日本酒造組合中央会(以下「中央会」という。)は、単式蒸留焼酎製造業の近代化を図るための事業として、近代化等支援事業を実施している。この事業は、単式蒸留焼酎製造業者及び単式蒸留焼酎製造業者で構成する事業協同組合等(以下、両者を合わせて「製造業者」という。)が単式蒸留焼酎の製造時に発生する廃棄物(以下「蒸留廃液」という。)を処理するための設備等(以下「蒸留廃液処理設備」という。)の設置等に要する経費を対象(以下、助成の対象となる経費を「助成対象経費」という。)として、その一部(原則として助成対象経費の2分の1)を助成するものであり、蒸留廃液処理設備には、熱を利用して蒸留廃液を濃縮し乾燥させて飼料又は肥料とする濃縮・乾燥有効利用法等の多様な処理方法によるものがある。
そして、国税庁は、清酒製造業等の安定に関する特別措置法(昭和45年法律第77号)等に基づき、単式蒸留焼酎製造業の経営基盤の安定及び酒税の確保に資することを目的として、中央会に対して昭和63年度から平成9年度まで「単式蒸留しようちゆう製造業安定対策費補助金」等を交付しており、中央会はこれらの資金により設置した「単式蒸留しようちゆう業対策基金」(以下「対策基金」という。)の運用益をこの事業の財源としていた。その後、中央会は、15年度から23年度までにこれらの資金の全額を国庫に返納等しており、22年度からは、「単式蒸留しようちゆう製造業近代化事業費等補助金交付要綱」(平成22年国税庁制定)に基づき、毎年度国税庁から交付されている「単式蒸留しようちゆう製造業近代化事業費等補助金」(以下「近代化補助金」という。)等を財源としている。
近代化等支援事業の実施手続は、「清酒製造業等の安定に関する特別措置法に基づく単式蒸留しようちゆうに係る日本酒造組合中央会業務方法書」(平成元年大蔵大臣認可)等により、次のようになっている。
また、中央会は、必要があると認めるときは、製造業者に対して報告を求めることができ、国税庁は、中央会に対して近代化等支援事業に関して監督上必要な命令をすることができることとされている。
中央会は、製造業者において蒸留廃液の自社処理化等を推進して単式蒸留焼酎製造業の近代化を促進するために、近代化等支援事業を多数実施しており、国税庁は中央会に近代化補助金等を交付している。
そこで、本院は、有効性等の観点から、近代化等支援事業により設置された蒸留廃液処理設備が有効に活用されているか、また、中央会において、受給申請に対する審査を十分に行っているか、稼働状況等を把握して指導及び助言を適時適切に行っているかなどに着眼して検査した。
(検査の対象及び方法)検査に当たっては、18年度から23年度までに助成金を100万円以上交付している近代化等支援事業のうち、蒸留廃液処理設備の設置後2年を経過しているなどの15製造業者に対する近代化等支援事業17件(助成対象経費計31億8766万余円、助成金交付額計15億9236万余円、助成金として交付された対策基金の運用益及び近代化補助金相当額(以下、これらを合わせて「国庫補助金等相当額」という。)同額)を対象として、国税庁、中央会及び15製造業者において、助成金受給申請書等の実施手続に係る書類、蒸留廃液処理設備の稼働状況に係る書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)検査したところ、5製造業者に対する近代化等支援事業6件(助成対象経費計7億3045万余円、助成金交付額計3億6522万余円、国庫補助金等相当額同額)により設置された5蒸留廃液処理設備について、製造業者は、処理能力が十分でないことや、処理により生産される飼料等の販売が不調であることなどを理由として、会計実地検査を行った24年5月から12月までの時点で約2年間から6年間余りにわたって稼働させておらず、中には設置した当初から稼働した実績が全くないものもある状況となっていた。
そして、これら5蒸留廃液処理設備に係る中央会の審査状況についてみると、製造業者からの受給申請に対して、蒸留廃液処理設備の納入業者の設備の納入実績等に係る資料の添付を求めておらず、蒸留廃液処理設備の処理能力等の技術面についての審査を十分に行っていなかったり、飼料等の販売先や販売収入、処理費用等に係る資料の添付を求めておらず、設置後の稼働計画についての審査を十分に行っていなかったりしていた。
また、これら5蒸留廃液処理設備に係る中央会の把握、指導及び助言の状況についてみると、設置された蒸留廃液処理設備の事業完了時及び事業完了後の稼働状況等について十分に把握しておらず、必要な指導及び助言を適時適切に行っていなかった。
上記のように、近代化等支援事業により設置された蒸留廃液処理設備が長期間にわたり稼働しておらず、その事業の効果が十分に発現していない事態は適切でなく改善の必要があると認められた。
(発生原因)このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国税庁は、25年7月に中央会に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じた。