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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第8 財務省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 普通財産の貸付料債権に係る長期の収納未済事案について、進行管理体制の構築を図るなどすることにより、収納未済事案の解消に向けた取組が適切に行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計(部)雑収入 (款)国有財産利用収入 (項)国有財産貸付収入
部局等
財務本省、22 財務局等
普通財産の貸付料債権に係る長期の収納未済事案の概要
普通財産の貸付けに係る貸付料が長期間にわたり滞納となっているもの
収納未済事案の解消に向けた取組が適切に行われていなかった件数及び滞納額
60 件6 億3829 万円(平成24 年度末)

1 制度の概要

(1) 普通財産の貸付けの概要

国有財産は、国の行政目的に直接供用される行政財産とそれ以外の普通財産に分類されている。このうち、普通財産は、売払い、貸付け等の対象となる財産であり、その管理及び処分は国有財産法(昭和23年法律第73号)により、原則として財務省が行うこととなっている。

財務省は普通財産である土地及び建物(以下「土地等」という。)を時価で貸し付けており、その貸付件数は平成24年度末現在で土地27,430件、建物950件、計28,380件に上っている。そして、これらの貸付けについては、継続して貸付けを行っているものが大半を占めている。

(2) 貸付料債権に係る収納未済事案に対する取組の概要

財務(支)局、沖縄総合事務局、財務事務所等(以下「財務局等」という。)は、土地等の貸付料債権に係る収納未済事案について、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)等に基づき管理を行っているが、収納未済事案が累増している状況にあったことから、財務省は、これらの事案の解消を図るため、各財務(支)局及び沖縄総合事務局(以下、これらを「各財務(支)局等」という。)に対して、17年6月に次の①から④までのことなどを定めた「法的措置を前提とした貸付料債権に係る収納未済事案の処理について」(平成17年財務省理財局国有財産審理室事務連絡。以下「17年事務連絡」という。)を発している。

  • ① 滞納者に支払の意思がない場合は、原則として契約を解除すべきであり、支払の意思がある場合でも、一部の金額が返済されているからといって安易に長期の滞納を容認しない。
  • ② 16年度末時点で滞納期間が1年以上の滞納者(以下「既往滞納者」という。)に対しては、履行期限5年以内の即決和解(注1)(以下、単に「即決和解」という。)等の合意又は5年以内に完済可能な支払計画の提出のための折衝を行う。
  • ③ 支払計画の提出がないなど5年以内に債務の完済が見込まれない既往滞納者に対しては、原則として18年6月末までに滞納年数に応じて支払督促、貸付契約の解除の通知(以下「契約解除」という。)等の法的措置を進める。
  • ④ 5年以内に債務の完済が可能な支払計画の提出があった既往滞納者に対しても、原則として18年6月末までに滞納年数に応じて即決和解又は調停による法的措置を進める。

このような取組の中で、17年度に29億3007万余円となっていた収納未済額(ただし、元本に対する延滞金相当額を含まない。)の累計額は、17年度以降減少傾向となっているものの、24年度末現在の累計額は16億8483万余円と依然として多額に上っている。

(注1)
即決和解  民事訴訟法(平成8年法律第109号)第275条に定める訴え提起前の和解

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

土地等の貸付料債権に係る収納未済額の累計額が多額に上っており、また、中でも既往滞納者に係る収納未済額が多くを占めていることなどから、本院は、合規性、効率性等の観点から、既往滞納者に係る収納未済事案の解消に向けた取組が適切に実施されているかなどに着眼して、24年度末現在において滞納している貸付料の累計額(24年度末現在において履行期限の延長が行われている貸付料を含む。以下「元本累計額」という。)が1件当たり100万円以上となっている37財務局等(注2)における206件の既往滞納者に係る収納未済事案を対象として検査を実施した。

検査に当たっては、25財務局等(注3)において、既往滞納者との間の交渉内容を記録した書類等により会計実地検査を行うとともに、残りの12財務局等については、これらの書類等の写しの提出を受け、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(注2)
37財務局等  北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、四国各財務局、福岡財務支局、沖縄総合事務局、旭川、青森、山形、福島、水戸、宇都宮、千葉、東京、横浜、新潟、甲府、長野、富山、静岡、京都、神戸、鳥取、岡山、山口、大分、長崎各財務事務所、立川、横須賀、舞鶴、呉、倉敷、小倉、佐世保各出張所決和解  民事訴訟法(平成8年法律第109号)第275条に定める訴え提起前の和解
(注3)
25財務局等  北海道、東北、関東、東海、近畿、中国各財務局、福岡財務支局、旭川、青森、山形、福島、水戸、宇都宮、千葉、東京、横浜、静岡、京都、神戸、岡山、山口各財務事務所、立川、横須賀、舞鶴、佐世保各出張所
(検査の結果)

24年度末現在における前記206件の収納未済事案に係る元本累計額は計12億2681万余円、元本累計額に対する延滞金相当額は計8億1030万余円、元本累計額と延滞金相当額を合計した額(以下「滞納額」という。)は計20億3711万余円となっている。

財務省における収納未済事案206件の解消に向けた取組の状況についてみると、17年事務連絡の発出から5年超が経過した23年3月末までに契約解除が行われていたものが98件(滞納額計12億3269万余円)ある一方で、契約解除が行われないまま滞納が長期間にわたり継続していたものが108件(同計8億0441万余円)あった。

そして、上記の108件のうち、既往滞納者の死亡により法定相続人の調査等に時間を要するなど、滞納が長期間にわたり継続していることについて特別な事情がある48件(同計1億6612万余円)を除いた22財務局等(注4)の60件(同計6億3829万余円)についてみると、次のような事態が見受けられた。

前記のとおり、17年事務連絡では、5年以内に債務の完済が見込まれない既往滞納者に対しては、原則として18年6月末までに契約解除等の法的措置を進めることなどとされている。

しかし、支払計画を提出していなかったり、5年では債務の完済ができない支払計画を提出していたりしていて、5年以内に債務の完済が見込まれない既往滞納者について、契約解除等の法的措置を進めないままとなっていたものが43件(同計5億8520万余円)、5年以内に債務の完済が可能な支払計画の提出があった既往滞納者について、即決和解等による法的措置を講ずることなく支払計画が守られない状況が継続しているなどしていたものが17件(同計5309万余円)見受けられた。

このように、17年事務連絡に定める収納未済事案の解消に向けた取組が十分に行われないまま滞納が長期間にわたり継続している事態は、滞納額の増加につながるとともに、滞納者に対する取扱いにおいて公平性を欠くことになることなどから適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(注4)
22財務局等  北海道、東北、関東、近畿、中国、四国各財務局、福岡財務支局、沖縄総合事務局、水戸、宇都宮、千葉、横浜、甲府、富山、静岡、鳥取、岡山、長崎各財務事務所、立川、横須賀、倉敷、佐世保各出張所
(発生原因)

このような事態が生じていたのは、既往滞納者ごとに個別の事情はあるものの、財務局等において、17年事務連絡に基づき収納未済事案の解消に向けた取組の実施についての理解が必ずしも十分でなかったこと、同取組が既往滞納者ごとに適切に行われているかについて十分な確認が行われていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、財務省は、25年8月に各財務(支)局等に事務連絡を発し、支払計画の徴求等収納未済事案の解消に向けた取組の趣旨等について改めて周知徹底を図るとともに、財務局等において同取組を適切に行うための進行管理体制の構築を図ることとし、さらに、前記60件の収納未済事案については、財務局等において個別の対応方針を策定することとするなどの処置を講じた。