外務省は、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(以下「JPF」という。)と協力実施契約を締結し、JPFに加盟するNGOが海外で行う緊急人道支援事業、JPFが実施するモニタリング事業及びJPFの運営等に要する経費を助成するため、毎年度、JPFに資金を供与している。このうち、緊急人道支援事業は、自然災害、地域紛争等の発生時に被災者、難民等に対する支援等を目的として、初動調査、現地の支援体制の立ち上げ、物資の配布、役務の提供等を行うものであり、また、モニタリング事業は、緊急人道支援事業の進捗管理等を行うものである(以下、緊急人道支援事業とモニタリング事業とを合わせて「支援事業等」という。)。
JPFは、外務省から供与を受けた資金をモニタリング事業や運営等に要する経費に充てるとともに、同資金を財源として、緊急人道支援事業を行うNGOに対して助成金を供与している。
前記の外務省とJPFとの協力実施契約によれば、JPFが緊急人道支援事業を行うNGOに対して助成金を供与するに当たっては、JPFがNGOにより作成された事業計画を外務省に提出して審査及び承認を経ることとされており、JPFは、当該事業計画の範囲内でNGOに助成金を供与することができるとされている。
JPFは、NGOが緊急人道支援事業の終了後に作成する事業終了報告書、監査報告書等の内容を確認の上、実績額を確定し、助成金を精算することとされている。
また、モニタリング事業については、JPFは当該事業の終了後、実績額を確定し、供与を受けた資金を精算することとされている。
そして、支援事業等について、精算の結果、残余金が生じた場合には、JPFは、当該残余金から外部監査に係る費用を除いた額を外務省に返還しなければならないとされている。
本院は、効率性等の観点から、支援事業等について精算の結果発生した残余金がJPFに滞留していないかなどに着眼して、平成20年度から24年度までの間に支援事業等に供与されるなどした311事業に係る助成金等計112億8521万余円を対象として、外務本省において協力実施契約の内容、残余金の返還状況等の説明を聴取したり、JPF事務局において支援事業等の実績額の確定状況を確認したりするなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)検査したところ、21年度から24年度までの間に実施された支援事業等について、次表のとおり、24年度末現在で111事業において残余金2億5654万余円が生じていたにもかかわらず、全てJPFが保有したままとなっていた。
表 支援事業等の実績額の確定状況(平成24 年度末現在)
年度 | 平成21 | 22 | 23 | 24 | 計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
支援事業等の数 | 87 | 53 | 64 | 56 | 260 | ||
支援事業等に供与されるなどした助成金等の額 | 2,489,120,842 | 1,909,820,323 | 2,503,132,875 | 3,068,312,955 | 9,970,386,995 | ||
うち実績額が確定していた事業 | 77 | 32 | 15 | 3 | 127 | ||
助成金等の額 | 1,847,161,79 | 3 599,730,095 | 379,670,464 | 18,424,945 | 2,844,987,297 | ||
うち残余金が生じていた事業 | 66 | 28 | 14 | 3 | 111 | ||
助成金等の額 | 1,619,971,739 | 543,289,920 | 378,929,716 | 18,424,945 | 2,560,616,320 | ||
実績額 | 1,487,504,753 | 477,809,091 | 325,761,129 | 12,996,594 | 2,304,071,567 | ||
残余金の額 | 132,466,986 | 65,480,829 | 53,168,587 | 5,428,351 | 256,544,753 |
このようなことから、JPFの残余金の返還方法等について検査したところ、JPFは、各年度における助成金等の供与の対象となった支援事業等が全て終了し、全ての支援事業等について実績額を確定した後、当該年度に係る残余金の総額を確定して、これを一括して外務省に返還することにしていた。このため、前記の残余金2億5654万余円については、同一の年度に実施していた支援事業等のうち実績額が確定していない事業があることから、JPFが保有したままとなっていた。
以上のように、JPFにおいて、各年度の助成金等の供与の対象となった支援事業等が全て終了し実績額を確定した後、当該年度に係る残余金の総額を確定して、これを一括して外務省に返還することにしていたため、残余金2億5654万余円がJPFに滞留していたのに、外務省が速やかに返還させていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
(発生原因)このような事態が生じていたのは、外務省において、JPFから実績額が確定した支援事業等について報告を受けていたのに、実績額が確定した残余金を速やかにJPFから外務省へ返還させるための措置を講じていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、外務省は、JPFが保有したままとなっていた残余金から外部監査に係る費用を除いた額を、25年8月に国庫に返還させるとともに、今後は、毎年度末時点でJPFが保有している残余金を速やかに国庫に返還させることとする処置を講じた。