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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(3) 国宝重要文化財等保存整備費補助金における事業規模指数の算出に当たり、平均収入額に算入する収入額の範囲が収入の総額を基礎としたものとなるよう改めたり、補助事業者の財政規模の変動状況を反映させたりすることにより、加算率を統一的に算定し、事業が適切に実施されるよう意見を表示したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)文化庁 (項)文化財保存事業費
部局等
文化庁
補助の根拠
文化財保護法(昭和25年法律第214号)
補助事業者
宗教法人209、財団法人28、社団法人1、計238補助事業者
補助事業
国宝重要文化財等保存整備事業
補助事業の概要
重要文化財の修理等に多額の経費を要し、所有者等がその負担に堪えない場合等に補助金を交付するもの
収入の総額を基礎として算定することにより加算率が低下する補助事業者数及び補助事業数
48補助事業者、62補助事業
上記の補助事業において生じている国庫補助金交付額の開差額
1億2963万円(平成20年度〜24年度)
複数年度にわたる補助事業を実施する補助事業者のうち、財政規模の変動状況を資金計画や加算率に反映させることを検討する必要がある補助事業者数及び補助事業数
24補助事業者、37補助事業
上記の補助事業における加算率による国庫補助金相当額
6億7144万円(背景金額)(平成20年度〜24年度)
【意見を表示したものの全文】
国宝重要文化財等保存整備費補助金の加算率の算定について

(平成25年10月31日付け 文化庁長官宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 国宝重要文化財等保存整備費補助金の概要

(1) 国宝重要文化財等保存整備費補助金の概要

文化財保護法(昭和25年法律第214号)によれば、重要文化財の管理又は修理(以下「保存整備事業」という。)は、所有者又は管理団体(以下「所有者等」という。)が行うものとされており、貴庁は、保存整備事業につき多額の経費を要し、所有者等がその負担に堪えないなどの場合において、その経費の一部に充てさせるために、国宝重要文化財等保存整備費補助金(重要文化財(建造物・美術工芸品)修理防災事業(以下「補助金」という。)を所有者等に対して交付している。

補助金の交付額は、文化財保存事業費関係補助金交付要綱(昭和54年文化庁長官裁定)等(以下「要綱等」という。)により、保存整備事業に要する経費に事務費等を加えた額を補助対象経費として、これに、原則として補助率50%を乗ずるなどして算定することとなっている。

そして、補助事業者となる所有者等が宗教法人、公益法人等の法人(地方公共団体及び営利法人を除く。以下同じ。)又は個人の場合は、次の表1及び算出式により算出した補助事業者の事業規模指数に応じて、50%の補助率に5%から35%までの範囲で補助率の加算を行うことができることとなっており(以下、加算された分の補助率を「加算率」という。)、加算率は事業規模指数が大きいほど高い率が適用されることとなっていることから、補助対象となる総事業費及び施工年度数が同じ場合には、補助事業者の財政規模が小さいほど高い率が適用されることとなる。

表1 事業規模指数に応じた補助率の加算

建造物の修理、防災事業美術工芸品の防災事業 美術工芸品の修理事業
事業規模指数 加算率 事業規模指数 加算率
0.1以上  0.2未満 5% 0.01以上 0.05未満 5%
0.2以上  0.3未満 10% 0.05以上 0.2  未満 10%
0.3以上  0.6未満 15% 0.2  以上 0.5  未満 15%
0.6以上  1.5未満 20% 0.5  以上 1.0  未満 20%
1.5以上  3.5未満 25% 1.0  以上 2.5  未満 25%
3.5以上 10.0未満 30% 2.5  以上 5.0  未満 30%
10.0以上 35% 5.0  以上 35%

(算出式)事業規模指数=(補助対象となる総事業費÷当該補助事業の施工年度数)÷当該補助事業者の財政規模

算出式における財政規模には、法人の場合は、補助事業を実施する日の属する会計年度の前々年度以前3会計年度の収入額の平均額(以下「平均収入額」という。)を用いることとなっている。そして、平均収入額に算入する収入額の範囲については明文の規定はないものの、貴庁は、通常の法人の活動による収入額であって、具体的には当該法人における通常の運営に使用する会計(以下「一般会計」という。)の収入であるとし、原則として、駐車場の経営等の収益事業に係る収入は含まれないとしている。

そして、貴庁が平成20年度から24年度までの間に交付した補助金の件数及び金額は、2,067件、計501億0404万余円となっている。

(2) 交付申請の手続

補助金の交付を受けようとする者(以下「申請者」という。)は、都道府県教育委員会を経由して貴庁に交付申請書を提出しなければならないこととされており、申請者が法人である場合は、交付申請書に補助事業を実施する日の属する会計年度の前々年度以前3会計年度分の収支計算書及び財産の状況を明らかにした書類(以下「収支計算書等」という。)の写しを添付することとなっている。また、当該法人が一般会計と区分して特定の目的のための会計(以下「特別会計」という。)を設置している場合には、当該特別会計に係る収支計算書の写しも併せて提出することとなっている。

都道府県教育委員会は申請者から提出された交付申請書、収支計算書等の内容を審査した上で、貴庁に提出し、貴庁はこれらを基に審査を行い、申請者ごとの事業規模指数を確定し、補助率及び補助金の交付額を決定している。そして、補助事業が複数年度にわたって実施される場合は、事業実施期間の途中で加算率が変動すれば、補助対象経費の一部を負担する補助事業者の負担額、地方公共団体の予算等に影響が及ぶとして、当初の交付申請時に算定した補助率を事業が終了するまで変更せずに継続して適用している。

また、交付申請書には補助対象経費を支出とし、補助金の交付額、地方公共団体からの助成金及び所有者等の負担金を収入とする収支予算書を作成して添付することとなっており、貴庁及び都道府県教育委員会は、補助事業期間における申請者の資金計画が適切な内容となっているかについて確認している。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、補助事業者の事業規模指数が補助事業者の財政状況やその変動に応じて算出され、加算率が適切に算定されているかなどに着眼して、貴庁及び24都道府県(注)において、20年度から24年度までの間に宗教法人、財団法人等が実施した補助事業のうち、19年度以前から継続していた事業を除く238補助事業者(209宗教法人、28財団法人及び1社団法人)が実施した655補助事業に係る補助対象経費計269億8955万余円(補助金交付額計177億1361万余円)を対象として、交付申請書、実績報告書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注)
24都道府県  東京都、北海道、京都府、青森、栃木、埼玉、千葉、新潟、石川、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、福岡、長崎、熊本各県
(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 加算率の算定

補助事業者の事業規模指数の算出に用いられた平均収入額に算入する収入額の範囲を238補助事業者の会計区分別及び事業区分別にみると、表2のとおりとなっていた。

表2 会計区分別及び事業区分別の収入額の算入状況(単位:補助事業者数)

区分
収入額の
算入状況
会計区分別の算入状況 事業区分別の算入状況
一般会計 特別会計 一般会計において収益事業に係る経理を行っているもの 特別会計を設置して同会計において収益事業に係る経理を行っているもの
算入している 注(1)
238
16 49 9
算入していない 0 注(2)
81
注(1)
4
41
238 97 53 50
(注1)
238補助事業者のうち4補助事業者は一般会計において収益事業に係る収入のみを算入していなかったものである。
(注2)
一部の特別会計に係る収入を算入していなかった2補助事業者が含まれている。

ア 会計区分別の収入額の算入状況

238補助事業者のうち141補助事業者は、特別会計を設置しておらず一般会計のみで経理を行っており、その収入額を平均収入額に算入していた。

一方、残りの97補助事業者は、一般会計に加えて特別会計を設置しており、このうち、一般会計については全ての補助事業者がその収入額を平均収入額に算入しているのに対して、特別会計については16補助事業者がその収入額を平均収入額に算入していたものの、81補助事業者は算入していなかった。

イ 事業区分別の収入額の算入状況

238補助事業者のうち、53補助事業者は一般会計において収益事業に係る経理と収益事業以外の事業に係る経理とを合わせて行っていた。このうち、49補助事業者は収益事業の収入額を平均収入額に算入しているのに対して、4補助事業者は算入していなかった。

また、特別会計を設置して同会計において収益事業に係る経理を行っている50補助事業者のうち、9補助事業者は収益事業の収入額を平均収入額に算入しているのに対して、41補助事業者は算入していなかった。

このように、平均収入額に算入している収入額の範囲は、補助事業者の会計区分別又は事業区分別にみても統一されていない状況となっていて、補助事業者間において事業規模指数の算出が統一的に行われていないのに、これにより貴庁が加算率を算定していたことは適切とは認められない。

そして、補助事業者の大部分を占める宗教法人に適用される「宗教法人会計の指針」(平成13年日本公認会計士協会)によれば、宗教法人の会計区分は特別会計の設置を含めて当該法人の判断により行われることとされている。このため、貴庁が平均収入額に算入する収入額の範囲を一般会計の収入額に限定したとしても、宗教法人が一般会計で経理している事業の内容は多岐にわたることから、会計区分のみにより収入額の範囲が統一されることとはならない。

また、文化財保護法によれば、保存整備事業は、前記のとおり、所有者等が行うこととされており、所有者等が法人である場合には、これに係る経費は法人として負担することとなることから、収入額の範囲を収入の総額と捉えることが妥当であると考えられる。

そして、要綱等によれば、前記のとおり、当該補助事業者が特別会計と一般会計を区分して経理している場合には、交付申請書の添付書類として特別会計の収支計算書等も提出することとなっている。また、補助事業者の財政規模から特別会計の収入額等の特定の収入額を除外することについては規定されていない。

以上のことから、平均収入額に算入する収入額の範囲は、会計区分又は事業区分にかかわらず、収入の総額を基礎として定めることが適切であり、これにより加算率の算定が統一的に行われることになると認められる。

そして、20年度から24年度までの間に実施した655補助事業のうち、単年度事業及び複数年度にわたる事業の初年度に実施された事業の計400補助事業(補助金交付額計59億5133万余円)について、特別会計の収入額等を含めた収入の総額を平均収入額として事業規模指数を算出して加算率を試算すると、48補助事業者の62補助事業(補助金交付額計12億3281万余円)については、加算率がそれぞれ5%から20%低下することになる。これにより補助金交付額を算定すると11億0318万余円となり、上記の補助金交付額計12億3281万余円と比べて計1億2963万円の開差が生ずることとなる。

(2) 複数年度にわたり実施される補助事業における加算率の算定

補助金の交付を受けるためには、毎年度、交付申請を行い、交付決定を受ける必要があるが、貴庁は、補助事業が複数年度にわたって実施される場合、前記のとおり、当初の交付申請時に算定した加算率を補助事業が終了するまで変更せずに継続して適用している。

しかし、本件補助金は、所有者等が保存整備事業に要する経費の負担に堪えないなどの場合に交付されるものであることから、補助事業が複数年度にわたって実施される場合には、補助事業者が事業を適切に継続できるかを確認するため、補助事業者の財政規模の変動状況を適時適切に把握することが必要である。

そこで、事業実施期間が4年以上である24補助事業者の37補助事業(4年目以降の事業に係る補助金交付額29億7871万余円。このうち加算率による補助金相当額6億7144万円)を対象として、事業開始年度から3年経過後以降の年度において、その前々年度以前3会計年度の特別会計の収入額等を含めた収入の総額により平均収入額を試算した。その結果、事業開始年度に比べて平均収入額が増加していた24補助事業では、その変化率は1.0倍から2.3倍となっており、減少していた13補助事業では0.4倍から0.9倍となっていた。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

宗教法人Aは、平成20年度から27年度までを施工年度とする建造物修理事業を実施している。

上記事業の事業開始年度である20年度分の事業及び事業開始年度から3年経過後以降の24年度分の事業について、平均収入額等を試算すると表のとおりとなっており、平均収入額は2.3倍に増加していた。そして、これを基に加算率を試算すると20年度事業分の15%が24年度事業では5%に低下し、補助率は65%から55%に低下することになる。

表 平均収入額等の変動状況の試算

補助事業を実施する年度 算定対象年度 平均収入額(注) 平均収入額の変化率 事業規模指数 加算率 補助率
平成20 年度 16〜18 8 億8561 万円 0.39 15% 65%
24 年度 20〜22 20 億3738 万円 2.3倍 0.17 5% 55%
(注)
平均収入額は、算定対象年度における宗教法人Aの収入の総額を基礎として本院が算定したものである。

このように、補助事業者の財政規模は相当程度変動していることから、複数年度にわたって事業が実施される場合は、補助事業者における資金計画の変更への対応や地方公共団体の予算措置等の状況も考慮しつつ、一定期間が経過した後に見直すなどして、補助事業者の財政規模の変動状況を資金計画及び加算率の算定に反映させていく必要があると認められる。

(改善を必要とする事態)

事業規模指数の算出に当たり、平均収入額に算入する収入額の範囲が統一されていないのにこれにより加算率を算定していたり、複数年度にわたり実施される補助事業において、補助事業者の財政規模の変動状況が資金計画及び加算率の算定に反映されていなかったりしている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴庁において、補助事業の加算率の算定を統一的な基準で適切に行うことの重要性についての理解が十分でなかったこと、複数年度にわたり実施される補助事業において当初の交付申請時に決定した資金計画及び加算率について、事業開始後の補助事業者の財政規模の変動状況を反映させる必要性についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

貴庁は、補助事業の対象となる重要文化財の指定件数及び補助金の交付額が増加傾向にある中で、文化財の適正な保存管理とその活用を図り、もって文化財保護の充実に資するために、今後も引き続き、補助事業を推進することとしている。

ついては、貴庁において、加算率の算定を統一的に行い、補助事業が適切に実施されるよう、次のとおり意見を表示する。

  • ア 平均収入額に算入する収入額の範囲が特別会計の収入額等も含めた収入の総額を基礎としたものとなるよう改め、この改めた内容を要綱等に明記すること
  • イ 複数年度にわたり実施される補助事業について、補助事業者の財政規模の変動状況を適時適切に把握し、補助事業者の負担額や地方公共団体の予算等を考慮した上で、この変動状況を資金計画及び加算率の算定に適切に反映させる仕組みを検討すること