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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成24年10月

地震・火山に係る観測等の実施状況について


 地震・火山に係る観測等の実施状況について

検査対象 内閣府、総務省、文部科学省、国土交通省、独立行政法人防災科学技術研究所、独立行政法人海洋研究開発機構、独立行政法人産業技術総合研究所、国立大学法人北海道大学、国立大学法人弘前大学、国立大学法人東北大学、国立大学法人秋田大学、国立大学法人東京大学、国立大学法人東京工業大学、国立大学法人名古屋大学、国立大学法人京都大学、国立大学法人鳥取大学、国立大学法人高知大学、国立大学法人九州大学、国立大学法人鹿児島大学、47都道府県、1,742市町村
検査の対象とした業務の概要 地震、津波及び火山の観測、調査研究等並びにこれらに関連する業務
検査の対象とした観測機器の平成24年3月31日現在の数 (1) 国、独立行政法人及び国立大学法人の観測機器
  15,080台
(2) 国の交付金等により更新等された地方公共団体の観測機器
  2,453台
検査の対象とした観測機器の台帳上の取得価格 (1) 564億4849万円  
検査の対象とした観測機器の更新等に係る交付金等の交付額 (2) 98億3183万円 (平成18、20、21、22各年度)

1 検査の背景

(1) 国等による地震及び津波の観測等の実施

 我が国は、規模・頻度ともに世界有数の地震国であり、過去10年間でみても、十勝沖地震(平成15年9月)、新潟県中越地震(16年10月)、能登半島地震(19年3月)、新潟県中越沖地震(同年7月)、岩手・宮城内陸地震(20年6月)、東北地方太平洋沖地震(23年3月)等の大規模な地震が発生し、全国各地で人的・物的な被害をもたらしている。地震及び地震等に伴う津波の観測やこれらを対象とする調査研究等は、国の機関をはじめとする関係機関により行われているが、その概要は以下のとおりである。
 気象庁は、気象業務法(昭和27年法律第165号)に基づき、災害の予防、交通の安全の確保、産業の興隆等公共の福祉の増進に寄与することなどのため、業務として地震及び津波の観測を行っている。
 一方、平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機として制定された地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)に基づき、地震に関する観測、測量、調査及び研究を一元的に推進するための組織として、文部科学省に地震調査研究推進本部(以下「地震本部」という。)が設置されている。地震本部は、地震に関する総合的かつ基本的な施策の立案、調査観測計画の策定等を行うこととされている。また、測地学及び政府機関の測地事業計画に関する事項を調査審議し、これに関して関係各大臣に意見を述べるための組織として同省に科学技術・学術審議会(13年1月までは文部省に設置されていた測地学審議会)が設置されている。
 そして、地震本部が策定等した施策及び計画、科学技術・学術審議会が関係各大臣に建議を行った観測研究計画(注1) 等に基づき、国、独立行政法人、国立大学法人等の関係機関が防災・減災や自然現象の発生の予測及び解明を目的として、地震及び津波の観測、調査研究等を行っている。なお、上記観測研究計画の実施機関である国立大学法人の連携を強化し、研究を有効に推進していくための組織として、地震・火山噴火予知研究協議会(国立大学法人東京大学地震研究所に設置されていた地震予知研究協議会及び火山噴火予知研究協議会が18年5月に統合して発足したもの。以下「予知協議会」という。)が設置されていて、予知協議会は、科学技術・学術審議会との連携を図りながら、国立大学法人間の調整や進捗管理を行っている。

 観測研究計画  地震及び火山噴火予知のための研究について、関係する国の機関、独立行政法人、国立大学法人等が分担して推進するための計画。現行の計画は、平成21年度から25年度までを対象期間として、20年7月に科学技術・学術審議会から総務、文部科学、経済産業、国土交通各大臣に建議されたものであり、23年3月の東北地方太平洋沖地震の発生を踏まえて、見直し作業が行われている。なお、20年以前は、地震予知に関する観測研究計画が昭和39年度以降、火山噴火予知に関する観測研究計画が48年度以降、数次にわたって別々に同審議会から建議されてきている。

(2) 国等による火山の観測等の実施

 我が国には、おおむね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山と定義される活火山が24年3月現在で110あり、これは世界の活火山の約1割に相当する。火山の噴火は、過去10年間でみると、16年9月に浅間山、20年2月に桜島、23年1月に霧島山(新燃岳)等において発生し、上記3火山の噴火の際には噴石落下、降灰及び空気振動(以下「空振」という。)による被害が確認されている。
 火山の観測、調査研究等については、気象庁が気象業務法に基づいて業務として観測を行っているほか、国、独立行政法人、国立大学法人等の関係機関が、活動火山対策特別措置法(昭和48年法律第61号)や科学技術・学術審議会の観測研究計画等に基づき、防災・減災や自然現象の発生の予測及び解明を目的として、観測、調査研究等を行っている。
 なお、火山の観測、調査研究等を一元的に推進する組織として法律に基づいて設置された機関はないが、関係機関の研究及び業務に関する成果や情報の交換、火山現象についての総合的判断等を行うための組織として、火山噴火予知連絡会が設置されている(気象庁が同連絡会の庶務を処理。昭和49年6月設置)。同連絡会は、年に3回開催される定例会において、全国の火山活動について総合的な検討を行っているほか、火山噴火等の異常時には臨時に会議を開催し、必要な場合は検討結果を発表するなどして防災対応に資するための活動を行っている。また、このほか、予知協議会が、科学技術・学術審議会の観測研究計画の実施に必要な国立大学法人間の調整等を行っている。

(3) 国及び地方公共団体による情報提供等

 気象庁は、気象業務法に基づき、地震、津波及び火山に関する予報、警報等を行い(詳細については、巻末別表1 を参照)、これらを国民に発表する業務を行っているほか、地震防災対策特別措置法に基づき、地震に関する観測、調査研究等を行う関係機関の観測結果等の収集を行い、その成果を地震本部に報告している。
 消防庁は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)における地震発生時の初動体制確立の迅速化や、観測データを都道府県に集約することにより広域応援体制を確立することを目的に、全ての市町村への観測機器の設置及びこれらを接続する処理装置の整備を促進するため(以下、これらの観測機器等を「震度情報ネットワーク」という。)、都道府県に対して交付金等を交付している。この震度情報ネットワークは、全市町村に整備されており、これにより得られた観測データは気象庁に提供され、同庁が各地域の地震情報として発表している。また、消防庁は、国から住民への緊急の情報提供に資する目的で、地震、津波等に係る情報等を瞬時に住民に伝達するためのシステムである全国瞬時警報システム(以下「J-ALERT」という。)の整備・運用を行っており、都道府県及び市町村が行うこととなっている受信機、自動起動機等の整備を促進するための交付金を交付している。