厚生労働省の施設等機関である国立医薬品食品衛生研究所(以下「国衛研」という。)は、国家検定を要する医薬品、食品等の試験及び検査並びにこれに必要な研究を行っており、研究で使用する設備備品及び消耗品(以下「研究用物品」という。)を多数購入している。研究用物品の購入等の契約については、会計法(昭和22年法律第35号)等の会計法令に従い、給付の完了の確認をするために必要な検査をしなければならないなどとされている。
本院は、合規性等の観点から、予算が会計法令に従って適正に執行されているかなどに着眼して、研究用物品の購入契約を対象に、国衛研において納品書、請求書等により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、国衛研に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、次のとおり会計法令に違反している事態が見受けられた。
国衛研は、平成20年3月に、療品部に所属しているA主任研究官から、研究用物品を950,250円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受けて、また、22年4月に、安全情報部に所属しているB部長から、研究用物品を248,000円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受けて、これらの購入代金をそれぞれ業者に支払っていた。
しかし、これらの購入代金計1,198,250円については、A主任研究官及びB部長が業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより国衛研に購入代金を支払わせていたものであった。そして、A主任研究官及びB部長は、その全額を業者に預けて別途に経理しており、業者は、これを前受金として管理していた。
また、国衛研における会計書類の保存期限が経過していて関係書類が処分されていたため、取引の詳細は不明であるが、19年3月以前にも研究者の架空の取引による購入代金の別途経理が行われており、24年11月の会計実地検査の時点において、業者は上記1,198,250円のほかに、B部長等の名義で3,747,728円を前受金として管理していた。
このように、研究者が虚偽の内容の関係書類を作成して、国衛研に架空の取引に係る購入代金を支払わせているなどの事態は、会計法令に違反していて、上記の計4,945,978円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究者において、施設等機関の予算の原資が税金等であるにもかかわらず事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、国衛研において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったことなどによると認められる。