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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第5 総務省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

携帯電話等エリア整備事業の実施に当たり、事業主体に対して高速ディジタル伝送サービス等の継続利用に係る割引制度の適用を受けるよう指導したり、補助対象事業費の減額に伴う国庫補助金相当額の返還を適時に求めたりして、補助事業が適切かつ経済的に実施されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計(組織)総務本省 (項)電波利用料財源電波監視等実施費
部局等
総務本省
補助の根拠
電波法(昭和25 年法律第131 号)
補助事業者(事業主体)
社団法人1 、会社3 、計4 事業主体
補助事業
携帯電話等エリア整備事業
補助事業の概要
携帯電話等の無線通信の利用可能な地域の拡大のために、過疎地、辺地等の条件不利地域において、無線通信に必要な伝送用専用線等を整備する事業
割引制度が適用されていなかった事業数及び補助対象事業費
282 事業113 億4450 万余円(平成18 年度〜23 年度)
割引制度の適用を受けていた場合の補助対象事業費の開差額
9 億4882 万余円(平成18 年度〜23 年度)
上記に対する国庫補助金相当額
6 億0894 万円
通信サービスの利用料が減額されていた事業数及び補助対象事業費
63 事業26 億6846 万余円(平成18 年度〜22 年度)
減額していた補助対象事業費
985 万余円(平成18 年度〜22 年度)
上記に対する国庫補助金相当額
622 万円

1 携帯電話等エリア整備事業の概要

(1) 事業の概要

総務省は、電波法(昭和25年法律第131号)に基づき、携帯電話等の無線通信の利用可能な地域の拡大を図るために、平成17年度から、携帯電話等エリア整備事業を実施する事業主体に対して、事業に要する経費の一部として、無線システム普及支援事業費等補助金(21年度以前は電波遮へい対策事業費等補助金)を交付している。

この事業のうち、基地局と電話交換局等とを接続する伝送用専用線を整備する事業(以下「本件補助事業」という。)の補助対象経費は、無線システム普及支援事業費等補助金交付要綱(平成17年総基移第380号。21年度以前は電波遮へい対策事業費等補助金交付要綱)、総務省が事業主体に配布している説明資料等(以下、これらを合わせて「交付要綱等」という。)によると、過疎地、辺地等の条件不利地域において、他の電気通信事業者から電気通信役務の提供を受け、又は他人の所有する光ファイバケーブル等を賃借するために必要な経費等とされており、事業開始から10年間分の経費等に係る国庫補助金を事業開始年度に事業主体に対して一括して交付することとされている。

本件補助事業の事業主体は、17年度から20年度までは社団法人移動通信基盤整備協会(以下「協会」という。)、21年度以降は株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(25年10月1日以降は株式会社NTTドコモ。以下「ドコモ」という。)、KDDI株式会社(以下「KDDI」という。)、ソフトバンクモバイル株式会社(以下「ソフトバンク」といい、協会、ドコモ、KDDI及びソフトバンクを合わせて「4事業主体」という。)等となっている。

(2) 事業主体と電気通信事業者等との高速ディジタル伝送サービス等に係る契約

4事業主体は、本件補助事業の実施に当たり、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社(以下、両社を合わせて「NTT東西」という。)等の電気通信事業者(以下「中継回線事業者」という。)等が一般利用者に対して提供している高速ディジタル伝送サービス等(以下「通信サービス」という。)を利用している。そして、事業主体は、通信サービスの利用に当たり、あらかじめ中継回線事業者等との間で、通信サービスの最短利用期間を10年とすること、通信サービスの利用料等の基本的な契約事項は一般利用者に対して適用される契約約款を準用することなどを定めた基本契約を締結するなどしている。

(3) 通信サービスの利用料の割引制度

中継回線事業者は、上記の約款において、一般利用者が通信サービスを3年間又は6年間継続して利用する旨をあらかじめ申し出た場合に利用料を割り引く制度(以下「割引制度」という。)を設けており、6年間以上の継続利用で利用料を11%割り引くなどとしている。

(4) 通信サービスの利用料の減額制度

中継回線事業者は、通信サービスの利用者が通信サービスを全く利用できない状態となった場合等には、その時間等に応じて、利用者に対してその月の利用料の請求額のうち返還の対象となる料金を減額する制度(以下「サービス品質保証制度」という。)を設けている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、本件補助事業において、事業主体が割引制度の適用を受けているか、補助対象事業費の算定等が適切に行われているかなどに着眼して、17年度から23年度までの間に4事業主体が実施した591事業(補助対象事業費計304億1614万余円、国庫補助金計195億4836万余円)を対象として、総務本省及び4事業主体において、交付申請書、実績報告書、契約書等の関係書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、297事業において次のような事態が見受けられた(ア及びイの事態の間には、重複しているものがある。)。

  • ア 事業主体が割引制度の適用を受けていなかったもの

    総務省は、前記のとおり、事業主体に対して10年間分の経費等に係る国庫補助金を一括して交付している一方、交付要綱等において割引制度の適用を受けるよう定めていなかった。このことなどから、協会、ドコモ及びKDDIは、NTT東西との間で締結した基本契約等において、割引制度の適用を受けないこととしており、通信サービスを利用した18年度から23年度までの間に実施した282事業(補助対象事業費計113億4450万余円、国庫補助金計73億1180万余円)において、割引制度の適用を受けていなかった。なお、ソフトバンクは、NTT東西との間で締結した基本契約において、事業開始当初から割引制度の適用を受けることとしていた。

    このことから、協会、ドコモ及びKDDIが事業開始から割引制度の適用を受けていたとすれば、補助対象事業費は103億9567万余円(国庫補助金相当額67億0285万余円)となり、前記の補助対象事業費との間に9億4882万余円(国庫補助金相当額6億0894万余円)の開差額が生じていたと認められた。

  • イ 補助対象事業費が減額していたことを把握しておらず、適時に国庫補助金相当額の返還を求めていなかったもの

    4事業主体が18年度から22年度までの間に実施した計63事業(補助対象事業費計26億6846万余円、国庫補助金計17億2212万余円)においては、サービス品質保証制度が適用されるなどして通信サービスの利用料が減額されており、このため補助対象事業費が減額していた。

    しかし、総務省は、本件補助事業の実施に当たり、補助対象事業費が増減することはないとして、通信サービスの利用料が減額されていないか確認していなかったため、上記の事態を把握しておらず、減額していた補助対象事業費985万余円に係る国庫補助金相当額622万余円を適時に返還させていなかった。

    このように、通信サービスの利用料について割引制度の適用を受けていなかったり、補助対象事業費の減額に伴う国庫補助金相当額の返還が適時に行われていなかったりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、総務省において、通信サービスの利用料について割引制度の適用を受けることの必要性を事業主体に対して十分に指導していなかったこと、事業主体の通信サービスの利用料が減額されていたことを確認しておらず、補助対象事業費の減額に伴う国庫補助金相当額の返還の取扱いについて定めていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、総務省は、25年7月までに減額していた補助対象事業費に係る国庫補助金相当額を事業主体から返還させる処置を講ずるとともに、同年6月に事業主体に事務連絡を発して、通信サービスの利用料について割引制度の適用を受けるよう指導したり、毎年度、事業主体から当該年度における支払実績額を報告させて、補助対象事業費が減額していた場合は差額を返還させることとしたりして、本件補助事業を適切かつ経済的に実施するための処置を講じた。