1件 不当と認める国庫補助金 123,519,000円
史跡等購入費補助金は、文化財保護法(昭和25年法律第214号)の趣旨にのっとり、文化財の適正な保存管理とその活用を図り、もって文化財保護の充実に資することを目的として、史跡、名勝又は天然記念物の保存のために土地の買取りなどを行う地方公共団体に対して、その経費の一部を国が補助するものである。
この補助金の交付額は、文化財保存事業費関係補助金交付要綱(昭和54年5月文化庁長官裁定)等によると、土地の買取りに係る経費、建物等の移転補償に係る経費等を補助対象経費として、これに5分の4を乗じて得た額とされている。また、この補助金による補助事業は事業実施年度の3月31日までに完了することとされており、予定の期間内に完了しないなどの場合は文化庁長官に報告して指示を受けなければならないこととされている。
本院が、18都道県の35市区町村において会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者(事業主体) | 補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(50) | 山梨県 | 笛吹市 | 史跡甲斐国分寺跡土地買上(直接買上)等 | 20〜23 | 445,803 | 356,638 | 154,396 | 123,519 | 補助の対象とならない経費を補助対象経費に含めていたもの |
笛吹市は、上記の事業として平成20年度から23年度までの各年度に史跡内の土地計16,080.5㎡の買取り及び建物等36物件の移転補償を補助対象経費計445,803,692円で実施するとして、国庫補助金計356,638,000円の交付決定を受けていた。そして、同市は、各年度とも予定していた事業が3月31日までに完了したとする実績報告書を文化庁に提出して、これにより上記の交付決定額と同額の補助金の交付を受けていた。
しかし、上記の実績報告書には、既に移転が完了している他の物件の現況写真を関係書類として添付するなどした虚偽の内容のものが含まれており、実際には、上記建物等36物件の移転補償のうち24物件の移転補償については、事業実施年度内に移転が完了していなかった。
したがって、上記24物件の移転補償に係る経費計154,396,057円は、補助の対象とは認められないことから、これを除いて本件補助事業に係る適正な補助対象経費を算定すると計291,407,710円(国庫補助金計233,119,000円)となり、国庫補助金計123,519,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において実績報告を適正に行うことについての認識が著しく欠けていたこと、山梨県教育委員会において実績報告書等に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。