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  • 平成24年10月

人事・給与等業務・システム、調達業務の業務・システム並びに旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システムの3の府省共通業務・システムにおける最適化の進捗状況等について


 人事・給与等業務・システム、調達業務の業務・システム並びに旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システムの3の府省共通業務・システムにおける最適化の進捗状況等について

検査対象 25府省等
 
検査の対象とした3の府省共通業務・システム (1) 人事・給与等業務・システム
(2) 調達業務の業務・システム
(3) 旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム
 
3の府省共通業務・システムの概要 (1) 人事異動、俸給決定、各種手当等の申請・認定、給与の支給、勤務時間・休暇、共済組合の 組合員資格及び被扶養者の申告・認定等に係る業務・システム
(2) 物品、役務等の調達要求、予定価格の設定、入札・開札・発注、契約等に係る業務・システム
(3) 旅行命令や旅費請求等の旅費業務、謝金・諸手当の交付要求等業務、物品の取得、保管・供用等の物品管理業務の各業務に係る業務・システム
 
3の府省共通業務・システムの設計・開発等に係る支出金額 (1)   89億2734万円 (平成15年度〜23年度)
(2)   5億3994万円 (平成17年度〜23年度)
(3)   14億4776万円 (平成16年度〜23年度)
  109億1505万円

1 検査の背景

(1) 国のIT戦略の概要

 国は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するため、平成12年12月に、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)を制定した。政府は、同法に基づき、13年1月に、内閣に内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT戦略本部」という。)を設置している。
 IT戦略本部は、全ての国民が情報通信技術(IT)を積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向け、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指して、同月に「e-Japan戦略」を策定するとともに、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策について、13年3月から16年6月までの間に、毎年「e-Japan重点計画」を策定していた。また、IT戦略本部は、関係行政機関相互の緊密な連携の下、政府全体として情報化推進体制を確立するなどのため、14年9月に、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議(以下「CIO連絡会議」という。)を設置した。
 CIO連絡会議は、「e-Japan重点計画」に基づき、15年7月に、電子政府構築に係る基本的考え方や具体的取組を定めた「電子政府構築計画」を策定し、この「電子政府構築計画」において、政府は、簡素で効率的な政府の実現を図るために、各府省等に共通する業務・システム(以下「府省共通業務・システム」という。)について、業務や制度の見直し、システムの共通化・一元化等を実施し、併せてこれらに必要となる経費や業務処理時間の削減効果の試算を数値で明示した最適化計画を策定することとした。

(2) 府省共通業務・システムの概要

 府省共通業務・システムの最適化計画は、各業務・システムの担当府省が計画を立案して、CIO連絡会議で決定されるが、CIO連絡会議は、業務・システムの最適化を政府全体として整合性を確保しつつ進めていくために、18年3月に業務・システムの最適化に係る作業の統一的実施手順を定めた「業務・システム最適化指針(ガイドライン)」(以下「最適化ガイドライン」という。)を策定している。そして、担当府省は、最適化ガイドラインに基づき、図1のとおり、システムの企画、設計・開発、運用の各段階における作業工程に沿って最適化を実施している。

図1 システムの企画、設計・開発、運用の各段階における作業工程

図1システムの企画、設計・開発、運用の各段階における作業工程

 そして、政府は、府省共通業務・システムの最適化に係る施策の推進に係る事務を処理するために、18年4月に内閣官房情報通信技術(IT)担当室に電子政府推進管理室(Government Program Management Office。以下「GPMO」という。)を設置し、府省共通業務・システムの円滑かつ効果的な実施等を図るための総合調整を行わせている。
 府省共通業務・システムに関しては、表1 のとおり、23年度末現在で、人事・給与等業務や調達業務等の19分野を対象とする16の最適化計画が策定されており、7府省等が担当府省としてそれぞれの最適化計画に基づき、各業務・システムの最適化を実施している。

表1 府省共通業務・システム最適化計画の概要等(平成23年度末現在)
最適化計画の名称 府省共通業務・システム名 担当府省名 当初計画決定時期
注(1)
先行導入府省等運用開始時期
注(2)
関係全府省等運用開始時期
注(2)
人事・給与等業務・システム最適化計画 人事・給与等業務 人事院、総務省 平成16年2月27日 17年度
<22年度>
19年度
<27年度>
災害管理業務の業務・システム最適化計画 災害管理業務 内閣府本府

17年12月28日

18年度 18年度
統計調査等業務の業務・システム最適化計画 統計調査等業務 総務省 18年3月31日 20年度 20年度
行政情報の電子的提供業務及び電子申請等受付業務の業務・システム最適化計画 電子申請等受付業務 総務省 17年8月24日 18年度 22年度
行政情報の電子的提供業務 総務省 17年度 22年度
霞が関WAN及び政府認証基盤(共通システム)の最適化計画 共通システム

総務省

17年3月31日 19年度 20年度
文書管理業務の業務・システム最適化計画 文書管理業務

総務省

19年4月13日 20年度 24年度
職員等利用者認証業務の業務・システム最適化計画 職員等利用者認証業務 総務省 19年4月13日 20年度 24年度
共同利用システム基盤の業務・システム最適化計画 共同利用システム基盤 総務省 20年2月13日 20年度 22年度
調達業務の業務・システム最適化計画 調達業務 総務省 (16年9月15日)
21年8月28日
20年度
<25年度>
21年度
<27年度>
共済業務・システム最適化計画 共済業務 財務省 16年7月30日 18年度 21年度
予算・決算業務の業務・システム最適化計画

予算・決算業務

財務省

18年3月31日 19年度 23年度
国有財産関係業務(官庁営繕業務を除く。)の業務・システム最適化計画 国有財産関係業務(官庁営繕業務を除く。) 財務省 18年3月31日 21年度 21年度
輸出入及び港湾・空港手続関係業務の業務・システム最適化計画 輸出入及び港湾・空港手続関係業務 財務省 17年12月28日 20年度

21年度

研究開発管理業務の業務・システム最適化計画

研究開発管理業務

文部科学省

18年3月31日

19年度 19年度
旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム最適化計画 物品管理業務

経済産業省

(16年9月15日)
21年7月1日
20年度
<26年度>
21年度
<27年度>
謝金・諸手当業務、旅費業務 20年度
<26年度>
21年度
<27年度>
公共事業支援システム(官庁営繕業務を含む。)の業務・システム最適化計画 公共事業支援システム(官庁営繕業務を含む。) 国土交通省 18年3月31日 20年度 21年度以降
注(1)  調達業務の業務・システム最適化計画」及び「旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム最適化計画」は、平成16年9月に決定された「物品調達、物品管理、謝金・諸手当、補助金及び旅費の各業務・システム最適化計画」を全面改定し、それぞれ21年8月及び同年7月に、新たな最適化計画として決定されている。
注(2)  「運用開始時期」の上段は当初計画における運用開始時期、下段の< >書きは現在の計画における運用開始時期を示している。

(3) 3の府省共通業務・システムの概要

 府省共通業務・システムは、最適化計画に基づき、担当府省がシステムの企画、設計・開発等を主体的に行っており、表1 のとおり、このうち人事・給与等業務・システム(以下「人給システム」という。)は人事院及び総務省が、調達業務の業務・システム(以下「調達システム」という。)は総務省が、旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム(以下「旅費等システム」という。)は経済産業省が、それぞれ担当府省となっている。また、内閣官房は、人事院とともに人給システムに係る「人事・給与関係業務情報システム関係府省連絡協議会」(18年9月設置。以下「人給連絡協議会」という。)の事務局に加わり、最適化計画に沿ってシステムの設計・開発が進捗するよう、担当府省に対する助言等を行っている。
 人給システム、調達システム及び旅費等システム(以下、これらを合わせて「3の府省共通業務・システム」という。)の最適化計画においては、担当府省が設計・開発した標準的なシステムを各府省等が導入することなどにより、各府省等が、従来独自に実施している業務を政府全体として最適化するとしているが、その最適化計画の策定及び改定の状況は、以下のとおりである。
 すなわち、表2 のとおり、人給システムは、16年2月に当初の最適化計画が決定された後、24年1月までに、計4回にわたって最適化計画が改定されており、これに伴ってシステムに参画する各府省等(以下「参加府省等」という。)の運用開始が当初計画における予定から大幅に遅延している。また、調達システム及び旅費等システムは、16年9月の当初の最適化計画では、経済産業省が担当府省となって、物品調達、物品管理、謝金・諸手当、補助金及び旅費(以下「官房5業務」という。)の全ての業務・システムを最適化する計画となっていた。そして、17年6月開催のCIO連絡会議において、当初の最適化計画のうち、「電子契約システム」は総務省が、「予算執行等管理システム」は経済産業省が、それぞれ担当府省とされ、18年8月の一部改定を経て、物品、役務等の調達要求、予定価格の設定、入札・開札・発注、契約等の調達業務は調達システムとして、また、旅行命令や旅費請求等の旅費業務、謝金・諸手当の交付要求等業務、物品の取得、保管・供用等の物品管理業務の各業務は旅費等システムとして、21年8月及び同年7月に最適化計画がそれぞれ全面改定された。その後、調達システムの最適化計画は23年7月に、旅費等システムの最適化計画は24年1月に、それぞれ改定されており、これに伴って参加府省等の運用開始は、当初計画における予定から大幅に遅延している。

表2 3の府省共通業務・システムの最適化計画の改定状況等
最適化計画の名称 担当府省名 計画決定(改定)時期 運用開始年度
注(2)
開発投資額
(千円)
削減(△増加)経費
(千円/年)
上段:
削減業務処理時間数
(万時間/年)
下段:
金額換算値
(千円/年)
注(3)
改定の概要
17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
人事・給与等業務・システム最適化計画 人事院
総務省
平成16年2月27日 当初計画                   不明 2,000,000 1,300
40,625,000
19年8月24日 第1回改定                   8,348,912 720,000 1,050
32,812,500
 更なる効率化の観点から、システムの運用方法を原則として各府省等別の「分散方式」から「集中管理方式」に変更するなどしたことによる大幅な改定
20年2月13日 第2回改定                   8,348,912 720,000 1,050
32,812,500
共同利用システム基盤への参画による経費節減額の追記
21年8月28日 第3回改定                   8,692,455 1,262,864 1,050
32,812,500
 改修計画の見直しに伴う最適化工程表等の見直し、防衛省分の経費削減効果の具体化、共同利用システム基盤の利用に伴う見直し、共済組合事務システム等の他の府省共通システムとの調整に伴う見直し、給与支払業務の支出官払化の実現
24年1月17日 第4回改定                   8,692,455 1,262,864 1,050
32,812,500

 新たな府省導入スケジュールを踏まえ、最適化工程表と業務削減の効果発現時期を修正

調達業務の業務・システム最適化計画 総務省 (16年9月15日)注(1) 当初計画                   1,642,000 32,484,000 442
13,814,450
(18年8月31日)注(1) 一部改定                   1,642,000 34,546,000 442
13,814,450
各府省個別に導入していた電子入札システムの府省共通化の政府決定に基づく府省共同の電子入札システムの構築
21年8月28日 全面改定                   2,541,581

58,377

25
784,638
「ITを活用した内部管理業務の抜本的効率化に向けたアクションプラン」等に基づく電子調達システムの開発、全府省への導入
23年7月15日 第1回改定                   2,564,350 31,013 21
666,797
「新たな情報通信技術戦略」を踏まえ、共同利用システム基盤から政府共通プラットフォームに変更してシステム開発することに伴う改定
旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム最適化計画 経済産業省 (16年9月15日)注(1) 当初計画                   1,642,000 32,484,000 442
13,814,450
(18年8月31日)注(1) 一部改定                   1,642,000 34,546,000 442
13,814,450
各府省個別に導入していた電子入札システムの府省共通化の政府決定に基づく府省共同の電子入札システムの構築
21年7月1日 全面改定                   1,908,274 129,414 904
28,267,298
旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システムの開発、全府省への導入
24年1月17日 第1回改定                   3,199,517 △439,877 1,056
33,009,578
旅費業務に関する標準マニュアルの改定の反映、最適化工程表、最適化効果の見直し、21年度決算検査報告の意見表示を踏まえた原稿運用経費の見直し
 「調達業務の業務・システム最適化計画」及び「旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システム最適化計画」は、平成16年9月に決定され18年8月に改定された「物品調達、物品管理、謝金・諸手当、補助金及び旅費の各業務・システム最適化計画」を全面改定し、それぞれ21年8月及び同年7月に、新たな最適化計画として決定されているため、表中の決定(改定)時期を( )書きとした。また、16年9月決定及び18年8月改定の最適化計画の削減(△増加)経費は4年分を計上している。

 運用開始年度の○印は先行導入府省等の運用開始時期を示し、●印は関係全府省等の運用開始時期を示している。

 削減業務処理時間の金額換算値は、削減業務処理時間数に金額換算率3,125円/時間を乗じて算出したものである。


 府省共通業務・システムの最適化計画は、15年度から21年度までの間に決定され、既にその大半はシステム構築が完了しており、多くの府省等で運用されている。しかし、3の府省共通業務・システムは、上記のとおり、当初の最適化計画が順次改定されており、参加府省等の運用開始が遅延していて、最適化効果の発現が大幅に遅延している。