文部科学本省(以下「本省」という。)は、光科学技術の研究開発を国として戦略的、積極的に推進することにより、各重点科学技術分野や産業分野で革新的な成果を創出するために、平成20年度から、「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」を複数の研究機関に委託して実施している。そして、20年度から22年度までの各年度に、同プログラムに係る試験研究業務の一部を国立大学法人電気通信大学(以下「電気通信大学」という。)に委託しており、委託費として計221,304,049円(直接経費170,233,885円、間接経費51,070,164円)を支払っている。
委託費の対象となる経費は、「科学技術・学術政策局、研究振興局及び研究開発局委託契約事務処理要領」(平成19年文部科学省制定。以下「要領」という。)等によると、研究で使用する機械装置、消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の研究開発の遂行に直接必要な経費(直接経費)と研究開発の実施に伴い研究機関において必要となる経費(間接経費)とされており、間接経費の額は原則として直接経費の額の30%とされている。そして、委託業務の実施に当たっては、本省と各研究機関との間で毎年度委託契約を締結しており、本省は、委託契約に基づき、毎年度の委託業務の実施期間内に要した上記の経費を委託費として研究機関に支払っている。
本院は、合規性等の観点から、委託費が要領等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、本省及び電気通信大学において会計実地検査を行った。そして、納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、本省及び電気通信大学に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、電気通信大学は、委託業務を実施している6研究室の研究者から研究用物品に係る納品書、請求書等の提出を受けて、その購入代金を業者に支払い(20年度から22年度までの支払件数計480件、購入代金計158,618,165円)、全額を委託費の直接経費に含めていた。
しかし、上記6研究室のうち3研究室の研究者4名は、上記研究用物品の一部(20年度から22年度までの支払件数計12件、購入代金計3,050,400円)について、各年度の委託業務の実施期間より前に納品を受けており、虚偽の納品日を記載した納品書、請求書等により電気通信大学に購入代金を支払わせていた。
したがって、上記の購入代金計3,050,400円は、本件委託業務に要した経費とは認められず、委託費計3,965,520円(直接経費3,050,400円、間接経費915,120円)が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、3研究室の研究者において、委託費の原資は税金等であるにもかかわらず事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、電気通信大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、本省において、研究者及び研究機関に対して、当該委託費の執行について要領等により適切な実施を求めていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。