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租税の徴収に当たり、徴収額に不足があったもの[76税務署](26)


会計名及び科目
一般会計国税収納金整理資金(款)歳入組入資金受入(項)各税受入金
部局等
76 税務署
納税者
119 人
徴収不足額
397,197,852 円(平成19 年度~24 年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

平成24年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は54兆2991億余円となっている。このうち源泉所得税(復興特別所得税(注1)を含む。)は13兆3076億余円、申告所得税(復興特別所得税を含む。)は2兆7163億余円、法人税は10兆8707億余円、相続税・贈与税は1兆6135億余円、消費税及地方消費税は16兆4295億余円となっていて、これら各税の合計額は44兆9378億余円となり、全体の82.7%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から49年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で徴収されるもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等により検査するとともに、全国の12国税局等及び524税務署のうち12国税局等及び103税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 徴収不足の事態

検査の結果、76税務署において、納税者119人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、119事項計397,197,852円(19年度から24年度まで)不足していて、不当と認められる。

これを、税目別に示すと表のとおりである。

表 税目別の徴収不足額等

税目 事項数 徴収不足額
源泉所得税 3 11,129,352
申告所得税 26 104,958,300
法人税 72 231,576,700
相続税・贈与税 12 38,130,600
消費税 6 11,402,900
119 397,197,852

なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、全て徴収決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、前記の76税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この119事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が3事項あった。これらは、配当及び報酬に関する事態である。

配当及び報酬の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収して、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。

この配当及び報酬に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計11,129,352円あった。その内容は、自己株式の取得による配当とみなされる金額や報酬の支払額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、納税の告知をしていなかったものである。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が26事項あった。この内訳は、不動産所得に関する事態が14事項、譲渡所得に関する事態が7事項及びその他に関する事態が5事項である。

(ア) 不動産所得に関する事態

個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が有する減価償却資産の償却費として不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該資産について定められた耐用年数等に基づいて計算した金額とすることとなっている。

この不動産所得に関して、徴収不足になっていた事態が14事項計61,369,300円あった。その主な内容は、減価償却費の計算を誤って必要経費の額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例1>不動産所得の必要経費の額を過大に計上していた事態

納税者Aは、平成21年分から23年分までの申告に当たり、不動産所得の計算において、相続により取得した貸付けの用に供している建物について、耐用年数を15年とするなどして計算した減価償却費を必要経費に算入し、各年分の総収入金額からこれらの必要経費等を差し引き、不動産所得の金額を算出していた。

しかし、同人の相続税の申告書等によれば、当該建物の構造は鉄筋コンクリート造であり、住宅用に係る耐用年数は47年であることから、これに基づくなどして減価償却費の計算を行わなければならない。したがって、このことにより、21年分から23年分までの減価償却費が過大となり不動産所得の金額が過小となっていたのに、これを見過ごしたため、申告所得税額計9,819,300円が徴収不足になっていた。

(イ) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を、当該譲渡した資産に係る譲渡利益金額を超えない範囲で取得費に加算する特例を適用できることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計27,794,600円あった。その内容は、取得費に加算できる相続税額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

上記(ア)及び(イ)のほか、事業所得、雑所得等に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計15,794,400円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足になっていた事態が72事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関する事態が23事項、受取配当等の益金不算入に関する事態が9事項及びその他に関する事態が40事項である。

(ア) 法人税額の特別控除に関する事態

法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。このうち、青色申告書を提出する資本金又は出資金の額が3000万円以下の中小企業者等(以下「特定中小企業者等」という。)が特定の機械等を取得して事業の用に供した場合には、その事業年度において、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額を限度として、取得価額に一定の割合を乗じた金額を法人税額から控除できることとなっている。

また、青色申告書を提出する法人に損金の額に算入した試験研究費がある場合には、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額等を限度として、試験研究費に一定の割合を乗じた金額(以下「税額控除限度額」という。)を法人税額から控除できることとなっている。そして、前事業年度において控除できなかった税額控除限度額があるときには、当該事業年度の試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超える場合において、当該事業年度に繰り越して控除できることなどとなっている。

この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が23事項計122,741,200円あった。その主な内容は、次のとおりである。

  • a 資本金等の額が3000万円を超えていて特定中小企業者等に該当しない法人が特定中小企業者等が機械等を取得して事業の用に供した場合の法人税額の特別控除を行っているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
  • b 試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超えていない事業年度において、前事業年度から繰り越した税額控除限度額を誤って控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
<事例2> 試験研究費に係る法人税額の特別控除の規定の適用を誤っていた事態

B会社は、平成22年4月から23年3月までの事業年度分の申告に当たり、試験研究費に係る法人税額の特別控除の規定を適用して、当該事業年度の税額控除限度額及び前事業年度から繰り越した税額控除限度額を法人税額から控除していた。

しかし、同会社の申告書等によれば、当該事業年度の試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超えていないことから、前事業年度から繰り越した税額控除限度額については上記特別控除の規定を適用できず、当該事業年度の法人税額から誤って控除していたのに、これを見過ごしたため、法人税額44,245,600円が徴収不足になっていた。

(イ) 受取配当等の益金不算入に関する事態

法人が外国法人、公益法人等以外の法人(以下「内国法人」という。)から受ける配当等の金額(注2)、証券投資信託の収益の分配金のうち内国法人から受ける配当等から成る部分の金額等については、所定の方法により計算した金額を所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととなっている。ただし、証券投資信託のうち特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金については、その全額が益金不算入の対象とならないこととなっている。

(注2)
 配当等の金額  外国法人のうち外国子会社から受ける配当等の金額については、海外市場で獲得する利益を我が国に還流させるため、別途二重課税排除の制度が導入されており、所定の方法により益金の額に算入しないこととなっている。

この受取配当等の益金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計42,123,100円あった。その主な内容は、受取配当等の益金不算入の対象とならない特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金や外国法人から受けた配当の金額を受取配当等の益金不算入額としているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例3> 外国法人から受けた配当の金額を受取配当等の益金不算入額としていた事態

C信用金庫は、平成21年4月から22年3月までの事業年度分の申告に当たり、外国法人から受けた配当の金額を受取配当等の益金不算入額に含めて所得の金額を計算していた。

しかし、外国法人から受けた配当の金額は、受取配当等の益金不算入の対象とならないため、所得金額が過小となっているなどしていたのに、これを見過ごしたため、法人税額19,943,000円が徴収不足になっていた。

(ウ) その他に関する事態

上記(ア)及び(イ)のほか、役員給与の損金不算入、特定同族会社の留保金等に関して、徴収不足になっていた事態が40事項計66,712,400円あった。

エ 相続税・贈与税

相続税に関して徴収不足になっていた事態が12事項あった。この内訳は、土地建物等の価額に関する事態が7事項及びその他に関する事態が5事項である。

(ア) 土地建物等の価額に関する事態

個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっており、取得した財産の価額は相続又は遺贈により取得した時の時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。そして、土地の利用区分が賃借権及び地上権の目的となっている土地の場合には、その利用区分に応じた減額の補正を行って価額を評価することとなっている。

この土地建物等の価額に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計27,401,300円あった。その主な内容は、賃借権の目的となっている土地について、土地の利用区分を誤って地上権の目的となっている土地として減額の補正を行って価額を評価するなどしているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。

(イ) その他に関する事態

上記(ア)のほか、有価証券の価額及び相続税額の加算に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計10,729,300円あった。

<事例4> 相続税額の加算をしていなかった事態

相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合には、所定の方法により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算するなどした金額をその者の相続税額とすることとなっている。

納税者Dは、平成22年6月相続分の申告に当たり、上記の加算をすることなく、相続により取得した財産に係る相続税額を算出していた。

しかし、申告書等によれば、Dは被相続人の弟であり、一親等の血族及び配偶者以外の者であることから、その相続税額は、所定の方法により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算するなどした金額となるのに、これを見過ごしたため、相続税額6,650,900円が徴収不足になっていた。

オ 消費税

消費税に関して徴収不足になっていた事態が6事項あった。この内訳は、課税売上高の計上に関する事態が3事項及びその他に関する事態が3事項である。

(ア) 課税売上高の計上に関する事態

事業者は、課税の対象となる国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額を課税売上高に計上することとなっている。

この課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計5,167,700円あった。その内容は、事業者が事業用建物の譲渡収入を計上していなかったり、計上額を誤ったりしているのに、これを見過ごしたり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、課税売上高を過小のままとしていたものである。

(イ) その他に関する事態

上記(ア)のほか、課税仕入れに係る消費税額の控除等に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計6,235,200円あった。

これらの徴収不足額を国税局別に示すと次のとおりである。

源泉所得税 申告所得税 法人税相続税 贈与税 消費税
国税局 税務署数 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足
千円 千円 千円 千円 千円 千円
札幌国税局 2 1 3,619 1 766 2 4,386
仙台国税局 2 2 1,306 2 1,306
関東信越国税局 3 2 6,094 1 6,650 3 12,745
東京国税局 34 2 5,762 16 78,045 28 130,320 7 25,988 4 7,729 57 547,845
金沢国税局 4 4 3,302 4 3,302
名古屋国税局 7 3 9,585 8 15,282 1 1,251 12 26,199
大阪国税局 8 10 30,986 10 30,986
広島国税局 2 1 4,592 1 734 2 5,327
高松国税局 2 1 2,032 2 11,982 3 14,015
福岡国税局 7 1 5,367 2 5,775 12 22,562 4 5,491 19 39,197
熊本国税局 5 4 9,543 1 2,422 5 11,965
76 3 11,129 26 104,958 72 231,576 12 38,130 6 11,402 119 397,197