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  • 平成24年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第9 文部科学省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

日本私立学校振興・共済事業団に対する特定健康診査及び特定保健指導に係る補助金の交付額の算定方法について、事業団以外の保険者に対する補助金等の交付額の算定方法に準じた適切なものとするよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)文部科学本省 (項)私立学校振興費
部局等
文部科学本省
補助の根拠
私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)
補助事業者(事業主体)
日本私立学校振興・共済事業団
補助事業の概要
日本私立学校振興・共済事業団が行う特定健康診査及び特定保健指導の実施に要する費用を補助するもの
事業費
10億3156万余円(平成20年度〜23年度)
上記に対する国庫補助金交付額
10億3156万余円(平成20年度〜23年度)
節減できた国庫補助金交付額
6億8770万円(平成20年度〜23年度)

1 制度の概要

(1) 特定健康診査及び特定保健指導の概要

医療保険各法に規定する健康保険組合等の保険者は、平成20年度から、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)等に基づき、当該年度に40歳以上75歳以下の年齢に達する健康保険等の被保険者、被扶養者等に対して、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)等に着目して特定健康診査及び特定保健指導(以下、これらを合わせて「特定健康診査等」という。)を行うこととされている。特定健康診査は、糖尿病その他の政令で定める生活習慣病に関する健康診査であり、特定保健指導は、特定健康診査の結果により健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導である。

また、厚生労働省が定める「特定健康診査及び特定保健指導の適切かつ有効な実施を図るための基本的な指針」(平成20年厚生労働省告示第150号)によると、特定健康診査等は、国民の健康と長寿を確保しつつ、医療費の増加の抑制にも資するものであるとされている。

(2) 日本私立学校振興・共済事業団に対する特定健康診査等に係る補助金の概要

国は、特定健康診査等の円滑な実施を支援するため、保険者に対して、特定健康診査等の実施に要する費用について補助金又は負担金(以下「特定健康診査等補助金等」という。)を交付している。このうち、私立学校の教職員等の保険者である日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)に対しては、私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)及び日本私立学校振興・共済事業団補助金交付要綱(平成10年文部大臣裁定。以下「事業団交付要綱」という。)に基づき、文部科学省が補助金として交付している(以下、この補助金を「事業団補助金」という。)。

(3) 事業団補助金の交付額の算定方法

文部科学省は、事業団交付要綱において、事業団補助金の額は文部科学大臣が定める額としているだけで交付額の算定方法を定めていない。一方、事業団補助金に係る文部科学省の予算額(以下「補助金予算額」という。)については、事業団が特定健康診査等の実施機関等に支払う費用(以下「健診費用」という。)の見込額に予算積算上の国庫負担割合として設定した3分の1を乗じて算定している。

また、文部科学省は、事業団に対して、補助金予算額の算出に用いた健診費用の見込額を特定健康診査等給付費として支出予算に計上するよう指導しており、事業団は、事業団補助金の交付申請に当たり、予算計上した特定健康診査等給付費の額を補助対象経費の額とし、これに3分の1を乗じて得た額を補助金の額としている。

そして、文部科学省は、交付決定に当たっては、事業団が行った交付申請どおりに交付決定を行っていることから、交付決定額は補助金予算額と同額となっている。また、事業団補助金の確定額は、交付決定通知において、補助対象経費の実支出額と交付決定額とを比較して低い方の額とすることとされている。

(4) 事業団以外の保険者に対する国の特定健康診査等補助金等の交付額の算定方法

事業団以外の保険者に対する国の特定健康診査等補助金等の交付額の算定方法についてみると、いずれもほぼ同様に、補助金等の交付要綱等に基づき、健診費用等の対象経費(注1)の実支出額から寄附金その他の収入額を控除した額に3分の1を乗じて得た額と、基準単価(注2)に実施人数を乗じて算定する基準額とを比較して少ない方の額とするなどとされている。

(注1)
健診費用等の対象経費  健診費用のほか、特定健康診査等の実施に必要な旅費、消耗品費、印刷製本費等が対象経費とされている。
(注2)
基準単価  厚生労働省が同省所管の保険者における健診費用の平均単価から本人負担分(3割)を差し引いたものに3分の1を乗ずるなどして算定したもの

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、事業団補助金の交付額の算定が適切に行われているかなどに着眼して、文部科学省及び事業団において、20年度から23年度までに交付された事業団補助金計10億3156万余円について、交付申請書等の書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

前記のとおり、事業団以外の保険者に係る特定健康診査等補助金等の交付額は健診費用の実支出額に3分の1を乗じて得た額と基準単価に実施人数を乗じて算定する基準額とを比較して少ない方の額とするなどとしていることから、これら事業団以外の保険者における健診費用の実支出額に対する補助金等の支給を受けた額の比率をみたところ、最大でも3分の1となっていた。

一方、文部科学省は、補助金予算額の算定の基礎としている健診費用の見込額を算定するに当たり、特定健康診査等の対象者数に占める受診者数等の割合(以下「実施率」という。)の見込値を設定していたが、20年度から23年度までの特定健康診査等の実施率の実績値は、いずれも見込値を大きく下回っており、このうち23年度の状況についてみると、表のとおりとなっていた。

表 平成23年度における特定健康診査等の実施率の見込値及び実績値

(単位:%)
項目 特定健康診査 特定保健指導
加入者 健診費用の見込額の算定に当たり設定した実施率の見込値 40歳〜64歳 65.0
65歳〜74歳 60.0
実施率の実績値
(注)
6.4
被扶養者・任意継続加入者 健診費用の見込額の算定に当たり設定した実施率の見込値 40歳〜64歳 70.0 50.0
65歳〜74歳 70.0 50.0
実施率の実績値 27.9 9.2
(注)
事業団の被保険者である加入者本人に対する特定健康診査については、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)等において、学校の設置者等が行う健康診断をもって特定健康診査に代えることとされており、その費用は学校の設置者等が負担していることから、事業団補助金の補助対象となっていない。このため、本表において実績値との比較は行っていない。

このため、文部科学省は、健診費用の見込額に3分の1を乗じて得た額を補助金予算額とし、同額を交付決定額としていたが、その額は健診費用の実支出額を上回ることになっていた。そして、前記の交付決定通知により、交付決定額と比較して低い健診費用の実支出額が事業団補助金の確定額となることから、健診費用の実支出額の全額について補助金が支給されていた。

このように、健診費用の実支出額の全額について事業団補助金が支給されている事態は、事業団以外の保険者に対する特定健康診査等補助金等の交付額の算定方法と比べて公平を欠くこと、また、特定健康診査等には事業団が保険者として負担する医療費の増加を抑制する効果が期待されていることから事業団が健診費用を全く負担していないことは合理的でないことなどから適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(節減できた事業団補助金の交付額)

20年度から23年度までの事業団補助金の交付額を事業団以外の保険者に対する特定健康診査等補助金等の交付額の算定方法に準じて試算すると、基準額が健診費用の実支出額に3分の1を乗じて得た額を下回り、事業団補助金の交付額は、健診費用の実支出額に3分の1を乗じて得た額の計3億4385万余円を超えないこととなる。したがって、20年度から23年度までの間に交付された事業団補助金計10億3156万余円については、上記3億4385万余円との差額6億8770万余円が節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、文部科学省において、事業団補助金の交付額の算定方法を事業団以外の保険者に対する特定健康診査等補助金等の交付額の算定方法に準じた適切なものとすることについての理解が十分でなく、事業団交付要綱に補助金の交付額の算定方法を定めていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省は、25年4月に事業団交付要綱を改正して、25年度以降に交付する事業団補助金の交付額の算定方法について、健診費用等の対象経費の実支出額に3分の1を乗じて得た額と、基準単価に実施人数を乗じて算定する基準額とを比較して少ない方の額とすることとして、事業団以外の保険者に対する特定健康診査等補助金等の交付額の算定方法に準じた適切なものとする処置を講じた。