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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(1) 特別交付税の額の算定に当たり、過疎債ソフト経費を含めることによる地方財政措置の重複が生じないよう確認を適切に行うなどして、その算定が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
交付税及び譲与税配付金特別会計(交付税及び譲与税配付金勘定) (項)地方交付税交付金
部局等
総務本省
交付の根拠
地方交付税法(昭和25 年法律第211 号)
特別交付税の概要
普通交付税の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があることなどにより、普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に交付されるもの
交付先
市6 、町6 、村2
上記の交付先に交付された特別交付税交付額
148 億6840 万余円(平成22 年度〜24 年度)
上記のうち過大に交付された特別交付税の額
1 億6246 万円

【是正改善の処置を求めたものの全文】

特別交付税の額の算定における過疎債ソフト経費の確認等について

(平成25 年10 月31 日付け総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34 条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 特別交付税の概要等

(1) 特別交付税の概要

貴省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)に基づき、地方団体の財源の均衡化を図り、交付基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することにより、地方団体の独立性を強化することを目的として、地方交付税交付金(以下「地方交付税」という。)を交付している。地方交付税には、普通交付税及び特別交付税があり、このうち、特別交付税は、普通交付税の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があることなどにより、普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に、毎年度分として交付すべき地方交付税の総額の100分の6に相当する額が交付されている。

(2) 特別交付税の額の算定等

貴省は、都道府県及び市町村に交付すべき特別交付税の額を算定するために、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号)において、算定の対象となる財政需要の事項(以下「算定事項」という。)を定めている。

また、貴省は、毎年度、算定事項ごとに財政需要に関する基礎資料(以下「算定資料」という。)の様式を作成し、都道府県に対してこれを送付しており、その際、「特別交付税の額の算定に用いる基礎数値について」により、算定資料等の作成に当たっての留意事項を併せて通知している。

市町村は、当該市町村に係る算定資料等を作成して、都道府県に提出し、都道府県は、管内市町村から提出された算定資料等の審査を行い、貴省に送付しなければならないこととされている。そして、貴省は、都道府県から送付された算定資料等により特別交付税の額の算定を行っている。

市町村では、通常、市町村分の特別交付税の取りまとめを担当する者(以下「特別交付税担当」という。)が、事業を担当する者(以下「事業担当」という。)から算定対象となる事業に係る経費等の情報の提供を受け、これに基づいて算定資料等を作成している。

(3) 過疎債の発行

過疎地域の市町村は、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)に基づき定められた過疎地域自立促進市町村計画に基づいて行う事業の財源として、過疎地域自立促進のための地方債(以下「過疎債」という。)を発行できることとされている。

過疎債の対象となるのは、従来、市町村道整備事業等のハード事業及び観光事業等を行う法人に対する出資に限定されていたが、平成22年4月に過疎地域自立促進特別措置法が改正され、地域医療の確保、集落の維持、活性化その他の住民が将来にわたり安全に安心して暮らすことのできる地域社会の実現を図るため特別に地方債を財源として行うことが必要と認められるソフト事業(当該事業の実施のために設置される基金の積立てを含む。)についても過疎債を発行できることとされた(以下、過疎債を財源とするソフト事業を「過疎債ソフト事業」という。)。

市町村が過疎債を発行する際には、地方財政法(昭和23年法律第109号)に基づき、政令指定都市は貴省と、その他市町村は都道府県とそれぞれ協議するなどしなければならないこととされている。

そして、上記の協議等に当たり、貴省又は都道府県は、地方債同意等基準に基づいて同意等をするかどうかを判断することとされており、同意等を得た市町村は、過疎債に係る経費の財源として財政融資資金等から借入れを行っている。

また、市町村では、通常、過疎債の取りまとめを担当する者(以下「過疎債担当」という。)が、事業担当から過疎債の発行の対象となる事業の情報の提供を受けて、都道府県の過疎債担当に対して当該事業の情報を提供しており、これに基づいて協議等を行っている。

(4) 過疎債ソフト事業に対する地方財政措置

地方交付税法附則第5条によると、貴省又は都道府県の同意等を得た過疎債に係る元利償還金に0.7を乗じた額は、当該市町村における普通交付税を算定する基礎となる財政需要の額である基準財政需要額に算入され、その基準財政需要額に応じた普通交付税が当該市町村に交付されることとなっている。このため、過疎債ソフト事業において過疎債を財源とした経費(以下「過疎債ソフト経費」という。)が特別交付税の対象経費として算定されると、普通交付税と特別交付税による地方財政措置の重複が生ずることになる。そのため、貴省は、毎年度の地方債同意等基準運用要綱や前記の「特別交付税の額の算定に用いる基礎数値について」により、過疎債ソフト経費は、特別交付税の額の算定の対象とはならないことに留意するよう地方団体に通知している。

(5) 交付税検査

貴省及び都道府県は、地方交付税法第17条の3の規定に基づき、地方交付税の算定の正確性を確保して、その配分の公正を期することを目的として、地方交付税の交付後において、地方交付税の額の算定資料に関する検査(以下「交付税検査」という。)を行っている。そして、都道府県分及び政令指定都市分については貴省が交付税検査を行い、政令指定都市を除く市町村分については都道府県が交付税検査を行って、その結果を貴省に報告することとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

過疎債ソフト事業は、過疎地域自立促進特別措置法の改正以降、全国的に幅広く実施されている。

そこで、本院は、合規性等の観点から、過疎債ソフト経費を特別交付税の額の算定の対象としていないかなどに着眼して、11県(注)管内の94市町村において、22年度から24年度までの間に交付された特別交付税計2561億8852万余円を対象として、特別交付税の額の算定資料及び過疎債ソフト事業の実施に係る資料等により会計実地検査を行うとともに、貴省において、特別交付税の額の算定方法等について聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注)
11県  青森、山形、栃木、群馬、長野、静岡、兵庫、和歌山、岡山、愛媛、宮崎各県

(検査の結果)

検査したところ、6県管内の14市町村において、特別交付税の額の算定資料等の作成に当たり、市町村の特別交付税担当が、当該市町村の過疎債担当から過疎債ソフト経費の情報を確認せずに特別交付税の額の算定資料等を作成していたり、市町村の事業担当が、当該市町村の特別交付税担当を経由せずに直接県の事業担当に特別交付税の額の算定の対象となる経費を報告していたり、県の特別交付税担当が、県の過疎債担当から過疎債ソフト経費に係る情報を確認していなかったりなどしていた。そのため、22年度から24年度までの間に延べ24の算定事項について、特別交付税の額の算定の対象とはならないにもかかわらず、14市町村は、誤って過疎債ソフト経費計2億2760万余円を算定対象経費に含めていて、14市町村に交付された特別交付税計148億6840万余円のうち、1億6246万余円が過大に交付されていた(表参照)。

表14 市町村に過大に交付された特別交付税の額

県名 交付先 算定事項 年度 実特別交付税交付額 過大に交付された特別交付税の額
千円 千円
青森県 つがる市 医師の派遣 23 1,049,115 4,137
重要文化財の保存等 24 1,044,381 8,957
鰺ヶ沢町 医師の派遣 24 507,380 10,094
社会的弱者等の自立支援等 24 2,370
深浦町 冬期スクールバス等 22 430,839 1,190
野辺地町 地方バス 23 273,269 1,869
地方バス 24 241,504 1,552
東通村 地方バス 23 263,140 7,200
山形県 最上町 地域力の創造等 23 376,665 1,200
医師の派遣 23 1,900
大蔵村 地域力の創造等 23 259,896 749
静岡県 浜松市 遠距離通学 23 3,193,845 3,920
冬期スクールバス等 23 7,152
岡山県 高梁市 中山間地域等への直接支払 23 1,377,648 27,693
中山間地域等への直接支払 24 1,367,876 27,885
新見市 中山間地域等への直接支払 23 1,237,520 15,901
森林整備地域活動支援 23 7,335
美作市 遠距離通学 23 1,092,325 3,200
愛媛県 伊予市 地方バス 24 738,990 15,120
鬼北町 農地・水・環境保全向上 22 335,870 3,514
地域材利用促進 22 1,350
地域材利用促進 23 335,441 900
14,868,404 162,468

上記の事態について、その事例を示すと次のとおりである。

<事例>

岡山県高梁市は、平成23、24両年度に同市内の中山間地域等における耕作放棄の発生を防止し多面的機能を確保するため、集落協定等に基づき、農業生産活動等を行う農業者等への直接支払に要する経費を特別交付税の額の算定の対象となる経費として23年度45,086,000円、24年度45,759,000円で岡山県に報告し、同県は、その審査を行い、総務省に送付していた。そして、同市は、同経費について、23年度27,693,000円、24年度27,885,000円の特別交付税の交付を受けていた。その際、同市の事業担当は、同市の特別交付税担当を経由せず、同県の事業担当に上記の金額を報告していた。同県の事業担当は、この報告に基づき、特別交付税の額の算定資料等を作成して、同県の特別交付税担当に提出しており、同県の特別交付税担当は、同県の過疎債担当から過疎債ソフト経費に係る情報を十分に確認することなく、上記の算定事項を含む算定資料を取りまとめて、総務省に送付していた。

一方、同市は、上記の経費について、23年度40,000,000円、24年度40,800,000円を過疎債ソフト事業として同県と協議を行い、同県の同意を得て、財政融資資金から同額を借り入れていた。

その結果、同市は、誤って過疎債ソフト経費を算定対象に含めていて、特別交付税計55,578,000円が過大に交付されていた。

(是正改善を必要とする事態)

以上のように、特別交付税の額の算定において、過疎債ソフト経費を算定の対象に含めていたため、普通交付税による地方財政措置との重複が生じ、特別交付税が過大に交付されている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 貴省において、都道府県及び市町村に対して、特別交付税の額の算定資料等の作成等に当たり、過疎債ソフト経費は特別交付税の額の算定の対象とならないことについての周知が十分でなかったこと

イ 県において、特別交付税の額の算定資料等の審査及び過疎債の発行に係る協議等における確認に当たり、関係する担当者間での必要な情報の共有が不足していたことにより審査及び確認が十分でなかったこと

ウ 市町村において、特別交付税の額の算定資料等及び過疎債の起債計画書等の作成に当たり、関係する担当者間での必要な情報の共有が不足していたことにより確認が十分でなかったこと

エ 市町村において、一部の特別交付税の額の算定事項について、特別交付税の額の算定資料等の作成に関する情報を県に報告する際に、特別交付税担当を経由していなかったこと

3 本院が求める是正改善の処置

過疎地域において、地域医療の確保、集落の維持及び活性化その他の住民が将来にわたり安全に安心して暮らすことのできる地域社会の実現を図ることは重要な課題であり、今後も、過疎債ソフト事業は全国的に幅広く実施されることが見込まれる。

ついては、貴省において、特別交付税の額の算定が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 特別交付税の額の算定資料等に点検項目を設けた上で通知を発するなどして、都道府県及び市町村における特別交付税の額の算定資料等の作成等に当たり、過疎債ソフト経費は特別交付税の額の算定の対象とならないことを周知すること

イ 都道府県に対して、特別交付税の額の算定資料等の審査及び過疎債の発行に係る協議等における確認に当たり、関係する担当者が必要な情報を共有することにより、十分な審査及び確認を適切に行うよう助言すること

ウ 市町村に対して、特別交付税の額の算定資料等及び過疎債の起債計画書等の作成に当たり、関係する担当者が必要な情報を共有することにより、十分な確認を適切に行うよう助言すること

エ 市町村に対して、全ての特別交付税の額の算定事項について、当該市町村の特別交付税担当において特別交付税の額の算定資料等の作成に関する情報を確認し、都道府県に報告するよう助言すること

オ 交付税検査の実施に当たり、管内の市町村に交付された特別交付税の額の算定において、過疎債ソフト経費が対象経費とされていないことの確認を適切に行うよう都道府県に対して助言するとともに、政令指定都市に交付された特別交付税の額の算定について、上記のとおり、確認を適切に行うこと