9
おいらせ町 689 330 22 0 282 613 53.9 0.0 46.0
階上町 167 159 109 109 178 448 35.6 24.4 39.8
岩手県 宮古市 28,025 8,493 3,635 3,627 4,357 16,478 51.5 22.0 26.4
大船渡市 40,737 22,029 3,117 3,078 5,781 30,888 71.3 9.9 18.7
久慈市 3,374 1,105 960 960 2,129 4,195 26.3 22.8 50.7
一関市 4,328 1,818 182 0 2,893 4,712 38.5 0.0 61.4
陸前高田市 26,510 1,036 4,736 4,709 3,954 9,700 10.6 48.5 40.7
釜石市 24,742 8,630 7,334 7,326 4,893 20,849 41.3 35.1 23.4
大槌町 7,483 5,267 3,466 3,441 2,414 11,123 47.3 30.9 21.7
山田町 9,016 5,012 254 254 2,065 7,332 68.3 3.4 28.1
岩泉町 1,737 315 1,250 1,228 512 2,057 15.3 59.7 24.9
田野畑村 3,314 993 4,235 4,235 665 5,893 16.8 71.8 11.2
普代村 1,833 1,512 720 720 500 2,732 55.3 26.3 18.3
野田村 2,793 593 2,263 2,263 894 3,751 15.8 60.3 23.8
洋野町 2,603 300 791 791 521 1,613 18.6 49.0 32.3
宮城県 仙台市 53,014 32,292 40,742 40,742 49,479 122,514 26.3 33.2 40.3
石巻市 127,880 60,005 11,676 11,676 19,080 90,762 66.1 12.8 21.0
塩竈市 5,663 475 5,134 5,134 2,548 8,158 5.8 62.9 31.2
気仙沼市 26,074 15,328 2,893 2,893 6,150 24,371 62.8 11.8 25.2
白石市 2,398 1,279 25 25 1,218 2,523 50.7 1.0 48.2
名取市 18,251 13,384 6,076 6,072 3,919 23,376 57.2 25.9 16.7
多賀城市 7,646 6,777 3,893 3,893 3,497 14,167 47.8 27.4 24.6
岩沼市 12,058 7,933 2,267 2,267 3,027 13,228 59.9 17.1 22.8
登米市 4,446 2,298 11 11 3,145 5,455 42.1 0.2 57.6
東松島市 23,568 23,367 6,438 6,438 4,722 34,527 67.6 18.6 13.6
大崎市 6,391 2,879 887 887 4,488 8,256 34.8 10.7 54.3
亘理町 3,520 1,105 9,519 9,519 2,186 12,812 8.6 74.3 17.0
山元町 16,233 6,992 4,529 4,529 2,095 13,618 51.3 33.2 15.3
松島町 2,289 526 860 860 515 1,902 27.6 45.2 27.0
七ヶ浜町 6,149 2,683 5,622 5,622 1,688 9,993 26.8 56.2 16.8
利府町 1,078 478 152 152 832 1,463 32.6 10.4 56.8
美里町 2,780 1,245 3 3 1,207 2,455 50.7 0.1 49.1
女川町 13,272 5,873 2,383 2,383 1,569 9,827 59.7 24.2 15.9
南三陸町 10,800 3,917 3,706 3,706 1,681 9,305 42.1 39.8 18.0
福島県 いわき市 15,011 9,292 11,847 11,847 12,026 33,166 28.0 35.7 36.2
須賀川市 4,622 3,527 24 24 2,988 6,540 53.9 0.3 45.6
相馬市 8,215 4,581 15,627 15,627 1,598 21,807 21.0 71.6 7.3
二本松市 1,439 634 22 22 1,424 2,081 30.4 1.0 68.4
南相馬市 8,622 4,422 19,611 19,611 8,881 32,915 13.4 59.5 26.9
鏡石町 1,998 1,053 15 15 780 1,849 56.9 0.8 42.2
西郷村 1,291 616 434 434 1,114 2,166 28.4 20.0 51.4
広野町 1,559 493 33 33 1,152 1,679 29.3 2.0 68.6
双葉町 57 3 52 52 750 806 0.4 6.4 93.0
新地町 4,135 1,166 849 849 996 3,012 38.7 28.1 33.0
茨城県 高萩市 1,327 562 32 32 1,306 1,902 29.5 1.7 68.7
北茨城市 2,470 2,249 16 16 1,353 3,619 62.1 0.4 37.3
ひたちなか市 2,708 988 407 407 4,730 6,126 16.1 6.6 77.2
鹿嶋市 3,222 1,553 461 461 3,206 5,221 29.7 8.8 61.4
潮来市 4,049 1,597 125 125 3,016 4,740 33.7 2.6 63.6
神栖市 2,549 864 314 314 4,500 5,679 15.2 5.5 79.2
大洗町 461 392 214 214 425 1,032 37.9 20.7 41.2
東海村 850 521 478 478 1,534 2,534 20.5 18.8 60.5
栃木県 矢板市 188 151 614 614 346 1,112 13.6 55.2 31.1
千葉県 浦安市 3,386 535 69 69 7,123 7,729 6.9 0.8 92.1
香取市 4,354 913 52 52 3,008 3,974 22.9 1.3 75.7
山武市 103 102 16 16 425 544 18.9 3.0 78.0
計58市町村 577,849 286,283 192,646 192,287 211,919 690,490 41.4 27.8 30.6
注(1)  震災復興特別交付税の交付額は、交付決定額と同額となっている。
注(2)  震災復興特別交付税は、地方税法の特例措置による減収額に対する措置等を含んでいることから、震災復興特別交付税の交付額に占める割合(表のc/D)が、復旧・復興事業に係る地方負担割合を示すものではない。

 58市町村ごとの国庫補助金交付決定額では、宮城県石巻市の1278億余円が最も多く、次いで仙台市の530億余円となっている。その内訳についてみると、両市とも環境省所管の災害等廃棄物処理事業費補助金がそれぞれ1139億余円、420億余円と、がれきの処理費用や仮設焼却施設の建設費等がその大半を占めている。
 市町村別の国庫補助金等の合計額では、上記の国庫補助金交付決定額が多額となっている仙台市の1225億余円が最も多く、次いで石巻市の907億余円等となっていて、58市町村のうち16市町が100億円以上の交付額となっている。一方、国庫補助金等の合計額が10億円に満たない市町村は5市町あり、災害等廃棄物処理事業費や単独災害復旧事業費等として、青森県三沢市5億余円、同県三戸郡階上町4億余円等となっている。5市町のうち、全町民が避難し、埼玉県内に仮庁舎を設置している福島県双葉郡双葉町は8億余円となっており、同町では、地方税法の特例措置による減収額や地方税等の減免額等に対する震災復興特別交付税が交付額全体の93.0%を占めている。

イ 市町村における東日本大震災関係経費の執行状況

 国から市町村に交付される国庫補助金は、年度内に事業が完了しなかったものについては明許繰越等の手続により翌年度に繰り越され、年度内に完了したものについては実績報告に基づいて交付される。また、復興交付金は、前記のとおり、市町村が実施する復興事業に柔軟に対処するための資金として一括して交付され、市町村は、これを元に復興基金を設置造成し、事業の進捗に合わせてこの基金を取り崩して事業費に充てることとなる。
 58市町村の23年度の復旧・復興事業の執行状況については、国庫補助金の交付決定額に対する交付額及び復興基金の取崩し額により把握できることから、調査票により58市町村の上記の交付額及び取崩し額を検査した。なお、震災復興特別交付税は、補助事業等の地方負担額に加えて、地方税法の特例措置による減収額に対する措置や単独災害復旧事業費、中長期職員派遣、職員採用等を対象とした経費も含まれていることから、執行状況を示す率の算定からは除外した。
 その結果、表45 のとおり、出納整理期間を考慮した24年5月末現在の国庫補助金交付決定額に対する交付額の割合(以下「国庫補助金執行率」という。)は、58市町村平均で49.5%となっており、復興交付金交付額のうち23年度対象事業費に対する基金からの取崩し額の割合(以下「復興交付金執行率」という。)は、復興交付金事業を実施した25市町村平均で22.1%となっている。そして、国庫補助金執行率と復興交付金執行率とを合わせた市町村が実施する復旧・復興事業の執行率(以下「市町村事業執行率」という。)は48.8%となっている。
 市町村ごとの執行状況についてみると、国庫補助金執行率が3.9%から99.1%、復興交付金執行率が0%から100%、市町村事業執行率が5.6%から99.1%となっており、いずれも市町村によって大きな差が見受けられた。
 市町村事業執行率別の市町村数では、図15 のとおり、58市町村のうち8市町村が80%以上となっている一方、6市町が20%未満となっているなど、市町村によって大きな差が見受けられた。8市町村のうち宮城県東松島市の市町村事業執行率が94.9%と高くなっているのは、国庫補助事業である環境省所管の災害等廃棄物処理事業費の執行に当たり、過去の地震災害の際の経験を基に、災害廃棄物等を迅速に処理したり同事業に係る経費の積算を実施したりしたこと、また、補助金の交付申請に当たり、各種補助事業の執行状況等に基づき申請額の見直しを行ったことなどにより、国庫補助金執行率が99.1%に達していることによるものである。なお、58市町村のうち30市町村は、復興交付金の23年度対象事業がなかったり、基金からの取崩し額がゼロであったりしていて、このうち東北3県に所在する市町村が23市町村を占めている。

表45 58市町村別にみた国庫補助事業及び復興交付金事業の執行状況(平成23年度)

(単位:百万円、%)

県名 市町村名 国庫補助金(復興交付金を除く) 第1回復興交付金 市町村事業執行率
交付決定額 交付額 国庫補助金執行率 交付額 平成23年度対象事業費 基金からの取り崩し額 復興交付金執行率 (a+b)/(A+B)
(A) (a) (a/A)   (B) (b) (b/B)
青森県 八戸市 4,071 3,377 82.9 1,394 115 115 100.0 83.4
三沢市 272 235 86.3 0 22 単年度型 0.0 79.7
おいらせ町 689 330 47.9 0 22 単年度型 0.0 46.4
階上町 167 159 95.2 109 11 7 70.2 93.6
岩手県 宮古市 28,025 8,493 30.3 3,627 9 2 24.2 30.3
大船渡市 40,737 22,029 54.0 3,078 43 43 100.0 54.1
久慈市 3,374 1,105 32.7 960 23年度事業なし 32.7
一関市 4,328 1,818 42.0 0 168 単年度型 0.0 40.4
陸前高田市 26,510 1,036 3.9 4,709 495 495 100.0 5.6
釜石市 24,742 8,630 34.8 7,326 14 34.8
大槌町 7,483 5,267 70.3 3,441 173 173 100.0 71.0
山田町 9,016 5,012 55.5 254 4 4 89.8 55.6
岩泉町 1,737 315 18.1 1,228 110 17.0
田野畑村 3,314 993 29.9 4,235 76 29.2
普代村 1,833 1,512 82.4 720 23年度事業なし 82.4
野田村 2,793 593 21.2 2,263 175 175 100.0 25.8
洋野町 2,603 300 11.5 791 23年度事業なし 11.5
宮城県 仙台市 53,014 32,292 60.9 40,742 3,196 0 0.0 57.4
石巻市 127,880 60,005 46.9 11,676 842 5 0.6 46.6
塩竈市 5,663 475 8.3 5,134 181 8.1
気仙沼市 26,074 15,328 58.7 2,893 1,032 56.5
白石市 2,398 1,279 53.3 25 23年度事業なし 53.3
名取市 18,251 13,384 73.3 6,072 174 174 100.0 73.5
多賀城市 7,646 6,777 88.6 3,893 160 2 1.5 86.8
岩沼市 12,058 7,933 65.7 2,267 1,006 60.7
登米市 4,446 2,298 51.6 11 3 0 15.7 51.6
東松島市 23,568 23,367 99.1 6,438 1,047 94.9
大崎市 6,391 2,879 45.0 887 23年度事業なし 45.0
亘理町 3,520 1,105 31.4 9,519 154 2 1.8 30.1
山元町 16,233 6,992 43.0 4,529 559 475 84.9 44.4
松島町 2,289 526 22.9 860 9 22.8
七ヶ浜町 6,149 2,683 43.6 5,622 683 39.2
利府町 1,078 478 44.3 152 54 42.2
美里町 2,780 1,245 44.7 3 1 44.7
女川町 13,272 5,873 44.2 2,383 680 42.1
南三陸町 10,800 3,917 36.2 3,706 1 1 99.3 36.2
福島県 いわき市 15,011 9,292 61.9 11,847 722 59.0
須賀川市 4,622 3,527 76.3 24 24 24 100.0 76.4
相馬市 8,215 4,581 55.7 15,627 1,039 95 9.2 50.5
二本松市 1,439 634 44.0 22 22 43.3
南相馬市 8,622 4,422 51.2 19,611 958 958 100.0 56.1
鏡石町 1,998 1,053 52.7 15 15 15 100.0 53.0
西郷村 1,291 616 47.7 434 23年度事業なし 47.7
広野町 1,559 493 31.6 33 33 30.9
双葉町 57 3 6.6 52 23年度事業なし 6.6
新地町 4,135 1,166 28.2 849 148 27.2
茨城県 高萩市 1,327 562 42.3 32 23年度事業なし 42.3
北茨城市 2,470 2,249 91.0 16 23年度事業なし 91.0
ひたちなか市 2,708 988 36.4 407 22 36.1
鹿嶋市 3,222 1,553 48.2 461 173 107 62.1 48.9
潮来市 4,049 1,597 39.4 125 68 68 99.9 40.4
神栖市 2,549 864 33.8 314 296 296 100.0 40.7
大洗町 461 392 84.9 214 13 13 100.0 85.4
東海村 850 521 61.3 478 23年度事業なし 61.3
栃木県 矢板市 188 151 80.6 614 22 72.0
千葉県 浦安市 3,386 535 15.8 69 22 22 100.0 16.3
香取市 4,354 913 20.9 52 23年度事業なし 20.9
山武市 103 102 99.1 16 23年度事業なし 99.1
計58市町村 577,849 286,283 49.5 192,287 14,815 3,282 22.1 48.8

図15 市町村事業執行率等別の市町村数の状況(平成23年度)

図15市町村事業執行率等別の市町村数の状況(平成23年度)

 市町村ごとの執行状況については、各市町村の被害の状況や、2(4)ウ において後述するように、財政規模に対する復旧・復興事業の規模等により差異が生じていると認められ、特に、多額の国庫補助金が交付されている岩手県及び宮城県では、被害の甚大さなどから災害復旧事業等の国庫補助事業を優先的に実施している状況がうかがわれ、復興交付金事業の着手は今後本格化するものと考えられる。
 また、国庫補助金執行率に比べて、復興交付金執行率が低くなっているのは、〔1〕 市町村からの復興交付金事業計画の提出等に基づき復興庁から復興交付金の第1回配布可能額が通知されたのが24年3月2日であり、市町村は、これを受けて復興交付金の交付申請手続及び関係各省庁との調整を実施するなどしたため、同交付金が交付されたのが同年3月下旬となったこと、〔2〕 復興交付金事業の実施に当たり住民の合意形成や用地の確保等に一定の時間を要していること、〔3〕 これらの業務に従事する職員が不足していることなどが原因と考えられる。
 58市町村が23年度に実施した復旧・復興事業についてみると、国庫補助金では、主として道路、河川、港湾、農地、学校、消防等の各種施設等に対する災害復旧事業のほか、被災を受けた建物等の解体・撤去や仮設焼却施設の建設等を含む災害等廃棄物の処理事業等が実施されている。
 また、復興交付金では、183件の事業に対して23年度の対象事業費は計148億余円となっている。復興交付金による復興事業は、前記のとおり5省40事業を対象としていることから、183件の事業を所管省別にみると、厚生労働省と環境省は23年度には該当がなく、文部科学省は9件、復興交付金交付額2891万余円、農林水産省は6件、同1億余円となっており、国土交通省の168件、同146億余円が大多数を占めている。また、各省別の主な事業についてみると、文部科学省の埋蔵文化財発掘調査事業(8事業、復興交付金交付額2537万余円)、農林水産省の木質バイオマス施設等緊急整備事業(2事業、同1億余円)、国土交通省の災害公営住宅整備事業(46事業、同53億余円)、都市再生区画整理事業(28事業、同32億余円)、防災集団移転促進事業(33事業、同16億余円)等となっている。

ウ 市町村の財政規模に対する復旧・復興事業の規模

 58市町村は、東北地方太平洋沖地震により発生した強い揺れや津波により甚大な被害を受け、その復旧・復興事業は多岐にわたり、事業費も多額に上っていること、また、被害の状況が津波や原子力災害等で異なっていることから、復旧・復興事業の規模等に着目して58市町村の震災前の5か年度(18年度から22年度まで)の一般会計における平均歳出決算額と、調査票により把握した23年度の国庫補助金交付決定額、23年度の事業に係る復興交付金の交付額及び震災復興特別交付税の交付額の合計額(以下「復興交付金等合計額」という。)とを比較した。
 その結果、図16 のとおり、復興交付金等合計額が、平均歳出決算額の100%を超える規模となっている計17市町村は全て東北3県に所在しており、このうち200%を超えている市町村は、宮城県亘理郡山元町等5市町見受けられ、岩手県及び宮城県に集中している。

図16 歳出決算額に対する復興交付金等合計額の割合別市町村数

図16歳出決算額に対する復興交付金等合計額の割合別市町村数

 また、一般に復旧・復興事業は公共事業に分類され、各市町村の予算においても普通建設事業費及び災害復旧事業費に区分されていることから、58市町村の普通建設事業費及び災害復旧事業費の合計額(以下「市町村公共事業費」という。)の震災前の5か年度の平均額と、23年度の事業に係る国庫補助金交付決定額及び復興交付金交付額の合計額(以下「公共事業関係交付金等合計額」という。)とを比較したところ、図17 のとおり、100%を超える市町村が37市町村あり、このうち東北3県に所在する市町村が33市町村と大半を占めており、1000%を超えている計10市町村は全て東北3県となっており、甚大な被害を受けた多くの市町村が震災前と比較して多額の復旧・復興事業を執行している状況となっている。

図17 市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合別市町村数

図17市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合別市町村数

 歳出決算額等を大きく超える復旧・復興事業を実施することとなった市町村の執行状況についてみると、市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合が200%を超えている26市町村の平均市町村事業執行率は47.6%となっていて、200%未満となっている32市町村の平均市町村事業執行率52.5%に比べて低くなっているものの著しい差は見受けられない。
 しかし、各市町村についてみると、表46 のとおり、津波により甚大な被害を受けた岩手県及び宮城県では、岩手県陸前高田市(市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合1320.6%)の市町村事業執行率5.6%、宮城県塩竈市(同302.4%)の同8.1%など、通常の公共事業費を大幅に上回る多額の復旧・復興事業の執行を余儀なくされている市町村の状況がうかがわれる。

表46 震災前の歳出決算額等と58市町村に対する平成23年度復旧・復興事業との比較

(単位:百万円、%)

県名 市町村名 震災前5か年度(平成18年度から22年度まで)平均額 復興交付金等合計額のうち23年度実施分 23年度公共事業関係交付金等合計額のうち23年度実施分 震災前5か年度平均の歳出決算額に対するaの割合 震災前5か年度平均の市町村公共事業費に対するbの割合 市町村事業執行率
(再掲)
歳出決算額 市町村公共事業費(普通建設事業費及び災害復旧事業費の合計)
(A) (B) (a) (b) (a/A) (b/B)
青森県 八戸市 87,459 9,524 8,025 4,187 9.1 43.9 83.4
三沢市 20,092 4,343 581 294 2.8 6.7 79.7
おいらせ町 9,786 1,664 994 712 10.1 42.7 46.4
階上町 5,325 735 357 179 6.7 24.3 93.6
岩手県 宮古市 29,080 5,079 32,393 28,035 111.3 551.9 30.3
大船渡市 18,009 3,357 46,561 40,780 258.5 1,214.6 54.1
久慈市 19,474 3,443 5,503 3,374 28.2 97.9 32.7
一関市 62,563 11,251 7,390 4,496 11.8 39.9 40.4
陸前高田市 10,938 2,044 30,960 27,005 283.0 1,320.6 5.6
釜石市 17,664 1,922 29,651 24,757 167.8 1,287.9 34.8
大槌町 5,621 656 10,071 7,657 179.1 1,166.8 71.0
山田町 6,971 862 11,085 9,020 159.0 1,046.1 55.6
岩泉町 8,492 1,792 2,360 1,848 27.8 103.0 17.0
田野畑村 3,797 954 4,056 3,390 106.8 355.4 29.2
普代村 2,650 553 2,334 1,833 88.0 331.3 82.4
野田村 3,013 643 3,863 2,968 128.2 461.0 25.8
洋野町 10,382 1,833 3,124 2,603 30.0 141.9 11.5
宮城県 仙台市 403,856 57,106 105,691 56,211 26.1 98.4 57.4
石巻市 60,360 5,512 147,803 128,723 244.8 2,335.3 46.6
塩竈市 20,092 1,932 8,393 5,845 41.7 302.4 8.1
気仙沼市 26,821 2,865 33,256 27,106 123.9 946.1 56.5
白石市 14,320 1,418 3,617 2,398 25.2 169.1 53.3
名取市 23,249 3,385 22,345 18,426 96.1 544.2 73.5
多賀城市 18,485 2,497 11,303 7,806 61.1 312.6 86.8
岩沼市 13,540 1,789 16,093 13,065 118.8 730.2 60.7
登米市 41,689 6,752 7,595 4,449 18.2 65.8 51.6
東松島市 15,302 2,418 29,338 24,616 191.7 1,017.7 94.9
大崎市 52,680 5,472 10,879 6,391 20.6 116.7 45.0
亘理町 9,236 1,057 5,862 3,675 63.4 347.3 30.1
山元町 5,281 591 18,888 16,792 357.6 2,837.3 44.4
松島町 5,479 497 2,814 2,298 51.3 462.2 22.8
七ヶ浜町 5,371 379 8,521 6,833 158.6 1,798.6 39.2
利府町 8,640 1,264 1,964 1,132 22.7 89.5 42.2
美里町 10,001 1,456 3,988 2,781 39.8 190.9 44.7
女川町 6,520 1,131 15,521 13,952 238.0 1,233.5 42.1
南三陸町 8,159 1,362 12,483 10,801 152.9 792.8 36.2
福島県 いわき市 122,843 16,336 27,760 15,734 22.5 96.3 59.0
須賀川市 26,589 3,685 7,635 4,647 28.7 126.0 76.4
相馬市 14,014 1,938 10,853 9,254 77.4 477.4 50.5
二本松市 25,516 4,506 2,887 1,462 11.3 32.4 43.3
南相馬市 29,702 5,086 18,462 9,580 62.1 188.3 56.1
鏡石町 4,304 616 2,794 2,013 64.9 326.7 53.0
西郷村 8,038 1,686 2,405 1,291 29.9 76.5 47.7
広野町 3,815 1,008 2,746 1,593 71.9 158.0 30.9
双葉町 5,469 820 807 57 14.7 6.9 6.6
新地町 4,037 515 5,280 4,283 130.8 830.3 27.2
茨城県 高萩市 13,516 1,519 2,634 1,327 19.4 87.3 42.3
北茨城市 15,014 1,299 3,823 2,470 25.4 190.0 91.0
ひたちなか市 44,613 6,209 7,461 2,731 16.7 43.9 36.1
鹿嶋市 21,854 3,065 6,601 3,395 30.2 110.7 48.9
潮来市 10,988 1,250 7,134 4,117 64.9 329.2 40.4
神栖市 35,020 4,115 7,346 2,845 20.9 69.1 40.7
大洗町 7,419 924 900 474 12.1 51.3 85.4
東海村 17,690 2,698 2,384 850 13.4 31.5 61.3
栃木県 矢板市 12,201 1,921 557 210 4.5 10.9 72.0
千葉県 浦安市 56,421 8,811 10,532 3,408 18.6 38.6 16.3
香取市 27,727 3,093 7,363 4,354 26.5 140.7 20.9
山武市 20,695 2,484 529 103 2.5 4.1 99.1
計58市町村 1,597,908 223,151 804,584 592,664 50.3 265.5 48.8
(注)
 歳出決算額及び市町村公共事業費は、総務省「市町村別決算状況調」より算出した。

エ 市町村における復旧・復興事業の実施体制

 58市町村の復旧・復興事業の実施体制について、震災前の22年度と震災後の24年度の一般行政職員及び土木部門職員の職員数を比較すると、一般行政職員は58市町村のうち28市町村で増加し、土木部門職員は36市町村で増加している。また、職員数の合計では、一般行政職員は、22,099人から135人減少して21,964人となっているが、土木部門職員は、2,968人から208人増加して3,176人となっている。
 そして、前記のとおり、復興交付金等合計額が、歳出決算額や市町村公共事業費を上回っている市町村があることから、一般行政職員については、震災前の22年度の歳出決算額と23年度の復興交付金等合計額を、土木部門職員について、22年度の市町村公共事業費と23年度の公共事業関係交付金等合計額を、それぞれ職員1人当たりの金額を求めて比較することにより、予算執行に係る事務負担の変化をみることとした。
 その結果、一般行政職員1人当たりの歳出決算額に対する復興交付金等合計額の割合別の市町村数についてみると、図18 及び表47 のとおり、宮城県牡鹿郡女川町の425.8%など100%を超える規模となっている計17市町村は全て東北3県に所在している。また、土木部門職員1人当たりの市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合別の市町村数についてみると、図19 及び表47 のとおり、100%を超えている市町村が38市町村あり、このうち200%を超える規模となっている計27市町のうち、東北3県に所在する市町が25市町と大半を占めており、岩手県釜石市の1980.5%など1000%を超えている市町村も6市町見受けられた。

図18 一般行政職員1人当たりの歳出決算額に対する復興交付金等合計額の割合別市町村数

図18一般行政職員1人当たりの歳出決算額に対する復興交付金等合計額の割合別市町村数

図19 土木部門職員1人当たりの市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合別市町村数

図19土木部門職員1人当たりの市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合別市町村数

 そして、公共事業関係交付金等合計額が多額に上っている市町村では、事業の実施に当たり大きな負担が生じていることなどから、土木部門職員1人当たりの公共事業関係交付金等合計額と市町村事業執行率との関係についてみると、土木部門職員1人当たりの市町村公共事業費に対する公共事業関係交付金等合計額の割合が1980.5%となっている岩手県釜石市が市町村事業執行率34.8%、同1562.2%となっている宮城県石巻市が同46.6%、同966.1%となっている福島県相馬郡新地町が同27.2%などと、市町村事業執行率が低くなっている市町村が多く見受けられた。
 このように、職員1人当たりの復興交付金等合計額等の規模は、市町村によっては通常の職員1人当たりの歳出規模を大幅に上回っており、特に、社会基盤施設の整備等に充てられる公共事業関係交付金等合計額の規模が、市町村が通常執行する公共事業費に対して、集中復興期間に相当する5か年度分を上回っているような市町村については、当該市町村において復旧・復興事業の実施に当たる土木部門職員に大きな事務負担が生じていると考えられる。

表47 58市町村の職員数と職員1人当たりの復興交付金等合計額及び公共事業関係交付金等合計額

(単位:人、千円、%)

県名 市町村名 一般行政職員数 22年度一般行政職員1人当たり歳出決算額 24年度一般行政職員1人当たりの23年度復興交付金等合計額 震災前の一般行政職員1人当たりの歳出額に対する左の割合 土木部門職員数 22年度土木部門職員1人当たり市町村公共事業費 24年度土木部門職員1人当たりの23年度公共事業関係交付金等合計額 震災前の土木部門職員1人当たりの市町村公共事業費に対する左の割合
平成22年4月1日現在 24年4月1日現在 (A) (a) (a/A) 22年4月1日現在 24年4月1日現在 (B) (b) (b/B)
青森県 八戸市 972 968 94,751 8,291 8.7 190 193 66,086 21,697 32.8
三沢市 266 266 73,727 2,184 2.9 40 36 66,324 8,188 12.3
おいらせ町 120 117 86,310 8,502 9.8 10 10 210,542 71,223 33.8
階上町 68 70 79,874 5,110 6.3 6 7 91,039 25,572 28.0
岩手県 宮古市 481 466 61,357 69,512 113.2 58 63 85,151 445,010 522.6
大船渡市 269 259 67,386 179,775 266.7 43 55 60,954 741,466 1,216.4
久慈市 271 271 71,905 20,308 28.2 35 37 80,125 91,189 113.8
一関市 845 789 77,920 9,366 12.0 99 104 116,974 43,233 36.9
陸前高田市 185 162 62,910 191,114 303.7 21 24 120,836 1,125,231 931.2
釜石市 298 302 56,972 98,182 172.3 43 39 32,052 634,806 1,980.5
大槌町 85 90 68,144 111,901 164.2 7 8 126,010 957,130 759.5
山田町 129 135 55,175 82,116 148.8 15 13 56,390 693,888 1,230.5
岩泉町 132 135 76,772 17,488 22.7 11 13 297,436 142,161 47.7
田野畑村 48 49 84,322 82,781 98.1 3 5 399,180 678,181 169.8
普代村 44 45 73,236 51,867 70.8 3 4 333,585 458,376 137.4
野田村 40 43 88,707 89,854 101.2 2 6 521,607 494,801 94.8
洋野町 175 183 65,065 17,074 26.2 14 16 171,320 162,709 94.9
宮城県 仙台市 4,141 4,319 96,447 24,471 25.3 756 825 57,132 68,135 119.2
石巻市 1,033 1,133 64,537 130,453 202.1 108 116 71,030 1,109,683 1,562.2
塩竈市 303 313 71,259 26,816 37.6 43 56 49,808 104,376 209.5
気仙沼市 548 515 51,256 64,576 125.9 66 75 51,321 361,422 704.2
白石市 264 270 54,718 13,396 24.4 22 23 44,778 104,282 232.8
名取市 318 341 73,361 65,530 89.3 44 44 69,190 418,775 605.2
多賀城市 317 312 61,288 36,230 59.1 42 49 62,620 159,325 254.4
岩沼市 217 216 69,651 74,505 106.9 30 34 114,413 384,286 335.8
登米市 705 636 59,907 11,942 19.9 71 65 65,107 68,457 105.1
東松島市 260 264 58,959 111,132 188.4 21 34 96,245 724,017 752.2
大崎市 765 707 72,043 15,388 21.3 91 90 47,776 71,012 148.6
亘理町 197 214 49,962 27,392 54.8 18 28 53,851 131,258 243.7
山元町 118 125 46,489 151,110 325.0 12 21 53,117 799,666 1,505.4
松島町 106 110 53,392 25,585 47.9 8 10 48,810 229,892 470.9
七ヶ浜町 115 116 47,546 73,462 154.5 8 17 35,978 401,954 1,117.2
利府町 164 168 57,112 11,692 20.4 21 24 69,846 47,170 67.5
美里町 137 143 82,672 27,893 33.7 10 9 151,072 309,072 204.5
女川町 116 72 50,629 215,583 425.8 7 19 100,254 734,324 732.4
南三陸町 177 153 46,195 81,590 176.6 10 20 135,042 540,069 399.9
福島県 いわき市 1,695 1,640 72,169 16,927 23.4 192 183 45,983 85,978 186.9
須賀川市 399 395 72,392 19,330 26.7 51 52 73,905 89,365 120.9
相馬市 200 201 74,606 53,999 72.3 27 33 101,241 280,454 277.0
二本松市 387 375 69,012 7,698 11.1 61 58 78,642 25,214 32.0
南相馬市 418 399 66,372 46,271 69.7 62 69 51,678 138,851 268.6
鏡石町 67 70 68,340 39,922 58.4 9 9 63,651 223,745 351.5
西郷村 105 109 72,519 22,067 30.4 12 12 146,515 107,585 73.4
広野町 61 42 57,886 65,386 112.9 7 8 128,556 199,203 154.9
双葉町 70 64 79,132 12,616 15.9 6 3 135,114 19,105 14.1
新地町 97 109 46,095 48,448 105.1 12 6 73,899 713,995 966.1
茨城県 高萩市 167 172 105,549 15,317 14.5 23 24 92,576 55,316 59.7
北茨城市 233 221 67,529 17,301 25.6 27 23 47,333 107,397 226.8
ひたちなか市 579 572 85,887 13,044 15.1 118 118 78,298 23,144 29.5
鹿嶋市 300 300 76,161 22,006 28.8 38 32 94,750 106,115 111.9
潮来市 188 170 63,238 41,968 66.3 24 23 66,957 179,043 267.4
神栖市 466 436 76,916 16,849 21.9 57 60 76,091 47,427 62.3
大洗町 122 118 67,629 7,629 11.2 10 10 138,158 47,485 34.3
東海村 255 269 67,134 8,864 13.2 29 29 73,822 29,321 39.7
栃木県 矢板市 179 178 67,519 3,130 4.6 21 21 78,550 10,043 12.7
千葉県 浦安市 791 798 77,810 13,198 16.9 103 119 105,312 28,645 27.2
香取市 549 508 52,814 14,495 27.4 62 62 68,921 70,236 101.9
山武市 342 341 65,971 1,551 2.3 29 30 129,763 3,460 2.6
計58市町村 22,099 21,964 74,519 36,631 49.1 2,968 3,176 71,987 186,607 259.2
(注)
 各職員数は総務省「地方公共団体定員管理調査」により、一般行政職員1人当たり歳出決算額及び土木部門職員1人当たり公共事業関係交付金等合計額は同調査及び総務省「市町村別決算状況調」により、それぞれ算出した。

 人的支援については、復興基本方針では、被災した市町村の復興計画の円滑な策定を支援するため、被災市町村の要請に応じて、関係府省が連携して現地の状況を把握して復興手法等の整理を行い被災市町村に提供することとされており、職員の派遣についても支援することとされている。このため、総務省は、被災直後から都道府県知事等に対して被災市町村への人的支援に関する通知を発出したり、国土交通省は、被災市町村が実施する土地区画整理事業、防災集団移転促進事業等に係る職員を派遣したりなどする体制を整備している。
 58市町村に対する人的支援の状況は、表48 のとおり、24年4月2日現在において58市町村のうち40市町村が、国の機関、都道府県、市区町村等から799人の職員の派遣(短期間の派遣を除く。)による人的支援を受けている。
 市町村別の支援の受入れ状況についてみると、宮城県内の19市町村のうち17市町村では、計430人の派遣職員を受け入れているほか、岩手県内及び福島県内の23市町村のうち11市町村では、派遣職員の受入れが10人以上となっている。58市町村に職員等を派遣している派遣元団体は、派遣元団体延べ365か所のうち市又は東京都特別区の延べ271か所が最も多く、次いで町村の延べ43か所、都道府県の延べ31か所となっている。これらの派遣元団体の中には、自らが被災市町村であるにもかかわらず、職員を派遣している団体も見受けられた。
 また、58市町村のうち42市町村では、復興事業に要する人員の不足を補うなどのために計2,088人の職員を臨時に任用している。

表48 58市町村に対する人的支援の状況(平成24年4月2日現在)
県名 市町村名 派遣職員数(人) 派遣元団体の内訳(箇所) 臨時採用等(人)
国の機関 都道府県 市区 町村 独立行政法人等その他団体
青森県 八戸市 0 0 0 0 0 0 0
三沢市 0 0 0 0 0 0 0
おいらせ町 0 0 0 0 0 0 1
階上町 0 0 0 0 0 0 0
岩手県 宮古市 23 0 1 12 1 0 10
大船渡市 38 0 2 15 1 2 88
久慈市 1 0 0 1 0 0 87
一関市 3 0 0 2 0 0 0
陸前高田市 58 0 3 11 1 0 0
釜石市 39 2 0 13 3 2 80
大槌町 43 0 2 22 4 0 3
山田町 24 1 1 1 0 0 6
岩泉町 2 0 0 1 0 0
田野畑村 3 0 0 1 1 0 12
普代村 0 0 0 0 0 0 1
野田村 12 0 0 3 0 0 1
洋野町 0 0 0 0 0 0 0
宮城県 仙台市 74 1 1 25 1 0 241
石巻市 58 3
塩竈市 12 0 0 10 1 0 91
気仙沼市 47 0 1 4 0 0 34
白石市 0 0 0 0 0 0 135
名取市 19 0 1 11 1 0 74
多賀城市 28 0 2 19 2 0 48
岩沼市 14 19
登米市 2 1 1 0 0 0 30
東松島市 41 0 5 20 2 0 83
大崎市 3 0 0 2 0 0 18
亘理町 19 0 2 6 1 0 65
山元町 44 0 2 14 12 0 13
松島町 6 0 0 4 2 0 9
七ヶ浜町 5 0 0 4 0 0 24
利府町 2 0 0 1 1 0 29
美里町 0 0 0 0 0 0 6
女川町 14 0 1 6 1 0 32
南三陸町 42 0 2 17 6 0 49
福島県 いわき市 33 0 0 21 0 0 139
須賀川市 0 0 0 0 0 0 0
相馬市 14 0 0 11 0 0 43
二本松市 2 0 0 0 0 1 87
南相馬市 36 431
鏡石町 1 0 0 1 0 0 1
西郷村 0 0 0 0 0 0 6
広野町 14 4 1 4 0 1
双葉町 7 2 0 2 1 0 42
新地町 9 1 2 3 1 1 10
茨城県 高萩市 0 0 0 0 0 0 4
北茨城市 1 0 1 0 0 0 7
ひたちなか市 1 0 0 1 0 0 0
鹿嶋市 0 0 0 0 0 0 19
潮来市 0 0 0 0 0 0 0
神栖市 0 0 0 0 0 0 1
大洗町 1 1 0 0 0 0 0
東海村 0 0 0 0 0 0 6
栃木県 矢板市 0 0 0 0 0 0 0
千葉県 浦安市
香取市 4 0 0 3 0 0 0
山武市 0 0 0 0 0 0 0
799 13 31 271 43 7 2,088
(注)
 各欄の「-」は、アンケートにおいて当該項目の回答がなかったものである。

 会計検査院は、各市町村の復旧・復興事業の実施体制に係る現状や要望等について、率直な意見を求めるため、記述する事項を限定しないアンケートを実施した。その結果、58市町村からは、職員の不足やその方策等に関する様々な意見や要望があった。
 アンケートによれば、被災市町村が懸念する主な事項や課題として、今後も引き続き復興事業の増加が見込まれ、これらの事業の中にはノウハウがないものや専門性が高く、臨時職員等には任せられないものがあるため、経験豊富な建築技師、土木技師等の専門職員が必要になっていること、震災以降の時間の経過とともに復旧・復興事業に加えて住民等から通常業務の円滑化を求められるようになっており、業務量の増加への対応が必要になっていることなどが意見として出されている。
 また、他団体からの派遣については、今回の震災が、全国の地方公共団体において職員を削減してきた中で生じたものであるため、他団体からの職員の派遣を過度に期待することができないこと、派遣職員が短期間で入れ替わるため復興事業の実施においては非効率な状況にあること、復興計画期間に応じて長期間にわたって職員を派遣するのは派遣元団体の負担が大きく、後年度になるほど人員の確保が難しくなることなどの課題があるとする意見もあった。
 これらの課題に対処する方策については、中長期的な職員の派遣が持続可能となるよう被災団体と全国の自治体を結ぶネットワークの構築を図ること、国が職員の派遣に係る主導的な役割を担いその費用に関する財政措置を行うこと、多大な時間を要する各種事務・事業の手続等が復興事業の実施の妨げとなっていることから国や都道府県等による事務の改善や簡素化に向けた取組を行うことなどを望む意見があった。
 また、人的支援の方法として、派遣元団体が当該支援に係る事務局を設置して、被災地の状況を把握し、復興事業の進捗に合わせて必要な職員を適切な時期に派遣する方法を検討している例もあり、国に対してこのような支援に関する体制整備を望む意見もあった。
 このように、第1回復興交付金事業計画に基づく復興交付金交付可能額の通知を受けた58市町村の23年度の復旧・復興事業に係る国庫補助金や復興交付金等の実施状況について検査したところ、交付状況については、国庫補助金、復興交付金及び震災復興特別交付税の合計9824億余円が、58市町村に対して交付決定又は交付可能額として通知されており、このうち23年度に計6904億余円が交付されている。国庫補助金、復興交付金及び震災復興特別交付税のうち、国庫補助金が最も多く交付されているが、地域により、復興交付金交付可能額が国庫補助金交付額を上回っていたり、震災復興特別交付税が大きな割合を占めていたりなどしている特徴が見受けられた。
 執行状況については、58市町村平均の国庫補助金執行率は49.5%、復興交付金執行率は22.1%、市町村事業執行率は48.8%となっている。また、市町村事業執行率は最小で5.6%、最大で99.1%と大きな差があり、比較的低調な市町村の数が多くなっている状況や被害状況に応じた地域性が見受けられた。
 58市町村に対する復興交付金等合計額等を復旧・復興事業の規模として、震災前の歳出決算額等と比較してみると、復興交付金等合計額等が震災前の歳出決算額等の複数年分に相当している市町村も見受けられ、また、職員1人当たりの復興交付金等合計額等からみて、これらの市町村における復旧・復興事業の実施に当たる職員の事務負担が増加している。現に、一部の市町村は、復興事業の増加に伴う各種業務に対応するための人的支援や体制整備等を要望している。
 このような状況から、国は、市町村における復旧・復興事業の実施状況や実施体制を適切に把握するとともに、事業の進捗が遅れているものについては、その原因を検証して、必要な支援に努めることが望まれる。

(5) 原子力災害からの復興再生

ア 原子力災害からの復興再生に向けた国の取組

 東日本大震災は、被害が甚大で、被災地域が広範にわたるなど極めて大規模なものであるとともに、地震、津波及び原子力発電所の事故による複合的な災害である。このうち原子力災害は、福島県内の被害が特に大きく、地震や津波による災害に加えて、福島県の復興を困難にしている。
 前記のとおり、福島復興再生特別措置法に基づく福島復興再生基本方針は、原子力災害からの福島復興再生協議会における協議等を経て、24年7月13日に閣議決定された。福島復興再生基本方針は、原子力災害からの福島の復興及び再生を国政の最重要課題と位置付け、原子力災害からの福島の復興及び再生の目標として、「自主避難者を含む避難を余儀なくされた者の支援やふるさとへの帰還に向けた条件整備はもとより、原子力災害からの福島の復興及び再生のための本方針に定める各種の取組を総合的・計画的に、かつ、責任を持って継続的に講ずる。」としている。そして、「その際、福島の地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、福島県の復興ビジョン・復興計画や県内市町村の各種の復興計画等を十分踏まえ、それらに盛り込まれた取組と的確に連携」することとしている。
 そこで、福島県の復興計画である「福島県復興計画(第1次)」の主要施策の一つである「原子力災害の克服」における具体的な取組は、国が決定した福島復興再生基本方針においてどのように記述されているか、国の関与はどのようなものとされているかについてみると、表49 のとおり、福島復興再生基本方針の記述は、福島県復興計画の主要施策である「原子力災害の克服」に記述されている具体的な取組に対応した記述となっている。今後、国、福島県及び関係市町村等は、福島復興再生基本方針及び福島県復興計画に掲げられた施策に沿って具体化された各種の事業を進めていくことにより、福島の復興再生の実現を推進することになっている。

表49 福島県復興計画(第1次)の主要施策である「原子力災害の克服」の具体的な取組別に分類した福島復興再生基本方針の主な記述内容
福島県復興計画(第1次) 福島復興再生基本方針
〔1〕 全県におけるモニタリングの充実・強化
◇モニタリングの強化
◇モニタリング結果の一元的解析・評価と県民への分かりやすい情報発信
・原子力発電所の事故に伴う放射線の影響の現状把握及び原子力発電所周辺の詳細な放射性物質の分布状況についての調査研究
・市町村が実施する個人線量計の配付・貸出及びサーベイメーターの整備
・モニタリングポスト等の整備による空間線量測定体制の構築、空間線量測定や生活環境の様々な分野(大気、河川、地下水、海域、土壌、森林など)の放射性物質濃度測定の継続的な実施、公表
・飲料水の放射能濃度測定
〔2〕 身近な生活空間における徹底した除染の実施
◇身近な生活空間における放射線量低減対策
◇放射性物質に汚染された災害廃棄物や下水汚泥等の早急な処理、処分先の確保
・福島の住民の雇用や資機材の福島における調達に配慮しつつ、除染等を迅速かつ確実に実施
・除染技術の開発、新しい除染関連技術が評価され実際に活用されやすい仕組みづくり
・学校、児童施設、児童福祉施設、通学路及びその側溝、公園等の除染、ガイドラインの周知
・除染特別地域にある学校等の除染及び除染特別地域以外の地域にある学校等の除染の促進
・子どもの心身の健康確保のための屋外体験活動や子ども達の交流の推進
・学校や児童福祉施設等における空調・エアコン等の設備の設置等
・国が前面に立ったリスクコミュニケーションの推進及び必要な普及啓発活動の実施
・自治会等が行う簡易な除染を支援
・災害廃棄物や放射性物質に汚染された下水汚泥、農業集落排水汚泥、復興・復旧工事等の廃棄物の適正な処理等について福島県及び県内市町村と連携
・除染の際に生じた廃棄物の循環的な利用及び適正な処分
・仮置場の確保や中間貯蔵施設の在り方について福島県及び県内市町村と協議
〔3〕 全県における環境の回復
◇環境浄化のための、国内外の英知を結集した調査研究・技術開発・実証実験、国際的な研究拠点の整備
◇研究成果や実証事例などの情報の国内外への発信
◇農地等における除染の推進
◇森林等の除染の推進
◇その他の大気、水、土壌の環境浄化
・福島県が設置する福島県環境創造センター(仮称)の運営等のサポート及び福島県農林水産再生研究センター(仮称)の整備に向けた構想の策定と具体化、その推進をサポート
・林業機械を活用した安全で効率的な除染手法等の技術開発
〔4〕 全ての県民の健康の保持・増進
◇長期間にわたる県民健康管理調査を通した健康の保持・増進
◇食品の安全確保
◇疾病予防・早期発見・早期治療による保健医療先進県の創造
◇県立医科大学での放射線医学に関する研究や診療機能の強化、放射線健康障害の早期診断・最先端治療拠点の創設
◇国際的な保健医療機関の誘致
・福島県が実施する県民健康管理調査への支援
・市町村が実施する住民の被ばく放射線量の検査に必要な検査機器の整備や専門家の確保
・放射線の健康に与える影響に関する住民説明会等の実施
・放射線に対し住民が抱えている不安の解消に向けた取組を行う拠点の整備等
・農林水産物・食品の放射性物質の測定の体制整備、検査及び安全管理のガイドラインの策定、検査結果の公表及び新たな安全管理システムの導入
・放射線の基準や健康影響等に関する正しい知識の普及・啓発等
・学校や保育所等の給食における提供前の検査体制の整備
・住民が持ち込んだ食品等の放射性物質検査体制の整備(検査機器の貸与等)
・子ども医療体制の充実(小児医療体制)
・福島県立医科大学を中核的実施機関として、県民健康管理調査本部・データセンター等を整備
・県外流出等により不足している医療従事者の県内外からの派遣及び確保
・福島県立医科大学が行う放射線の人体への影響等に関する調査研究の技術的支援等の放射線安全研究や緊急被ばく医療体制の強化
・国際研究機関とも連携した疫学的な研究及び最先端の調査研究結果の提供等
〔5〕 原子力災害を克服する産業づくり
◇農林水産物、工業製品等の放射能・放射線量測定及び情報の迅速・的確な公表
◇放射能や食の安全に関する知識の普及
◇放射性物質の農産物への吸収抑制のための研究等
◇放射性物質の除去や処理技術に関する技術開発及び産業化の推進
◇放射線医学推進と関連させた医療機器の開発及び産業化
・農林水産物の放射性物質の検査結果の情報開示、工業製品の残留放射線量の測定の推進、福島ブランドの再生等の施策の総合的な実施
・放射線医学・最先端診断や医薬品等の開発拠点整備、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の開発実証事業、医療機器・ロボット等の開発実証事業等の医療関係産業の集積・振興
〔6〕 原子力に係る機関の誘致及び整備
◇原子力に関する国際的研究機関や監視機関の誘致、廃炉基準などの安全管理や放射線に関する高度技術の開発促進
・国際会議の誘致や国際原子力機関(IAEA)等の関連国際機関の機能の誘致
〔7〕 原子力発電所事故に関連する情報開示
◇国及び原子力発電事業者に対する事故に関連する即時的で透明性の高い情報開示の要求、市町村、県の間での災害時における迅速な情報伝達等の対策
◇国及び原子力発電事業者が示した工程の実施状況に対する監視
・「東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」に基づき、国及び東京電力株式会社が密接に連携して、廃止措置等に向けた中長期の取組を引き続き着実に推進、取組状況について迅速かつ分かりやすく公表
・事故を起こした原子炉及び長期間停止する原子炉の事故想定等の明確化及び緊急時の適切な防護措置、資機材の整備方針等に関し、福島県の実情を踏まえ、防災指針を策定
〔8〕 原子力発電事業者及び国の責任による、原子力災害の全損害に対する賠償・補償に向けた取組
◇県民、事業者への原子力損害賠償の円滑な推進
・原子力災害の被害者に対する東京電力株式会社による迅速、公平かつ適正な賠償の促進、賠償問題の一刻も早い解決

イ 福島県内の市町村の復興施策

 2(3)ア(イ) における市町村の復興計画の分析について、福島県内の市町村の復興計画の特徴を分析するため、福島県内の市町村及び原子力災害の影響が特に大きい福島県浜通り地域と、福島県以外の県の市町村の記述内容を比較すると、表50 のとおり、福島県内の市町村では、福島県以外の県の市町村と大きく異なり、「6原子力災害からの復興」に関する各種の施策を掲げた市町村が多く、とりわけ、放射線のモニタリング及び住民等への情報提供等の施策について記述した「6〔1〕 応急対策、各種支援、情報提供等」、放射線の影響に係る安全対策・健康管理対策等の施策について記述した「6〔2〕 安全対策・健康管理対策等」及び除染、健康への影響等に関する情報提供、住民とのコミュニケーション活動等の施策について記述した「6〔4〕 放射性物質の除去等」については、復興計画を策定した福島県内の全ての市町村が盛り込んでいた。このように、これらの施策は福島県内の市町村にとって必須のものとなっている。
 また、医療関連産業の集積及び先進的な医療機関の整備等の施策について記述した「6〔5〕 医療産業の拠点整備」、再生可能エネルギーの研究拠点の整備及び関連産業の集積等の施策について記述した「6〔6〕 再生可能エネルギーの拠点整備」及び「6〔7〕 政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進」に関連する施策を予定している市町村も福島県浜通り地域で見受けられた。
 さらに、「5(3)地域経済活動の再生」についても、福島県内の全ての市町村が、産業の振興や企業の支援等の施策について記述した「〔1〕 企業、産業・技術等」に関連した施策を記述していて、新たな産業の創出や地域経済活動の再生が大きな課題となっている。

表50 福島県内の市町村の復興計画に掲げられている施策の復興課題別分類
国が決定した基本方針 市町村が決定した復興計画
「東日本大震災からの復興の基本方針」の分類 左の分類に相当する内容を復興計画に掲げた市町村数(割合)
福島県内の市町村数(割合) 福島県以外の県の市町村数(割合)
  うち、福島県浜通り地域の市町村数(割合)
5 復興施策      
  (1)災害に強い地域づくり      
  〔1〕 高齢化や人口減少に対応した新しい地域づくり 11 (39.3%) 6 (75.0%) 21 (37.5%)
〔2〕 「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員 27 (96.4%) 7 (87.5%) 56 (100.0%)
〔3〕 土地利用の再編等を速やかに実現できる仕組み等 8 (28.6%) 5 (62.5%) 24 (42.9%)
〔4〕 被災者の居住の安定確保 22 (78.6%) 8 (100.0%) 53 (94.6%)
〔5〕 市町村の計画策定に対する人的支援、復興事業の担い手等 13 (46.4%) 7 (87.5%) 22 (39.3%)
(2)地域における暮らしの再生      
  〔1〕 地域の支え合い 28 (100.0%) 8 (100.0%) 55 (98.2%)
〔2〕 雇用対策 25 (89.3%) 8 (100.0%) 41 (73.2%)
〔3〕 教育の振興 25 (89.3%) 8 (100.0%) 54 (96.4%)
〔4〕 復興を支える人材の育成 6 (21.4%) 4 (50.0%) 14 (25.0%)
〔5〕 文化・スポーツの振興 23 (82.1%) 8 (100.0%) 46 (82.1%)
(3)地域経済活動の再生      
  〔1〕 企業、産業・技術等 28 (100.0%) 8 (100.0%) 43 (76.8%)
〔2〕 中小企業 15 (53.6%) 3 (37.5%) 40 (71.4%)
〔3〕 農業 26 (92.9%) 8 (100.0%) 48 (85.7%)
〔4〕 林業 15 (53.6%) 4 (50.0%) 19 (33.9%)
〔5〕 水産業 5 (17.9%) 5 (62.5%) 36 (64.3%)
〔6〕 観光 22 (78.6%) 5 (62.5%) 48 (85.7%)
〔7〕 コミュニティを支える生業支援 18 (64.3%) 7 (87.5%) 30 (53.6%)
〔8〕 二重債務問題等 7 (25.0%) 5 (62.5%) 9 (16.1%)
〔9〕 交通・物流、情報通信 23 (82.1%) 8 (100.0%) 53 (94.6%)
〔10〕 再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上 27 (96.4%) 8 (100.0%) 40 (71.4%)
〔11〕 環境先進地域の実現 9 (32.1%) 2 (25.0%) 17 (30.4%)
〔12〕 膨大な災害廃棄物の処理の促進 11 (39.3%) 4 (50.0%) 41 (73.2%)
(4)大震災の教訓を踏まえた国づくり      
  〔1〕 震災に関する学術調査、災害の記録と伝承 9 (32.1%) 5 (62.5%) 43 (76.8%)
6 原子力災害からの復興      
  〔1〕 応急対策、各種支援、情報提供等 28 (100.0%) 8 (100.0%) 35 (62.5%)
〔2〕 安全対策・健康管理対策等 28 (100.0%) 8 (100.0%) 17 (30.4%)
〔3〕 賠償・行政サービスの維持等 23 (82.1%) 6 (75.0%) 9 (16.1%)
〔4〕 放射性物質の除去等 28 (100.0%) 8 (100.0%) 6 (10.7%)
〔5〕 医療産業の拠点整備 4 (14.3%) 2 (25.0%) 0 (0.0%)
〔6〕 再生可能エネルギーの拠点整備 8 (28.6%) 5 (62.5%) 4 (7.1%)
〔7〕 政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進 5 (17.9%) 4 (50.0%) 0 (0.0%)

(注)
 割合は、80%以上を太字、20%未満を斜体で記載した。

 上記で分析した福島県内の市町村の復興計画について、原子力災害からの復興に関する記述内容の具体例を示すと、表51 のとおりであり、国が決定した復興基本方針及び福島復興再生基本方針の記述に対応する記述が多くみられる。

表51 福島県内の市町村の復興計画における原子力災害からの復興に関する記述例
〔1〕 応急対策、各種支援、情報提供等
(南相馬市) 定点モニタリング等の測定結果を市ホームページ等により随時公表
(伊達市) 伊達市一斉放射線量測定マップの作成、配布
〔2〕 安全対策・健康管理対策等
(福島市) 学校等給食で実際に使用する食材の放射能測定を実施
(白河市) 市道の被ばく線量の低減を図るため、道路の洗浄及び除草等を実施
〔3〕 賠償・行政サービスの維持等
(田村市) 住民の帰還に向けての意向や要望の把握
(本宮市) 市民の損害賠償請求手続の支援、損害賠償に関する公的機関の情報提供
〔4〕 放射性物質の除去等
(楢葉町) 町が独自に除染計画を策定し、国の除染計画に反映するよう要請
(飯舘村) 村内操業事業所及び休業事業所の除染の実施
〔5〕 医療産業の拠点整備
(須賀川市) 最先端の医療関係施設や医療産業などの誘致
(広野町) 放射線被害を防ぐ医療研究等と連携した新規医療機関の誘致
〔6〕 再生可能エネルギーの拠点整備
(相馬市) 壊滅的な被害を受けた地域をメガソーラー等の事業用地として利用
(矢吹町) 新たな再生可能エネルギーを活用した発電施設等の税制面での優遇措置の検討
〔7〕 政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進
(郡山市) 放射性物質の除去や健康管理等の先進的対応を図るため、政府系研究機関の誘致に向けた環境を整備
(いわき市) 復興や原子力災害の収束に係る国・県等の関係機関の誘致

ウ 福島の復興再生に関連した主な事業と平成23年度予算額

 福島復興再生基本方針等で掲げられた施策の中には、既に平成23年度補正予算において事業実施のための予算が措置されているものがある。福島の復興再生に関連した主な事業と平成23年度予算額は、表52 のとおり、東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質の除染事業等に必要な経費(放射線量低減対策特別緊急事業費補助金)(2021億余円)、重点分野雇用創造事業の拡充(震災対応事業の延長)(2000億円)、がんばろうふくしま産業復興企業立地支援事業(地域経済産業復興立地推進事業費補助金)(1700億円)等となっている。

表52 福島の復興再生に関連した主な事業と平成23年度予算額
主な事業 平成23年度予算額
  (単位:億円)
○内閣府  
◎東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質の除染事業等に必要な経費(放射線量低減対策特別緊急事業費補助金)
(予備費) 2021
・東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故による被害に係る応急の対策に関する事業に必要な経費(放射線量低減対策特別緊急事業費補助金)
(予備費) 403
   
○文部科学省  
・放射性薬剤の研究開発・製造拠点の整備(福島県民健康管理基金)
(3次補正) 113
   
○厚生労働省  
◎被災地における医療提供体制の再構築(既存の地域医療再生基金に積み増し)
(3次補正) 720
◎重点分野雇用創造事業の拡充(震災対応事業の延長)
(3次補正) 2000
◎重点分野雇用創造事業の拡充(雇用復興推進事業の創設)
(3次補正) 1510
   
○経済産業省  
◎中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金
(1次補正)
(2次補正)
(予備費)
189
99
1248
・原子力被災者の健康確保・管理関連交付金
(2次補正) 781
・医療福祉機器・創薬産業拠点整備事業
(3次補正) 394
・がんばろうふくしま産業復興企業立地支援事業(地域経済産業復興立地推進事業費補助金)
(3次補正) 1700
◎再生可能エネルギー発電設備等導入支援復興対策事業費補助金
(3次補正) 325
   
○環境省  
◎放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施
(3次補正) 1996
◎グリーンニューディール基金の拡充(再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金事業)
(3次補正) 840
(注)
 ◎についての事業費は、その一定部分が福島県の区域で実施される。

 このように、国は、原子力災害からの福島の復興及び再生の目標を早期に実現するために、各種の取組を総合的・計画的、かつ、責任を持って継続的に講ずることとしている。そして、福島復興再生基本方針で掲げられた各種の施策は、福島県及び県内市町村の復興計画に掲げられている施策と対応していて、これらの中には既に平成23年度補正予算において予算が措置されているものもある。
 福島の復興については、今後、国、福島県及び福島県内の市町村が福島復興再生基本方針及び福島県復興計画に沿って取り組む各種の事業が、迅速かつ着実に実施されることが期待される。