中央労働委員会は、労働委員会会館(延べ面積計9,674.00㎡。以下「会館」という。)に入居し、会館の管理を行っている。
会館の建物は、国の庁舎であり、一般会計所属の国有財産のうち行政財産である。そして、中央労働委員会は、平成18年3月から24年3月までの間に、一般財団法人労委協会(24年3月31日以前は財団法人労委協会。以下「協会」という。)等8者に対して、労働関係資料の収集、編纂刊行等を行わせるなどのために、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、会館の一部(延べ面積18、19、20各年度はそれぞれ計31.15㎡、21年度は計140.49㎡、22、23、24各年度はそれぞれ計129.31m2)について、事務室等としての使用を許可している。
行政財産は、国有財産法に基づき、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可(以下「使用許可」という。)することができるとされており、その場合、財政法(昭和22年法律第34号)により、原則として、適正な対価として使用料を徴収することとなる。
使用許可の基準は、「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」(平成19年財理第243号。19年1月以前は「国の庁舎等の使用又は収益を許可する場合の取扱いの基準について」(昭和33年蔵管第1号)。以下「通達」という。)に示されている。
通達によれば、使用許可を行う場合に徴収する使用料は、毎年度算定した額に消費税等相当額を加えた額とし、これを相手方に通知するものとされている。
そして、中央労働委員会は、前記の8者に対する使用許可に係る使用料として、18年度から24年度までの間において計10,601,080円を徴収していた。
本院は、合規性等の観点から、使用許可は適切に行われているか、通達に基づき適正な使用料を徴収しているかなどに着眼して、中央労働委員会において、関係資料が保存されていた18年度以降の使用許可等について国有財産使用許可書等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、中央労働委員会は、協会が使用許可を受けた事務室のほかに、会館の一部(面積14.65㎡)について使用許可を受けることなく、倉庫として使用していた事態を把握していたにもかかわらず、協会に対して使用許可を行わないまま使用させていた。このため、中央労働委員会は、関係資料により確認することができた18年度から倉庫としての使用が継続していた23年度までの間において、倉庫部分に係る使用料計2,795,259円を徴収していなかった。
また、上記のほか、中央労働委員会が協会等8者から徴収した使用料は消費税等相当額の算定を誤っていたため、関係資料により確認することができた18年度から24年度までの間において、計530,039円が徴収不足となっていた。
したがって、通達に基づき適正な使用料を算定すると、計13,926,378円となり、徴収していた使用料計10,601,080円との差額3,325,298円が徴収不足となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、中央労働委員会において、行政財産の使用許可に係る関係法令等を遵守することの重要性に対する認識が欠けていたことなどによると認められる。