会計検査院は、平成25年次の検査に当たって、会計検査の基本方針を次のとおり定めた。
平成25年次会計検査の基本方針
(平成24年9月5日策定)
会計検査院は、平成25 年次の検査に当たって、社会経済の動向等を踏まえつつ、会計検査をより効率的・効果的に行い、会計検査院に課された使命を的確に果たすため、平成25年次会計検査の基本方針を次のとおり定める。
会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する憲法上の機関として、次の使命を有している。
会計検査院は、国の収入支出の決算を全て毎年検査するほか、法律に定める会計の検査を行う。
会計検査院は、常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認する。
会計検査院は、検査報告を作成し、これを内閣に送付する。この検査報告は、国の収入支出の決算とともに国会に提出される。
近年、我が国の社会経済は、本格的な人口減少社会の到来、少子高齢化に伴う社会保障費の増大や、内外経済の構造的な変化、地球環境問題等の難しい課題に直面している。また、東日本大震災(23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害をいう。以下「大震災」という。)からの復興が我が国の大きな課題となっており、行政等にはこうした課題への適切な対応が求められている。
我が国の財政をみると、連年の公債発行により公債残高は増加の一途をたどり、24年度末には約709 兆円に達すると見込まれており、24年度一般会計予算における公債依存度は約49%、公債償還等に要する国債費の一般会計歳出に占める割合は約24%となっていて、財政の健全化が課題となっている。
政府においては、近年、財政健全化に向けて、安定的な財源確保、財政赤字の縮減、歳出の見直しなどを行うこととして、歳出の無駄の排除に資するため、事務・事業の執行状況の的確な把握及び開示による執行状況の透明性の確保等の取組がなされている。
また、国会においては、国会による財政統制を充実・強化する観点から、予算の執行結果を把握し次の予算に反映させることの重要性等が議論されている。
会計検査院は、国会から内閣に対して決算の早期提出が要請されたことも踏まえて、平成15 年度決算検査報告から内閣への送付を早期化しており、これにより国会における決算審査の早期化に資するとともに、検査結果の予算への一層の反映が可能となっている。さらに、国会法第105 条の規定に基づく会計検査院に対する検査要請に係る検査を着実に実施しその結果を国会に報告しているところであり、また、国会における決算審査の充実に資するために、国会及び内閣への随時の報告を毎年行ってきている。
このように財政の健全化が課題となっており、また、予算の執行結果等の厳格な評価・検証、国民への説明責任の履行を徹底することなどが重視される中で、会計検査院の役割は一層重要となっており、会計検査機能に対する国民の期待も大きくなっていると考えられる。
会計検査院は、従来、社会経済の動向等を踏まえて国民の期待に応える検査に努めてきたところであるが、以上のような状況の下で今後ともその使命を的確に果たすために、国民の関心の所在に十分留意して、厳正かつ公正な職務の執行に努めるとともに、次に掲げる方針で検査に取り組む。
我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえて、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。
また、複数の府省等により横断的に実施されている施策、あるいは複数の府省等に共通又は関連する事項に対して、横断的な検査の充実を図るとともに、社会的関心の高い事項等については必要に応じて機動的・弾力的な検査を行うなど、適時適切に対応する。
さらに、大震災からの復興に向けた各種の施策については、一定期間に多額の国費が投入されることなどを踏まえて、各事業等の進捗状況等に応じて適時適切に検査を行う。検査に当たっては、被災地域の状況等に配慮するとともに、各事業等が被災地域における社会経済の再生等に資するものとなっているかなどに留意する。
不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、事務・事業の業績に対する検査を行っていく。そして、必要な場合には、制度そのものの要否も視野に入れて検査を行っていく。
検査を行う際の観点は、次のとおりである。
正確性及び合規性の観点からの検査は、なお多くの不適切な事態が見受けられていることを踏まえて、引き続きこれを十分行う。その際には、一部の府省等において不正不当な事態が見受けられたことも踏まえて、特に基本的な会計経理について重点的に検査を行う。また、随意契約等の契約方式は適切か、契約相手方の選定は妥当か、入札・契約事務が公正な競争入札を確保するものとなっているかなど契約の競争性及び透明性にも十分留意する。
さらに、近年の厳しい経済財政状況にも鑑みて、経済性、効率性及び有効性の観点からの検査を重視する。特に有効性の観点から、事務・事業や予算執行の効果及び国等が保有している資産、補助金等によって造成された基金等の状況について積極的に取り上げるように努めて、その際には、検査対象機関が自ら行う政策評価や効率的・効果的な事業の実施のために政府が行う各種の取組等の状況についても留意して検査を行う。
そして、事務・事業の遂行及び予算の執行に問題がある場合には、原因の究明を徹底して行い、改善の方策について検討する。
このほか、行財政の透明性、説明責任の向上や事業運営の改善に資するなどのために、国の決算等の財政について、その分析や評価を行っていくとともに、特別会計、独立行政法人等については、その財務状況の検査の充実を図る。その際、企業会計の慣行を参考として作成される特別会計財務書類の検査を行うとともに、同財務書類等の公会計に関する情報の検査における活用にも留意する。
検査対象機関における内部統制の状況は、会計経理の適正性の確保に影響を与えることから、検査に際してはその実効性に十分留意する。また、内部統制が十分機能して会計経理の適正性が確保されるように、必要に応じて内部統制の改善を求めるなど適切な取組を行う。
検査において不適切、不合理等とした会計経理の是正やその再発防止が確実に図られるなど、検査の結果が予算の編成・執行や事業運営等に的確に反映され実効あるものとなるように、その後の是正改善等を継続的にフォローアップする。
検査に当たっては、国会における審議の状況に常に留意する。そして、国会からの検査要請に係る事項の検査に当たっては、国会における審査又は調査に資するものとなるように、要請の趣旨を十分踏まえて必要な調査内容を盛り込むなど的確な検査に努める。また、国会における決算審査の充実に資するために、引き続き国会及び内閣への随時の報告を積極的に行うように努める。
社会経済の複雑化とそれに伴う行財政の変化に対応して、新しい検査手法の開拓を行うなど検査能力の向上を図り、検査を充実させていく。
すなわち、検査手法や検査領域を多様化するための調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成や民間の実務経験者、専門家等の採用、検査業務のIT 化の推進、検査用機器の活用等により、会計経理はもとよりそれに関連する事務・事業の全般について検査の一層の浸透を図る。
本基本方針に基づき、会計検査院に課された使命を効率的・効果的に達成するために、的確な検査計画を策定して、これにより計画的に検査を行う。
検査計画には、検査対象機関並びに施策及び事務・事業の予算等の規模や内容、内部監査、内部牽制等の内部統制の状況、過去の検査の状況や結果等を十分勘案して、検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の重点項目として設定する。
そして、検査に当たっては、検査の進行状況により、また、国民の関心の所在等にも留意しつつ、検査計画を必要に応じて見直すなど機動的・弾力的に対応して、検査の拡充強化を図る。