総務省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)に基づき、普通交付税の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要がある地方団体に特別交付税を交付している。
特別交付税の額の算定方法は、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号。以下「省令」という。)において、特別の財政需要として算定の対象となる事項(以下「算定事項」という。)ごとに定められている。
市町村は、当該市町村に該当する算定事項ごとに財政需要に関する基礎資料(以下「算定資料」という。)等を作成して、都道府県に提出している。そして、都道府県は、管内市町村から提出された算定資料等の審査を行って総務省に送付し、総務省は、送付された算定資料等の金額に所定の係数を乗ずるなどして地方団体に交付すべき特別交付税の額を算定することとされている。
省令、算定資料の記載要領等(以下「省令等」という。)によれば、特別交付税の額の算定に当たっては、市町村が負担する額に基づくことなどとされ、算定の対象となる経費が算定事項ごとにそれぞれ定められている。
本院は、合規性等の観点から、特別交付税の額が適正に算定されているかに着眼して、総務本省及び27道府県の451市町村において、平成19年度から24年度までの間に交付された特別交付税を対象として、特別交付税の算定資料等により会計実地検査を行った。
検査の結果、7道府県の10市町に交付された特別交付税計9,948,358,000円のうち、額の算定に当たり、算定の対象とならない経費を含めていたり、算定方法を誤ったりしていたため、特別交付税計57,510,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、市町において省令等の理解が十分でなかったこと、道府県において算定資料等の審査が十分でなかったこと、総務省において地方団体に対する省令等の周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
長野県松本市は、平成22年度に、自転車駐車場の維持管理を行うために特別の財政需要が生ずるとして、その経費を21,407,000円とする算定資料等を長野県に提出するなどして、自転車駐車場の維持管理に要する経費に係る特別交付税10,704,000円を含む特別交付税1,688,829,000円の交付を受けていた。
しかし、同市は、算定資料等の作成に当たり、誤って、4か所の有料自転車駐車場について使用料収入の額を控除していなかったため、同市が負担する自転車駐車場の維持管理に要する経費12,857,000円が過大となっていた。
したがって、適正な経費に基づいて特別交付税の額を算定すると4,275,000円となることから、特別交付税6,429,000円が過大に交付されていた。
以上を道府県別・交付先別に示すと次のとおりである。
道府県名 | 交付先 | 算定事項 | 年度 | 特別交付税交付額 | 過大に交付された特別交付税の額 | 摘要 | |
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千円 | 千円 | ||||||
(11) | 北海道 | 虻田郡豊浦町 | 遠距離通学 | 20〜24 | 999,218 | 8,326 | 算定の対象とならない経費を含めていたもの |
(12) | 埼玉県 | 越谷市 | 民間バリアフリー | 20 | 276,074 | 4,160 | 同 |
(13) | 長野県 | 松本市 | 駐輪場 | 22 | 1,688,829 | 6,429 | 算定方法を誤っていたもの |
(14) | 同 | 伊那市 | 遠距離通学 | 22 | 1,093,832 | 1,380 | 算定の対象とならない経費を含めていたもの |
(15) | 京都府 | 相楽郡精華町 | 放置自転車 | 19〜23 | 661,829 | 15,018 | 同 |
(16) | 大阪府 | 柏原市 | 放置自転車、駐輪場 | 21、23 | 508,281 | 7,740 | 算定方法を誤っていたもの |
(17) | 大阪府 | 藤井寺市 | 駐輪場 | 21、22 | 419,549 | 4,140 | 算定方法を誤っていたもの |
(18) | 兵庫県 | 川西市 | 放置自転車 | 23 | 612,721 | 3,652 | 算定の対象とならない経費を含めていたもの |
(19) | 広島県 | 竹原市 | 同 | 19〜22 | 1,930,752 | 5,607 | 同 |
(20) | 同 | 尾道市 | 駐輪場 | 21 | 1,757,273 | 1,058 | 同 |
(11)〜(20)の計 | 9,948,358 | 57,510 |