相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(以下「特例」という。)は、相続税と譲渡所得に係る所得税の負担の調整を図るために創設され、平成5年度の税制改正において、譲渡所得金額の計算上、譲渡収入金額から控除される額が、「譲渡した相続財産に対応する相続税相当額」から「相続した全ての土地等に対応する相続税相当額」に拡大された(以下、この改正を「5年改正」という。)。しかし、地価の高騰が沈静化したり、土地等の長期譲渡に係る分離課税の所得税率が半減されたりするなど特例を取り巻く状況が大きく変化した結果、5年改正による更なる負担調整措置の必要性が著しく低下しているのに、特例に対する検証が行われないまま、土地等を多く相続した者の中に所得税の負担が著しく軽減されている者がいるなどの事態が見受けられた。
したがって、財務省において、特例が有効かつ公平に機能しているかの検証を行い、本来の趣旨に沿ったより適切なものとするための検討を行うなどするよう、財務大臣に対して24年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、財務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、財務省は、本院指摘の趣旨に沿い、本院が表示した意見を24年11月に税制調査会に示して、相続税の課税状況の推移等や土地譲渡益課税の推移等の特例を取り巻く状況について検証を行った上で、5年改正による更なる負担調整措置を含めて特例の在り方について検討を行い、これらを踏まえて、特例の見直しに向けて適切な時期に具体的な方策を講ずるとした今後の方針を定める処置を講じていた。