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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) 震災復興特別交付税の額の算定に当たり、一般単独災害復旧経費の算定対象となる経費の確認を適切に行うなどして、その算定が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
交付税及び譲与税配付金特別会計(交付税及び譲与税配付金勘定) (項)地方交付税交付金
部局等
総務本省
交付の根拠
地方交付税法(昭和25 年法律第211 号)、東日本大震災に対処する等のための平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律(平成23 年法律第41 号)
震災復興特別交付税の概要
東日本大震災に係る災害復旧事業、復興事業その他の事業の実施のため特別の財政需要があることなどを考慮して地方団体に対して交付する特別交付税
交付先
県2 、市14、村1
上記の交付先に交付された一般単独災害復旧経費に係る震災復興特別交付税交付額
210 億9078 万余円(平成23、24 両年度)
上記のうち過大に交付された震災復興特別交付税の額
6 億2571 万円
【是正改善の処置を求めたものの全文】

震災復興特別交付税の額の算定における一般単独災害復旧経費の確認等について

(平成25年10月29日付け 総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 震災復興特別交付税の概要等

(1) 震災復興特別交付税の概要

貴省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)及び「東日本大震災に対処する等のための平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律」(平成23年法律第41号)に基づき、東日本大震災(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。以下同じ。)に係る災害復旧事業、復興事業その他の事業(以下「災害復旧事業等」という。)の実施のため特別の財政需要があることなどを考慮して道府県及び市町村に対して特別交付税(以下、この特別交付税を「震災復興特別交付税」という。)を交付している。この震災復興特別交付税は、時限的な税制措置を講ずることなどにより特別に財源を確保した上で、東日本大震災の災害復旧事業等に係る道府県及び市町村の負担額等について対処するために創設された財政措置である。そして、貴省は、23年度8134億4852万余円、24年度7645億3608万余円、計1兆5779億8460万余円を道府県及び市町村に交付している。

(2) 震災復興特別交付税の算定の対象となる経費等

震災復興特別交付税の算定の対象となる主な経費は、国の補助金等を受けて実施する事業に要する経費のうち、道府県及び市町村が負担する額として総務大臣が調査した額(以下「補助事業等に係る地方負担額」という。)、国の補助金等を受けないで実施する災害復旧等事業に要する経費のうち、地方財政法(昭和23年法律第109号)第5条第4号の規定により地方債をもってその財源とすることができる額として総務大臣が調査した額(以下「一般単独災害復旧経費」という。)となっており、いずれの場合にも道府県及び市町村の負担額の全額について震災復興特別交付税が交付されている。

また、地方債同意等基準等によれば、地方単独事業であって、地方債を財源とすることができる経費の額(以下「起債対象事業費」という。)からは寄附金等の特定財源は控除することになっており、起債対象となる災害復旧等事業は地方団体が所有し、かつ、管理する公共施設及び公用施設を原形に復旧する事業とされている。そして、一般単独災害復旧経費については地方単独事業であって、地方債を財源とすることができる経費であることから起債対象事業費に該当することになる。

(3) 震災復興特別交付税の額の算定等

貴省は、道府県及び市町村に交付すべき震災復興特別交付税の額を算定するために、「地方団体に対して交付すべき平成二十三年度分の震災復興特別交付税の額の算定方法、決定時期及び決定額並びに交付時期及び交付額の特例等に関する省令」(平成23年総務省令第155号)等において、特別の財政需要として算定の対象となる事項(以下「算定事項」という。)を定めている。

また、貴省は、算定事項について財政需要に関する基礎資料(以下「算定資料」という。)の様式を作成して都道府県に送付している。このうち、一般単独災害復旧経費に係る算定資料では道府県及び市町村の事務作業量の軽減を図るため、記載要領において、算定資料に添付すべき経費の内容を示す資料は、任意の資料で足りるものとしている。

道府県は、当該道府県に該当する算定事項についての算定資料等を作成するなどして貴省に提出している。また、市町村は、当該市町村に該当する算定事項についての算定資料等を作成するなどして都道府県に提出して、都道府県は、管内市町村から提出された算定資料等の審査を行い、貴省に送付している。そして、貴省は、道府県から提出及び都道府県から送付された算定資料等により震災復興特別交付税の額の算定を行っている。

道府県及び市町村では、上記の算定資料の作成に当たり、通常、震災復興特別交付税の担当部局が、災害復旧等事業の担当部局から算定対象となる災害復旧等事業に係る経費の情報等の提供を受け、これに基づいて算定資料を作成している。その際、震災復興特別交付税の担当部局及び災害復旧等事業の担当部局は、それぞれ、算定対象となる経費が起債対象事業費であるかなどについて、必要に応じて地方債の担当部局等に確認している。また、都道府県では、算定資料等の審査に当たり、審査を担当する部局が必要に応じて地方債の担当部局等に算定対象となる経費であるかなどについて確認している。

(4) 交付税検査

貴省及び都道府県は、地方交付税法第17条の3の規定に基づき、地方交付税の算定の正確性を確保して、その配分の公正を期することを目的として、地方交付税の交付後において、地方交付税の額の算定資料に関する検査(以下「交付税検査」という。)を行っている。そして、都道府県分及び政令指定都市分については貴省が交付税検査を行い、政令指定都市を除く市町村分については都道府県が交付税検査を行って、その結果を貴省に報告することとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、震災復興特別交付税の算定事項のうち一般単独災害復旧経費について、東日本大震災に係る災害復旧事業等に該当しない経費や補助金等の交付を受けて実施する事業に要する経費を含めていないかなどに着眼して、6県(注1)及び8道県(注2)管内72市町村において、当該地方団体に交付された一般単独災害復旧経費に係る震災復興特別交付税23年度568億2148万余円、24年度85億9154万余円、計654億1303万余円を対象として、震災復興特別交付税の額の算定資料等により会計実地検査を行うとともに、貴省において、一般単独災害復旧経費の算定対象となる経費について聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
6県  青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県
(注2)
8道県  北海道、青森、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県
(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 東日本大震災に係る災害復旧事業等に該当しない経費を一般単独災害復旧経費の算定対象としているもの

1県6市(注3)過大に交付されていた震災復興特別交付税の額 9812万余円

1県6市は、東日本大震災に係る災害復旧事業に要した経費として計9812万余円を一般単独災害復旧経費の算定対象に含めて貴省に報告するなどしていた。

しかし、上記の経費は、東日本大震災の被害を受けていない設備等の工事であったり、老朽化していた設備を新たに設置する工事であったりしたものなどに係る経費であったことから、これらに要した経費は東日本大震災に係る災害復旧事業等に該当しない経費であるにもかかわらず、算定資料の作成に当たり、確認が十分でなかったことなどのため、上記の1県6市は、誤ってこれを一般単独災害復旧経費に含めていた。

したがって、一般単独災害復旧経費計9812万余円が過大に報告されていたため、震災復興特別交付税計9812万余円が過大に交付されていた。

(注3)
1県6市  栃木県、村山、石岡、真岡、伊勢崎、さいたま、銚子各市
<事例1>

栃木県は、県立高校の校舎等の災害復旧事業に要するなどした経費について、平成23、24両年度計23億5614万余円を一般単独災害復旧経費の算定対象として貴省に報告しており、同額の震災復興特別交付税の交付を受けていた。

そして、同県は、一般単独災害復旧経費の中に、県立高校のFF暖房設備設置工事等に要した経費4922万余円を含めていた。

しかし、上記の工事等は、老朽化していた設備を新たに設置するものであって、東日本大震災の被害を受けていない設備の工事であったことなどから、これに要するなどした経費は東日本大震災に係る災害復旧事業等に該当しない経費であるにもかかわらず、算定資料の作成に当たり、確認が十分でなかったことなどのため、同県は、誤ってこれを一般単独災害復旧経費に含めていた。

したがって、一般単独災害復旧経費4922万余円が過大に報告されていたため、震災復興特別交付税4922万余円が過大に交付されていた。

(2) 補助金等の交付を受けて実施する事業に要する経費を一般単独災害復旧経費の算定対象としているもの

1県6市(注4)過大に交付されていた震災復興特別交付税の額 1億9351万余円

1県6市は、東日本大震災に係る災害復旧事業に要した経費計1億9351万余円を一般単独災害復旧経費の算定対象に含めて貴省に報告するなどしていた。

しかし、上記の経費は、補助金等の交付を受けて実施する事業に要する経費であったことから、一般単独災害復旧経費の算定対象とはならないにもかかわらず、算定資料の作成に当たり、震災復興特別交付税の担当部局と算定対象となる災害復旧事業の担当部局との間で算定対象とならない経費についての連絡が十分に行われていなかったことなどのため、上記の1県6市は、誤ってこれを一般単独災害復旧経費に含めていた。

したがって、一般単独災害復旧経費計1億9351万余円が過大に報告されていたため、震災復興特別交付税計1億9351万余円が過大に交付されていた。なお、前記の1県6市は、前記の経費を対象に、補助金等と補助事業等に係る地方負担額の震災復興特別交付税として同額の交付を受けていた。

(注4)
1県6市  千葉県、三沢、水戸、石岡、ひたちなか、宇都宮、浦安各市
<事例2>

宇都宮市は、市立小学校の校舎等の災害復旧事業に要するなどした経費について、平成23年度2億1387万余円を一般単独災害復旧経費の算定対象として貴省に報告するなどしており、同額の震災復興特別交付税の交付を受けていた。

そして、同市は、上記の一般単独災害復旧経費の中に、市立小学校に建設した仮設校舎の給排水設備及び電気設備工事に要した経費3581万余円を含めていた。

しかし、上記の工事は、補助事業として公立諸学校建物其他災害復旧費補助金2387万余円の交付を受けて実施することとされており、補助事業等に係る地方負担額の震災復興特別交付税1193万余円の交付を受けていた。このため、同工事に要した経費は、一般単独災害復旧経費の算定対象には含まれないことになるにもかかわらず、震災復興特別交付税の担当部局と算定対象となる災害復旧事業の担当部局との間で算定対象とならない経費についての連絡が十分に行われていなかったことなどのため、同市は、誤ってこれを一般単独災害復旧経費に含めていた。

したがって、一般単独災害復旧経費3581万余円が過大に報告されていたため、震災復興特別交付税3581万余円が過大に交付されていた。

(3) 起債対象事業費とは認められない経費を一般単独災害復旧経費の算定対象としているもの

1県5市1村(注5)過大に交付されていた震災復興特別交付税の額 1億9332万余円

1県5市1村は、東日本大震災に係る災害復旧事業に要した経費計1億9332万余円を一般単独災害復旧経費の算定対象に含めて貴省に報告するなどしていた。

しかし、上記の経費は、寄附金等の特定財源を充当する事業費、地方団体が所有していない施設の災害復旧工事費等であり、地方債同意等基準等によれば、起債対象事業費とは認められないこととされていることから、一般単独災害復旧経費の算定対象とはならないにもかかわらず、算定資料の作成に当たり、震災復興特別交付税の担当部局、算定対象となる災害復旧事業の担当部局及び地方債の担当部局との間で算定対象とならない経費についての連絡が十分に行われていなかったことなどのため、上記の1県5市1村は、誤ってこれを一般単独災害復旧経費に含めていた。

したがって、一般単独災害復旧経費計1億9332万余円が過大に報告されていたため、震災復興特別交付税計1億9332万余円が過大に交付されていた。

(注5)
1県5市1村  栃木県、水戸、石岡、太田、久喜、浦安各市、那珂郡東海村

(4) 同一の災害復旧事業に要する経費を重複して一般単独災害復旧経費の算定対象としているもの

2市(注6)過大に交付されていた震災復興特別交付税の額 1億4074万余円

2市は、東日本大震災に係る災害復旧事業に要した経費計1億4074万余円を一般単独災害復旧経費の算定対象に含めて貴省に報告するなどしていた。

しかし、算定資料を作成するに当たり、同一の災害復旧事業を複数の部局において異なる事業名で管理していたことなどのため、上記の2市は、誤って同一の経費を重複して一般単独災害復旧経費に含めていた。

したがって、一般単独災害復旧経費計1億4074万余円が過大に報告されていたため、震災復興特別交付税計1億4074万余円が過大に交付されていた。

(注6)
2市  水戸、常陸太田両市

以上のとおり、一般単独災害復旧経費の算定対象に東日本大震災に係る災害復旧事業等に該当しない経費、補助金等の交付を受けて実施する事業に要する経費及び起債対象事業費とは認められない経費を含めていたり、同一の災害復旧事業に要する経費を重複して含めていたりしていて、23、24両年度に2県14市1村(注7)に交付された一般単独災害復旧経費に係る震災復興特別交付税計210億9078万余円のうち、震災復興特別交付税計6億2571万余円が過大に交付されていた。

(注7)
2県14市1村  栃木、千葉両県、三沢、村山、水戸、石岡、常陸太田、ひたちなか、宇都宮、真岡、伊勢崎、太田、さいたま、久喜、銚子、浦安各市、那珂郡東海村
(是正改善を必要とする事態)

以上のように、震災復興特別交付税の額の算定において、一般単独災害復旧経費の算定対象に東日本大震災に係る災害復旧事業等に該当しない経費、補助金等の交付を受けて実施する事業に要する経費及び起債対象事業費とは認められない経費を含めていたり、同一の災害復旧事業に要する経費を重複して含めていたりしていて、震災復興特別交付税が過大に交付されている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

  • ア 貴省において、一般単独災害復旧経費の算定対象とならない経費を算定資料の記載要領等に具体的に明記するなどして都道府県及び市町村に算定対象となる経費の範囲を十分に周知していなかったこと
  • イ 貴省において、県から提出された一般単独災害復旧経費の算定資料等の審査が十分でなかったこと
  • ウ 県において、市村から提出された一般単独災害復旧経費の算定資料等の審査が十分でなかったこと
  • エ 県及び市村において、震災復興特別交付税の一般単独災害復旧経費に係る算定資料の作成に当たり、一般単独災害復旧経費の算定対象となる経費についての理解が十分でなかったり、算定資料に計上した経費について関係する部局間での連絡が不足していたりしていたことなどにより十分な確認を行っていなかったこと

3 本院が求める是正改善の処置

東日本大震災の災害復旧事業等に係る道府県及び市町村の負担額等については、時限的な税制措置を講ずることなどにより特別に財源を確保した上で対処することとされたことを踏まえ、震災復興特別交付税を創設して財政措置することとされたものであり、道府県及び市町村における災害復旧事業等の進捗に伴い、今後も多額の震災復興特別交付税が交付されることが見込まれる。

ついては、貴省において、今後の震災復興特別交付税の額の算定が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

  • ア 一般単独災害復旧経費の算定対象とならない経費について、算定資料の記載要領等に具体的に明記したり、算定資料に算定対象となる経費であることを確認する点検項目欄を設けたりするとともに、都道府県及び市町村に対して、算定の誤りの例を通知したり、震災復興特別交付税に関する会議において説明したりすることにより、一般単独災害復旧経費の算定対象となる経費の範囲を周知すること
  • イ 道府県から提出された一般単独災害復旧経費の算定資料等の審査に当たり、上記アの点検項目欄を活用することにより、算定対象となる経費であるかの確認を適切に行うこと
  • ウ 都道府県に対して、一般単独災害復旧経費の算定資料等の作成及び市町村から提出された算定資料等の審査に当たり、関係する部局が、算定対象となる経費の範囲、算定対象事業等の必要な情報を共有すること及び前記アの点検項目欄を活用することにより、算定対象となる経費であるかの確認を適切に行うよう助言すること
  • エ 市町村に対して、一般単独災害復旧経費の算定資料等の作成に当たり、上記ウのとおり、算定対象となる経費であるかの確認を適切に行うよう助言すること
  • オ 交付税検査の実施に当たり、一般単独災害復旧経費についての検査項目や確認事項等を定めて、管内の市町村に交付された震災復興特別交付税が算定対象となる経費であるかの確認を適切に行うよう都道府県に対して助言するとともに、道府県及び政令指定都市に交付された震災復興特別交付税について、上記のとおり確認を適切に行うこと