政府は、地球温暖化対策として、1990年(平成2年)の温室効果ガスの排出量12億6100万tを2020年(平成32年)までに25%削減するとし、環境省は、二酸化炭素排出量の削減が必要不可欠であるとしている。
そして、政府は、「経済危機対策」において、太陽光、低燃費車、省エネ機器等世界トップ水準にある環境・エネルギー技術の開発・導入促進等により、世界に先駆けて「低炭素・循環型社会」を構築するとしている。
この一環として実施されたエコポイント事業について検査したところ、地球温暖化対策の推進については、エコポイント対象製品が統一省エネラベルの4つ星相当以上のものとされていたことから、グリーン家電の普及には寄与していたと認められる。
しかし、二酸化炭素削減効果については、前記のとおり、3省は、詳細な算出過程を明らかにしないまま273万tとしていたが、会計検査院の試算によると、その削減効果は21万tという結果になった。そして、環境省は、特に近年の二酸化炭素排出量の増加が著しい家庭部門の排出削減が必要不可欠であるとしているが、エコポイント事業の実施に関し、その前後における二酸化炭素排出量の増減実績を比較した会計検査院の試算によると、新規購入や機器の大型化により二酸化炭素の1年当たりの総排出量が最大で173万t増加していた結果となった。
なお、エコポイント事業の効果のうち、経済の活性化及び地デジ対応テレビの普及については、地デジ対応テレビの販売推進等に一定の効果があったと思料される。
したがって、国の施策の財源には、国民の税金が充てられていることから、事業の効果を明らかにする場合には、その算出過程について十分に検討を行った上で、第三者が算出内容を評価できるようにその全てを明らかにする必要があると認められる。そして今後、エコポイント事業のように経済活性化と地球温暖化対策を目的とする事業を実施する場合には、経済活性化の推進により商品の新規購入や機器の大型化等により消費電力量が増加して二酸化炭素排出量が増加することもあることを十分に踏まえて実施を検討する必要があると認められる。すなわち、ポイント付与の対象を買換えに限定したり、省エネ性能に応じたポイントを付与したり、二酸化炭素排出量が減少する場合に限りエコポイントを付与する仕組みを構築したりすることなどにより、二酸化炭素排出量の削減に効果のある方策を検討するとともに、二酸化炭素排出量が減少したことが検証できる仕組みを構築するなど適切な制度設計を行う必要があると認められる。
会計検査院としては、地球温暖化対策の推進については社会全体で取り組み着実な効果を上げる必要があることに鑑み、二酸化炭素排出量の削減に関する事業の実施について、今後とも多角的な観点から引き続き検査していくこととする。